アットウィキロゴ
 御剣の車の中で、冥は不服そうに呟いた。
「どうしてあの店を選んだの」
「選んだのは私ではない、糸鋸刑事だ」
 事件解決のお祝いと称した夕食へ行った店、吐麗美庵の食事は脳を破壊するような味だった。
 冥はほとんど食べず――というより、糸鋸以外は飲み物をのぞくと最初の一口以外は手をつけず、話をすることがメインになった夕食だった。
「部下の責任くらいとりなさいよ」
 寒いところと法廷とで体力を消耗したあとの吐麗美庵――さすがの御剣も食事ができなかったことは問題だったらしく、ルームサービスで食事をするのはどうだろうかと提案してきた。
 時間も時間なので店はあいていないし、いくら吐麗美庵よりはるかにマシとはいえ、コンビニエンスストアの食事を食べる気にはなれない。
「……代金は私が払おう」
 その一言で冥は承諾した。
 冥のホテルの部屋で、近況を報告しながら食事を取る。
 疲労と眠気とあいまって、食事のスピードはゆっくりで、終わる頃には日付を越えて深夜になっていた。
 食器を回収してもらったあと、それではと御剣は立ちあがる。
 冥も扉まで見送る。
「おやすみ」
 振り向いて顔を近づけてきた御剣に、若干逃げ腰になりながらも冥は虚勢を張る。
「何?」
 警戒する冥に御剣は笑う。
「おやすみのキスくらいはいいだろう――昔のように」
 そんなことをしていたのは、御剣と冥が検事になる前のことだ。
 豪の裏切りが発端の、御剣の失踪や冥の復讐――昔のようになど無邪気にできるはずもない。
 しかしそれを冥の口からは出せなかった
 なんといっても御剣が被害者で、自分は加害者の娘なのだから。
 何も言えずに顔を背ける。
 そのしぐさをどう思ったのか、右頬に御剣の左手が添えられる。
 頬に落ちてくるはずの御剣の唇は、冥の口角にわずかに触れた。
 次の瞬間には御剣の左手に力が入り、顔を正面に向けられて、唇を奪われていた。
 唇が触れているだけのくちづけ。
 目を見開いて驚いて固まった冥を、御剣は抱きすくめる。
 時折強くおしあてられ、時折完全に離れない程度に浮いてと、焦らすようなキスを御剣は繰り返した。
 我に返った冥は、御剣の胸板を押し返す。
 わずかに離れることはできたが、御剣の腕の強さがそれ以上の距離を許さなかった。
「ど、どういうつもりなの、御剣怜侍!」
 御剣はちょっと困ったように笑った。
「すまない。だが、ずっとこうしたかった」
 さらに御剣の腕に力が入り、顔が近づく。
 唇と、瞼と、鼻と、繰り返しくちづけられて思わず吐息がもれる。
 耳に息がかかったかと思うと、耳朶をやわらかく噛まれた。
 冥の意思とは関係なく、体が震える。
「メイ、好きだ」
 その言葉だけで冥の中の抵抗する意思や反抗心がとけて消え去ってしまった。
 御剣のキスが上手いかどうかというと、比較対象のない冥にはわからない。
 ただ想像していた以上にくちづけは甘く、優しかった。
「メイ」
 低くささやかれて、とうとう観念した。
 知らぬ間にこわばっていた手を、おそるおそる御剣の首に回す。
 大きく背中をなでられて、髪を梳かれて、そのとき冥は目をあけた。
 熱情にけぶる御剣の目が間近にあって、視線をはずすことができなくなる。
 ふたたびキスをされて、冥は目を閉じた。
 御剣がそっと唇をなめてくる。
 何を求められたのか理解して、唇をわずかにあけると、舌が侵入してきた。
 舌を絡めとられて、意識がとびかける。
 苦しくなって顔を反らすと、抱きかかえられてベッドの上に横たわらせられた。
 これから何が起こるのか想像がついて、冥の体が固くなる。
「怖くないから」
 そんなのウソ――そういう前に、口はふさがれた。
 ベストとブラウスのボタンがはずされて、肌に空気が触れる。
 御剣の熱い手が、腰からウエスト、わき腹をなで上げて、胸にたどりつく。
 優しく撫で回されて、やんわりともまれ、下着ごしでも熱が伝わってきて、冥は羞恥のあまり顔をそむけた。
 鎖骨と肩を丹念に舐められて、うなじを甘噛みされる。
「あ……」
 堪える間もなく声が出た。
 御剣が喉の奥でひくく笑って、かわいいとささやいてくる。
 いいようにされている自分に涙が出そうになるが、次々ともたらされる未知の感覚に意識がうつってしまう。
 下着をはずされて、口に含まれて、もう耐えられなくなった。
「ふあっ……!」
 意思とは関係なく、体は大きく反応する。
 舐められて、噛まれて、もちあげられて、どうしていいかわからなくなる。
 下半身がじくじくとうずき、恥ずかしさのあまり足をすり合わせた。
「んっ」
 意図せずそれが刺激になって、思わず声を漏らしてしまった。
 御剣の片方の手が足を割る。
 足を開いた瞬間、とろりとしたものが伝ったのがわかって、冥は一瞬ひるんだ。
 太ももの内側をなでられて、ぞくぞくとした快楽が背中を襲う。
 体が強い刺激を欲するように、もどかしげにゆれた。
(こんなに浅ましいの、私じゃない)
 そう思っても、体は勝手に御剣を求めた。
 御剣は冥の反応を楽しむかのように、やわやわと内ももを揉む。
 いつまで経っても肝心なところに触れないのはわざとなのだろうか。
「レイジ……」
 名を呼ぶと、御剣は胸から顔をあげて、くちづけてきた。
 唇が触れた瞬間、やわらかい花びらを御剣の指がなで上げる。
 今までに感じたことのない快楽に思わず腰が大きく浮いたが、御剣の唇も指も離れることは無かった。
 声を出そうにも唇はふさがれていて、舌も絡めとられていてくぐもった音しか出せない。
 やわらかさを確かめられるように指で何度もなでられて、敏感なところを擦られて、そのうち自分の腰が勝手に動いていることに気づいて、羞恥で顔を真っ赤にさせた。
「イヤ……こ、こんなの、いやぁ」
 懇願するように首を振ったが、御剣は許してくれない。
 それどころかさらに追い詰めるような行為におよぶ。
「メイ、もっと感じて」
 ゆるゆると指が入る。
 異物感はあったが、痛みはなかった。
 じわじわと侵食されていく。
 そのことに快楽を感じたわけではないが、御剣の指が入っているという事実に感じてしまう。
 自分でもわかるくらい、内側が熱くとろけていく。
 御剣の思う様にいじられて、そのことに少しの屈辱を覚えながらも、甘い声を上げることしかできない。
 水音が耳に届き、それが自分が出したものかと思うと、かっと耳が熱くなった。
「気持ちいいのだな」
 ささやかれて、きゅっと自分が締まったのがわかった。
 そして指がぬかれて、それよりも熱く固いものが押し当てられる。
 何度も花びらを上下に往復されて、それが何かを悟った冥は、御剣の背中にすがりつく。
 押し込まれて、あまりの痛みに悲鳴があがりそうになった。
 溶けた意識が現実に引き戻される。
「力抜いて……」
 そんなこと、できるわけがない。
 侵入がいったんとまり、何度かくちづけされて、なだめるように背中をなでられた。
 突っ張っていた足から力がぬける。
 強く閉じていた目をあけると、御剣が微笑んでいるのが見えた。
 御剣の目は見たことのない感情に彩られていて、見惚れているとぐっと腰を抑えられた。
 ぷつりと何かが弾けた感触がしたあと、ずぶずぶと御剣が最奥まで侵食してくる。
 あまりの衝撃に、声が出ない。息ができない。
 がり、と御剣の背中に爪あとを残した。
「メイ」
 最奥まで進んだ御剣が動きを止める。
 浅く呼吸を繰り返すと、少し落ち着いてきた。
 貫かれている部分が熱くて痛くて、さきほどの快楽はすべて失われた。
 恐怖にも近い感情が心を支配して、体が細かく震える。
 相手が御剣だから、逃げ出さずにいられる。
「レイジ、」
 すんでのところで怖いという言葉を飲み込む。
 御剣は察したのか軽いキスを繰り返すと、冥に謝った。
「メイ、すまない」
 ずくりと内側が痛む。
 御剣が動き出した。
 ゆるかった動きは次第に早くなる。
 文字通り体を蹂躙されて、荒い息を吐き出しながら、すがりつくしかない。
 御剣自身がさらに固くなる。
 自分に欲情しているのだという事実が、誇らしいと同時に恥ずかしかった。
 どのくらい続いたのか、痛みで気を失いそうになったとき、御剣の腰がびくりと動いて、二、三度最奥に突き上げてきた。
 しばらくしてずるりと引き抜かれ、同時に液体がごぽりとあふれ出す。
 その感触に身を震わせると、御剣が冥を抱きかかえるように倒れこんでいた。
 息が荒い。
「メイ」
 よばれてくちづけられて、自然に口が開いた。
 遠慮の無い御剣の舌を噛みたくなる衝動に駆られたが、そんな余力は残っておらず、大人しくなすがままにされていた。
 しばらく休んでから、シャワーをあびる。
 徹夜の上、この仕打ちは体にこたえた。
 再度ベッドに倒れこむと、御剣が優しく抱きしめてくる。
 瞼にキスをされ、甘く名前をささやかれているうちに、強烈な眠気が冥を襲う。
「レイジ、明日……覚えていなさい」
 その夜、冥が最後に聞いたのは、御剣の苦笑の声だった。
最終更新:2012年07月16日 14:20