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ハロウィン


  • 御剣さんがやや鬼畜


10月31日、帰り道でパンプキンのモンブランを二つ購入する。

今夜はたぶん、御剣怜侍が冥の部屋を訪れるだろう。
その時に、二人で食べるための「お菓子」だ。
去年の今日、これを用意していなかったために、散々な目にあったことを思い出して、冥は深く溜息をつく。
同時に、それまですっかり封じ込めていたはずの当時の感覚が蘇り・・・冥はぞくりと身体を震わせた。


――あれは、昨年の10月31日の午後9時半を過ぎた頃。
予告なく冥の部屋を訪れた御剣が、冥の耳元で戯言を囁いた。

――“Trick or treat”

“ごちそうくれなきゃ、いたずらするぞ”――それは、仮装をした子供がお菓子欲しさに言う台詞。
このマンションではそういった行事は自粛するという同意が事前になされていたこともあり
冥はハロウィン用のお菓子など、一切準備していなかった。
ましてや、30前の男でも喜びそうな類のものなど、尚更のこと。

「お菓子なんて用意してないわよ」
つっけんどんにそう答えると、御剣がフム、と思案する時の声を漏らした。
「キミはあれだけ私のことを弟扱いしておきながら、
 ハロウィンに弟のための菓子を用意してくれていないのか」
「当然よ、だってあなたはもう・・・」
大人でしょう?と続けようとしたが、その前に御剣の人差し指が冥の唇を軽く塞ぐ。
「当然、か。残念だが・・・だったら仕方がない。」
その目は、一切笑っていなかった。
「ご馳走してくれないのであれば、悪戯をするしかあるまい」
次の瞬間には、冥の両腕は御剣の両手に易々と捕えられていた。

「ひ・・・あ――いや、レイジ、ダメ・・・!」
冥の身体を知り尽くした男は、彼女の弱点を的確に捉えることができる。
いつもならば優しくじわじわと高められていくのに、今日はいつになく強引で早急だった。
簡単に追い詰められた冥は、あっさりと脱力し・・・気がつくと服を取り払われてベッドに沈められていた。
その身体の一番奥には、すでに無機質な棒状の機械が埋め込まれて微弱な振動を与えられている。
その上で、御剣は口と左手を使って冥の胸の頂を自由自在に翻弄していた。
低い機械音をかき消すかのように、御剣が冥の身体を味わう音が、部屋中に一際響いている。

残った右手は冥の一番敏感な部分の近くにあり、その指には卵型の小さな機械が握られていた。
角度や圧力を反応に応じて変化させながら、振動する機械をぐりぐりと冥の陰核に押しつける。
一度、冥があっさりと達した後も、休みなくその「悪戯」は続けられた。
しかし、二度目の絶頂が近付くと、御剣は全ての愛撫をやめて静かに冥を観察する。
「レイジ・・・」
物欲しそうに冥が名前を呼ぶと、御剣が口元を愉快げに歪めた。
「食べ物の恨みは何よりも怖い。私は身をもって、そのことを教えてあげているのだよ」

そんな風に何度も焦らされて、冥の理性は徐々にその存在を失っていく。
「おねがい、レイジ・・・レイジ、もう、コワれて・・・しまいそう・・・」
行き場のない熱に耐えられずうわ言のように助けを求めると、御剣は優しく微笑む。
「壊れてしまえばいい」
表情とは裏腹に、言葉には一切の救いを見出すことができなかった。

手にした機械の出力を最大にすると、御剣は冥の陰核に当てたそれをぐいとそこに押しつける。
「いや、あ・・・・ダメ、コワれる、ダメ・・・!」
一度手を緩め、数秒後にまた全力で押しつけると、冥の身体がガクガクと揺れ始めた。
涙に濡れたその目は虚ろを見つめ、半開きの口からはだらしなく涎が落ちていく。
「焦らしても、そうでなくても、結局壊れるのではないか」
楽しげに突きつけた御剣の言葉は、もう冥の耳には届いていなかった。

それでも攻める手を緩めずにいると、いったん脱力したその体はすぐにまた反応し始める。
その繰り返しを悪戯っ子の眼差しで眺めていた御剣は、ある時、冥が意識を失ったことに気がついた。
「本当に、壊してしまったか?」
呼吸と脈で生存を確認した上で、そう独語する。
「だが、私はまだ満足していない」
ローターの電源を落とし、埋め込んだままだった電動の張型を抜き取ると、
同化していたも同然のものを失って開いたままのそこに己の欲望を突き入れる。
それでも自分の快感ではなく冥を起こすことを目的に、御剣はその中で強く暴れた。
「反応がないと楽しくない。起きたまえ、メイ。」
「――・・・・ぁ」
しばらくそうしていると、冥の口から小さな嬌声が洩れ、うっすらと目が開いた。
経験上知っている、反応が得られやすい部分だけを攻めていくと
小さな嬌声はほどなくはっきりとした愉悦の声へと変化を遂げ、御剣の心を悦ばせた。
「い、ひぁ・・・う、あん・・・は・・・ぁっ」
先程の感覚が残っているのか、意味を成す言葉を操れないほど、冥は快楽に溺れている。
それでも迷わずに背中に手を回してしがみついてくる冥を、御剣は愛しく思う。
「ふ・・・んぅ、・・・んん・・・っ」
唇を奪うと無心に舌を絡めてくるところも、可愛くて仕方がない。
恋人へのちょっとした甘えを、にべもなく断られたことへの復讐のつもりで始めた悪戯だったが
結果として、驚くほど素直な彼女の痴態を見ることができている。
そう感じたことで御剣は心から、この行為を愉しんでいた。
「そろそろ、いく・・・ぞ、メイ」
「うん・・・ん、レ・・・ジ、レイ・・・っ!」
身体の全てを使って抱きしめられる感覚に、満たされた思いを感じながら、
御剣は冥の中に思いの全てを解き放った。

――“Trick or treat”

今年も冥のところを訪れた御剣は、去年と同じことを冥に囁いた。

「今日はケーキを買ってあるの。せっかくだから一緒に食べましょう?」
まるで去年のことなど忘れてしまったかのような態度で、冥は御剣を部屋に誘う。
去年のアレは・・・気持ち良くなかった・・・と言えば全くの嘘になる。
だがソレは、次の日歩くことができないほど身体に負担がかかることでもあったので
冥としては、できれば御剣を刺激せず、丁重にもてなして事なきを得たいところだった。

だが、御剣は素直に部屋に上がろうとはしなかった。
「私が欲しいのは、ケーキではないのだが」
「・・・お菓子をもらいにきたのではなかったの?」
やっぱり、今年も“悪戯”をされてしまうのだろうか。
不安になった冥の心を見透かすかのように、御剣は、優しく笑って冥の頬に触れた。
「“treat”は必ずしも、甘い菓子を指す言葉ではないはずだ」
その言葉と共に、御剣の顔が近付いてくる。

目を閉じた冥は、柔らかい感触をその唇に受ける。
互いの優しさを確かめ合うような、深くゆるやかなキスがしばらくの間続けられる。

長い長いキスの後、唇を離した御剣は楽しげに微笑んでこう言った。
「同じ“甘い”ものならば、私は・・・こちらの方がいい。」
最終更新:2010年02月02日 00:52