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千客万来

  • セリフだけ
  • エロは無し
  • ゆるいギャグ


「レイジ」
「なんだろうか」
「名前を呼んだ訳じゃないわ。私の二十歳の誕生日のプレゼントの話よね?」
「そうだ。金額は気にしなくても良い。もっとも、ジェット機だの城だの言うなら、この場で縁を切らせて貰うが」
「だから、“御剣怜侍”よ」
「‥‥?」
「私が二十歳になった時に、もしレイジが独身だったら、お嫁さんにして貰う約束をしたわ。レイジは
二七歳で年齢的にも調度良いわよね」
「‥‥申し訳ないが、覚えが、無いのだが‥‥。もしや、泥酔状態でそんな話を?」
「私の五歳の誕生日の前の話よ。同じようにプレゼントの希望を聞かれて、レイジが欲しいって言ったの」
「そ、そんな昔の口約束など‥‥時効が成立する時間ではないかッ!」
「国外にいる間の時効は凍結されるし、それに今は時効は無くなった筈だけど?」
「成歩堂には園児時代フィアンセがいたそうだ。責任を取るよう進言しておこう」
「頭の尖った男の話はどうでもよろしいッ!(鞭の音)早くサインしなさい」
「ぬおおッ。それは、そんな、大事な書類を、なぜメイが」
「十五年待ったのよ。今現在、レイジに交際している女性はいないわよね?」
「‥‥私にも、理想というものがあるのだが」
「理想?」
「清楚で貞淑で従順な“本物のレディ”だ。人の話を聞かず、テリトリーに踏み込んでくる
人間は男女問わず苦手だ。鞭を持ち歩くじゃじゃ馬など話にならない」
「男に頼るしか脳の無い女のどこが良いのかしら。私だって、ベッドの中では清楚で従順かもしれなくてよ」
「イヤ、いい。試すつもりはない。離れたまえ、勝手に私のボタンを外すなッ!」
「大好きよ、レイジ。‥‥レディにこれ以上、恥ずかしい思いをさせるつもり?」
「‥‥。‥‥メ、イ‥」
「た、タイヘンッス!御剣検事‥うほほおおおッ‥!あ、アンタらなにやってるッスか!執務室のソファでッ!」
「い、イトノコギリ刑事、違うのだ。手違いがあってだな‥‥(鞭の音)ムグオオオッ」
「おじゃましたッス!失礼するッス!どうぞごゆっくりッス!」
「待ちなさい。出て行く前に、キサマに一つ仕事を与えるわ」
「こここここ、婚姻届ッス!狩魔検事の名前が書いてあるッス!じ、自分はまだ命が惜しいッス」
「失礼なッ!キサマに頼むのは証人の欄よ!」
「しょ、証人ッスか?‥‥じ、自分ッスか?こういう大事な書類は、上級検事クラス以上の人物にお願いするべきッス!」
「‥‥イトノコギリ刑事。頼みたかった人物は、もうこの世に存在しないのだ。私にも、メイにも」
「!この糸鋸圭介の名前で良ければ、つつしんで書かせて貰うッス!このペンを持つ右手に熱い思いを‥‥(紙が破れた音)
こめすぎたッス。はっはっはっ。自分、筆圧が高いのを忘れてたッス!」
「来月の査定はマイナスからのスタートだと心得ておきたまえ。それが嫌なら‥‥分かっているであろうな?」
「すぐに、新しい用紙を役所で貰って来るッス!失礼するッスー!」
「急にどうしたのレイジ?」
「うム。提出するかどうかはさておき、書類を作るのは構わない」
「じゃあ‥‥」
「私も紳士として、過去の自分の発言の責任を取るのはやぶさかではないのだが‥‥。約束の記憶が無いのだ。
このような不誠実な私でも許して貰えるのだろうか」
「本当に忘れただけなら良いわ。私が嫌いで忘れたことにしたいのなら、その嘘をつき通して断わって」
「プレゼントは、前倒しでも良いだろうか」
「‥‥嬉しいわ。ちょうだい、レイジ」
「メイ‥‥」
「明日の法廷のこと聞いたか御剣‥‥ええええええッ!オマエたちなにやってるんだ!執務室のソファでッ!」
「な、成歩堂、なぜここに?」
「イトノコ刑事から、証人の予定だったハムスターを逃がしたって泣きつかれて」
「ハムスター?」
「イトノコ刑事がカピバラじゃないとゲーム画面じゃ見えないと開き直って、メンドクサイから上司の御剣に
相談しろって言ったんだ」
「断わる。私はキサマと違って動物の証人は管轄外だッ!」
「‥‥狩魔検事がさっきから鞭を構えて殺気立った目で睨んでるんで、ぼくはこれで‥‥」
「待ちたまえ。キミに証人を頼みたいのだが」
「キサマからキミに格上げだよ。証人?見損なったぞ御剣。いくらハムスターという現実から目を逸らしたい
からってぼくを偽りの証人に仕立てるなんて!」
「法廷の証人ではない。成人二人の署名が必要なのだ」
「保証人じゃないなら書くけど。狩魔検事がこっち睨んでるのは、ぼくの被害妄想か‥‥?」
「礼を言うわ、成歩堂龍一(鞭の音)」
「か、感謝してる人の行動じゃないんだけど?」
「キサマの名前を借りるなんて屈辱だけど、レイジがそうしたいなら従うわ」
「なんだか分からないけど、ぼくが署名するのはいったい何の契約書なんだ?」
「‥‥それは、その時に説明する。とにかく今は手元にないのだ」
「ふーん?じゃあ、また出直すことにするよ」
「ヒゲといい、成歩堂といい‥‥次は修行中の霊媒師が来るんじゃないでしょうね。‥‥レイジ?」
「今日はもう、人は来ない筈だ」
「‥‥いけない手‥‥。本当のレイジは、あまり紳士ではないみたいね」
「レディに恥をかかせるのは忍びない」
「‥‥っ、ダメよレイジ。ここは人の出入りがあるし‥‥。ところで、私の誕生日が来週末の
何日か当然レイジは知っているわよね?」
「うム。もちろん‥‥」
「‥‥」
「‥‥ウムム‥‥」
「六法全書に載ってないことは忘れるその性格、私はレイジとの付き合いが長いから理解があるのよ。
直せとは言わないけど次は許さない。誕生日当日は楽しみにしているわ」
「おそらく法廷が(鞭の音)ぬおおッ!」
「片手間に祝うつもり?絶対にお休みを取るのよ。法廷なんて弁護士と裁判官と証人に毒でも盛れば
どうにでもなるわ。私の成人の記念すべきお祝いと低俗な人間の罪を決定する話し合い、どっちが重要な
イベントだと思っているのかしら」
「法曹界を全否定されるとは。私は一生法廷を休む事態になりかねないのだが‥‥」
「さすがに言い過ぎたかしら、毒は。……下剤でも可よ」
「おーい、御剣ィ、いるかぁ?なんだよ、なんで冥ちゃんがいるんだよッ!ずりーぞ御剣ィッ!」
「‥‥さすがに三回目ともなると驚きもないわね。今日はもう失礼するわ」
「メイ?」
「あーあ、行っちゃったよ。冥ちゃんが喜びそうなモノ持って来たのに」
「‥‥矢張。イトノコギリ刑事や成歩堂が私の執務室に来るのは仕事だが、キサマは理由が無い筈だ」
「ああ、落し物拾ったんで届けに来た!オマエ通した方が話が早いと思ってな」
「落し物は交番へ持って行け!ここは検事局だッ!」
「なんだよ、言ってる意味わかんねえよ!とにかくこの、ジャンガリアンさんがだな」
「じゃんが‥‥?ぬおおッ!とのさまんじゅうが動いたッ!」
「まんじゅうじゃねーよ。正式名、ジャンガリアンハムスターさんよ!」
「‥‥」
「成歩堂の事務所にいたんだ」
「‥‥おそらく、矢張が行く前にイトノコギリ刑事が、そのじゃんがりくんを連れて成歩堂の事務所に行ったのだろう」
「え」
「このじゃんがりくんは、明日の証人らしいのだ」
「疲れてんだなァ。働きすぎは良くねえよ。そんなコトだから、オレみたいなモテモテになれねえんだよ!」
「‥‥」
「それよりさァ、冥ちゃんはもう来ないのかよ。女の子って小動物好きだろ?事務所顔出した時に、
偶然カゴを見つけてさ。オレが来たの気付かれてなかったからきゅっと掴んで、カノジョのバイト先に
見せに行ったらネズミは嫌いだって怒られて散々だぜチクショーッ!」
「‥‥」
「なんだよ御剣、トイレ我慢してるような顔して」
「私はキサマに下剤ではなく、毒を盛りたい気分なのだ」
「まあとにかく、今ならひまわりの種もつけとくぜ。その代わり冥ちゃんにモデルの話、御剣から頼んで
くれねーかなァ」
「‥‥‥‥‥帰れッ!!!」
最終更新:2010年12月06日 19:38