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UM/魔法を体得する/呪文をデザインする/1 - (2011/12/06 (火) 00:13:02) の編集履歴(バックアップ)


呪文をデザインする  Designing spells

 Pathfinder Roleplaying Game用の呪文をデザインするのは芸術と科学が入り混じった作業である。本章ではあなたのキャンペーン用に、バランスのとれた実用に値する呪文をデザインする際に考える必要があることを述べる。
 魔法のアイテムとは異なり、呪文には本ゲーム内における呪文レベルに合致する能力の基準(パワー・レベル)が前もって定義されている。あなたは呪文をデザインする際、新しい呪文と既存の呪文を比較することで、これらのパワー・レベルを考慮しなければならない――1つの呪文は9つの呪文レベルの内の1つ(および初級秘術呪文ないし初級信仰呪文)という狭い能力の範囲に落とし込まれなければならないのだ。対照的に魔法のアイテムの価格は非常に粒度が細かく、そのアイテムが有する機能の価格に基づくgpから計算される。言い換えれば、ある魔法のアイテムにより多くの力を加える場合、あなたは単にそれに合わせて価値を高めるだけでよい。しかしある呪文にはるかに強い力を加える場合、あなたはそれをより高いレベルの呪文にしなければならない。そしてそれは例示となる呪文の異なる組み合わせとそれを比較しなければならないことを意味する。

ゴールデン・ルール The Golden Rule

自作の呪文と似通った呪文を比較し、その想定されるレベルの他の呪文と比較すること。
 魔法のアイテムの価値を計る場合とは異なり、ある呪文の「価値」を正確に計る計算式はない。その作業工程は全て、あなたの作成した新しい呪文と他の呪文を比較し、その呪文や呪文グループに対して弱いのか強いのかどう程度なのかを評価する方法である。呪文をデザインするには、呪文に関連したルールだけではなく、このゲームのルール全てをしっかりと理解している必要がある。その上、ゲームで仮定されている記載されていない事柄に対する理解も必要になる。そのような事柄のほとんどは、本項の中で述べられている。
 例:呪文リストを見ると、[音波]ダメージを与える1レベルのウィザード呪文が存在しないことに気づくだろう。あなたはこの隙間を埋めるために、 バーニング・ハンズ と同様に機能するが、[火]ではなく[音波]ダメージを与えるような呪文をデザインすることにするかもしれない――その呪文をあなたが ソニック・スクリーチ と名付けたとしよう。しかしこのゲームには、[音波]呪文がそれほど多く存在しない理由がある。エネルギー種別としての「音波」はこのルールに後で追加されたものであり、[音波]ダメージに抵抗を持つモンスターは非常に少ない。というのも、ほとんどのモンスターは「音波」がエネルギー種別として定義される前にすでに存在していたからである。[音波]に対する抵抗を持つクリーチャーが[火]に対する抵抗を持つものより少ないため、 ソニック・スクリーチ バーニング・ハンズ よりもほとんどの状況で優れているのである。このようなわけで、もしあなたが自らのゲームに ソニック・スクリーチ を加えるならば、心得たプレイヤーが バーニング・ハンズ の代わりにこの呪文を選択する姿を目にすることになるだろう。もし新しい呪文がほとんどの呪文の使い手の呪文表から既存の呪文を置き換えてしまうのであれば、それはおそらく他の選択できる項目よりも優れていることを意味している――そしてその呪文が非常に優れているために最適な呪文選択となるのであれば、おそらくその能力は強大にすぎるのだ。
 ルール系統の全てを理解することで、あなたはこのような失敗を回避することができるだろう。

呪文の研究 Spell Research

 ある術者が新しい呪文を作成するためにしなければならないことに関するこのゲームのルールは非常に曖昧である(魔法/秘術魔法の文書/独自の研究を参照)。何故かというと、魔法のアイテムの作成方法の詳細のように、このような研究を術者が行うことの詳細は、キャンペーンの進行において重要ではないからだ。ちょうど ウィザード がスクイッド(イカ)の墨を使用するのか珍しい植物のインクを使用するのかが バーニング・ハンズ の巻物を作成する際に必要なことではないように、 イルラークス・インカナブルム (イルラークスの初版本)に記載された身振りを修正するかどうかや、 マーロスツ・グレート・グリモア (マーロストの偉大なる魔法書)に詳細が記載された単語の音を変えるかどうかを知ることも新しい1レベル攻撃呪文を作り出す際に必要なことではない。これらの要素をフレーバーとして含むのは(特に高い物語性を持つキャンペーンにおいては)良いことではあるが、このようなものはアイテム作成や呪文研究の結果に影響を及ぼすものではく、いずれもゲーム時間外でそのほとんどを費やされるものである。そのため、本章ではプレイヤーやGMが新しい呪文をデザインするゲーム技巧について述べており、あるキャラクターが新しい呪文を研究するためにゲーム内で必要な事柄については記載しない。

呪文用語 Spell Terminology

 呪文やそれが生み出す効果を描写するためにこのゲームで使用される用語を理解することは、あなたにとって必要不可欠なことだ。新しい呪文をデザインする前に、 魔法 に慣れ親しむこと。特に数ある系統や副系統、それに呪文の詳細を説明する項目(構成要素、距離など)については必ず理解していなければならない。
 以降の項ではバランスのとれた呪文を作成するために重要で妥当な順に、呪文のデザインの側面を述べていく。例えばある呪文の構成要素は、高価な焦点具や物質要素が含まれでもしない限り、そのパワー・レベルに及ぼす影響は極めて低い。そのため構成要素はダメージ、距離、持続時間、セーヴィング・スローよりも後に記載されている。

想定レベル Intended Level

 作成の前に、あなたには新しい呪文の全体的な想定能力のアイデアが大抵必要となる――多分あなたはそれを使わせたいと考えている特定のPCないしNPCを持っているだろうから、そのレベルがあまりにも低くて重要ではなくなったり、そのキャラクターにとってあまりにも高いために発動することができないということになっては、呪文をデザインする目的は満たされない。その呪文の一般的なレベル間の差はこの点において十分に近いということを知ってさえいれば、次の議論に進むことができるだろう。

機能 Function

 呪文をデザインする際、想定される機能は考慮すべき最重要項目である。特に機能は、この呪文の具体的なゲーム的効果に言及する。ダメージを与える、不調状態のような状態を及ぼす、セーヴや攻撃ロールにボーナスを与えるといったように。それ以外のことはこの点においてはただの飾りに過ぎない――斬撃ダメージを与えるか[火]ダメージを与えるか、目標を不調状態にするか混乱状態にする、セーヴに洞察ボーナスを与えるのか攻撃ロールに強化ボーナスを与えるのか、ユニコーンのように見えるのかファイアー・デーモンに見えるのか、はいずれもどちらでもよい。機能の例には以下のようなものが含まれる。
  • ダメージを1体の目標に与える
  • ダメージを複数の目標に与える
  • 1体の目標に状態や効果1つを及ぼす
  • 複数の目標に状態や効果1つを及ぼす
  • 仲間1人に防御的なボーナスを与える
  • 仲間複数に防御的なボーナスを与える
  • 仲間1人に攻撃用のボーナスを与える
  • 仲間複数に攻撃用のボーナスを与える
  • 仲間1体を治癒する
  • 仲間複数を治癒する
 ある呪文は一度に上記の項目の複数を行うこともできるし、術者が複数のオプションから選択することができるものもある。しかしそのような呪文は1つの効果を持つ同じ呪文レベルの呪文よりも、必ず弱い力しか持たないようにしなければならない。「状態もしくは効果」は上記の項目の中でももっとも広範に渡るものであることに注意すること。これらは不調状態や恐慌状態のような実際の状態も、瞬間移動のような効果も含んでいるのである。

呪文のダメージ Spell Damage

 攻撃呪文の力を測るもっとも簡単な方法の一つは、それがどれだけ多くのダメージを出すかを確認することだ。攻撃呪文はこのゲームで最も簡単にデザインすることができる呪文であり、その例は数多くある。一般的なダメージ呪文は、秘術呪文では術者レベル1ごとに1ダイス(通常はd6)のダメージ(例えば ショッキング・グラスプ ファイアーボール )を、信仰呪文では術者レベル2ごとに1ダイス(通常はd6だが、ときどきd8のものもある)のダメージ(例えば シアリング・ライト )を与える。

対象 Target

 もっとも単純な呪文は目標1つ(クリーチャー1体か物体1つか、術者のみか)にのみ効果を及ぼす。厳密に言えば、術者にのみ効果を及ぼす(距離が"自身"で対象が"術者"の)呪文は"クリーチャー1体"を目標とするものよりもわずかながら弱い(訳注:以降の文意から、"弱い→強い"と思われる)。なぜなら誰かに効果を及ぼす呪文を発動することができるものは、それをより多目的に使うことができ、そのためにより強力だからである。しかし"術者にのみ"効果を及ぼす呪文を作ることでわずかに力を弱めることは、1レベル低い呪文としてデザインするために使用するべきではない。多くの場合、術者にのみ効果を及ぼす呪文は常に機能するか、そのクラスに利益を及ぼす独自のボーナスを提供する形でデザインされる。しかし君がこの呪文を発動することやこの呪文のポーションを飲むことで利益を得ることを許す場合に手に負えなくなることがある。このような呪文は術者にのみ効果を及ぼすままにしておくべきだが、この呪文を誰かに発動することができるかのようにそのパワー・レベルを分析したほうがよい。
シールド トゥルー・ストライク はいずれも1レベル呪文であり、術者にのみ作用する。もしこの呪文を他の目標に発動することができるなら、この呪文は依然として1レベル呪文とするのが正しいパワー・レベルである。それらを術者にのみ作用する呪文としてデザインしたのだから、それらは1レベルだけ値下げされて2レベルになるわけではない。 シールド は常に術者にのみ効果を及ぼす呪文であり、このようにされているのにはゲーム・バランス上の理由がある。 シールド は盾ボーナスを提供するため、この呪文の効果を受けたファイターのような近接戦闘キャラクターは実際の盾を落とすことができ、追加ダメージのために両手武器を装備しておくことができる。 トゥルー・ストライク は意図的に術者にのみ作用する呪文としてデザインされており、そのために ソーサラー ファイター に毎ラウンドこの呪文を発動することができないのだ。そのようにされれば、 ファイター は(追加ACのための) 《攻防一体》 や(追加ダメージのための) 《強打》 を使用してさえ、命中させることが難しいモンスターに攻撃を命中させることができるだろう。そのような術者にのみ効果を及ぼす呪文を作ることで、実際にその呪文を弱くすることはない。しかしそのようにすることで、遭遇を非常に簡単にしてしまうような組み合わせからプレイヤーを守っているのである。
 複数のクリーチャーに効果を及ぼす呪文は1体のクリーチャーにのみ効果を及ぼす呪文よりも強力である。複数のクリーチャーに効果を及ぼす呪文は円錐形や球状のような範囲に効果を及ぼすもの( ファイアーボール など)か、どの2体もある距離内にいる複数のクリーチャーを術者が選択できるもの( スロー など)のいずれかであることが多い。 スロー のように目標を術者が指定する呪文よりも、 ファイアーボール のような爆発効果はその特性上多くの敵に効果を及ぼすことができるが、( スロー を使用したときには術者の仲間を巻き込む危険はない。その呪文に最も適した種類がどちらなのか選択すること。ただし極めて低い術者レベルでない限り、複数を選択できる呪文の方が一般に強力である(低い術者レベルであれば、爆発が効果を及ぼす数に比べてずっと少ない目標にしか効果を及ぼすことができないからだ)。

ダメージ量 Damage Caps

 低レベルのダメージ呪文は中レベルや高レベルのダメージ呪文と同程度によいものではない――このゲームでは時として、中レベルや高レベルの呪文が与えることのできる最大のダメージ量に低レベルの呪文が至ることがある。これは低レベル呪文が最大ダメージを与えることなく低レベル呪文が増え続けるなら、有用性の点においてより高いレベルの呪文と戦うことになり、かつて20レベルの術者が同じ呪文を使う場合に、1レベルの時のように楽しくなくなってしまうからだ。
 最大ダメージは呪文レベルと、その呪文が秘術呪文か信仰呪文かとに依存する。これはすなわち、信仰呪文が治癒に優れているという事実に対するバランス上、秘術呪文はダメージを与える点において優れているようにデザインされているからだ。「単一目標」呪文は1体のクリーチャーにのみダメージを及ぼす( ショッキング・グラスプ )か、そのダメージをいくつかのクリーチャーに分割する( バーニング・ハンズ マジック・ミサイル )。「複数目標」呪文は複数のクリーチャーにそのダメージ全てを及ぼす( ファイアーボール )。
 例えば、( ショッキング・グラスプ のような1レベルの単体目標ウィザード呪文は最大で5ダイスのダメージ(この例示では5d6)を与えることができる。 マジック・ミサイル は単一の目標にも使用することができるし、術者は複数のクリーチャーに効果を及ぼすためにミサイルを打ち分けることもできる。撃ち分けた場合、単一目標に向けてのダメージを複数の目標に分割することになる。 バーニング・ハンズ は複数のクリーチャーに複数ダイスのダメージを及ぼすため、下記のダメージ量について記載された表に従っていないように見える。しかしd6ではなくd4のみのダメージを与えること、そして極めて近い限られた効果範囲しか持たないことで補正されている。
 最大ダメージの表を見る際、秘術呪文は通常ダメージにd6を使用するが信仰呪文は通常d8を使用することを心の片隅に止めておくこと。これらの表はd6を基準に記載されている。信仰呪文のダメージを考慮する際、d8を2d6として数える。そのため、 シアリング・ライト は単一目標の3レベル・クレリック呪文であり、最大で5d8ポイントのダメージを与える。d8は2d6として扱うため、これは10d6となり、3レベル・クレリック呪文の範囲に収まる。(レベルごとに1d6、最大10d6のダメージをアンデッドに与えることもまた、この呪文レベルにおいては妥当であることに注意。光に脆弱なアンデッドに対してわずかに高いダメージを及ぼすことは、人造に対してダメージが削減されることと相殺される)。
ヒント :もし作成しようとする呪文がこの表に示される値よりも多いダメージを及ぼす場合、ダメージを減らすか術者レベルを上げなければならない。
ヒント :もし作成しようとする呪文がこの表に示される値よりも低いダメージしか及ぼさない場合、ダメージを増やすかこの呪文に他の効果を付与しなければならない。この例の一つに サウンド・バースト がある。この呪文は1d8ポイントのダメージしか及ぼさない(この値は増加することがない)が、範囲内の目標を朦朧状態にすることができる。

表:秘術呪文における最大ダメージ
秘術呪文レベル 最大ダメージ(単一目標) 最大ダメージ(複数目標)
1 ダイス5個
2 ダイス10個 ダイス5個
3 ダイス10個 ダイス10個
4 ダイス15個 ダイス10個
5 ダイス15個 ダイス15個
6 ダイス20個 ダイス15個
7 ダイス20個 ダイス20個
8 ダイス25個 ダイス20個
9 ダイス25個 ダイス25個

表:信仰呪文における最大ダメージ
信仰呪文レベル 最大ダメージ(単一目標) 最大ダメージ(複数目標)
1 ダイス1個
2 ダイス5個 ダイス1個
3 ダイス10個 ダイス5個
4 ダイス10個 ダイス10個
5 ダイス15個 ダイス10個
6 ダイス15個 ダイス15個
7 ダイス20個 ダイス15個
8 ダイス20個 ダイス20個
9 ダイス25個 ダイス20個

距離 Range

 呪文の距離は呪文の能力の特徴的な部分として機能する。害のある呪文で目標に接触することを術者に要求するということは、術者は近接戦闘の範囲かそのすぐ近くに行かなければならず、敵の報復を受けたり機会攻撃範囲に収めた敵から機会攻撃を受けるリスクを払うことになる。同様に、近距離呪文は術者に少し考える時間を与えてくれるが、敵対的な目標を1回の移動や突撃の距離の範囲に収めていることが多く、敵を近づけ術者を攻撃させることを許してしまう――術者レベルが14に達してさえ、近距離呪文はほんの60フィートしか届かないのだ。
 屋内にいる状況であれば、ほとんどの中距離の戦闘呪文は無限遠の間合いを持つようなものだ。なぜなら術者はこの呪文を獲得するレベルにおいて150フィート以上の距離を持つことができ、このような遠い間合いを取り扱う遭遇はほとんどない。術者は見ることのできるものならなんにでも命中させることができるだろう。
 屋外でさえ、150フィートの間合いを持つ呪文はPaizo GameMatery Flip-Mat(24インチ×30インチの大きさで、120フィート×150フィートを表す)のような一般的なゲーム・マット上であれば、なんでも視界に収めることができる。長距離であればあらゆるものを範囲に収めているようなもので、最低でも400フィートの間合いを持つ。この距離はゲーム・マット上で大抵7フィートの長さになり、ゲームに使用される多くの机よりも長い。大草原を横切って敵に ファイアーボール を放ったり、ダンジョン内の少し手前の安全な場所に戻るために ディメンジョン・ドア を使用したりといった抽象的な状況でのみ、長距離はゲーム内で意味を持つ。
 当然、接触呪文はこの呪文項目において最も弱く、近距離呪文はまだましだが並外れて良いものではなく、中距離呪文や遠距離呪文はほとんどの目的において同じ程度に良い。 《呪文距離延長》 は+1呪文レベルを代償に呪文の距離を2倍にすることができ、 《呪文射程伸長》 は+1呪文レベルを代償に間合いを1段階増加させる(接触から近距離、近距離から中距離、中距離から長距離)ことを考えれば、ある呪文において距離段階を1つ増加させることはレベルを+1することでうまくバランスを取ることができるだろう。例えば、 キュア・ライト・ウーンズ (通常1レベル)を接触ではなく近距離にする場合、2レベル呪文とするのが適切だろう。

持続時間 Duration

 特定のレベルにおいて呪文の持続時間をどの程度長くするかを決めるための厳密で素早いルールは存在しない。弱い呪文は数時間持続する一方、強力なものが数ラウンドや1アクションの間しか持続しないようなこともある。最も良い方法は呪文の効果と持続時間を想定レベルが同じ呪文、1レベル低い呪文、1レベル高い呪文と比較することだ。「瞬間」呪文と「永続」呪文との間にある違いにはよくよく注意しなければならない( 呪文の持続時間 を参照)。

セーヴィング・スロー Saving Throw

 魔法的な効果として直接クリーチャーに効果を及ぼす呪文のほとんどはセーヴィング・スローを行わせるようにするべきだ。( アイス・ストーム スリート・ストーム のように)非魔法的な攻撃や妨害をクリーチャーに及ぼす呪文は通常セーヴィング・スローは不要である。
 命中させるために術者に攻撃ロールを要求する呪文は、(それが遠隔接触攻撃であっても)セーヴィング・スローを行わせてもよいし行わせなくても良い( エナヴェイション シアリング・ライト は行わせないが、 ディスインテグレイト は行わせる)。ダメージをロールする必要のない攻撃効果は、効果を削減したり無効化するためにセーヴィング・スローを常に行わせるべきだ。そうでなければその呪文を発動することのできるレベルの誰もが、その呪文を選択するのは明白である。
ヒント :呪文がセーヴィング・スローを行わせるかそうでないかを決める際には、その呪文を君のお気に入りのPCに使用されたときに君がどう思うかを考えること。もしPCがセーヴや攻撃ロールの失敗による回避によって抵抗する機会が一切得られないならば、君はいらいらするだろうか、当惑するだろうか、それとも怒るだろうか? もしそうなら、その呪文に何らかのセーヴや攻撃ロールを付加するべきだ。ただもちろん、この方法は常に有効な策ではない。
頑健セーヴ :頑健セーヴを要求する呪文は通常目標を物理的に変化させるか、通常頑健セーヴで抵抗する効果(病気や毒など)を与えるか、抵抗するのに純粋に物理的抵抗力がもっとも有効な攻撃形態であるかのいずれかである。通常、頑健セーヴに成功してもその効果は命中するが、ちょうどスカンクが噴射する卑劣なジャコウを受け流す熊のように、目標が抗するに十分なほど頑丈なのである。この呪文は(物質ではなく)クリーチャーにのみ効果を及ぼすことに注意すること。人造やアンデッドといった生きていないクリーチャーはこの種の呪文に完全耐性を持つ。例えば、このことによってこの種のクリーチャーはクリーチャー起源の(ポリモーフ)呪文に完全耐性を持つことになる。しかしその他の呪文( ディスインテグレイト のような)はそうではなく、物体を攻撃することができる。
反応セーヴ :反応セーヴを要求する呪文は通常爆弾の破裂のような、物理的な爆発や噴射を範囲内に作り出す。目標はセーヴィング・スローに成功することで、このような効果を回避することができる。一般に、反応セーヴに成功することは目標が効果を避けたか、その効果が本来より弱い効果で目標の周りを転げ回ったことを意味する。術者が攻撃ロールを行い目標が反応セーヴィング・スローを行うような呪文を作るべきではないことを気に留めておくこと。そのようにすれば同じ呪文に対し【敏捷力】が(目標のACで一回、目標の反応セーヴの修正値で一回の)二回も適用されてしまうからだ。
意志セーヴ :意志セーヴを伴う呪文は心理的な、精神に作用する攻撃である。純粋な精神の力の有効性を否定する呪文の攻撃に、ごまかしの考えや欠陥への気づきを使うことによって目標は抵抗する。意志セーヴは頑健セーヴの精神版のようなものだ。この効果は目標に「命中」するもので、命中するかどうかは目標の意志力にかかっている。意志セーヴを伴う直接攻撃呪文のほとんど( スリープ ファンタズマル・キラー など)は[精神作用]効果である(後述の"詳細"を参照)。
 物体に発動することのできる呪文もある。物体は魔法のアイテムであるかクリーチャーが所持している場合にのみセーヴィング・スローを行う。このような呪文はセーヴィング・スローの種別の後に「(物体)」と記載されなければならない( シュリンク・アイテム を参照)。
 助力を与える呪文やいかなる場合でも目標に外を及ぼさない呪文はセーヴィング・スローを伴うべきではなく、セーヴィング・スローを伴う場合でもセーヴィング・スローの種別の後に「(無害)」と記載しなければならない( フライ を参照)。
 術者にのみ効果を及ぼす呪文には決してセーヴィング・スローは必要とならない(自分自身に発動した利益をもたらす呪文に抵抗しようとすることなどない)。そのため君はこれらの呪文にセーヴィング・スローについて記載する必要はない( トゥルー・ストライク を参照)。

呪文抵抗 Spell Resistance

 ある呪文に呪文抵抗が適用されるかそうでないかは、瞬間のものか持続する魔法効果であるかにほとんど依存する。呪文抵抗は( ファイアーボール のような)瞬間の魔法効果や( ウォール・オヴ・ファイアー のような)持続する魔法効果に適用されるが、非魔法の効果や非魔法の効果を作り出す呪文には、それが瞬間のものであれ持続するものであれ適用されない。例えば、 ウォール・オヴ・ストーン は解除することのできない石の壁を瞬間で作り出す。城のモルタル壁を通り抜けようと試みるように、呪文抵抗はこの呪文でできた壁を通過する手助けにはならない。いずれの壁も魔法のものではなく、いずれの壁も ディスペル・マジック アンティマジック・フィールド を使用してさえその場にあり続ける。
 一般的なルールで言えば、ほとんどの呪文は呪文抵抗可能である。クリーチャーが魔法的でない物体や非魔法的な効果を作り出すように呪文を意図的にデザインした場合にのみ、呪文抵抗は意味のないものとなる。 ムーヴ・アース (持続時間は瞬間)を使用して丘を作ることができる。呪文抵抗はこの丘を通り抜ける手助けにはならない。なぜならこの呪文は地面を動かしたのであり、魔法的な効果はその後終ってしまったからだ。同様に、 ムーヴ・アース を使用して落とし穴を作り出すことができる。呪文抵抗はこの落とし穴を無効化する手助けにはならない。なぜなら単なる非魔法の落とし穴であり、単にシャベルを使って作り出したものと同様であるからだ。 マジック・ストーン は石に魔法の力を付与するが、呪文抵抗はこの石が命中することに対して、呪文抵抗が +1アロー に対して提供する防護以上には、防護の手助けにはならない。なぜならこの魔法は石にその力を注ぎ込んでおり、呪文抵抗を持つクリーチャーにその力を向けているわけではないからだ。
 呪文抵抗を持つクリーチャーに対して使うことができるように、呪文抵抗を許可しない呪文をデザインするというのは一般的な芸当である。多くの場合、このデザインの裏にある考えは単に愚かなものである。例えば燃える油の球を作り出し、炎の爆発の飛びかう指定場所に放り投げるような呪文である。これは明らかに、呪文抵抗を通過する非魔法の ファイアーボール を作り出すための想定である。特定のゴーレムはしばしばこのような呪文デザインの想定される標的となる。というのはその魔法能力に対する完全耐性は呪文抵抗を許可するあらゆる効果に対しても完璧な耐性を与えるからである。君のキャンペーンの中にこのようなイカサマ呪文の類を加えることのないように。遭遇のバランスをぞんざいに扱うようなものなのだから(モンスターの中には近接攻撃を行うキャラクターが苦戦するようにデザインされているものもいるし、呪文の使い手が苦戦するようにデザインされているものもいる。そしていかなる面においても困難であると想定されるものもいる)。
 ある呪文が呪文抵抗可能かそうでないかは呪文の能力の目安にはならない。ほとんどの遭遇では、呪文抵抗は要因にはならない。
 セーヴィング・スローに「(無害)」や「(物体)」と記載する場合、呪文抵抗にも同様に記載しなければならない。

発動時間 Casting Time

 戦闘中に発動するようになっているほとんど全ての呪文は「1標準アクション」の発動時間を持つべきだ。「1移動アクション」「1即行アクション」「1割り込みアクション」の呪文をでっち上げるという誘惑には打ち勝たねばならない。術者が1ラウンドに2つの呪文を発動する容易な方法になるし、すでに 《呪文高速化》 という抜け道があるのだから。発動時間のより短い戦闘呪文の作成は 《呪文高速化》 の価値を下げてしまう 《呪文高速化》 と同様にレベルを+4増やすことで呪文を作成したとしても、実際にこの特技を使用している術者の価値を奪ってしまうし、その呪文はそのレベルで追加呪文を発動できる高レベルの術者にとっては一般的な組み合わせになるだろう。例えば君が 《呪文高速化》 された マジック・ミサイル と同様に機能する5レベルの クイックンド・マジック・ミサイル 呪文を作った場合、14レベルのウィザード(少なくとも5レベル呪文を3回使用できる)はこの呪文を覚えるのを基本の型として使用するだろう。なぜならこのウィザードが発動するいかなる高レベルの戦闘呪文においても5d4+5の追加ダメージを加えることができ、これで呪文のダメージ量を上回ることができるのだから。その上、1ラウンドに2つの呪文を発動することをルーチンワークとする呪文の使い手を認めることは、彼らがより早く呪文を使い尽くすことになる。そうなれば彼らは冒険を続けるよりもキャンプを行ったり休息を取ることを仲間たちに提案するだろう。
 戦闘の手助けになるようにクリーチャーを招来する呪文の発動時間は「1ラウンド」とすべきだ。あるキャラクターがこの手の呪文を発動することに、合理的なアクションのコストを与えることになる。もし術者が1回の標準アクションでモンスターを招来し同じラウンドで動作させることができるなら、この種の呪文は術者に一切コストを支払わせなかったことになる。
 数ラウンドよりも長い間使役するために来訪者を呼び出す呪文( プレイナー・アライ プレイナー・バインディング )は発動時間を10分とすべきだ。より強力な呪文であればもっと長い発動時間であってもよい。 ゲート はクリーチャーを呼び出すことができるにもかかわらず発動時間が1標準アクションであることに気をつけること。しかしこの用法で使用する際には10,000gpの物質要素が必要であり、このようにして容易により早い発動時間を手に入れることはできない。

構成要素 Components

 高価な焦点具や物質要素が必要であるか全く構成要素が必要でない場合を除いては、呪文の構成要素はほとんどの場合においてパワー・レベル全体にほとんど影響を与えない。音声要素と動作要素を持つ呪文がほとんどであり、新しい呪文もこの傾向に従うべきだ。
 音声要素を必要としない呪文の利点は、 サイレンス の効果範囲でも発動することができる点である。そのため一般的な戦闘呪文の音声不要版を作成したい欲望にかられる。しかしそのようにすれば、 《呪文音声省略》 の価値を下げてしまう。これはちょうど即行アクションにすることで 《呪文高速化》 の価値を下げることと同様だが、そこまで大きいものではない(1ラウンドに2つの呪文を発動することは予期せぬ サイレンス に対抗するための予備の呪文を準備することよりもより深刻な問題なのだ)。術者が アシッド・アロー の代わりに音声省略 マジック・ミサイル を、 ファイアーボール の代わりに音声省略 アシッド・アロー を準備しようとするなら、彼らは明らかにより弱い選択を行なっているのであり、良いことである。
 動作要素を必用としない呪文の利点は、拘束状態、組みつき状態、両手がふさがれていたり何かに占められている場合でも発動できること、それに秘術呪文失敗確率が適用されないことである。ある呪文の音声要素のないものを作ることが 《呪文音声省略》 の価値を下げることとちょうど同様に、動作要素のない呪文を作ることは 《呪文動作省略》 の価値を下げる。このゲームの前提として、呪文のほとんどは言葉と身振りを必要とする点がある。そのため新しい呪文もその呪文の主題が動作要素を必要としないことを示唆していたり拘束や組付きから逃れるために特別に準備された場合でもなければ、この前提を堅持するべきだ。
 物質要素を必用としない呪文の利点は、呪文構成要素ポーチを必要としない点だ(組みつかれているような稀な状況においては、呪文を発動するために物質要素を手に持つ必要はない)。ほとんどの物質要素はルールの条件を満たすためというよりも、フレーバーとして呪文の要素となっている。 ファイアーボール の物質要素である鳥糞石と硫黄は、初期の火薬(黒色火薬)が鳥糞石と硫黄から作られていたことに由来する。 ライトニング・ボルト の物質要素である羽毛とガラスの棒は、羽毛とガラスの棒をこすり合わせることで静電気の蓄積を生み出す能力があるからだ。このゲームはこのような呪文の物質要素の全くないものを存在させることもでき、それによってゲームのプレイに及ぼす影響はわずかである(「必要なときに何でも入っている」呪文構成要素ポーチによって。また、 ソーサラー・クラス 《物質要素省略》 をボーナス特技として得る)――物質要素はその呪文を面白くするだけなのだ。作成する呪文のバランスにおいて物質要素がないか無料の物質要素があるかを天秤にかけ、フレーバーが適する場合に加えればよい。
 高価な物質要素は熱心なプレイヤーが望む回数だけこの呪文を発動することを抑止する。なぜならそのような呪文はパーティが皆その呪文の効果を受けているなら冒険を非常に簡単にしてしまったり( ストーンスキン など)、探索や調査といったPCにとっての冒険体験の鍵を飛ばしてしまったり( オーギュリイ コミューン ディヴィネーション など)、PCにとってのある種の脅威を平凡なものにしてしまうからだ( レイズ・デッド レストレーション など)。想定レベルよりも優れた呪文ならばその呪文レベルを上げるといった方法で、できるなら高価な物質要素を使用することなく呪文のバランスを取ること。ときには呪文のパワー・レベルが目標に合致することもある(例えば オーギュリイ は、クレリックにとって低レベル ディヴィネーション として価値があるように)。しかしもしコストがなければ、プレイヤーは何度も何度もそれを使用するのに十分なほどその呪文は価値のあるものである。そのためPCがどのくらいこの呪文を使用するかの加減をするためにgpコストを設定しなければならない。 グリフ・オヴ・ウォーディング のような長く続く防御用の呪文もこのカテゴリに合致する。もしこの種の呪文にコストがかからなければ、呪文の使い手はみな、PCの到来を待つNPCは驟雨に一回ないし月に一回、自らのねぐらにこの呪文をかけるだろう。。 グリフ・オヴ・ウォーディング にgpコストを与えることで、より伝統的な冒険を行うことができるのである――そうでなければ、PCが歩く全てのマスには罠がある可能性があり、PCたちが グリフ を見つけるためにゆっくり注意深く捜索することでゆっくりとしたゲームになってしまうだろう(5レベルのローグは一般に〈知覚〉に+14の修正値を持ち、DC 28の グリフ に対しては出目20を選択したとしても判定に失敗することを意味する)。
 焦点具要素は物質要素と同じルールで扱われる――ほとんどの場合それは単なるフレーバーであり、単に関連があるだけだ。高価な焦点具は高価な物質要素に似ているが、何度も支払いを繰り返すわけではなく一度だけコストを支払えばよく、敷居を越えれば無視することのできる障壁だという点が異なる。高価な焦点具はPCがその呪文を使えるようになる時期を遅らせる方法としては優れているが、一度その要素を入手すると、実質的に高価な焦点具のない他の呪文と同じになってしまう。物質要素を持つように、そのレベルに応じた呪文としてバランスを取ること。そしてもしその呪文があまりによいものだが修得を遅らせることで効果を抑えられるのであれば、高価な焦点具要素を加えることを考慮しよう。

系統 School

 呪文の能力のバランスを取るという点においては、呪文の系統はさほど重要ではない――6レベルの召喚術に属する攻撃呪文は6レベルの力術に属する攻撃呪文と同程度の力を持つべきである。その呪文の系統を決定することは、まさにその呪文の方向性と効果に最も合うものを選択することと言える。ある範囲にエネルギー・ダメージを与える呪文は、通常召喚術や力術呪文である。通常、実体のある物質やクリーチャーを召喚、招来、創造する呪文は召喚術呪文である。しかしエネルギーや力場で作られたものを作り出す呪文は、一般に力術呪文である。精神に作用する呪文は心術呪文である。しかし恐怖を与えたりアンデッドに作用するものは心術呪文には該当せず、それらは死霊術となる。