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ホラーのサブジャンル Horror Subgenres

 出典 Horror Adventures 191ページ
 ホラーのストーリーは全て似ているわけではなく、ホラー冒険も全て似ているというわけではない。フィクションや映画では、ホラーには多くのサブジャンルがある。この節では、GMが伝えたい、そしてそれに合う冒険を作りたいホラーのストーリーの種類をGMが選ぶ助けをする為に、そうしたサブジャンルのごく一部を紹介する。完全なリストとは程遠いものの、パスファインダーRPGの冒険へと簡単に翻訳できるためか、パスファインダーRPG向けに翻訳するのが極めて難しく、成功させるために通常より多くの助言を必要とすることが多いため、以下のホラーのサブジャンルが選ばれている。

 以下の各サブジャンルは同一のフォーマットに従っている。一般的な説明の後に4つの項目がある。

 ストーリーテリング/Storytelling:この項目は、このサブジャンルのストーリーに共通のテーマに関するメモと、サブジャンルを基盤としたパスファインダーの冒険に含めることを検討するべき要素について説明している。

 モンスターと脅威/Monsters and Threats:この項目には、このサブジャンルで適切な脅威を与えるクリーチャーとルールのコンテツの選択が含まれている。Pathfinder RPG Bestiary以外の製品のモンスターは上付き文字での参照が記載されている。

 基本的なプロット/Basic Plots:この項目には、サブジャンルの要素を中心とした素晴らしい1回限りの冒険をするプロットの例が含まれている。GMはこのアイディアを具体化したり、自分の冒険を作るための出発点として利用したりすることができる。

 発展的なプロット/Advanced Plots:発展的なプロットはより複雑で、キャンペーン全体の基礎として機能する。繰り返しになるが、ユニークな冒険を刺激的なものにするために使用できる。

ボディ・ホラー Body Horror

 出典 Horror Adventures 192ページ
 肉体は弱く、ほとんど理解されていないものであり、いつでも宿主の意識を裏切るかもしれない。この身体の本能的なサブジャンルは、病気、肉体の腐敗、変容など肉体の有機的な恐怖に関係している。基本的なレベルでは、ボディ・ホラーとは骨折の音を聞いたり、関節が誤った方向へ曲がったりするのを見た時に感じる嫌悪感である。詳述すると、肉体が怪物となることへの恐怖と内面に潜む恐ろしさである。

 ストーリーテリング:ボディ・ホラーのプロットは多くの場合変容に関係している。これはありふれた形でのことかもしれない。例えばキャラクターが消耗症の治療法を見つけるために競争をしたり、足を骨折して敵の領土から脱出しようとしたり、寄生虫が自分の肉体を食い尽くしていることを知ったりする。現実から解き放たれた身体の恐怖には、制御できない変化、感性を獲得した病気、肉や血を喰らうモンスターが含まれるだろう。ボディ・ホラーのプロットには、タイムラインやカウントダウンがある場合があり、その経過をたどる疾患や未治療の創傷が壊疽になるかもしれない。解き放たれた肉体への恐怖の拡散を止める唯一の方法は、手遅れになる前に医学的に治癒するか、剣や呪文で切除することである。しかしそうすることは、しばしばボディ・ホラーの最大の脅威を伴う:感染である。キャラクターは呪いにかかったり、恐ろしい病気に罹ったり、恐怖の腐敗を受けたり、貪り喰らう寄生虫の宿主になったりする可能性がある。ストーリーのニーズに合わせて、四肢の喪失、ヒット・ポイントへのダメージ、能力値吸収、自然治癒の不可能などゲームに影響を与える効果と吐き気を催すような描写を組み合わせて、ボディ・ホラーの効果をカスタマイズする。

 ボディ・ホラーの冒険を遊んでいるGMは、多くのプレイヤーが血なまぐさい描写や病気の症状の説明に対して強烈に反応していることに気がつくだろう。GMはこのようなシーンをプレイヤーに適した方法で描写するべきだが、無意味な描写はインパクトを失うことを心がけよう。不確かさと時間もまた、ボディ・ホラーでは強力な要素であり、PCは自分や愛する人が感染から完全であるかどうかわからないことが多い――今日もその兆候がないとしても、明日はどうだろうか?

 ボディ・ホラーのゲームの敵もまた不明確な場合がある。敵は疫病を広める個人かもしれないし、有情の寄生虫種族かもしれないし、被害者を変容させるマッド・サイエンティストかもしれない一方で、単に病気そのものである可能性もある。前者の例は一般的なパスファインダーのプロットに適している。しかし後者は治療法を作り上げることに貢献する借り物競争や一連の挑戦として展開されるかもしれない。このような場合、最終的な挑戦は最も悲惨で、感染症に曝される最大のリスクを伴うものであるべきである。このように、目に見えない脅威の敗北は最高潮となるが、それはまた更なる大規模感染という極めて私的な脅威も伴う。

 モンスターと脅威:寄生虫や病気はボディ・ホラーのストーリーでよく登場するので、腐り蛆(巨大なものやより一般的な災害)、 穿耳蟲インテレクト・ディヴァウラー、内臓を侵す疫病(Pathfinder Unchainged の病気ルールの使用を考慮しよう)、またはこの書籍の病気の節にあるものを検討する。卵を産んだり、他のクリーチャーから生まれたりするクリーチャーにはルナルマヴェジピグミージルなどがおり、宿主の身体にしがみついたり、乗っ取ったりするクリーチャーにはインカティリスウィザーズ・シャックルなどがいる。カーニヴァラス・ブラブのようなフレッシュウォープと粘体は忌わしい変身の恐怖を体現し、ビヘッディドクロウリング・ハンドは解き放たれた体の一部であり、ドラウキュトンは芸術やタブーな実験の媒体として肉を使う。腐敗の多くとフレッシュウォープのルールはPCが変身の恐怖を直接体験できるようになっている。

 基本的なプロット:隔離所に閉じ込められたPCたちは腺ペストに苦しんでいる。粘体の種は共同体の下水道に侵入し、触れるものを融解したゾンビに変えてしまう。ゴラザグは迷宮のようなかさぶたの集合体にPCたちを捕える。

 発展的なプロット:近親相姦の王朝の秘密は、首都の地下に潜む虚栄心の強い近親交配のマングラルマンの地下都市を明らかにした。心を変える病気が感性を帯び(エルフが不思議な完全耐性を持つ)、何百もの人の心に感染し、感染していない者たちへ向けて暴動を起こさせる。ある国で広く見られる牛のような群れの動物は飢饉を免れるが、PCが「その動物が半ば知性のあるドラカイニア・スポーンだ」と暴露すると国はPCたちに牙を剥く。

コズミック・ホラー Cosmic Horror

 出典 Horror Adventures 192ページ
 コズミシズムやラヴクラフティアン・ホラーと呼ばれることも多いこのサブジャンルのストーリーは、宇宙の大きな動きの中では人類とその全ての闘争はとるに足らないものであると言う認識を含んでいる。このようなプロットは、典型的には、社会によって「現実」と呼ばれる限定された共有された嘘を保護する真実の啓示を内包する。このベールの向こう側にある力は、根本的に理解不可能で、無関心で、危険なものである。この力との接触は、通常キャラクターを傷つけ、死か、狂気か、社会から追放させてしまうような理解をもたらす。無知と故意の妄想はそのため美徳となり、広大で冷淡な宇宙の真実から脆弱な物語を守る盾となる。

 ストーリーテリング:コズミック・ホラーのストーリーは触手についてのものではない――人間が知らないほうが良い真実についてである。おそらく、この啓示は宇宙の支配者の秘密であるか、理解の飛躍である――現実は社会が知っていると考えているものとは根本的に異なっている。さらなる知識の追求は崇高な探求から始まり、キャラクターが影響を与えるには大きすぎる真実を広めている有機的な陰謀が徐々に明らかになっていく。GMはこの知識につながるパンくずを提供するかもしれないが、PCの限られた視点には恐ろしい全体像が垣間見えるだけである。奇妙なカルトあるいは不安にさせるアーティファクトの発見は、原住ではない装置やクリーチャーを世界の理解へと知らしめるようキャラクターを一押するかもしれない。この要素はミステリーのストーリーの証拠のように、ゆっくりと明らかにされていくのがベストであり、さらに大きな脅威を示唆するためにこれらの要素をお互い積み重ねていくべきである。結局の所、脅威は存在の枠を超えた実体であるか、星自体の配列のようなものである可能性さえある――剣と呪文では倒せない敵である。PCがそのような勢力との小競り合いに勝ち、今日の黙示録を防ぐ事はできるかもしれないが、彼らの世界の日々は数えるほどしかない。PCたちがどれだけ学んだかによっては、社会で必要とされるような現実の世界観を二度と共有することができなくなるかもしれない。それほど恐ろしくないとしても、ベールの向こうにある真実を垣間見たとき、正気を失うような力が振り返ってくるだろう。

 モンスターと脅威:コズミック・ホラーのゲームにはエイリアンが登場することが多い――他の世界、次元界、時代からの侵略者が。これらは通常、エンジェルやデーモンのようなスピリチュアルな存在ではないが、現実の法則を証明している現存する隣人は、必ずしも公平ではない。H.P.ラヴクラフトやこのサブジャンルの他の作家の作品からのクリーチャーの多くがパスファインダーRPGには存在し、少し例を挙げればディープ・ワンデナズン・オヴ・レンエルダー・シンググレート・オールド・ワンミ=ゴショゴスイシアンなどはコズミック・ホラーの冒険に自然に適合する。しかしラヴクラフティアン・クリーチャーがこのサブジャンルを独占しているわけではない。適切な背景設定があれば、アボレスチョーカークローカーコントンヒャクメイモータル・イコルアティアグなど、異形の形態や精神を持つクリーチャーはコズミック・ホラーに有用な敵となる。異形、特定の人型怪物、フェイなど、種族全体やクリーチャー種別全体を異世界のマニピュレーターや謎めいた意図を持つ存在としてキャスティングすることも検討せよ。

 奇妙な怪物を超えて、他の世界の道具やアーティファクトも同様に危険であることが証明されるかもしれない。身近なアイテムを手に取り、別世界のように説明することを検討せよ――クロスボウは発射されるたびに音がなるなど全く異なる側面をとる。魔法も、他の世界の源から学んだ場合、危険な配役を得る場合があり、おそらく術者にダメージを与えたりキャラクターの能力を侵食したりする。衝撃的な発見は、正気度の効果という形で危険をもたらすこともある。現実の光景が揺れ動き、正気度の柱が倒れた時、キャラクターが経験する可能性のある反応については狂気を参照せよ。

 基本的なプロット:神――彼方の月を覆う大海――のしもべが追求している秘密あるいは遺物を、命惜しさに恐怖した味方がPCに提供する。古代の宝物庫を開くと、時間を超越した種族が開放された。ある町では、季節ごとに現れる彗星が共同体の外にある風車の上に降ってきたことをきっかけに宗教を捨てることとなった。

 発展的なプロット:奇妙な悪夢、急成長する植物、あるいは広がる傷は、他の種が支配する未来との通信手段を持っている。星辰正しき時、ある種族全体が惑星から逃げ始める。ミュージシャンは現実を再構成することができる音色を発見し、別世界の星の叫びの注目を集める。

ダーク・ファンタジー Dark Fantasy

 出典 Horror Adventures 194ページ
 その名の通り、ダーク・ファンタジーはホラーのサブジャンルではなく、ホラーをテーマにしたファンタジーのサブジャンルである。ダーク・ファンタジーは、一般的にファンタジーの物語と同じ主題――剣、城、魔法、英雄譚――を含んでいるが、暗いレンズを通して見ている。死、絶望、不気味さは、ここでは一般的なものであり、理解や克服する力を超えた罪のない者を脅かす要素となっている。

 ストーリーテリング:この物語では、魔法と超自然が暗くより危険な配役を引き受ける。魔法をかけられた土地は貪欲な捕食者と危険な追放者で満たされた呪われた場所となる。魔法は、秘術的な反動あるいは中毒の脅威を帯びるかもしれない。怪物とはかつての隣人の死体から生まれたものであれ、誘惑のデーモンの化身であれ、城壁が怪しげに抑えつけてある恐怖の獣であれ、恐ろしいものである。多くの脅威があり、死が起こりそうな悲観的なファンタジーの一種であるが、この物語の英雄は暖かさと光の稀有な場所を守る機会がある。他のファンタジーの英雄とは異なり、彼らは無力な者たちの戦士で悪の敵となる。ただし、ここでは勝算は遥かに重く積み重なっている。

 モンスターと脅威:ダーク・ファンタジーの冒険は異形、人造、悪の来訪者、アンデッドなどが一般的であり、魔獣やその他古典的なファンタージのクリーチャーを再構築するのも同様である。悪の呪文、呪われた魔法のアイテム、魔法の環境の災厄も典型的なものである。適切に気味の悪いひねりを加えれば、ほとんどのファンタジー要素がダーク・ファンタジーの冒険の中で居場所を見つけることができる。

 基本的なプロット:死霊術士は疫病の村の死体を使ってガシャドクロを作り上げる。ガーゴイルのトロフィー・ハンターは一連の不可解な殺人事件の原因である。トロルは下水道を利用して王室文書館の地下室に潜り込み、暗くなってから長居している学者を捕食する。

 発展的なプロット:天才的なアーケイニストがリッチへの自身の道をたどり、堕落したアンデッドの暴君の帝国を再現しようとしていた。現実の間の裂け目は奈落界アビスの軍勢が世界に侵入してくることを可能にする。死んだ人の死体が1日以内にグールとして戻ってくるため、PCはなぜ魂が死後の世界に渡らないのかを調査することを余儀なくされる。

怪談 Ghost Story

 出典 Horror Adventures 194ページ
 このストーリーにはゴーストが登場する――実際の霊であるか、単にキャラクターがそうした霊の存在を信じているかにかかわらず。通常比較的短い物語であるこのサブジャンルのストーリーは強情な魂と、その魂が継続するのを妨げる悲劇的な出来事に焦点を当てている。通常霊障のある場所――典型的な霊障のある家など――を特徴とするが、これは霊の不幸な過去と何らかの形で結びついている場所、物体、その他の要素であるかもしれない。怪談の主人公は、悲劇に遅れを取る傾向がある。霊的な死の灰へのゾーンに入ることで、主人公は残る傷跡の癒しに巻き込まれる事となるか、次の犠牲者となる前に逃げ出そうとする。

 ストーリーテリング:怪談は雰囲気のあるストーリーと特定の場所を結びつけるのが一般的であるため、素晴らしい単一の冒険のプロットとなる。霊とその霊障の場所の結びつきは、PCが霊の話を楽しむことができることを意味し、必ずしも広いキャンペーンに干渉することはない。

 ゴーストには膨大な種類があるが、ホラーの冒険では「何かを欲しがるゴースト」と「暴力的なゴースト」の2つが重宝される。前者は解放されることを期待してPCをエージェントにする哀れな存在かもしれない。後者は悪質なものであり、狂気と暴力の化身で、霊障の地に侵入したものに怒りをぶつけてくる。どちらの場合でも、ゴーストは思いやりのあるキャラクターである必要は無いが、どちらの場合でも、霊の起源はその外見、能力、行動に影響を与える。霊障の背後にある伝承を明らかにすることは十分な物語であるかもしれないが、典型的なパスファインダーのゴーストの物語では、霊の背景設定を学び、ゴーストを休息させることがプロットの中心となる。

 モンスターと脅威:明らかにこの物語はゴーストに焦点を当てているが、パスファインダーRPGでは「ゴースト」は同じ名前のモンスターではなく、さまざまなことを意味する場合がある。ただし、ゴーストには黄泉がえりの能力があるため、モンスターとして優れた選択肢である。つまりPCが正しい手段を見つけた場合にのみ霊を倒すことができる。この能力はPCに怪談に巻き込まれて敵を倒すよう強要する。GMは任意の数の幽霊じみた精体を使用して特定の種類の怪談を作成することができる――例えば、バンシーは不毛の荒野を恐怖に陥れ、ポルターガイストは平和な家庭を邪魔し、ユキオンナは雪に覆われた景色に出没する。Pathfinder RPG Bestiaryの付録8にある副種別が(非実体)のクリーチャーを捜すと、強力な怪談の候補生が見つかるだろう。ゴーストは非実体である必要はない。たとえば、ファントム・アーマーリヴェナントスケルタル・チャンピオンズヴェンビなどは全て実体のある脅威を生み出す。霊と来訪者の境界線がしばしばぼやけるので、「ゴースト」がアンデッドである必要もない。さまざまなフィーンド――オゥブヴァルヌダイモンなど――を怪談に出没させることを検討せよ。ストーリーの目的のために、GMはゴーストでないクリーチャーに黄泉がえりの能力を与えることを躊躇うべきではないが、脅威が1つの計画に富んだ場所に留まる場合のみである。他のサブジャンル内と比べて、霊障ははっきりとした選択肢となる。さまざまな表現豊かな霊障とチームを組んだ霊体の存在(ガイストなど)が協力して、幅広く満足の行く霊障を作成できる。

 基本的なプロット:地域の精神病棟の破壊は、何年もの精神的トラウマを1体のアリップまたはコーラー・イン・ダークネスとして解放し、その支配的な人格はもう一度海を訪れることだけを望んでいる。ゴーレムの作成者のゴーストは、実験室を再起動させて、自分が住む為の魂を束縛させる身体を作るよう若い侵入者を威圧する。遥か彼方の国の絵画が肖像画の被写体のゴーストを運んでおり、その幽霊は母国語しか話せない高貴だが憤懣の溜まった外国の戦士である。

 発展的なプロット:ゴーストはPCのパトロンとなり、やり残したことをやり遂げると、宝(または家)を提供してくれる。PCたちが祓ったと思っていた暴力的で無言のゴーストが再び現れる――正体を間違えていたのだろうか? 敗北した悪役や倒れた味方のゴーストはPCの装備の1つと繋がるが、その接続は被害者と殺人者の凶器の間にある単純なものよりも強いように見える。

ゴシック・ホラー Gothic Horror

 出典 Horror Adventures 195ページ
 ゴシック・ホラーは雰囲気と前兆を醸し出す。これはオトラント城奇譚、大鴉、吸血鬼ドラキュラのサブジャンルである。稲妻に照らされた城、バロック様式の大聖堂、拷問された心、そして不穏な魂がこの物語を満たしており、あらゆる要素がムードを醸し出し、破滅を予感させる――多くの場合派手な描写を通じて。ゴシック・ホラーは暗闇、腐敗、壮大な堕落、罪の償いに焦点を当てているが、ロマンスと勇敢さにも飛んでいるため、パスファインダーの冒険にも適している。

 ストーリーテリング:こうした物語の中で最高のものは、特定のモンスターや恐怖の種類よりも、冷酷な些事が連携することで、秘密の罪状が老朽化、不調、呪い、怪物的な捕食という形で闇の対価をもたらすような永続的な秋または冬の抑圧的な雰囲気を作り出すことである。設定、キャラクター、プロットの全てはゴシック・ホラーのストーリーの中で一緒に機能し、GMは物語の要素を通じて暗い部分が通過することを仄めかすように務めるべきである。突然の雷雨、不吉な偶然、農民の警告などを特徴とするサブジャンルがあれば、それはゴシック・ホラーである。この不吉な道の先にいる邪悪な力は、不気味なヴァンパイア、不老不死のウィザードのようなデータを持っているかもしれないが、PCが彼女に出会うまでの時間によって、PCが経験したことがその人物を単なるそれを超えた存在に成長させているはずである。

 ゴシック・ホラーの物語は、富、贅沢、そしてキャラクターの高貴さやポジティブな特質を強調し、発展させて、破滅からのよりよい哀愁を引き出す。暗い情熱を刺激する火花としても、または英雄的な動機としても、ロマンスも一般的である。死、絶望、狂気は、両方のテーマで頻繁にある結果であり、幻想的な出会い、邪悪な力との取引、キャラクターが平穏な死から遠ざかる情熱への道を切り開く。このテーマに熱中することは、多数の設定(崩れた荘園、厳粛な大聖堂、霧深い墓地など)だけでなく、ゴシックの物語に登場するのを待っている登場人物(怪しい街の住人、無一文の貴族、幽霊のような統治者)も示唆している。

 モンスターと脅威:ゴシック・ホラーの大黒柱はフィクションや民間伝承で特定可能なモンスターが含まれている:フィーンド、ゴースト、ハグ、ライカンスロープスケルトンヴァンパイアイェス・ハウンドなどなど。ゴシック・ホラーの中では、どのようなモンスターでも、悲劇的な背景と脅威の意図がある限り立派な悪役とすることができる。例えば、愛に飢えたドライアドの悲しみは自分を超えて広がり、荒野を野蛮な悪夢へと豹変させるかもしれない。陰湿な魔法のアイテム――モンキーズ・ポーソウル・ポートレイトのようなもの――はゴシックの物語にもよく登場し、物体は過去の所有者の罪を背負っている。フィーンド、腐った神、あるいは死そのものとの取引は、悲劇的な悪役を奮い立たせることができる。霊障もまたゴシック・ホラーで有用な脅威となり、その描写的な危険性は悲しみに満ちた歴史を明らかにする方法も提供する――おそらく一連の相互に関係した悲劇的な出来事を通じて、少しずつ少しずつと。

 基本的なプロット:百年に一度、古の戦場に建つ大聖堂にある勇気の女神の大司祭に、グレイヴナイトが現れ挑んでくる。悪夢の中で見たことのある老婆を恐れ、チェンジリングがPCの保護を懇願する。PCは冬至の夜だけに出現する霊の屋敷から失われたロケットを取り戻さなければならない。

 発展的なプロット:PCは古代のヴァンパイアの男爵夫人の恋人として生まれ変わった。モスマンはPCを遠くから追いかけ、長年に渡る呪いを生み出し、終わらせ、繰り返すことを目的としている。正義の神の信仰全体はPCが恐ろしい予言の鍵を握っていると確信しており、生きていることを許さない。

サイコ・ホラー Psychological Horror

 出典 Horror Adventures 196ページ
 ボディ・ホラーとは対照的に、サイコ・ホラーのサブジャンルは、心の奥底に根ざした恐怖や不確実性を演じるものである。現実から切り離される可能性、人々を狂わせる陰謀、タブーの脅威などは全て心理学的なホラーの超現実な世界を満たすことを強く要求する。この物語は超自然的な要素を含んでいるかもしれないが、そのような脅威が現実なのか、それとも完全に頭の中だけのものなのかを確認することはキャラクターにとっては難しいものである。

 ストーリーテリング:パスファインダーの冒険で再現するのが最も難しいホラーのサブジャンルの中でも、サイコ・ホラーのストーリーは陰謀、疑念、妄想のテーマを扱うことがよくある。映画やフィクションでこれらのストーリーは、現実との境界線が周りでぼやけていく中で、個人の限界を超えて追い込まれていく一人の人物に焦点を当てているかもしれない。パスファインダーの冒険では、一人のPCをそのような恐怖の犠牲者にするのは難しい――しかし可能ではある。正気度のルールはさまざまな心理的効果をシミュレートしているが、プレイヤーがその効果をロールプレイすることを選択した時が最も効果的であり、グループにそのキャラクターの現実に対する把握力が緩んでいることを認めさせることができる。このルール以外にも現実性を捻じ曲げるの節や「秘密と疑い」の節で説明されているテクニックは、プレイヤーの間に不確実性を植え付け、何が本当なのか、誰を信用して良いのかという疑問を残しておくのに役立つ。

 簡単に作成するには、別の人が現実の把握力を失い、怪物的な行為を犯し、彼の家を妄想の顕現に変える冒険である。陰謀のプロットは、衝撃的な真実を隠そうとする敵の幹部を団結させ、おそらくPCに生涯に渡る信念がずっと嘘であったかどうかを疑わせるかもしれない。もっと極端な場合では、(恐らくは火着け屋のメスメリストによって)ガスライティングの犠牲者となるかもしれず、これは不思議な方法か、彼らを狂わせるための精巧な実験――動く通路のダンジョンや、致死的なパズル・ルームのような方法――で錯乱へと至ることを意図している。

 モンスターと脅威:狡猾な変身生物(アレイニアドッペルゲンガーラークシャサなど)や精神の力を操るクリーチャー(アボレスグレイロータス・ツリーなど)はサイコ・ホラーの冒険で素晴らしい敵となる。念術魔法はこの物語の中では明らかな脅威であり、記憶を歪め、意志の弱い人を完全に制御するが、被害者が知覚していたり知っていると思っていることを操作できるので幻術もある。サイコ・ホラーのストーリーの中で怪物よりも油断ならないのは、誰かの正気を損なうために陰謀を企てる日常の人々や、ストレスや妄想が制御できなくなって危険な道を歩むようになってしまった個人である――自分の家を罠に満ちた殺人の穴にする狂信者や、自分の罪は無垢な者の血でしか浄化できないと信じている狂信者も同様だ。

 基本的なプロット:動物の姿をした神の使者がPCの前に現れ、信仰上の秘密の敵を倒すように促す――しかしPCが一人っきりのときにしか話さない。PCはハグにとりつかれた悪夢に入り込んで正気を失った学者を治療する必要がある。PCは、1人の10代の少女が不可視になることができ、彼女がすること、しないこと、そして知っているかもしれないことを皆が恐れながら暮らしている町を訪れる。

 発展的なプロット:PCは、自分たちがドッペルゲンガーで完全に構成されている社会で唯一の真の人型生物らであることを認識する。デロは、何も知らない村全体の住民を誘拐し、地下深くで彼らの共同体を再作成しそこに彼らを移し替える。サーキル:パカルキは女王に宮廷魔道士が反旗を翻していることを納得させ、国全土で血塗れの魔女狩りを始めるよう導いている。

スラッシャー・ホラー Slasher Horror

 出典 Horror Adventures 197ページ
 容赦ない殺人者を無防備な犠牲者に突きつける暴力的な物語であるスラッシャー・ホラーは映画の中でも最も残忍な殺人の本拠地である。この物語は通常、武器を振り回すサイコパスの暴れっぷりと、殺害の目標が生き延びるために必死になる様子を描く。スラッシャーは普通の人間以上の存在であり、自然界の危険な力に似た原動力や不屈の精神を持っている。勇敢さと狡猾さだけがスラッシャーを倒す希望を持ち、それでもなお、普通は彼が血の海をこぼした後でのことである。

 ストーリーテリング:スラッシャーのストーリーで最も重要なものは、不可避の感覚である。犠牲者となる可能性のある者がエリアを離れてスラッシャーからから逃れることができれば、脅威は弱体化する。そのため孤立している場所は重要である。おそらくPC――犠牲者の可能性が高い――は地理的な要因(島や山中など)やひどい天候、その他物理的な要因(洪水により道が流された、PCは避けられない迷宮の中にいる)などして、孤立している可能性がある。社会的要因も孤立を生み出す可能性がある。おそらく、PCは言葉が話せず効率的に助けを求めることができなかったり、町の警邏隊が殺人者を守りたいことを知ったり、その場所にとどまる義務があったり、呪われていてその場所を離れられなかったりするのかもしれない。いずれにせよ、PCたちは物理的に克服できない脅威に囚われている。

 モンスターとの戦闘はパスファインダーRPGの非常に基本的な部分なので、スラッシャーの攻撃が単なる次の戦いとなるのは簡単である。そのとらえどころのなさ、執拗さ、そして無敵さの知覚はスラッシャーの最大の武器である。これを回避するには、スラッシャーは単なるPCが打ち負かす相手であってはならず、その敵を倒す為に戦闘以外の方法を見つけなければならない存在にすること。GMはスラッシャーと戦わせるのは難しくするべきであるが、倒すことは不可能ではない。PCは敵を倒すための道具を見つけたり、罠を準備したりする必要がある。スラッシャー(および出自)にとって意味のある物体は、戦いに役立つ可能性がある。プロットはスラッシャーを倒すためにキャラクターに離れ離れになることを推奨し、その結果敵に対して弱さを見せるかもしれない――このような状況で緊張感を高めるのに役立つ方法については、「パーティを分断させる」を参照せよ。

 代表となる武器は、スラッシャーのストーリーの強力な要素である。GMはスラッシャーに恐ろしいが比喩的でもある武器を与えるかもしれない――ヘッズマンズ・アックスや、サイズのように。スラッシャーの歴史と起源に結び付く道具やユニークな創造物も偉大な殺人の武器となる――ハープーンやダガーのような裁縫針、サメの顎が付いた鉄製のマスクなど。

 モンスターと脅威:スラッシャーのストーリーはモンスターの物語である。何がモンスターを構成するかは完全にGM次第である。特にインプラカブル・ストーカーのテンプレートを使用すると、どのような種類のクリーチャーやキャラクターからでもスラッシャーを作れるようになる。

 多くの場合、スラッシャーは暴力的な錯乱に駆られたり、残忍な目的に取り憑かれたりした殺人的な人型生物のことである。この種類のスラッシャーは、GMが気ままに振るいたいコンセプトであるかもしれない日常生活を送る者の怪物性を強調している。

 実際のモンスターも立派なスラッシャーとして作ることができる。例えばエイプバグベアゴブリンオーガキンレッドキャップトロルのように、日常の人々に似ているが一目瞭然であるようなクリーチャーは向いていない。最後に、PCにそのような敵の中に自分自身の何かを見る能力が制限されている場合でさえ、より怪物的なクリーチャーは簡単にスラッシャーとなる。明らかに怪物的な姿をしたクリーチャーではなく、ババウ・デーモンブギーマンダーク・ストーカーデナズン・オヴ・レンデュラハンのような特定の存在は適切な変装や魔法を使うことで人型生物として通るのかもしれない。またはスラッシャーの姿は取るに足らないものであり、真の殺人犯の実態はその者が持っている知性のある武器そのものである。

 基本的なプロット:寂れた田舎の宿で、数年前にPCたちが殺害した悪役の娘が追い付き、施設内の全員に一人ずつ毒を盛っていく。PCたちの旅は髑髏喰らい渓谷を通過することを余儀なくされるが、そこは侵入者に執拗に付きまとう奇妙な知性を持つ、とらえどころのない熊の本拠地である。マーシュ・ジャイアントのシャーマンが息子を殺した村の関係者を皆殺しにし始めた。

 発展的なプロット:PCは有名な殺人鬼が所持していた真紅のギャロットを発見し、それをきっかけに殺人事件が相次いだ。地下室を襲撃した数カ月後、ミイラの長が現れ、PCたちを殺そうとする。カミソリの女王として知られる悪名高きシリアル・キラーはその注目すべき血統のため王室教会を激怒させることなく殺されることはないが、PCは彼女の再犯を許すことはできない。
最終更新:2023年08月16日 01:33