紹介
「わかる」とはどういうことなのか、それが「わからない」。
じゃあ説明してみましょうか、ということでこの本が始まりました。
それなら私が「わかるとはどういうことか」わかっているのかと言えば、
「わかっていない」。「わかって」いなくても、説明ならできます。
訊かれた以上は、何か答えるというのが、教師の抜きがたい癖なのです。(本文より)
学ぶことは「わかる」の基礎になる
考えることが自分を育てる
ものがわかるとは、理解するとはどのような状態のことを指すのでしょうか。
養老先生は子供の頃から「考えること」について意識的で、一つのことについて
ずっと考える癖があったことで、次第に物事を考え理解する力を身につけてきたそうです。
養老先生が自然や解剖の世界に触れ学んだこと、ものの見方や考え方について、
脳と心の関係、意識の捉え方について解説した一冊。
八十歳の半ばを超えるまで、私は自然と呼ばれる世界を理解したかった。
若いときから、そのままでいるだけですね。
トガリネズミもゾウムシも容易に「わかる」相手ではないと思います。
本当にわかるとすれば、共鳴しかないでしょうね。
今でもそう思います。(「あとがき」より)
(本書より)
- 代数がわからない
- 情報や記号で埋め尽くされた社会
- 「比例」がわかるということ
- 脳から考える「わかる」ということ
- 体験して「わかる」こと、頭の中だけで「わかる」こと
- 心は共通性を持っている
- 通じないという前提から始める
- 世間とどう折り合いをつけるのか
- 感覚的に捉えるのが苦手な現代人
- 人疲れしたときは「対物の世界」に
- 「生物多様性」の言葉に感じる矛盾
- 人間が機械に似てくる脳化社会
- 都市化が進み、頭中心の社会になった
- 自然の存在を認めることから
- 「わかる」の根本にあるもの
- 子どもの身体性を育てる
目次
まえがき
第一章 ものがわかるということ
第二章 「自分がわかる」のウソ
第三章 世間や他人とどうつき合うか
第四章 常識やデータを疑ってみる
第五章 自然の中で育つ、自然と共鳴する
あとがき
解説
我々は、わかった気になっていることが圧倒的に多い。わかろうとして考え、身体を伴って理解しようとする姿勢が大切。しかし、わかろうとしたからと言って答えが出るわけでもない。それでも考え続けることで世界は広がっていく。結局のところ、「わかる」というのはある種「共鳴」するという感覚に近い。
最終更新:2023年11月24日 06:58