基礎固め

学習の仕方は色々あっていいと思いますが、教科書レベルの知識を逸脱して問うことはありませんから、まずは
  • ⅠAとⅡBの教科書の「例題」レベルを一通り完璧に
  • 教科書の「応用例題」レベルを完璧に
この2段階で、学習してみてください。
その際、定義からなぜその定理や公式が導かれるのか、という「原理原則の成立過程」に注目して学習することが大切です。
この発想は、理科系全般の学習にも活きますし、なんなら歴史や地理の学習にも繋がります。
表面だけ覚え、「なんで?」ということを考えずにパターン暗記的な勉強をしていると、共通テストでは本当に点数がとれません。
共通テストに限ったことでもないのですが、そもそも数学というのは
最低限の知識があることを前提に、最適解を考えさせる科目
です。
ですから、パターンを暗記していると、「その形が出てきた時」だけしか対応できなくなり、他のパターンが出てきたときに柔軟な発想ができなくなります。
よく言われる「偏見に縛られてはいけない」「先入観にとらわれてはいけない」という話と繋がりますが、与えられた情報を素直に観察し、分析することが大切です。
僕に言わせてみれば、単純なパターン暗記でしか解けない問題は数学ではないと思っています。
解決策が色々考えられ、そのなかで「どれが一番効率的か」と最適解を考えることによって時間短縮ができる問題こそが良問です。
そして、そういう問題というのは、得てして公式やパターン暗記に頼ることなく、その場の柔軟な発想で解けばいとも簡単に解けてしまうことが多いのです。

数学を「解く」という作業

数学の問題を解く時に我々が行うべき作業は、おおむね以下の4つになります。
①【分析と構造化】
問題文に示された情報を全て拾い、各要素の意味や要素間の関係を捉えます。
②【意図の理解】
出題者がどんなことを我々に求めているのか、何をさせようとしているのかを的確に理解します。
③【引き出し】
必要に応じて、自分が今まで学んできた知識の中で都合のいいものを引き出してきます。
④【実際に解く】
解答までの筋道を構築し、手を動かしながら、速く的確に解いていきます。
このうち、はじめの「分析と構造化」の作業が一番重要です。

問題文の構造化

2015年のセンター試験の数学ⅡBの第1問の〔1〕の(2)を例に、説明します。

 まず、最初に「~を求めよう。」という「目的」(テーマ設定)が書かれていることを見逃してはいけません。(空欄周辺なんかよりも数倍重要でしょう。)この段階で、この(2)の問題は、この「目的」達成のための計算行為しか行わないのです。結局最後も「このことにより、…、3点O、P、Qが一直線上にあるのはθ=…のときであることがわかる。」で終わっており、首尾一貫していることが分かります。解く前にまずはこういうチェックが出来ることが大事です。

 次に、空欄クを解くわけですが、これは、上述した「目的」のチェックを行っていなくても機械的に解けてしまいます。点Oと点Pの座標が分かっているのですから、そこから立式すればいいわけです。

 問題は、最後の空欄ケです。センターの問題では、たいてい、最後に位置する問題はレベルが高いことが多く、特にこの問題は正答率は低かったのではないかと推測します。こういう問題で落として「ギリギリ7割」、というのが初級者レベルでしょう。逆に、こういう問題にもきちんと対処する力をつけることが出来れば8割、9割を越えていくでしょう。

 この問題を解くためには、次の2つの視点が必要ではないでしょうか。

[1]「このことにより」という指示語を伴った表現があるので、直前で求めた内容を必ず利用することになる。
[2]「3点O、P、Qが一直線上にあるようなθの値を求め」るのが目的なので、そこに着地することを意識する。

 これさえ意識すれば、先ほどの図の中の「」の内容が導け出せたのではないでしょうか。ある意味、今述べたような思考プロセスというのは、「数学を現代文的に読解する」という作業であるとも言えます。目に見えている文章や数式の字面を、要素に分解し、一つ一つの要素の意味や、要素間の関係を考え、構造分析することによって、出題者の意図を探っていくのです。これは、数学のできる人が無意識にやっている作業ですから、身に付けると絶大な武器になるのではないでしょうか。

実践的解法

「問題自体への対処」という側面と、「試験の点数をどうやって最大化していくか」という側面からそれぞれ述べていきます。

❶問題自体への対処

これは問題のレベルによって話が変わってくると思います。
教科書に掲載されている問題とほぼ形が同じ問題である場合は、自分が記憶している解き方をただ実行すればいいだけですね。
注意するのは「ケアレスミス」だけです。問題文の写し間違い、約分のし忘れ、両辺を割らなければならないのに左辺しか割っていない、符号ミス、「3の3乗」を「9」と答えてしまう(←これは実際に僕がしたことのあるミスです笑)といった類の計算ミス、…など、ミスにはたいてい「パターン」がありますので、そのパターンを起こす可能性があるような計算が出てきたら「ここは絶対に気をつけよう」と意識します。

問題は、教科書の例題レベル(=基礎)と言えないような問題が出た場合です。実はこれにもいろいろあります。
A▶︎教科書よりレベルは高いが間違いなく受験数学における「典型問題」(例:確率漸化式など)であるというケース(これをAとします)
B▶︎見慣れない形をしているが何かに気付けばすぐに基本的な解法に帰結出来るケース
C▶︎捨て問並みの難易度のケース

捨て問レベルの問題は共通テストでは出ませんから、一旦ここではAとBだけ考えることにしましょう。

Aの場合は、その典型問題の解法をきちんと習得しているのであれば、先ほどの「教科書に掲載されている問題とほぼ形が同じ問題である場合」同様に取り組みます。つまり、解法自体はスラスラと頭から出てくるわけですから、ケアレスミスをしないことだけは強く意識をして解くわけです。ただ、解法を仮に習得していなかったり忘れたりしていた場合でも、諦めずに考えるようにしています。といいますのも、「レベルの高い問題であればあるほど、新しい知識は減ってくる(=頭を使えば解法が導ける)」と考えているからです。教科書レベルの問題は、解法をきちんと身に付けていないと何も手が出ないですが、レベルが高い場合は、教科書レベルの問題で学習した「基本」を応用して解法を導き出せる場合が多い、ということです。

Bの場合は、「与えられた仮定・条件をきちんと分析・整理した上で、自分がこれから求めるべき結論がどんなものかを見据え、その上で解答への筋道を考える」という見方を僕は意識しています。

❷試験の点数をどうやって最大化していくか

僕は「簡単な問題と難しい問題を見分ける選球眼を身に付け、簡単な問題で確実に点数を取る」ことを意識しております。これは共通テストであろうと2次試験であろうと基本的には変わりません。例えば共通テストの場合、どの大問も「誘導形式」になっていて、「ある問題で求めた結果を次の問題に活かしていく」という形で問題が展開していっている場合がほとんどです。そして、基本的には後の問題に行けば行くほど難しくなります。とすれば、作戦として「各大問の前半部を一旦全て片づけてしまう」といった解法が取れたりしますね。僕の場合は、それと方針は似ているかもしれませんが、「まず、その大問を手がスラスラ動くところまで解き続け、手が止まった段階で次の大問に移る。そして、最後の大問まで終わったら、もう1度戻って、手が止まったところから考え始める。」というやり方を採っております。そうすると、結果的に、センター試験であれば「微分積分の最後の面積の問題だけ落としてしまって95点」とか「ベクトルの最後の面積比の問題だけ落としてしまって95点」とか「確率の最後の条件付き確率のところだけ落としてしまって95点」とかいった具合になります。もちろん90点とか85点とかになることもありますが、いずれにせよ、「時間があったら解けたのに…」といった後悔がなくなり、自分の実力が最大限発揮出来るようになるので、僕はこの方法を採用しているわけです。
 というわけで、一応、「試験会場で入試問題を解く」という前提で、「解くうえで考えているポイント」を述べました。ただ、実際には「家で問題を解く」ことのほうが多いはずで、その際に僕が考えていることが1つだけあります。それは「難問の場合は、ひたすら時間無制限で考える」ということです。過去問演習などをしていると、ついつい「時間を計る→制限時間内に解ききる→解き終えたらすぐに丸付け」といった流れになりがちです。ただ、難しい問題であればあるほど「時間をかけると解ける」場合が多いです(これは国語や英語でも一緒です。国語や英語の場合、「知らないと解けない」という知識問題であれば時間をかけても解けませんが、「考えて解く」タイプの読解系の問題の場合は、時間をかければ解ける場合が多いでしょう)。
そこを何も考えずにすぐに答えを見てしまうのはもったいないので、僕の場合は、制限時間内に解いた後ももう少し「熟考(=じっくり考える)」するようにしています。もちろん、「これ以上考えてもどうせ分からない」と判断出来た場合や、あるいは「ここで考えるのに時間をかけていると、他の科目の勉強時間を失ってしまう」と判断出来た場合は熟考をやめます。

解けない「原因」と「対処法」

解けない原因は、おおむね以下の8つに分類されます。
1)時間があれば答えが埋まった(空欄だった前提)
2)公式や定理を覚え間違えていて、間違って適用していた
3)解き方は分かっていたが、計算ミスをした(問題文の写し間違いや、その他、約分し忘れや符号ミスなどの各種計算ミス)
4)実は教科書に載っているものと全く同様の問題だった(典型問題だった)
5)見慣れない問題ではあるが、問題文をしっかり読み込み、整理していれば解けた(注意力不足)
6)問題文を読み間違えていた/誤解していた(読解力不足)
7)難問(or出題者の作成ミス)なので、捨てても問題ない(出来なくて良い)
もしセンターよりもレベルの高い模試であれば、もう1つ次のものが加わります。
8)「教科書よりレベルは高いが、受験数学の典型問題と言える問題」で間違えた(=演習量不足)

この1~8それぞれに対する対処法は、次の通りです。
1→解くスピードを上げる。普段から、「解き方を思い浮かべる→式を立てるなどして計算→答えを出す」という一連の流れを、速く正確にこなせるように演習する
2→公式・定理をそのまま暗記するしかない場合(加法定理など)は、きちんと繰り返し演習して体にしみこませるしかない。ただし、公式・定理をしっかり証明して理屈を押さえておくことによって公式・定理が理解しやすくなる場合は、丸暗記に頼るのではなく、証明もしっかりやっておき、理解を深めておくようにする。
3→普段から、答えを出すまでの作業をきちんと自力でやる癖をつける(電卓使用禁止)。また、自分の間違いやすいパターンというのを自覚し、出来るだけ言葉にして意識しておく。
4→教科書の問題は、基本例題も応用例題もすべてきちんと繰り返し解き、定着させておく(さすがに『発展』にあたる内容はやらなくてもいいかもしれません)。
5→「見慣れない問題」の演習量を増やすために、過去問などの演習量を増やす(基礎が固まっている場合のみ)。
6→問題文を出来るだけ現代文チックに読むようにする。例えば、冒頭に「~を求めよう」という目的が明示されていたら、その問題の誘導はすべて、その目的達成のための手段として設置されているものである。他にも、例えば「したがって」「以上より」といった表現があれば、その前で求めた結果(特に直前の結果)を利用して計算をしていかねばならない。こういった点を意識してみる。
7→気にしなくてよい。反省の必要なし。
8→教科書よりもワンランク高い問題にもチャレンジし、偏差値70ぐらいの受験生から見れば「典型的」と言えるような問題をスラスラ解けるレベルまで持っていく。(知っている問題の数を増やす)

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最終更新:2024年01月02日 19:51
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