小説文といえば「心情問題」

小説文を素材として作られた問題において頻出するのが、心情問題である。
そもそも小説文とは、登場人物を何人か設定し(まれに一人のこともあるが…)、さまざまな出来事を展開させることによって、登場人物の「心情」を動かしていくものである。
そう、登場人物の「心情」が動くかどうかが、小説文かどうかの基準と言ってもよい。
したがって、小説文では「心情」を問う問題がたくさん出題されることになる。

心情の一覧

心情にまずどんなものがあるのか、一通り押さえておこう。
1)喜び・満足・幸せ
2)好き・親しみ・尊敬
3)感動・興奮
4)興味・好奇心
5)悲しみ・落胆
6)怒り・憎しみ・不満
7)困惑・焦り
8)寂しさ・むなしさ
9)恥・情けなさ
10)見下し・傲慢・冷淡
11)驚き
12)緊張・落ち着かない
13)疑い・怪しさ
14)同情
15)つらさ・苦しさ
16)真剣・熱心
17)安心・自信・誇り
19)嫉妬
19)恐怖・不安
20)後悔・絶望・罪悪感
21)感謝
22)期待・希望

表現技法一覧

心情を間接的に表現する際にしばしば用いられる、表現技法についても頭に入れておこう。

基本表現技法

1)直喩(明喩):「~ような」等を用いた比喩
2)隠喩(暗喩):「~ような」等を用いない比喩
3)擬人法:人以外を人にたとえる
4)擬音語(擬声語):実際の音をもとにした表現 (例)わんわん
5)擬態語:様子・イメージをもとにした表現 (例)ふわふわ
※4・5をオノマトペと言う。
6)対句
同じ形を繰り返す
7)反復:同じ表現を繰り返す
9)倒置:語順を入れ替える

「評言」

ⓔ 「象徴的に」:抽象的なものを具体的に表現すること
ⓓ 「躍動的に」:動きが感じられるように表現すること
ⓒ 「感覚的に」:五感に訴える形で表現すること
ⓑ「対照的に」:2つの違いをはっきり表現すること
ⓐ「写実的に」「細部までありのままに」:見たままをリアルに表現すること

※「比喩」と「象徴」の違い
(例1)白いハンカチが、純真な心を象徴している
→ 「白いハンカチ」は実際に本文に出てきている
(例2)燃えさかる炎が、彼の怒りをたとえている
 → 「燃えさかる炎」は本文に出てきていない

セリフにおける「符号」

  「…」→(+)余韻、確信 (-)ため息、戸惑い
  「!」(感嘆符)→驚き、興奮
  「?」(疑問符)→疑問、不安

心情は省略される


ここで1つ大きなポイントとなるのが、
「心情」そのものは本文に直接示されていないことが多い
という点である。

以下、具体例で考えてみよう。

  • 例えば、「Aさんは合格発表に行ったところ、不合格だった。だから泣いた」という話があったときに、このときの「Aさんの心情」はなんだろうか?
→まあ、「悲しい」だろう。(だって、「不合格」だったわけだし、その状況で「泣いた」わけだし。)
  • 例えば、「Aさんが泣いていたので、Bさんが手をさしのべた」という話があったときに、このときの「Bさんの心情」はなんだろうか?
→まあ、「助けてあげたい」「励ましたい」といったところだろう。(だって、「Aさんが泣いていた」わけだし、その状況で「手をさしのべた」わけだし。)
  • 例えば、「知らないおじさんに話しかけられたので、私はぎくりとした」という話があったときに、このときの「私の心情」はなんだろうか?
→まあ、「怖い」とか「驚き」とかだろう。(だって、いきなり「話しかけられた」わけだし、その状況で「ぎくりとした」わけだし。)

いずれの例においても、本文に「心情」が明示されていないのである。
本文には「悲しい」とも「励ましたい」とも「怖い」とも書かれていない。が、そういった心情が推測できるのである。

それはなぜかといえば、「不合格だった」「Aさんは泣いていた」のように、心情が動く「原因」が示されているからである。そしてもう1つ、心情が動いた結果として表れる「行動」が明記されているからである。

この「心情が動いた結果として表れる」ものは、行動に限らない。表情、セリフ、情景描写など、さまざまな形で表現される。

つまり、心情は
原因→心情→結果
というメカニズムの中で生じるものであり、「原因」と「行動」が分かってしまえば、心情がたとえ本文に明示されていなくても推測可能なのである。

だから、設問としても成立する。

意図を問うパターン


傍線問題の攻略のところで、理由説明問題の3パターンについて話した。そのうちの、

原因→心情→結果
 例:殴られて(原因)悲しくなった(心情)から、泣いた(結果)。

これの意味がようやく分かってもらえただろう。

心情に傍線部が引かれて「なぜか」と問われたら、原因を答える。
結果に傍線部が引かれて「なぜか」と問われたら、原因と心情を答える。
結果に傍線部が引かれて「このときの心情」を問われたら、原因と心情を答える。(原因とセットで心情をとらえることが大切)

これが攻略できれば小説文の対策はほぼ完了したようなもの。

ただ、たまに以下のようなパターンが出てくる。

大雪が降った。雪かきをした。おかげさまで歩けるようになった。
傍線部とあるが、このときの心情を答えよ。

この場合、
 原因:大雪が降った
 心情:(  )
 結果①:雪かきをした
 結果②:歩けるようになった

となりますが、この傍線部の内容が、前に例に出した「泣いた」などとは別種のものであることに気が付きませんか?

「突如雪が降って、(びっくりして、)息を飲んだ」のように、ふつうは、原因と心情と結果に時間差はないものです。しかし、今回は時間差があるというのがポイントになります。より言語化するなら、時間差のない場合は結果=反射的に起こったものですし、時間差のある場合は結果=意図的に起こした行動となります。
今回の場合、もちろん雪が降ったという出来事があったから「雪かきをした」のですが(雪が降ってなかったら雪かきできませんからね)、雪かきせずに家でゴロゴロ過ごしていることだってできるはずです。それでも雪かきをしたことには「なにか意図があるのだろう」と考え、先の展開を見る必要があります。すると「歩けるようになった」と書かれてますから、ここで初めて「外に出て歩きたかったのに、雪が降ってきて困ったから、あわてて雪かきしたんだろうなあ」などと想像ができます。(もちろん他の想像の仕方があってもいいと思いますが、少なくとも、どんな形であれ、歩けるようにしたい、という心情になるはずです。)

したがって、傍線部が
  • 原因となる状況が発生した瞬間の行動ではなく、ある程度時間差がある
  • 意図的な行動である
この2つを満たしていた場合、「先の展開を読んで意図を押さえて心情を把握する」ということになる。

心情の原因を拾う際の注意点

心情に原因を与えるのは、ふつう、客観的事象である。
したがって、誰かの行動、誰かのセリフなどから根拠を拾うとよい。
つまり、原因=外的要因である!
(Aさんの心情を聞かれたら、Aさんの心情に影響を与えたものをAさんの「外部」にあるものから考える、ということ。)

使えるテクニックとして、以下のものは知っておこう。
  • 小説はふつう、時系列で書いていくものなので、原因は傍線部の前にあることが多い。
  • 2人以上が会話していて、その中のあるセリフに傍線部が引かれた場合
 →前のセリフを押さえる(=何に対する発言なのか押さえる)

対人ベクトル

特定の誰かに向けられた心情である場合、そこを強く押さえて選択肢チェックをかけること。
これがすなわち、対人ベクトルを意識するということである。
特に、「感謝」「好意」「不満」「嫉妬」系の心情においては、対人ベクトルが明確になる場合が多い。
対人ベクトルは全部で5パターンある。
  • A→B
  • A←B
  • A↔B
  • A→周りの人
  • A←周りの人
(・Aのみ)

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最終更新:2023年12月06日 09:11