《高度経済成長~中学生に教えるとすればどうするのか》

☆学習ポイント
①そもそも経済成長とは何か
②「高度」経済成長とは、何が高度なにか。日本の場合、いつまでそれが続いたのか。
③なぜ日本は高度経済成長する必要があったのか(冷戦と絡める)
④どうすれば、高度経済成長が出来るのか
⑤日本の高度経済成長はどのように押さえればよいのか

☆前提知識

①そもそも経済成長とは何か

  • 定義
 経済成長とは、GDP(高度経済成長当時はGNP)がどれほど増えた(減った)のかを示すものである。

GDPとは、ある国が一年間で、ある国内にいる国民が稼いだ額のこと。
 GNPは、GDPの額に、ある国外にいる国民が稼いだ額も含まれる。

  • どのような流れで、GDPは増えるのか。
 大きく4つに分かれる。

 好況→後退→不況→回復→好況と繰り返されていく(景気循環)。景気循環は、中3社会で確認したほうが良い(ビジュアルの方が分かりやすい)。

景気の種類 GDPの額 GDPが増えて(減って)いるか
好況 黒字 増えている
後退 黒字 減っている
不況 赤字 減っている
回復 赤字 増えている

②「高度」経済成長とは、何が高度なにか。日本の場合、いつまでそれが続いたのか。



 高度とは、以下の2点である。

①莫大なGDPの額を生み出したのか
②①が長い時間続いたことである。



 日本では、それが約20年間続いた(1955~1973まで)。

③なぜ日本は高度経済成長する必要があったのか(冷戦と絡める)


 冷戦はアメリカとソ連と戦った…①
 日本は、アメリカの味方だった(理由はサンフランシスコ平和条約でしっかりと解説すべき)…②
 当時、日本は、軍事力と経済力が弱かった…③

①~③より、アメリカは日本に、経済成長するように、要請した。

 そこから、日本の高度経済成長をすべき理由が分かった。

 ※この時、①~③は授業での復習ということで、生徒に答えさせるのがよいだろう。

④どうすれば、高度経済成長が出来るのか(ここは重点的に解説する必要がある)。

  • 根本的な条件
 お金を儲けるには、お金を払ってもらう必要がある。ではどうすればよいか。

 ・安くものの製品を購入する(中学生には、この部分を強調づけること)
 ・物価を安定させる(高度経済成長と物価を安定させる政策はあまり出題しない(※))
 ・輸出しやすくする(この箇所も高校入試では出題されにくいが、念のため扱う)。
 ・GHQの政策が、高度経済成長にどのように関連するのかを解説する(これも出題頻度が薄いか)

 ※ 40分では、時間が足りなさすぎる。
また、地理や公民で細かめに扱われているものの、系統的に扱われていないのが実情。

  • 安く製品を購入する条件とは何か(この部分を特に重点的に扱うべき)

1原産量を手に入れる。→①栽培する or ②輸入でまかなう
2工場を設立する(大量生産するには、機械が必要)
3たくさんの人を雇う(相手を働かせる、やる気にさせる)
4製品を加工する。→①機械などを用いる(性能UP) ②作業ルーティーンを上げる ③教育により労働者の質を上げる
5大量の完成品を運搬する→①トラック、新幹線、飛行機などを活用する ②海上交通の整備
6大量に販売する→①CMなどで広める ②安売りするなど、購買意欲を高めさせる工夫をする ③円高・円安


 なお、大量生産によって安くなるかというと、以下の通りである。

 ①物の価値は、希少価値によって決まる。
 ②現代では、物の価格を決めている一因は、この希少価値である。

 ①②より、物の価格は、少なければ少ないほど、安くなる。

  • どうすれば、高度経済成長が達成できるか
 経済成長とは、要するに、お金を生み出すことである。そのためには、たくさんものを売らなければならない。たくさんものを売るには、以下の条件を効率よく行う必要がある。

 ・たくさんものを作る(大量生産)
 ・たくさんものを売る(大量消費)
  →安く、買いやすい環境が必要になる。
   例、大量生産によって値段の安い製品を作る、物価を安定させるなど
 ・お客さんに製品を買い続けてもらう必要性がある(購買意欲をあおらせる)。
  例、テレビなどを活用する、消費こそ当たり前だと思わせるなど。

⑤日本の高度経済成長はどのように押さえればよいのか

☆学習ポイント
 ・高度経済成長とは、国家主導であった。
 ・④の安く製品を購入する条件とは何かにあるチャートに合わせながら、整理すると楽になる。
 ・好況になった理由を踏まえること。
 ・景気ごとに整理すること(コンプリートには、名称がなかったのが悲しい)。
 ・高度経済成長による影響は何かを押さえること。

  • 高度経済成長の景気について押さえておく
 高度経済成長は、1955~1973年まで続いた。
 その景気は、神武景気・岩戸景気・オリンピック景気・いざなぎ景気の4つである。



  • 神武景気(1955~1957年)
 1956年には、戦前の水準まで高まった(「もはや戦後ではない」『経済白書』)。
 要因は、朝鮮戦争による特需景気(武器をアメリカに大量に輸出したため)
 主な製品は、電気冷蔵庫・白黒テレビ・電気洗濯機(総称は三種の神器)である。

  • 工場をたくさん設立
  →電気洗濯機や電気冷蔵庫や白黒テレビを大量に販売した。
  →白黒テレビを用いて、それらが生活に便利であることを国民にアピールした。
  →労働意欲がわいて購入するために、働くことになった。
   消費背は美徳だと、CMで流すことで、たくさんものを消費することに成功!

 ※経済成長するには、大量の労働者が必要である。その背景は、農地改革によって、土地が細分化されたため、農業所得だけでは、食べていけない。その生活費を稼ぐために、工場で働くようになった。
  これが、都市の過密化と農村の過疎化の背景である。

  • 岩戸景気(1958~1961年)
 ・年金制度によって、やる気向上!
 ・国民所得倍増計画を実施
「10年間頑張れば、所得が倍増し、生活が豊かになる!!」と池田隼人が国民にアピール
 →やる気がみなぎった!
 ・日本は重化学工業がさかんだったため、石油コンビナートなどを建設(※)

 (※)アメリカでは、重化学工業に力を入れていたことが背景。北九州では、石炭産業が衰退し、
   かわりに、石油産業が誕生した(エネルギー革命)。その流れで、三井三池炭鉱で、ストライキが勃  
   発した。

 ・このころ、米の食糧自給率が低迷したことを背景に、農業基本法を制定した。

  • オリンピック景気(1964年)
 ・オリンピックに向けて、建築などを大量に建設することになった。
  理由:オリンピックに向けて多くの外国人が来日する
     →宿泊施設や競技場を設立する必要がある
     →来日する外国人が快適に暮らすために、道路などをきれいにしなければならない。
 ・さらに物資を大量に運搬するために、東海道新幹線が開通し、高速道路網を整備。
 ・しかし、オリンピックが終わると、不況へ…(赤字国債を発行)。




  • いざなぎ景気(1965~1970年)
☆特徴
 ・戦後のなかで、成長率が最も高い景気(近年では、いざなみ景気が最長)
 ・GNPが世界第二位(一位はアメリカ) 
※国民所得倍増計画の計画よりも2倍以上の速度で目的を達成することに成功。
 ・高度経済成長の繁栄として、大阪万博を開催(岡本太郎の太陽の塔が有名)
  ※太陽の塔をモデルに、マンガNARUTOに登場する技の一種であるC4カルラが生まれた。
  ・このころ、カー・クーラー・カラーテレビの3Cがはやった(新三種の神器)。
  ・同時期に、ベトナム戦争が勃発し、日本はアメリカに物資を大量に輸出。

 ※日本は戦争によって、経済成長を果たしたと言える。

 ・しかし、1973年の第4次中東戦争によって、第一次石油危機(石油の価格が4倍近く高騰)が起こり、
  日本の経済成長は幕を閉じた。同時期に、先進国も不況になった。そのため、サミットで、この不況をどう乗り越えるのかを話し合った。

  • 高度経済成長の影響
 ・中流意識+公害問題が発生。

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最終更新:2023年11月22日 23:11