はじめに

ここでは、現代文の解法をすべて詰め込んだものを公開します。
現代文の読解をやっていくなかで出てくる一通りの考え方がすべて載っていますので、市販の現代文参考書はこれでもう買う必要はありません。
皆さんが今持っている参考書も、演習用には使えるでしょうが、そこに載っているテクニックのほとんどはこのスライドの内容の下位互換だと考えてください。
そのくらい、すべてを網羅したスライドになっています。

注意点

現代文に、「この解き方を使えば簡単に解ける!」そんなものはありません。
しかし、問題をたくさん解いてきた人間(特に予備校講師)は、そのノウハウを人に伝えたがります。
残念なことに僕もその一人です(自覚あり)。
半分は自分の趣味で書いています。
現役現代文講師の方のお役に立てれば、という気持ちで書いています。
しかし、受験生の皆さんには正直あまり見てもらいたくないです。
なぜなら、解答テクニックを覚えれば覚えるほど「本文を読解する」「意味を理解する」ことから遠ざかっていくからです。
もし皆さんの手元に、小学生用の国語の問題集などがあるのでしたら、解いてみてください。きっと、解答テクニックなんか使わずとも余裕で正解できると思います。
つまり、本来的には、
本文の内容が読解できれば、解答テクニックなんかに頼る必要はない
ということなのです。
数学でテクニックや解法のパターンを覚えるのはわかりますが、現代文にそれを持ち込んだところで、そもそも大学教授はそんなもの知らずに問題を作っていますし、出題者としては「この文章の内容を理解しているかい?」としか聞いていないのですから、そこに向き合うしかないのです。
よろしくお願いします。

※なお、解答テクニックを実践的な形でまとめ、さまざまな出題パターンに対応している大学受験参考書として『現代文解法の新技術』(柴田敬司)を推薦しておきます。

スライド


※一部余計なものが入っていたり、順番がぐちゃぐちゃだったりする箇所もあるので、そこについては少しずつ整理していきますから、待っていてください。


【1】科目観 〜入試現代文とはどんなものか〜

入試現代文の基本構造

★「筆者―出題者―受験生」の三角関係
  • 物書きのプロである筆者(作者)が、特有の伝え方によって、なんらかのメッセージを伝えようとして文章を書く。
  • 出題者は、筆者と同じ分かり方ができる。それを受験生に問うことで、自分たちが受け持つ生徒を選抜できる。(不合格にしてしまえば関係ないが、合格通知を与えてしまった場合、彼らを授業で生徒として受け持つ可能性があるため、授業がしづらくなる。)
  • 受験生はそれに対して「わかっていますよ」と答える。
▶入試現代文を解く作業は、筆者との対話だけでなく出題者との対話でもある
▶自分の解釈を振りかざしたり異論を提示したりするのは入試現代文でやることではない
▶入試現代文は「設問・本文・選択肢という条件設定によって『答え』を出せるようにしてあるゲーム」である

★読解力を測る基準も、「解けているかどうか」でいい
▶「解ける程度に読めていればいい」というスタンスをもとう
▶読解力を上げるというよりは、得点力を上げるという感覚が大切
▶入試現代文の勉強は(大学側を信用したうえで)原則的に過去問対策に絞る、というコンセプトでいい

入試現代文を学ぶメリット

①「アカデミック・リテラシー」が身につく
▶本が読める、大学での講義が理解しやすくなる
②多様化する現代社会を生き抜くコミュニケーション能力が得られる
▶異なる価値観をもつ人であっても、相手をリスペクトし、相手の言葉を最大限好意的に解釈したうえで、自分の意見を説得力ある形で返していくことによって、人間関係が円滑になる

過去問演習を通して学ぶべきこと

  • 正解の表現をいかに正解と悟られないようにしてあるか
  • 不正解がいかに正解からかけ離れた内容になっているか

「問題」とは

答えがすぐに悟られてしまっては問題とは呼べません。現代文に限ったことではありませんが、世の中にある「問題」にはすべて共通点があります。
★「問題=手がかり+雑音」
▶手がかりを見つけ、雑音を外すことで正解に近付ける。

【】日々の学習について 〜読解力と表現力を鍛えるために〜

読むことの大切さ=「解く技術」に走らない

そもそも、解くためには読める必要がありますから、読解力強化のために以下の2つはマストです。
★日常における読書時間の確保
★学校の現代文の授業への集中

時間無制限の精読

★辞書を活用しながら、漢字や語彙の能力を高める
★活字情報に沢山触れ、言語体験を増やす
★内容を汲み取るための技術を学ぶ
▶以上を繰り返すことで、一文ごとの意味をとれるようにまずはしていくこと。
▶ゆっくり読んで理解できないものを速く読んで理解することは無理。
▶精読にこそ、速読へのヒントがあります。

語彙の全体像

  • 漢字の知識
  • 頻出語彙
  • 英単語の知識
  • 日本史や世界史に出てくる用語や概念

辞書引きのポイント

精密な読解や、記述問題における正確な表現の使用のために、語彙への理解の精度を高めることは非常に重要です。そのためには、辞書を活用してください。巷のキーワード集では網羅性がありません。その際、以下のような事柄を意識して調べることが大切です。
  • 意味
  • 成立や由来(例)親展
  • 類義語とその差異(例)市民、庶民、国民
  • 同じ言葉を何度も引く(でないと、定着しない)
※ネットで調べる場合は、ある程度のネットリテラシーを大切に
(例)第二次世界大戦で、ドイツは破滅的な敗戦を喫した

語彙の用法の拡張

ほとんどの語彙が複数の意味・用法を持っているため、文章を読み、出会う語彙の数を増やし、地道に辞書を引くことでストックを増やし、語彙への認識を拡張していくことが大切です。
(例)「買う」
①お菓子を買う(代金を払って物を入手する)
②時間を買う(代金を払うことでなにかが手に入る)
③失笑を買う(自分の言動がもとになって好ましくないことを身に負う)

言語化能力(表現力)

言語化能力を高めることは、表現の幅を広げるだけではなく、書き手の立場に寄り添えるため読解力のさらなる向上にも繋がります。
  • SNSの活用
▶短い字数制限の中で、自分の思考を明確にフォロワーに伝える
  • メモをとる
▶徹底的な具体化を意識(論理の段差をなくす)

【2】読解とはどんな作業か

読み飛ばしは原則NG

以下のような読み飛ばしていいケースを除いて、原則読み飛ばしはしてはいけません。
  • 分からない言語(古文、漢文、英語の引用文など)
  • 趣旨を事前に把握できている場合の具体材料(具体例・引用文)

実践的読解方略

紙に書かれた文字やインクのしみにすぎない文章という素材を理解するためには、以下の6つの作業をできる必要があります。
①②③は部分的理解。④⑤⑥は全体的理解に繋がります。前者は得意だが後者は苦手(意識しないとできない)など、向き・不向きも人によって違うので、そこを自己認識することでさらなる読解力向上に繋げていきましょう。

①単語の具体化

  • 一文を理解するために、単語単位で観察してみる。
  • 時には文法的視点も取り入れる。
  • 例)財の蓄積=財を蓄積すること=お金を貯める。
 ※この「の」の格を考えた。

②文字の映像化

  • 本文の具体例や小説のストーリーなどを読み込む時に行う。
  • 文字を図像や映像にして頭でイメージする。
  • 左脳で読んでいたものを右脳に置き換える。
  • 特に小説は言語芸術なので、図式化・映像化したほうが世界に入り込める。

③リンク

  • 本文の抽象的命題に対応する具体例を知識・経験から引っ張ってくることで、自分と結びつけて理解を深める。
  • 誰かが書いた文章でも、自分との繋がりをつくると腑に落ちる。
  • 例)人間の道具への関わりは、能動的なだけではなく受動的でもある。
 →「能動的」は「する」、「受動的」は「される」、と言い換える。
  自転車に乗ることによって、自転車を乗りこなせる自分に変えさせられてしまっている。
  • これらによって得られる情報量が変わってくる。

④筆者との対話

  • 文章を読むなかで、分からないことに「どういうこと?」「なんで?」と疑問を持ちながら読む。
  • 疑問さえ持てれば、人は誰しも疑問は解消したいので、自然と答えを追跡したくなる。
  • 答えが分かったとき、脳内麻薬やドーパミンやアドレナリンが出て、気持ちがいい。もっと読みたくなる。
  • そうすることで、文章の中にグッと入っていくことができる。
  • 例)文明と呼ばれるようになった文化には興味深い共通点が一つある。
  →「興味深い共通点」ってなんだろう、と考える。そこに好奇心をもつ。その心の奥底に眠っている好奇心を前面に出そう。

⑤構造化

  • 簡単に言えば本文を整理するということ。
  • まずはフラットに読み、全要素を認識する。そのうえで複数の要素を区別し、要素間(文と文、段落と段落)の関係を確認する。最後に、反復する情報をひとつにまとめて一本の糸で繋げる。
  • 構造が分かると図式化できることも多い。
  • 本文を俯瞰し、論理関係と強弱を押さえて要約する作業だと言ってもいい。
  • ここは筆者の意見、ここは筆者が攻撃している意見、ここは具体例、というように一つ一つの要素を位置付けしていく姿勢が大切。
  • 構造化しながら読んでいると、筆者の頭の中がイメージできるので、その先筆者が語ろうとしていることが「予測」できることもある。
  • 要約の訓練をすると構造化の能力は鍛えられる。
  • 例)桃太郎
 →桃から生まれた桃太郎が、きびだんごで仲間を連れて、鬼退治をする。
 →知っている話だとキュッと要約できる。
  • 段落メモや一言まとめもおすすめ。全体の中での位置づけや論理展開が見えてくる。

⑥モニタリング

  • 自分の理解度を確認しながら読む。
  • 「大丈夫か?」「今わかってないぞ俺」
  • これができていると、わかっていないときはスピードを落としたり読み直したりして、読みをコントロールでいる。(読みに緩急・強弱をつける。)
  • アイトラッキング(視線計測)すると、現代文が苦手な人は読みのスピードが一定だが、得意な人はそうではない。それは、モニタリングの意識があるから。
  • 具体例を読むスピードをコントロールできるのも、モニタリングができているから。
  • 傍線部が視野に入ってきたら精読の質を上げる。
  • 本文に書き込むことで、手も連動させて理解を深めていく。線の引き方に正解・不正解はない。引いているうちにうまくなる。間違いを恐れずに練習すればいい。思う存分汚せばいい。ダンスは踊らなければ上達しない。
 →分かるから書き込むというよりは、書くから分かる。
  • ただし、線を引くことが目的になってはいけない。理解するために引くので、理解しているなら引かなくていい。引き方は人によって異なる。
  • 逆接の接続語に印をつけただけで満足している受験生がいる。なんのために印をつけるのか(道具の使用効果)、という目的思考をもたずに脳死でそういうことをしても意味はない。
  • 接続語はたしかに交通標識だが、交通標識だけみて運転してたら標識にぶつかって事故る。何事も、行き過ぎには注意、である。

省略の美学

文章を時には読みにくくするのが「省略」ですが、省略に気付けない人は、そもそもなぜ省略をしてしまうのかを書き手の立場に立って考えることが大切です。
  • 前後の文脈や、読者が持っていると期待している知識による「補充」が可能だと書き手が判断した際に、省略は起こる。
▶書き手がプロであれば、いくら言葉を削ってもその欠損は読み手のほうで補完可能。
  • 言葉を削ることで、①冗長にならない、②相手に考えさせるためむしろ伝わりやすくなる、というメリットがある。
(例)タピオカって面倒くさいよね。タピオカを吸い上げることだけに集中することで、ドリンクの味を楽しむことを忘れてしまうから。
(例)「私、彼氏ほしいんだよね」「俺もー」←俺も「彼女が欲しい」(「彼氏が欲しい」ではないのは誰だってわかる)

先入観は読みを邪魔する

論証責任 問題提起には答える

抽象と具体の往復

文章においては、客観性(=誤解を招かず、誰にも同じように伝わる)を保持するために以下の2つが行われます。
★抽象的に説明する。
★具体的に説明する。
(例)本は、主観性の強い世界を我々に与えてくれる。例えば、私は本を読んで面白く思ったりつまらないと感じたりする。その本の内容は私自身の中で解釈され、意味付けされるのである。だから、本の世界は主観性の強い世界である。

予測の重要性

文章を読める人が無意識にやっているのが、
★一つの文を読みながら、その文を記憶にとどめると同時に、その文に文脈上連接しうる内容を予め期待する
という作業です。次を予測させるためのヒントを与えてくれるものは沢山あります。特に、接続語は、方向指示器として有効に機能します。なお、予測は外れることもあるので、適宜修正しましょう。(きれいに考えすぎる必要もありません。)
(例)これにはいくつかの問題点がある。
(例)なぜ〜なのでしょうか。
(例)たかしは急に不機嫌になった。
  • 例)「この前行ったレストランの料理はまずかった。しかも、…」
 →店員さんの態度が悪かった、店の雰囲気が悪かった、などと予測できる。
  • 例)「一般的に」
 →一般論を述べ、そのあとそれを否定して主張を述べるんだろうなあ、と予想する。
  • 例)「科学は我々に恩恵を与えてきた」
 →科学批判になりそう
  • 例)「日本社会は〜」(助詞の「は」)
 →他の社会と比べそう
  • 「結婚生活は楽しかったですか?」「最初はね」
 →楽しくないことものちに出てきたんだろうなあ

寛容の原理

言外の意味を読み取り過ぎないことは大切ですが、書かれている通りに読み取り過ぎもしないことも大切です。
★最大限好意的に解釈すること。(寛容の原理、principle of charity、善意解釈)

強弱の把握

【強】
  • 問題意識(特に冒頭部)=問題提起(〜か)、話題提起、テーマ設定
  • メッセージ=定義(〜とは)、提言、主張
  • 筆者が強調している箇所
  (1)主観:思う、考える
  (2)強調:まさしく、こそ、べき、ノダ構文
  (3)否定→肯定:AではなくB、むしろ
  (4)要約:要するに、結局
※定義表現・・・「AとはB」「AをBと言う」「BがAである」

ノダ構文

①前文内容を読者に納得させる働きをもつ
②多くの場合は要約であり、文頭に「つまり」が補える
③傍線部の直後にノダ構文があれば絶対に見落とさない
【弱】メッセージの補強部分
  • 分かりやすく伝えるための要素(伝達要素)=外しても主張は変わらない
▶具体例、比喩、引用/言い換え/類比・対比/因果(の連鎖)
  • 主張を弱める要素(条件ロック)=外すと主張が変わる
▶譲歩(反論想定)/補足・例外

条件ロック(譲歩構文)

★条件ロックとは
筆者の本音(本論・主張)とは反する見解や視点(一般論)をあえて入れて、一旦はそれを認めるという手法をとることがあります。これを条件ロック(譲歩構文)と言います。
(例1)三木は馬鹿だ。
(例2)たしかに三木の国語の指導力は高いが、彼は馬鹿だ。(一般論への譲歩)
(例3)三木は馬鹿だ。ただし、彼の国語の指導力は高い。(例外の示唆)
➡️条件ロックを取り入れることで、主張にブレーキをかけ、文章に客観性を生じさせることができます。逆に条件ロックがない文章は単純で分かりやすいですが客観性に欠けます。
★譲歩表現は逆接とセット
たしかに(もちろん、一般的には)A(かもしれない)→だがB
(例題)私の顔は( A )暗かっただろう。( B )、気持ちは明るかったのだ。
選択肢:そして/しかし/だから/とても/たしかに/それほど
答え:A=たしかに B=しかし
※Aに「とても」が入らない理由は、以下の⑴⑵参照。
★条件ロックを用いる際の注意点
⑴一旦認めるにしても、本論に勝ってはいけない(本論で減殺されねばならない)
⑵本論よりも弱く表現する。(でないと減殺しきれない。そこで、「かもしれない」「こともある」など、強い断定調をできるだけ避ける)
⑶長すぎてはいけない
➡️これらは小論文を書く際にも有効です。

反論想定

必然性の保持(反論の防止)のためには、反論・反駁を常に意識しなければなりません。ただし、すべての反論に答えることは無理なので、ある程度優先順位をつけることになります。すべての反論は潰せません。つまり、意見というのはどこまでいっても説明不足なのです。

マーキングについて

やはり何も考えずに機械的にマーキングすることばかり集中しても、
「本文を理解する」という一番大事なことが達成できない場合があります。
例えば「しかし」の後は重要だから線を引け、と言われることがありますが、
「しかし」の後に書かれていることはなんでもかんでも重要なことだとは限らないんです。
重要なこと、すなわち筆者の主張がどれなのかというのは、接続詞などの記号から分かるというよりも、
文章を読んで、筆者が繰り返されていることが何なのかに注目することによってはじめて浮き彫りになるんです。
要するに、細部の表現に着目することによって筆者の主張が分かるのではなく、
「この段落全体では何が言いたいんだろう」というように、マクロな目を持ちながら文章を読むことによって筆者の主張が見えてきます。
ですから、そういう「マクロ」な文章の読み方を強調するような本というのが推奨出来るかな、と思います。
ただ、細部の表現に注目するという方式でもそれなりに点は取れないことはないので、仮にそういう「ダメな」参考書に当たってしまったとしても、そんなに気にすることはありません。
まずは、ある一人の先生が推進している方法論を実践してみて、ある程度の効果を出してみることが大事で、
そこから、「あと一歩伸ばすためにはどうすればいいんだろう」と考えていくことで、その先の方向性が見えてくると思います。

【】重要文法

格助詞「の」

同格表現・・・「AというB」

助詞「は」「も」

断定表現・・・「絶対」「常に」「必ず」「全く」

限定表現・・・「だけ」「のみ」「しか」「ばかり」

疑問・反語表現

中学国文法総整理


【】論理関係

水平思考と垂直思考

  • 水平思考=類比・対比
  • 垂直思考=抽象化・具体化、因果

抽象論と具体例

①話題と主張の方向性は同じ(具体例が論拠として働くケースもあり)
②言及する対象の範囲が異なる(包含関係)具体例(狭)∈抽象論(広)
※記述問題の解答に用いると説明として不十分
③伝えたいのは抽象論のほう(抽象論を押さえないと誤読を招く)

因果関係

  • 「AだからB」(Aが原因でB)(因果=右向きの矢印)
  • 「AなぜならB」(Aの原因はB)(逆因果=左向きの矢印)
(例)ライオンの「子殺し」について見てみよう。子育て中は、メスは発情しない。そこへ、別のオスが入り込むことがある。言わば家長の地位の簒奪、つまり一種王朝の革命である。革命が成功して、これまでの家長が放逐され、新しいオスがその群れを率いることになると、その群れのなかにいた子供たちは、新しい家長によって殺されてしまう、という現象がしばしば観察されている。成育中の子供たちがいる間は、メスが発情しないため、新しいオスに、交尾の機会が与えられないこと、自分とは無関係の子供たちを、大きなエネルギーを使って育て上げることは無駄と思われること、などが原因であると思われるが、ライオンの一頭一頭の個体が、そのような「計算」をした上で行動しているとは考え難い。
▶子殺しの原因として2つのものがあがっているが、そのうちの1つ目に関しては、なぜそれが子殺しの原因か分かりますか。「成育中の子供たち」がいると「メスが発情しない」、つまり交尾ができません。これは裏を返せば、子供たちがいなくなればメスは発情しなくなると言っているのと一緒です。だから子殺しすることで、発情させて、交尾しようとしているわけです。

分けることは分かること

①類比・対比(一般論と主張の対比、昔と今の対比)
②並列や追加
③限定
(例)フィクションとしての妖怪は、いかなる歴史的背景のもとで生まれてきたのか。
④場面の変化

対比

①対比とは、反対のものを比べること
②反対であるためには共通要素が必要
(例)上と下
③対比を明示する表現にまずは気付けるようにする
(例)「それに対して」「一方」など
④対比はよく設問に絡む
▶誤答選択肢(対比混同)をつくりやすい
⑤対比の一方からは他方が推測できる
⑥多くの対比は論理破綻しているが、視野を開かせてくれる

対比をつくる言葉

①差異
②否定(一般論と主張、旧主張と新主張)
③比較
④変化
⑤逆説

逆説

①逆説系の言葉を覚えよう
▶「逆説(パラドックス)」「不思議」「変」「間違い」「おかしい」「面白い」
②逆説とは「一見矛盾、実は真理」
④「本来Aなのに、実際にはB」「AでありながらBでもある」という形で説明できる

並列・追加表現

また、さらに、だけではなく、にとどまらず、も

否定文脈における理由説明

(例)不死の思想は利己的であり、よくない、人は必ず死ぬという思想こそが大切である

切り分け構造

例)教育の質を高めるためには、生徒数を減らすのではなく、増やすべきだ。といっても、ただ増やすのではない。増やすことで刺激のある場にすることが大切である。
主題 「教育の質を高めるためには」 他のテーマ
論点の限定 生徒数 他の論点 ×
一般論との対比 増やす 減らす ×
誤解の排除 増やして
刺激のある場に
ただ増やす ×
▶筆者は、多様な価値観がある中で、いくつもの価値観を「〜ではない」と排除していき、自己の主張をくっきりと浮き彫りにしていく。そういう意味で、この切り分け構造を捉えることが非常に重要。

【】設問の構造

問題の構造(読解問題全般に共通)

  • 全体の情報が多すぎる▶要らない情報やわかりにくい情報を与えて混乱させようとしている。また、先入観を与えてミスリードしてくる。
  • 筆者・作者の言いたいことなんて分からなくていい(趣味なら深みにはまってもいい)。だが、受かることが目的なのであれば、問題が取れればいい=川は浅いところを渡れ。
  • 例:谷川岳の一ノ倉沢▶危険。趣味ならそこにチャレンジしてもいいが、頂上に登るだけなら、ロープウェイとリフトを使って登った方がいい

出題者の意図を考える

  • 単に問題を解くだけの姿勢はよくない。
  • 過去問研究を通して、問題のねらいをたえず考える。何も狙っていないことはない。

「伝わる」とは?

大まかな手順

注の扱い方▶どうでもいい注も多いので目的を持って見よ

実践的解答攻略

以下の3ステップを押さえましょう。
①設問要求と条件を押さえる
②①に合わせてポイントを整理する
③明確な尺度のもとに解答する
※解答の核を強く意識する

一つの解法に固執しないこと

①我々の提示する解法は後付である
②ある程度の汎用性はあるが、反例は必ず出る
③解法はチャートではなくオプションとして扱う(杓子定規的に考えない)
④なぜそういう解法をとるのか、という原理を理解し、必要に応じて適切な解法を選べることが大切

尺度をもつこと

▶根拠を拾うというよりは、確固たる尺度や判断基準によって選択肢の正誤が判断できることが重要

傍線問題の意図

傍線部分析

■ざっくり主語・目的語・述語を把握(何が→何を→どうだ・どうする)
■指示語の指す内容は明確化
■接続語があれば前文を代入(つまり、従って等)
■語義・比喩
■時制
※見た目から内容に入る!
▶不足・不明情報について、方針を立てて探す

傍線部の位置付け

ブロックの感覚

▶設問間の棲み分け(=全く同じことは二度聞かない)を意識する。

傍線部周辺の交通標識

指示語

傍線部、空欄の中・前後の指示語→必ず指す内容をcheck!(解答に直結)
①含む一文
②前
③代入して確認
※「このように(な)」「こうして(た)」「こんなふうに」→まとめ
※①について。
 指示語が出てきたら「前を見る」が基本であるが、その前に、含む一文を読んで指示語の内容がどのようなカテゴリーの言葉になりそうか
特定したほうが効率的で探しやすい。
「含む一文」と言っても、実質大事なのは指示語以下なので、「下に続く言葉を見る」と教えてもいいかも。

逆接

プラ1の法則

選択肢のチェック法

0:選択肢を「見比べる」(一つだけ見ても仕方ない)▶共通構造を確認▶ターゲットを絞る
①即答法▶核となるポイントを一つ確定し、必要条件で選択肢を絞る。(正解が光って見える)
※正解らしい選択肢がぼんやりしている(ポイントを直接言及していない)ときは、②と組み合わせる。
②消去法▶内容不一致のものを切る
③比較法▶比較して焦点をあぶり出し、本命と対抗馬に分ける

消去法について

「消去法」とは、「明らかな間違い(キズ)を含んでいる選択肢を消していき、残った選択肢をとりあえず答えにしておこう、というやり方」のことです。
要するに、1個1個の選択肢に対して「これは本文に書いてあったかな?」というのをいちいちチェックしていくというやり方です。
まず、このやり方は、1個1個いちいち本文に書いてあるかどうかをチェックするという点で非常に時間がかかります。
そして、最近の入試問題では(センター試験でもそうです)、消去法で消していっても選択肢が複数残る場合があって、
要するに、「このキーワードが含まれていないと答えには出来ない」というポイントをつかまないと答えが出ない場合が結構あるんです。
ですから、消去法はあまり推奨出来ないんです。むしろ、「積極法」、つまり「本文をしっかり精査してそこから根拠を拾い、それを含んでいる選択肢を探す」という方式が重要であり、
そういう方式で問題を解いているような参考書を選ぶべきなんです。
つまり、選択肢の分析なんかよりも本文の分析の仕方を学ぶべきで、そういうことの説明にたっぷりページを割いているような参考書を選ぶべきだ、ということです。

誤答選択肢

①本文矛盾
②本文不在
③解答不十分(十分条件は満たすが、必要条件を満たしていない)
④解答無関係(必要条件は満たすが、十分条件を満たさない。タンコブ型)

②に関しては、以下のようにバリエーションがあり、いずれも落とし穴言葉として頻出なので、知っておきアンテナを晴れるようにするといい。
  • 本文不在の強調表現
 →100%・0%表現(必ず、全く、常にetc)
  • 本文不在の限定(だけ、のみ)
  • 本文不在の比較(~より、~の方がetc)
  • 本文不在の価値判断

誤答パターン①

誤答パターン② 本分不在の価値判断

選択肢チェックで迷ったときは…

①比較法による検討
②ポイントの有無 → 必要なポイントが入っていない選択肢は、「解答不十分」と判断して落とす
③落とし穴語句
④修飾関係の確認
⑤設問要求との対応 ex.傍線部の「理由」を問われているのに、単なる「換言」になっている等。

「どういうことか」

「なぜか」

【】設問別のアプローチ

記述問題の本質

大学側としては、記述問題にしてしまうと採点の手間がかかってしまいます。しかし、それでも記述問題を出題するのは、マーク式では問えない表現力などを問いたいからです。まずはそういう大学側の意図に寄り添い、普段から「理解したことを表現する」訓練を真摯に行っていくことが大切です。
そのうえで、「採点が大変」という大学側の現実的な事情を認識してあげてください。もちろん、マーク式問題のように「○か×か」の2択であることはなく、一定の基準により「部分点」が認められることはあるでしょう。ですが、根本、入試というのは選抜試験です。どんなに一生懸命に解答欄を埋めていても、ポイントを大きく外していたら0点にし、点差を分けるのが合理的です。となれば、
▶部分点は、大きな方向性は間違えていないが些細なところでミスを犯している人に与えられる特権
と考えたほうがよさそうです。つまり、まずは大きな方向性を間違えていないかどうかという第一関門があり、そこを通過した答案だけが採点対象になるということです。
そして、第一関門を通過したものの「不十分なところがある」答案が、採点者にとっては曲者(くせもの)です。そこに関しては、「公平性」という非常に重要なポイントがあります。つまり、不公平な採点をしてはいけない。となれば、きわどい答案が複数枚出た場合は答案同士を比較することで相対評価的に点数を決めている可能性も十分に考えられます。いずれにせよ、
▶核となるポイントを押さえ、まずは採点対象となる(=第一関門をクリアした)答案を作成すること
を意識することが大切です。

記述問題のポイント

①原則、本文中にかかれていることとその自然な延長にあると推測できることから解答をつくる
※大胆な補充を行うにしても、この「自然な」というのを忘れてはいけない。
②意味が理解できていることをアピールする(単なる切り貼りでは済まないこともある)
③過不足なく書く =情報の価値序列を意識し、取捨選択する
④表現の吟味を行う
※解答の独立性〔=誰から読んでも理解できるか〕を意識した表現のチョイスが大切
⑤適切な日本語で表現する
※見直しが重要

表現の吟味

「過不足なく」の基準

抽象度のピント

係り受けに注意

近代文語文対策

古漢融合

要約問題 要約とは

解くための4ステップ

「まとめ」の問題(筆者の主張の見つけ方)

まとめの問題には、
  • 趣旨・要旨・結論・筆者の主張(筆者の最も言いたいこと)
  • 主題・話題・テーマ・タイトル
の2タイプがあります。
①本文の最後・最初
②反復表現
③強弱(強調表現→強、具体例・引用文→弱)
※①文章の結論は最後に来ることが多い。日本人は最後にクライマックスを持ってくる傾向がある。
  次に可能性として高いのが最初。
  場合によっては、「最後から二番目の段落」のこともある。その場合は最終段落が「つけ足し・補足」であることが多い。
※②「繰り返し」=繰り返された表現・内容に注目する。特にbタイプの問題はこれでいける。
  「強調」→「~が重要(大切)だ」、「私が言いたいのは、~」。
       他にも「結局」「このように」などといった接続語・指示語。とにかく強い部分を押さえる。
※③具体例は弱い部分。弱い部分を取り除いて考える。②と③は表裏の関係。

段落分け

①場面(時間や場所)・話題の変化
②接続語(逆接・転換)
③抽象―具体
例:抽象=飲み物 具体=お茶、コーラ、コーヒー
→抽象は分かりにくい、まとめ。具体は分かりやすい。

接続語スペシャル

①しかし(逆接 ↔)、つまり(要約 =) →後ろが重要→必ずcheck!
※文中の「が」も!
※もちろんAだがB
②さて(転換 ↛) → 切る!
③だから(順接 →) ※原因→結果
④また(並列 ≠)、さらに(追加 ≠)
⑤例えば(具体例)、なぜなら(理由説明)、むしろ(言い直し)、そして(継続)
⑥~のだ(前文の説明) ※文末接続語

※①しかし=だが、けれども、でも(小説におけるセリフで頻出)、一方
つまり=すなわち・要するに
より厳密に言えば、つまり・すなわち=要約or換言。「すなわち」は換言の性質が強い。
         要するに=要約。
※②さて=ところで、では、それはさておき。会話でいうと「ってかさ~」にあたる。
 転換の接続詞が段落冒頭に出てきたら、その段落と前の段落との境目に線を引き、切る!
※③だから=そこで、したがって →因果関係を作る。直前が理由になっていることがポイント。
                 傍線部の理由を問う問題で、傍線部の直前に「だから」があれば直前が根拠。
※④さらに=それに
  並列も追加も、直前・直後が別々の内容である。
  特に並列の場合は、前後の内容が逆か同類の関係になる。
※なぜなら=というのも→文末に「から」が来やすい。絶対ではない。
 むしろ=いや→前の内容を正しく言い直す。例「大人よりむしろ子どものほうが頭がいい。」
                      「頭がさえているのは大人ではない。むしろ子どもだ。」
 そして=順接、並列、追加などいろいろな役割を持つが、前後にハッキリとした関係を持たないことも多い。
つまり、前と後がただ順番につながっている=話題継続の接続詞として使うことが一番多い印象。
接続語補充の問題で「そして」が出てきたら、最後に考える(後回し)。

脱文挿入

①脱文中の指示語・接続語・キーワード
②□前後の指示語・接続語・キーワード

※脱文中のキーワード、空欄前後のキーワードで「共通」するものに注目!
※「キーワード」は特に名詞に注目

抜き出し(書き抜き)

①条件を満たす部分を探す
②字数に合う部分を探す
※字数幅のあるもの→過不足に注意!
※「一文」=。[―。] (前の句点直後~次の句点)
※「字数幅」→例「二〇字以上三〇字以内」
 「過不足に注意」=どこまで抜き出すかを慎重に決めろ、ということ。

「接続語」の問題

①□の前後を読み比べる
②同じか逆かどちらでもないか
※「だから必ず」が入る=順接
※迷ったら… 呼応関係を優先!
※「同じ」なら要約(や換言)、「逆」なら逆接(や対比)の接続語を答える。

読点の位置

例題)貞享暦は、中国の〔ア〕の時代に〔イ〕によって作られた授時暦を改訂して、日本の実情に合うようにしたものである。(2015年センター試験世界史)
ア:元/清 イ:顧炎武/郭守敬
▶もちろん、ア=清、イ=郭守敬であるが、もし「」がなければ〔ア〕は「元」が答えになってしまう。読点の有無で答えが大きく変わってしまうのである。これは世界史の科目の問題であるが、いくら世界史の知識が豊富にあっても、現代文の能力がないとこの問題では正解に至れない可能性がある。

【】小説文について

評論文と小説文の違い

評論文の特徴 「書き方の統制」

小説文の特徴 「匂わせる、察させる」

小説の解法の特異性

なぜ「小説」が苦手か

心情の形式3種

喜怒哀楽の間接描写

間接描写を絶対視しない

心情形成のメカニズム

心情の理由は心情ではなく認識。「原因・状況→認識・評価→心情→新たな状況」という大まかなモデルを意識する。

問われやすいところ→心情の変化・交錯(アンビバレンス)

心情の正誤判断

心情の微差(同方向の心情のレベル差)

心情の持続

視点

語彙問題の解法

表現問題の解法

場面の切り分け

表現の問題

行動との整合性

本質的なところから選択肢を消す。原因と心情は表裏一体

最終更新:2024年03月15日 19:30