はじめに

ここでは、実際にChAiN指導塾の生徒に僕が指導している戦略の練り方について、具体例を混ぜながら説明していきます。米国の一部の大学では「戦略(Strategy)」という科目があるくらい、戦略的に物事を考えることは効果を発揮します。そして、その思考が身につけば、大学入学以降、論文を書くときだって「戦略的に」書いていけるでしょうし、社会に出てからビジネスを始めようとなったときも「戦略的に」考えることで最短で結果を出すことができるでしょう。
「とりあえずやってみる」のも(何も行動しない人と比べれば)悪くはないのですが、見切り発車で行き当たりばったりになるのは、空中で落ちながらパラシュートを組み立てているのと一緒です。
是非、ここから示す手順にしたがって、受験勉強の「戦略」を立てていきましょう。

①断捨離

すべてのスタートはここから始まると言ってもいいでしょう。
まずは、部屋の片付けをしてください。
え?そこから始めるの? と思ったかもしれませんが、めちゃくちゃ大事なんですよ。
よく言われることですが、「部屋の状態=頭の中の状態」です。
頭の中をすっきりさせないことには受験勉強は始められませんよね。

要らないものがあるなら、捨ててください。
それができなくても、とりあえず「すべてのモノを一旦出して、仕分ける」ということを行ってください。
机上があまりに散らかっているなら、1度それを全て床に移動させてから仕分けを始めるなど、工夫してください。
写真でイメージしたい方は以下のツイートをご覧下さい。実際に僕が生徒にやらせた机上の整理です。
【before】

【after】

どうですか?きれいになっていることがわかるでしょう。
これをやることで、心にも余裕ができます。
受験勉強は頭を使う作業ですから、心に邪念がないことが大切です。まずは部屋を片付けましょう。
その時に大切なのは、ルール(どこに何を置くか)を決めることです。
どこに何が置いてあるのか自分で全部分かるようにしてください。
でないと、片付けてもまた散らかるだけです。
そして、部屋の片付けが終わったならば、今度は
  • 不要なアプリの削除
  • 不要なサブスクリプションの解除
  • 不要なメールマガジンの受信解除
も行ってください。
これを完了させることで、これからあなたが消費してしまうであろう無駄な時間を一気に削減することが可能なのです。

②目的思考をもち、上位目的を考える

ここからは、目的や目標をどう考えていくかについて話します。
「目的」というのは「目標」の先にあるものです。
「目標」の上位にあるものが「目的」と言ってもいいでしょう。
「目的」のほうが抽象度は上がります。
例えば、「東大に行く!」という目標をもったとします。
そしたら、「何のために東大に行くのか」。これが目的思考です。
東大に受かった瞬間、目的は達成ですか?
そうではないはずです。
  • 東大という最高学歴を獲得して、周りに自慢したい
  • これまで馬鹿にしてきた奴らにぎゃふんと言わせたい(見返したい)
  • 東大でしかできない○○○をしたい
など、なにかあなたの胸の奥底にある熱い思いが湧き出てくるはずです。
これを言語化する作業をしておく必要があります。
「そんなのしなくていいじゃん、さっさと勉強始めよ!」
「別にそんなの人から聞かれることないし、推薦入試の面接じゃないんだから・・・」
と思ったあなた。そういうことじゃないんです。
もし目標の先の目的が弱いと、目標に対するモチベーションが下がって挫折する可能性があるのです。
目標をいい方向に修正するなら分かります。
例えば、東大志望をハーバード大学志望に変える、これなら別にいいでしょう。(上方修正と言います)
ですが、目的が欠如している人の場合、「なんで大学なんて目指していたんだろう。冷静に考えたら、高校を卒業した後YouTuberやって稼いだほうが楽しそうだ・・・」なんてことになりかねません。
そこまでいかないとしても、「今年はきつそうだな。浪人でもまあいいかな・・・」と思うことはあるかもしれません。
バイタリティがなくなるといいますか。
「もういいや」と、気持ちがぶれてしまうんです。
受験勉強をやっていると、つらいことが沢山あるため、ぼーっとしたときにこういう思考になりがちです。
ですが、その時になって深く考えるのではなく、今考えてほしいんです。
そのことによって、人によっては志望校が変わることもあるでしょう。
それでいいんです。
あとから軌道修正しないでいいように、今じっくり考えるんです。
高1、2の人は、焦る必要はありません。
なんなら文系・理系も決まってなくて構いません。
持論ですが、高2が終わるまでは「学校の授業を全科目しっかり受けて、選択肢を可能な限り広げておくこと」と「さまざまな価値観に触れるなかで自分の軸を固めること(自己探求)」が大切だと思っています。
学校の進路指導も舐めてはいけません。
あなたが、ベストとは言わずともベターな道に進めるように進路指導が存在しています。
できることなら、高2が終わるまでの間に、沢山の本を読んだりいろんな人の話を聞いたりして、「自分って何が好きなんだろう?」「自分って将来何をやりたいんだろう?」「どんな生き方が理想だろう」と考えてみてください。
自分の軸が固まっていると、行動にエネルギーが漲り、全力でスピード感をもって目的に向かってまっすぐに物事に取り組めます。
逆に自分の軸がぱっとしない感じになってしまうと、どうも勉強がはかどらない、という感じにならざるを得ませんし、仮に大学に受かったとしても、その後「路頭に迷う人生」が待っていますよ。
ブレない自信がある人なら、何も考える必要もありませんが、受験に成功した人はみんな「受験はメンタル勝負」と言います。舐めてはいけません。挫折するかも、というリスクを想定して考える必要があります。

※注意点※

目的と目標については、人に見せる必要はありません。自分の胸に手をあてて、本気で考えるというその姿勢が大切です。
ですから、自分の気持ちに嘘をつかないように注意してください。
例えば、東大理3をあなたが目指していたとして、その目的として
  • 研究医になりたい。
  • 最近父親が大腸がんと喉頭がんで暫く入院してたので、今は退院したがまた再発する可能性あるので、そこら辺の研究をしてみたい。
  • 未知のものを解き明かし、世に報告し、一人でも多くの患者の命を救う手助けになれたらいいなと思う。
などといったことをあげたとします。
本当にそう思ってますか?
本当は、ただ学歴がほしいだけなんじゃないですか?(それを否定しているわけではありません。)
自分の気持ちに素直になり、建前ではなく本音を言語化してください。
「その程度の目的なら、その大学じゃなくてもよくない?」と突っ込まれるなんてことはざらにあります。
(こういうふうに突っ込まれやすい環境をつくるという意味で、価値観を語り合える仲間をつくっておくことは非常に大切だったりします。)
あなた自身が自分の気持ちに素直になることで、目的の解像度が上がっていきます。
というわけで、目的を深く考えるためのポイントや観点を2つ教えます。
❶誰のために(Who)頑張るか
例えば、私立に行くか国立に行くか、を判断する際に、「親孝行」を理由に国立にする人がいます。
この人は、自分のためではなく、両親のために勉強しているのです。
あなたは誰のために勉強していますか?
❷実力をとるか、肩書きをとるか
「将来、こういう仕事がしたいから・・・」と答えてしまいがちな人は特に注意です。
その仕事が出来る大学は、おそらくいくらでもあるんですよ。
なぜその大学にしたのですか?
そう考えると、例えば「学歴がほしいから」「周りの奴らを見返したいから」などといった肩書きや錯覚資産へのこだわりが出てくるはずです。
すると、「学歴を背景にして就職の選択肢を広げたい」など、大目標の内容も解像度の高いものになっていくはずです。
もちろん、これはあくまで観点の一つです。
「この大学には○○という制度があるから」など、大学の特徴を重視する、という観点を大切にする人もいるでしょう。(ですが正直言ってこれは建前になりやすいです。)
❶や❷を踏まえることで、「自分の心の奥底にある気持ち」を吐き出すようにして目的を固めてください。
患者の命を救いたい、と言っていた理3受験生も、実際には「他の人には絶対負けないなにかがほしい」「中学受験や高校受験で失敗してきたからそのコンプレックスを克服したい」などといった気持ちが本当はあったのかもしれませんね。
目標を「なにがなんでも○○大学!」と固定する人の多くが、目的を固められていません。
大事なのは目的なはずです。
そういう長期的な視点で物事を考えることで、必要に応じて目標を変更したり、あるいは目標へのモチベーションをより高めていったりすることが大切です。
もちろん、未来のことなのでイメージが湧かなくて困る人もいるでしょう。その気持ちはすごくわかりますよ。でも、だからこそオープンキャンパスという制度もあったりと、未来のことを考えるためのヒントは沢山与えられています。学校の授業なんかもそうですよね。
そういうヒント一つ一つを大切にして、いろいろ知っていくなかで、是非あなた自身の価値観を深めていってください。そして、ブレない強固な意思を固めてください
「この目的を達成するにはこの目標を達成するしかないんだ」と、目標に必然性を伴わせることが大切です。

③戦略思考へ

さて、目的と目標は固まりましたでしょうか。
今度は、具体的な戦略を練ります。つまり、目的や目標に対する「手段」「方法」を考えていくことになります。
「東大に行きたい」とすれば、「東大に行くために何が必要か?」と考えてやることをリストアップしていきます。
大切なのは、分解するという姿勢です。
デカルトの言葉に「困難は分割せよ」というのがあります。分割することによって、物事を具体的に考えていくのです。
ここでいきなり各科目の勉強法を考え出す人がいます(あとに述べる「戦術」がそれです)が、その前にやることがあります。
それは、
科目間のバランス(どの科目で点数をとるか=どの科目を攻めに使うか)
すなわち「優先順位」を決めることです。
同じ合格点をとるにしても、優先順位や点数配分は自由に調整できます。
なんだか可能性が広がりますよね。
どの科目もすべて同じだけ一生懸命やるなんていう必要はないのです。
受験科目数の少ない大学に行く人ならここはあまり幅が出ないところにはなりますが、科目数が多い場合はここはじっくり考えてほしいところです。
そして、どの科目をいつまでに完成させ・・・というような入試当日までの大まかな計画を決めておくことが大切です。
ここまでできれば、戦略としてはOKです。

④最後に戦術を練る

最後に戦術、すなわち勉強法を決めます。
戦略を立てただけだと、ただの「口だけ」な状態です。
「○月までに英語を完璧に仕上げる!」と口にすることは簡単ですが、「じゃあどうやって?」という話になります。
「何をするか(What)」が「戦略」、「どうやってやるか(How)」が「戦術」と言ってもいいでしょう。
戦術を考える際のスタートは、学習手段(参考書、動画、テキストなど)を決めることです。
例えば、英単語の勉強はどうしましょう。
単語帳を買って覚えるか、それとも長文を読みながら出てきた単語を都度辞書で調べて覚えるか。はたまたどちらもやるのか。どちらもやるとしてもどっち寄りでいくのか。
ここまで解像度を上げて考えていくことが大切です。
特に最近は、学習方法が多様化しています。
塾・予備校で授業を受けることがすべてではありません。
また、家で独学で勉強するにしても、オンラインの教材(動画など)をベースにするのか、紙の教材(参考書など)をベースにするのかで話が変わってきます。
参考書も、その一冊を丸々完璧に覚えるくらいやり尽くすのか、それとも分からなかったときに調べるだけの辞書的存在として使うのか。
こういうのを考えていくんです。
ただ箇条書きにするだけではなく、さらにその中で優先順位を設けて「この教材を軸にして、これはサブ」というレベルまで考えましょう。
もちろん一人で考えるのは難しいでしょう。だからこそ、StudyPlaceでも各科目の学習法を詳細にまとめていますし、公式LINEという相談窓口だってあります。
自分で考えることが困難であれば、こういう情報だったりサービスだったりをうまく活用していってくださいね。

実際の具体例

実際に僕がある理系の東大受験生の勉強法を添削したものを例として紹介します。
(添削前)
  • 英語
鉄壁/core1900/速単上級/速読英熟語/vintage/ポレポレ/英文読解問題精選/英文読解の透視図/英文解釈マニュアル
→これらを使いこなしながら今まで受けてきた模試を再度、解けなかったところだけ解いてみる
→お金に余裕が出始めたら駿台模試を受ける
→9割超えたら東大英語27ヵ年+東大英語リスニング20年+今まで受けてきた東大実戦模試の復習。
  • 数学
青チャート→一対一→緑チャート
→ここまで終わった時点で共通テストの過去問解いてみる
→新数学演習→大学への数学(苦手分野かつ東大頻出の箇所のみ)→メジアン数学演習ⅠA、ⅡB→スタンダード数学演習ⅠA、ⅡB→オリジナル-スタンダード 数学演習Ⅲ
→ここまでやったら東大理系数学27ヵ年+今まで受けてきた東大実戦模試の復習(伸び悩んだら青チャートに戻る)
  • 物理
物理のエッセンス+良問の風+リードα物理基礎・物理の3冊を一気にやり込み、原理を理解する(教科書も併用)
→共通テストの過去問(最低8割はとれるようにする)
→重要問題集→名門の森
→新・物理入門問題演習(駿台)で記述式答案の書き方を学ぶ
→東大の物理27ヵ年+今まで受けてきた東大実戦模試の復習
  • 化学
DOシリーズ+リードα化学基礎・化学(教科書も併用)
→共通テストの過去問
→重要問題集
→化学の新演習
→(余裕があれば)新理系の化学100選
→東大の化学27ヵ年+今まで受けてきた東大実戦模試の復習
  • 現代文
入試現代文へのアクセス3冊
現代文と格闘する+現代文読解力の開発講座
→また、図書館で小説を借りて活字慣れする
→共通テストの過去問の評論と小説を50分間で解いてみる
→9割超えれば、東大の現代文27ヵ年+得点奪取現代文
  • 古文
読んでみて覚える古文単語315
→ステップアップノート
→富井の古文読解をはじめからていねいに
→望月光古典文法講義の実況中継
→Z会古文上達基礎編
→元井太郎の古文読解が面白いほどできる本
→共通テストの過去問
→東大の古典25ヵ年+得点奪取古文
  • 漢文
早覚え速答法
→ステップアップノート
→共通テストの過去問
→東大の古典25ヵ年+得点奪取漢文
  • 倫理、政治・経済
超基礎がため倫理、政治・経済教室
→赤本から解いてみる(分からなかったらすぐ答えを見る)
→出題された分野は黄色本に付箋で印をつけておく。また、正解の選択肢はそのまま覚える
⇓⇓⇓⇓⇓⇓⇓
(添削後)
◎数学(何よりも優先):4〜6月
一対一→共通テスト過去問→大学への数学→東大過去問
  • 物理:7月
物理のエッセンス→共通テスト過去問→重要問題集→東大過去問
  • 化学:8月
DOシリーズ→共通テスト過去問→重要問題集→東大過去問
  • 英語:9月
鉄壁、速読英熟語、英文読解の透視図→共通テスト過去問・東大過去問
  • 現代文:10月前半
入試現代文へのアクセス→共通テスト過去問→東大過去問
  • 古文:10月後半〜11月前半
読んでみて覚える古文単語315→望月光古典文法講義の実況中継→元井太郎の古文読解が面白いほどできる本→共通テスト過去問→東大過去問
  • 漢文:11月後半
早覚え速答法→共通テスト過去問→東大過去問
  • 倫理、政治・経済:12月
超基礎がため倫理、政治・経済教室→共通テスト過去問

まず、「戦略」として考えた優先順位とバランスを意識して具体的な学習期間を盛り込みました。もちろん、実際は、複数科目を並行で進めることもあるので、あくまで目安ですが、これを記入することによって、時間のなさに気付きます。
(だから高1、2から勉強を始めていたとしても、始めるのが早かったというだけで、戦略なしにやっていたら高3になって結局周りに追いつかれます。)
あまりに無駄なものが多かったので、削って大事なものに絞ったらこれだけシンプルになりました。
あれもこれも、と言って参考書を足していく人は結局中途半端になって自滅します。
(模試も一緒です。あれは試験会場というものに慣れるためのもので、演習材料としては過去問で十分網羅可能です。)
ですが、絞りに絞って一冊を完璧にすることができれば、それだけ基礎が強固なものとなります。逆に二冊目、三冊目と増やしたことで混乱を招くということもあります。
よく「多面的な思考を養う」ために二冊目以降を勧める先生とかもいますが、かえって混乱を招きますし、インプット中毒になるだけです。第一、参考書の著者は誰しもが「これ一冊で完璧になる」ことを期待して網羅的に参考書を作っているわけですから、それを完璧にしたら、いち早く過去問を解いて、たくさん間違えていく中で新しい思考を養っていったほうが効率的です。また、もし参考書にない知識が過去問に出てきて調べたくなったら、ネットで少し調べれば出てくるでしょう。軸となる知識が入っているからこそそのような小回りのきかせ方ができる、という感じです。

科目ごとの計画例

私大志望などで科目数が少ない場合、1科目あたりにとれる時間が長くなります。この場合はより精密にスケジュールを組んでいったほうがいいでしょう。以下の例は、StudyPlaceのコンテンツを中心に英語を2学期から取り組んだ人の例です。
  • 9月~10月
 ①英文法の講義動画15回分を週2ペースで視聴し、復習も完璧に行う
 ②単語と熟語をひたすらやる
  • 11月~12月
 ①長文読解の講義動画15回分を週2ペースで視聴し、復習も完璧に行う
 ②共通テストの過去問を解き、9割以上に安定させる
 ③単語、熟語、文法もしっかり回していく
  • 1月~2月
 ①慶應法学部の過去問演習
 ②単語、熟語、文法もしっかり回していく
 ③文法の細かい知識も増やしていく

StudyPlace式の戦略的学習手順

ここでは、StudyPlace一本で学習したい人のためのおすすめコースを提案させて頂きます。
①数学:論理的思考力を手に入れる。特に、モデル化の能力を養うことによって、複雑な物事を単純化して捉えられるようにする。
②現代文:数学で得た論理的思考力を活用しながら読解力と得点力(出題者の意図を汲み取る力)を身につける。
③英語:①と②の能力を駆使し、効率的に言語学習を行う。
④古文、漢文:③で得た言語学習力を活かし、効率的に学習する。
⑤理社:これまで得てきた論理的思考力をフル活用して最強のインプットを行う。
ざっとこういう流れです。
理社に関しては科目選択が人によって異なるため、個々人によって話は変わってきますが、「古文▶日本史」「地理▶世界史」「数学▶物理」などの科目間の内容的連結を意識するといいでしょう。

まとめ

いかがでしたか?
まず断捨離して環境をつくったうえで、
目的▶︎目標▶︎戦略▶︎戦術
の順に組み立てていきましょう。

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最終更新:2023年12月14日 16:17