はじめに

情報化によって、受験勉強をするにあたって必要な情報は無限に手に入るようになりました。しかし、その一方で、情報の渦に飲まれて行き場を見失い、成果に繋げられない受験生も続出しました。結局のところ、
①情報を活用する力(=自分に軸をもつことで、他の情報に振り回されず、本当に大切なものだけ吸収できる力)
②コミュニケーション能力(=人に質問・相談するなどして「頼る」ことによって自分の成果に繋げる力)
が大事になってきます。
この中でも、今回は②に注目します。
頑張っているように見えて「できない」受験生のパターンで一番多いのが、
質問(相談)はするけれども、質問(相談)の仕方が下手
というものです。これでは質問した「フリ」で終わってしまいますし、その質問がその後の有意義な勉強に繋がりません。
そこで、今回はこの「質問(相談)」のあり方、やり方について改めて考え直していきたいと思います。
「質問」と「相談」を区別するのも面倒なので、ここから先は「質問」の一語でまとめて表現していきます。

大原則①:質問は、自分の不足を埋めるための行為である。

たまに「なんのために質問に来たの?」と思わざるを得ない人がいます。
目的のない行動に意味はありません。
先生と仲良くなるためのものではありませんし(結果としてそうなるかもしれませんが)、本命は「自分の成績UP」です。
これを本来なら自力で成し遂げたいところですが、自分にはどうもその力がない。何もしないと学習が停滞したり、現状維持でいくと学力が下がる恐れがある。
そういうネガティブな感情(これを僕は「不足の感覚」と呼んでいます)を解消するために質問するわけです。
(ですが、これは最終目的ではありません。これについては大原則②をご覧ください。)
ですから、本来は質問がないほうが理想なんです。
学校の教育の影響なのか、「質問することはいいことだ」「質問する人は優秀だ」みたいな風潮があるかもしれませんが、決してそんなことはなく、「質問せずとも平気な人」のほうが順調に勉強が進んでいると言えます。
もちろん、学習がめちゃくちゃ進んでいるからこそ壁にぶつかり、質問ができている、というパターンもあると思いますが、どんな壁にぶつかろうと自力で物事を考えられる人のほうが強いに決まっています。
それでも自力では解決できないことが世の中には沢山あります。
だからこそ人に頼る――これが質問のあり方です。
自力でやって考えまくったけれども「自分の力ではどうにもならない」と思うなら質問すればいいし、どうにかなっているなら質問する必要はなく、これまで通りに順調に進めていけばいいのです。
別に質問を「するな」と言っているのではありません。
自力でできないことを自覚していながらも質問できずに抱え込んでいる・・・という人を見るとそれはそれでもったいないと思いますし、人生の時間は限られているのですから「周りの人をうまく使えばいいのに」と率直に思います。
その一方で、質問の目的や方向性が分からず「なんとなく質問して終わっている」という受験生がいるのも事実です。
わりと当たり前のことを書いてきたつもりなのですが、受験生とコミュニケーションをとっていると、どうもこれが分かっていないように見えることがあるので、改めての確認でした。

大原則②:質問よりも後の行動を重視する。

人に頼るのが苦手な人が沢山いる中で、大原則①を踏まえて、自分の成長のためにどんどん人に頼ろう、というマインドになれたらそれはそれで素晴らしいことです。
人に頼るのがうまい甘え上手な人はその分多くの情報やアイディアを享受できて前に進んでいけるでしょう。
成長に貪欲なのはすごく大切です。
しかし、質問しているうちに時間が何時間も経ってしまった――これでは本末転倒なのわかりますか。
皆さんは、自分の理解不足を埋めたり、自分では考えつかないような勉強法に関するアイディアや知恵もらったりするために質問・相談するわけです。
そのスタンスは間違っていませんが、では、質問・相談が終わり、皆さん自身の中にあった「不足の感覚」が解消されたらもうそれでいいのでしょうか。
そんなことはないですよね。その先に「得たヒントを使ってさらに行動を前進させる」ことを意識しなければなりません。
ですから、何が言いたいのかというと、「質問している時間」を大切にしてください。
特に、LINEなんかで文字を使ってやりとりしているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
相手から返事がもらえて、回答してもらえる環境というのは素敵な環境なのですが、なんとなく時間の限度はあるものだと思っておいたほうがいいです。
あとの大原則④でも述べるのですが、一つなにかヒントを得たらそれだけで爆進できる感覚が大事だと思いますよ。

大原則③:質問は「具体的に」「明確に」行うものである。

質問は出来るだけ「具体的に(くわしく)」「明確に(はっきり)」しましょう。
これについては具体例を使って説明します。
  • 例1)「現代文ってどうやって勉強すればいいですか?」
 →こういう質問はタブー。絶対にしないこと。答える範囲が広すぎて、1からすべて説明するのはさすがにこちらとしても面倒。(1冊の本と同じぐらいの長さに…。)ネットで探せばいくらでも情報が得られるのだから、ある程度の情報を得て、どの勉強法がいいのかなあと考えをめぐらせて欲しい。質問するのはそれからだ。
  • 例2)「学校の先生が、△△という勉強法を勧めてきたのですが、このやり方に関して先生はどう思いますか?自分はこれだと○○なため、不充分なんじゃないかなあと思ったりするのですが。」
→例1よりは数倍マシな聞き方である。こういうふうに、「質問する前にちゃんと自分は考えましたよ!」という跡を示してくれると、非常にありがたい。テーマも限定されているし、その人の思考の跡がこちらかもはっきりと分かるので、こちらとしても答えやすい!
  • 例3)「ついこの前模試を受けてきたのですが、現代文が100点中38点でした。どうすればいいですか?」
→例1とまったく同じ。その人が今までどういう勉強の仕方をしてきたのかをそもそも知らないし、その上「38点」の内訳が分からない(「どこで点がとれたの?」と聞きたい)から、答えようがない。だから、まず、最低限の内訳が分かるようなものを写メでも撮って見せなさい。そして、自分自身でしっかり分析・考察して、その結果もちゃんと綴りなさい。さらに、自分自身の目標(どこが出来るようになりたいか・何点まで伸ばしたいか)も書きなさい。そこまでちゃんと書いてくれて初めて、こちらもまともな回答が出来るのだ。

  • 例4)「三木先生の現代文の動画の「△△△」について、質問です。そもそも、○○っていうのは…(以下略)」
→動画のタイトル(=「△△△」)をちゃんと明示してくれたのはありがたい。ただ、動画内の何分何秒のところの説明に対して聞いているのかも書いてくれるとありがたい。「動画の「△△△」の、6:25のところで先生が言っている「○○」っていうのは…」としてくれると助かる。さらに、動画のURLまで貼り付けてくれるとなお良い。(ここは必須とはしない。)

大原則④:1つヒントをもらったらそれを膨らませる癖をつけるべきである。

本能のままに質問を無限にし続ける人がいます。
その貪欲さや、周りを活用できるマインドは素敵なものだと思います。
しかし、どうなんでしょうか。
それが本当に結果に繋がっているならこちらとしても嬉しいですし、どんどん質問してほしいなと思ったりもするものです。
ですが、残念ながらなかなかそういうケースはないんですよね。
本能のままに何個も何個も思いつくように質問していけば、論点も散らかっていくし、一つ一つの項目に対する理解が薄くなります。
だいたいそういう人は、(本当に僕の「個人的」な印象ではありますが)質問したことで満足してしまって、行動しません。
これでは大原則②に反しますよね。
際限なく質問をしてしまう人におすすめの考え方があって、それは「1を10や100に膨らませていこう」という考えです。
自分の中の疑問点や謎のすべてに対して回答を与えられるというのは非常に気持ちがいいものです。
ですが、人間には「想像力」という素晴らしい機能がついているので、なにか一つヒントや手がかりを得たら、たとえ答えが明確に言語化されていなくても、そこから「たぶんこうやればいいんだろうな」という「想像」ができます。これ、人間にしかない、めちゃくちゃ大事な力なんですよ。
また、これは「ヒント」に限らず、なにか「答え」を与えられた場合も一緒です。優秀な人は、与えられた「答え」を複数の場面に当てはめます。まさに、1与えられただけで10や100の物事を解決させてしまうのです。これは人間に与えられた「抽象化能力(さまざまな事象に共通点を見出だせる力)」の賜物(たまもの)です。
この「当てはめ」の範囲が狭いと、その分うまくいかないことも増えて、また質問してしまいます。でも、教える側からすれば「あれ、それこの前教えたつもりなんだけどな・・・」となります。このすれ違いは、教わる側の受け取り能力に問題があります
ですから、高校1年生や2年生の人は、焦らないでほしいと思っています。前に進みたい、少しでも受験勉強において優位に立ちたいという気持ちは分からないでもないのですが、受け取り能力が足りていないと、受験勉強中苦労します。
では何をすればいいのか?――日々いろんな人とコミュニケーションをとって、少ない言葉から多くを想像する練習をしてください。この「いろんな人」というのが大事で、「いつもの友達」と「いつもの話」ではダメですよ。部活で優秀な先輩やコーチに関わりにいくというのは一つの賢いやり方ですし、学校の先生で仲いい先生を複数つくって深い議論をしてみるのも面白いですね。もちろん、対面という感じではありませんが読書も非常に有効です。
ふわっとした話に聞こえたり、何を言っているか分からない人もいるかもしれませんが、想像力が大切であるということを信じて今日からコミュニケーションのとり方を変えてみてください。

さいごに

時代の状況もあり、受験勉強というのは単なる情報戦ではなくなりました。昔は、臥薪嘗胆で「机に向かって何時間も勉強した者勝ち」みたいな感じでしたが、今の時代は「勉強すればいいってもんじゃない」という感覚が個人的には強いです。
だからこそ僕はChAiN指導塾という塾をつくりました。勉強を始める前に、根本的な考え方を改めて、勉強に対する姿勢を変えていくことができれば、量に見合った成果が出るものだと思っています。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2023年12月07日 06:03