2018/3/18(日)代ゼミオープンキャンパス @代ゼミ本部校(代々木) by富田一彦
①4月から浪人するにあたって
どうも、代ゼミの英語科講師の富田一彦と申します。今日は体験授業ということで皆さんに集まってきてもらっているわけですが、なんでこんなことをやっているのかといったら…まあ、簡単に言えば「ビジネス」ですよね。来年度、たくさんの講座を皆さんにとってもらうためにこうやって授業するわけです。この中には、初めから代ゼミには行かないという人もいるかもしれません。しかし、せっかく1時間ここで授業を受けるわけですから、少しでもプラスになる何かを持って帰っていただけたらと思います。時には厳しい話もあるとは思いますが、頑張って聞いていただきたいと思います。
一応、英語の授業ということなので英語の話もしますが、最初に少し、勉強の話をしようと思います。ここにいる皆さんの多くは、4月から浪人生としてもう1年、受験勉強をすることになります。ということは、皆さんはついこの前の試験で不合格になってしまったわけです。そして皆さんの多くは「反省」というのをするんですね。その中で、世界で最も甘ちゃんな反省として、「『勉強』が足りなかった」というのがある。「努力が足りませんでした」という反省。
もしかしたら、皆さんの中には「あと3点で受かってたのに…」という人もいるかもしれない。しかし、絶望的なことではありますが、先に言っておきます。その人があと1年、どんなに努力しても合格には至りません。皆さんは長さ95cmの紐なんです。あと5cm足りない。そのときに、その紐をいくら引っ張っても5cm伸びることはない。せいぜい95.2cmとか95.3cmになるだけ。そう、いくらやっても足りない。だから、成功する確率は波より低いんです。これまで積み上げてきたものにさらに継ぎ足そうとしても、絶対に足りないんです。
しかし、1つだけこの状況を打開する方法があります。紐というのは何本かがからまってできています。そうすると、それが変に絡まっていたりする可能性があるかもしれないんですね。それをいっぺんほどいてあげて、もう1度より直していき、素材の糸が100cmを超えていれば、なんとか皆さんは受かることができます。しかし、これはあくまで「賭け」です。より直していっても100cmに満たない可能性もあります。だから受かる保証はどこにもありません。それでも頑張る勇気のある人は頑張ってほしい。
今の糸の例で分かりにくかった人のために、他の例を出しましょう。シャツのボタンをしめていくことを考えましょう。あなたは下からボタンをつけていきます。そしたら上のところで1個ずれました。さあ、あなたはどうしますか?もちろん、ボタンを一旦とって全部組み立て直しますよね。それ以外の方法でズレを直すのは無理です。
皆さんがこれからどの塾に行こうが、残念ながらこの状況は変わりません。こうした絶望の中で少しでも希望を見出すとすれば、今私が話したような決意と覚悟を持つことが必要なんです。
よく、「一人一人に合わせた指導」なんて言いますが、そんな指導できるはずがありません。こっちはスタンダードに授業しているのだから、君たちが我々に合わせてくれるしかありません。まあ確かに、東大の総長が「規格品になるな」と言っていましたが、これは規格品を超えた人材になれ、ということでしょう。
もう1つ、スポーツの話をしましょう。例えばテニスで、○○(忘れました)という技が全然身に付かなくて、コーチのところに相談に行きました。「どうすれば○○ができるようになるんですか?」と。するとコーチはこう言うでしょう。「○○をやる前に、まずはランニングをしっかりしないと。」つまり根本からやり直さなければいけない。その決意と覚悟が皆さんには必要です。
4月から皆さんは予備校で授業を受けることになると思います。そこでは、学校ではなかなか聞いたことがないような話を聞かされます。最初は違和感があると思います。当たり前です。が、まずはそれを受け入れてほしい。それができないと結局去年と同じ結果になる。だから我々は、授業をしていて4月5月が一番苦労するんです。
②授業開始 ~「問い」とは~
ところで、こんな話ばかりしててもしょうがないので、そろそろ授業に入ろうと思います。その前に、「問い」について改めて考えてみたいと思います。皆さんがこれまでの人生で義務としてやってきたことは「問題を解く」ことです。世の中にある問いは、どんなものでも2つのパーツで出来ています。さあそれはなんでしょう?まあこれは本にも書いたことなので分かる人もいるかもしれませんが…。
今こうやって「問いは2つで構成されている。さてなんでしょう」と聞かれて全く頭に答えが浮かばない人は問題です。今までの人生でずっと問題を解いてきて、その意味が分かっていないんですから。だからあなたは95cmの紐なんです。「問題」の意味をきちんと考えないとダメ。
ではそろそろ言ってしまいたいと思いますが、問いというのは「手がかり」と「雑音」で構成されています。「手がかり」というのは当然、正解を導くもの。そして、「手がかり」には2つの性質がある。1つは「明確」であること。手がかりがあいまいだったら答えが出ない。そしてもう1つは、これは「客観的」と言ってもいいんですが、まあそれだと分からない人もいるでしょうから…「誰が見ても同じ」であること。答えは1つに決まらないといけないから当然のことです。例えば、センター試験を考えてみましょう。センター試験の「国語」の問題は、これまで1度もクレームが来たことがないんですね。それは手がかりがちゃんとしているからです。
しかし、問いは手がかりだけだと「易しい」ものになってしまいます。みんな受かってしまう。そこで、雑音を入れるんです。もう分かると思いますが、「雑音」というのは解答者を惑わすものです。だから、当然、問いの難易度に表れてきます。雑音が大きければ大きいほど問いは難しくなり、小さければ小さいほど簡単になる。
例えば、ベートーベンの交響曲第5番の「運命」の最初のところで、弦楽器がたくさん鳴っていますが、1つだけ管楽器が鳴っていることを皆さんはご存知ですか。これ、普通に聞いてたら気づきません。じゃあ、それに気づくためにはどうすればいいか?簡単なことです。弦楽器の音を止めればいいんです。そうするとクラリネットの音が聞こえます。そしてこれが手掛かりです。つまり弦楽器が雑音だったわけです。まあ、実際には雑音ではありませんが…。だから、雑音を取り除いてしまえば手がかりがはっきりするわけです。
また、雑音がほとんどないような例もあります。「おいしいのは○○○コーラ!」というCM、ありますよね。当然、この「○○○」には「ペプシ」が入るわけですが、この宣伝をする彼らにはどんな意図があるのかと言えば、ペプシコーラを買ってもらいたいという意図があるわけだから、これは雑音をあえてゼロにしているわけです。
さて、ここで私が高校生のときにはやったクイズをやってみましょう。この問題は、高校生のときにはやったもので、実にくだらない問題です。では問題です。「新大阪を出た新幹線は、東京に向かう?博多に向かう?」。そんなの、どっちもありえるじゃないか、と思うかもしれませんが、これは「東京に向かう」が答えです。もう1回言いますが、この問題は私が高校生のときにはやったものなので、実にくだらない問題です。「新大阪を出た新幹線は、東京に向かう?博多に向かう?」。さあどうでしょう?いつもならこのあたりで受講生の8割ぐらいがニヤニヤしやすんですが、今年はみんなポカーンとしていますね笑。では最後。もう1回言いますが、この問題は私が高校生のときにはやったものなので、実にくだらない問題です。「新大阪を出た新幹線は、東京に向かう?博多に向かう?」。これで分かりましたね。「下らない」から下りではなく上り、つまり東京に向かうわけです。ふざけんな!と怒ってる方もいるかもしれませんが笑、まあ聞いてください。
今出したこの問題、手がかりは明確ですよね。「くだらない問題」と言っているわけですから。しかし、私は問題を言う前の前置きの中でこの「くだらない」という言葉を使い、しかもそこには「高校生のときにはやった」という雑音が入ったので、そのせいで皆さんは「くだらない」を普通に「しょうもない」という意味だと捉えたわけです。これが「問い」というやつなんです。
②プリントの問題その1【アリの問題】
では、時間もあまりありませんから、プリントに載っている問題をやりましょうか。アリの問題ね。これは実際にある中学校で出題された入試問題です。皆さんにはぜひ、これを解くときに思考実験をしてほしいんです。「この問題が解けたら志望校に行けて、もし解けなかったらその志望校には二度と行くことが出来ない」と思ってやってほしい。よく「本番は模擬試験のように気楽に受けろ」と言う先生がいるが、どう考えてもこれは無理ですよ。どの問題を解くときにも命がかかっていると思って解くべきです。例えば、皆さんは、高さ100mのところにひもでつるされたところがあって、ひもの上に立てと言われたら、無理でしょう。みんな「怖い」と思います。しかし一方で、サーカスを毎日やっている人は、高さ30mの崖に置いた板の上を歩くことは平気でできる。その理由は単純。毎日それに近いことをサーカスでやっているからです。だから、普段から本番に近い状態で練習をしなさい。
そして、問題を解くときに大切なのは、「根性」ではなく「根拠」です。だじゃれじゃありませんよ。「根拠」というのはもちろん「手がかり」のことです。手がかりが見つかれば解けるようになっています。さて、これで考える時間も十分にあげたと思うので、実際にやってみましょうか。(板書)
まずこの問題は、「アリのように」というところが最大の雑音です。みんな、「『アリのように』っていうのはどういうことだろう」と考えてしまうんですが、「アリのように」の意味なんて分かるわけありません。だってこの文章は自分以外の人間が書いた文章なんですから。それなのに多くの受験生は「アリのように働く」というのが何なのかを考えてしまう。これは時間の無駄です。他人の言っていることなんて分かるわけがない。
そこで、下線部以外のところから手がかりを探すしかない。そうするとここに「しかし」があって、これが最大の手がかりです。これは注目した人も多いことでしょう。そして、「しかし」は逆接だ、ということも多くの人が知っているでしょう。じゃあ逆接って何ですか?当然、逆のことしか書けない、ということでしょう。でも君たちはそれしか知らない。逆接は逆のことを書く、ということしか知らない。それが、皆さんが95cmの紐になった理由です。
逆接は確かに逆のことを持ってきますが、そのためには共通点がないといけない。例えば「右の反対は?」と言われたらもちろん「左」しかありませんが、なぜ「前」じゃダメなんですか。これに明確に答えられますか。そんなこと考えたことない、という人ほどちゃんと考えなさい。「右」と「左」の共通点は何?それは、「横方向」だということです。
じゃあ、今回の場合の共通点は何かといったら、「働く」という言葉が共通している。そしてこっち(2番目のほう)の「働き」の前には「三分の一だけ」という言葉がついていて、これが「アリのように」と対応している。しかし、「三分の一だけ」という数字は客観的な情報を示すだけでそれが何を意味するかはここでは分からない。そこで後ろを見ると「三分の二は遊んでいる」と書いてあるから、ここと比べてやれば、「三分の二」は「長い」、「三分の一」は「短い」と分かる。そうすると逆になるから「アリのように」は「長い」と分かるわけだ。
だから答えはイになります。もちろん、多くの人がこの問題を正解したことでしょう。そして、ぼんやりと私が今解説したようなことを頭でたどって解いたという人もいるでしょう。しかし、ぼんやりしたものは本番では全く使いものになりません。我々の仕事は、それを誰が見ても「圧倒的な」証拠にすることなんです。
③プリントの問題その2【1980年東大】
さて、では次の東大の問題にいきましょう。これは1980年の、かなり古い問題です。とりあえず読んでみましょう。(音読)さて、この下線部を和訳せよというのが問題です。受験勉強をするときには皆さんは「テクニック」とか「ポイント」というのを習うので、皆さんはこれを見るとすぐに「部分否定だ!」と思って、「私はすべてを言うつもりはない」と訳したりするんですね。受験テクニックとか、本当にくだらないことするなあと思いますけどね。
この問題で聞いているのはこれです。(板書:How are you? I am fine.)この前、ある高校に見学に行って、全学年の授業を見ました。確か、高2→高1→高3の順だったと思います。そしたら、どの学年も「How are you?」に対して生徒たちがみんな口をそろえて「I am fine.」と言っていたんですね。そして3回目のときに、みんなが「I am fine.」と言っている中、私が「I am terrible.」と後ろから言ってみたら笑、スタッフに引っ張り出されて廊下で注意されたんですよね。
まあそれはいいとして、「How are you?」と聞かれたら「I am fine.」と答える。これは、皆さんにとってはただの約束事です。やっていることはオウムと一緒。しかし、ここから我々は2つのことを学んでいます。1つは、「疑問文が来たら直後には答えが来る」。そしてもう1つは、「疑問文と答えでは同じ主語・動詞を使う」。今回もそうでしょう。「are you」だから「I am」。
このことを知っていましたか?そう、君たちは何も勉強していないんです。じゃあ今回なら、「I won’t say everything.」の前に「What do I forget?」という疑問文があります。ということはこの下線部が答えになっているはず。しかし、「I forget」に対して「I won’t say」と答えているので、SVが違う。
ここで皆さんはもう1つ考えなければならないことがあります。そもそも、会話というのは同じ表現のやりとりです。そして英語では、2回目以降は代名詞や代動詞に変えたり、一部を省略したりできます。だから、「How are you? I am fine.」なら、「I am」を省略してもいいんです。とすれば、今回の問題なら、「I forget」が下線部の中に省略されていると考えることができる。そして、Howと聞かれたらfine、と形容詞で答えるように、Whatと聞かれていれば名詞で答えるから、「everything」がそれにあたるはず。だからその前に「I forget」を入れてやればいい。そうすると今回の答えは「私は何もかも忘れる、と言うつもりはない」となる。確かに部分否定と言えば部分否定ですよ。しかし、私は何もかも「忘れる」と言うつもりはない。「忘れる」という言葉が訳語の中に入っていなければなりません。
こういうことを東大は聞いてくるんです。これは30年以上前の問題だし、今はこんなこと聞かれないでしょ、と思っている人。冊子の中に挟まっているB5サイズのプリントを出してください。
④プリントの問題その3【2018年東大】
これは今年の東大の問題です。さあ皆さん、解いてみてください。(板書)
さて。まずこういうお話文における雑音は、セリフとセリフの間の地の文です。そこを取っ払ってセリフだけ見ていくと分かります。まず誰かが、まあ誰か分からないのでAさんとしましょう。「I’ll go.」と言った。それに対してBさんが「You can’t. You just can’t」と言った。ここでも同じ形の反復になっていて、YouはIと一緒だし、can’tの後ろにはgoが省略されている。そして「I need you to help…」と言った。もちろんこれは第5文型。そしてAさんの発言があって、最後にBさんが「You know good and well I do.」と言っている。これは基本的なやつで、動詞が2個あると接続詞が1個足りないので、ここ(wellとIの間)にthatが入る。そしてこの「do」というのは代動詞というやつで前に出てきた動詞を受けている。そしてその動詞が( )の中にあると考える。そうすると答えはもちろん(c)。
つまりこういうことだ。「行ってくるね。」→「行っちゃダメ、行っちゃダメ。明日家のことで君に手伝ってほしんだ」→「いや、やだよ」→「それが必要なのは君ならよく知ってるだろう。掃除をしなきゃいけないんだよ。」
だから、30年経っても聞かれることは全く変わらないのさ。
⑤プリントの問題その4【慶應大の文法問題】
あと少し時間が残っているので、プリントの左下の問題をやりましょう。これは慶應大学の問題です。(板書)
この問題で一番やっちゃいけないのは、選択肢の中身を全部( )に入れて訳すことです。そういう解き方をした人は、問題文を見てないんです。選択肢には、すべて共通して「course」という単語が入っている。じゃあ、courseについて君たちが知っていることは何?「通り道」とか「コース」とか思った人は見当違い。それよりもまず、couseが数えられる名詞だということに気付かなければならない。そして、このcourseにはsがついていないから、今回は単数で使われている。ということは冠詞が必要。しかし冠詞がない。そうすると、その説明を満たしてくれるものを空欄に入れればいいわけだ。そうするとwhatが答えになると分かるはず。「what+役割のない名詞」のとき、名詞は「無冠詞」でないといけないというルールがあるからだ。
⑥最後に
さて、最後に勉強について一つ言っておきましょう。4月から私の授業を受けるという人は、単語を覚える前にまずは文法をしっかりとやっておいてほしいと思います。例えば「courseって何?」って言われたら「数えられる名詞」とちゃんと言えてほしい。英語の属性をしっかり覚えてほしい。君たちが学んできたものは、所詮、長さ95cmの紐にしかなりません。しかし、それをほどいて一からより直す勇気のある人は、ぜひ頑張ってほしいと思います。こちらは絶対の自信を持っています。我々は決してぶれることはありません。
いろいろ話してきましたが、これでも私は皆さんにとって先生です。だから1年後には成功してほしいと思っています。しかし、これから君たちが登っていく山はとても険しく、登っていくのはとても大変です。が、我々はその登り方を知っている。だからそこは先生としてしっかり教えていきたい。あとは、頭をリセットする勇気をもってきてほしいです。曖昧な気持ちではこないでください。
今後私と二度とこの場で会わない人もいるでしょうが、今日の内容が少しでも皆さんの勉強のプラスになればと思います。それでは、さようなら。
最終更新:2023年12月06日 08:36