はじめに

ここでは、整序英作文と言って、バラバラに並んだ単語を並び替えて正しい英文を組み立てるタイプの問題について、その解法を解説していきます。

解法の着想に至るまで

 現役時代、塾の夏期講習で「慶大英語」の講座をとりました。この講座を担当している先生の授業は、どの大学を志望するかに関係なく有益なものだったからです。それで、この授業で「整序英作文の解法プロセス」が完璧に書かれたプリントが配られました。そのプリントには、[1]から[9]までぎっしりとプロセスが書いてありました。最初はそれに従って(それを見ながら)問題を解きました。しかし、うまくいかないんですよねえ。5問中2問しか当たらない、といった具合。そこで、気付いたわけです。高3の間、1年間を通して思っていたことでもありますが、

あまりに固定化された解法に頼りすぎると、うまくいかないことがある

ということです。なんていうんでしょう、視野が狭くなって、臨機応変に対応するという「柔軟性」が失われてしまうのです。そこで、今回自分で解法を作る際、意識したことは「解法を固定化しすぎない」「解法のプロセスを出来るだけ少なめにする」ということです。

 その結果、僕の解法はシンプルに3段階にまとまりました。今回は、その3段階のプロセスについて、どうやってプロセスを作り出したかということと一緒に、記憶をたどりながら書いていきます。

 以下は、2014年センター試験の問題です。

Dan:How did your health check go?
Mike:Not bad, but the doctor ( )( )( )( )( )( ).
選択肢
1)advised 2)exercise 3)get 4)me 5)regular 6)to

 ある程度英語に手をつけた受験生であれば、「直感」で解けますよね?「the doctor」が主語なので、「医者が○○した」という文を作ろうと思えば、「advised」を動詞に設定出来、「advised A to do」という熟語から「advised me to get」と組み立て、あとは、なんとなく響きが良さそうな「regular exercise」をくっつけて完成です!そう、解法云々言わなくても「なんとなく」で解けてしまう。こういう問題が近年センター試験に出ているのです。「exerciseは動詞の可能性もあるから…」なんて突っ込みを入れる余地すらもないのです。

 このような「直感」は整序英作文を解く上で重要なものだと僕は考えます。やはり出来る人は、選択肢を見た瞬間に「この語とこの語はくっつくな」ということを一瞬で判断して文を組み立てます。そこで、第1のプロセスを

①与えられたものから出題者の意図を把握する(文法事項、熟語・語法、構文)

と設定しました。選択肢を見て「出題者は何を聞いているのかなー」と思考をめぐらす、というだけですね。しかし、難関大ということになれば、これだけでは解けなくなるでしょう。あるいは、簡単な問題であっても、入試本番では「緊張して熟語を度忘れした」といった状況も起こり得るでしょう。そういうときに備えて、2つ目のプロセスを考案することにしました。つまり、「ひたすら文法の力を頼りにしてネチネチ考え、パズルみたいに語と語を組み立てていく」ということです。「ネチネチ…」っていう感覚、なんとなく分かりますよね?笑 ひたすら論理的に攻めていくわけです。ということで、

②各語の働きを意識し、いくつかの「カタマリ」を作る

これを2つ目のプロセスとしました。しかし、選択肢の語を1個1個に対して機械的に「役割」を定めていくのでしょうか?これはさすがに非効率的ですね。優先的に「この語から調べよう」というのがあっていいはずです。これは、誰が考えても大体一致すると思うのですが、やはり「つなぎ言葉(接続詞・関係詞・疑問詞)」と「述語動詞」でしょう。そもそも、1つ目のプロセスで答えが出せないほどの難しい問題といったら、それはたいていは「文が長い」場合でしょう。例えば、この問題。

 (2014年青山学院大学教育人間科学部の問題。)
 U.S. Sales of new DVDs fell by 20 percent this year; ( )( )( )( )( ) a prolonged recession.
選択肢(使わないものが1つある)
(1)behind (2)due (3)is (4)it (5)lies (6)what

 どうですか?選択肢を見た瞬間、答えが組み立てられますか?選択肢(2)のdueを見て「due to」を連想し、toがどこにもないので(2)は「使わない語」である、と確定するのは簡単なことです。大事なのはそこから先なのですが、すぐに答え出ますか?……厳しいですよね。だって、述語動詞が2つもあるからです(「is」と「lies」)。述語動詞が2つあるということは、SVの組が2つあるということに他なりません。ここに気付いて「面倒くさいな」と思って「考えることを放棄」してしまう受験生も多くはありません。そんな受験生に対して「まずは優先的にこの語句に注目してみよう」という視点を与えるとすればなんでしょうか?と言われれば、やはり、「つなぎ言葉」ということになるでしょう。つまり選択肢(6)の「what」に着目すれば、その周辺にどんなSVを置こうかと思考をめぐらすことが出来るわけです。What節は「名詞」の働きをしますね。空欄直後には既に「a~recession」といういかにも目的語や補語になりそうな名詞がありますから、What節は「主語」と位置付ければいいでしょう。この時点で、「What+動詞(is/lies)を含む不完全文」+「動詞(is/lies)」という構造が完成するでしょう。「つなぎ言葉」やその周辺に来る「述語動詞」に注目すれば、簡単に文全体の構造が俯瞰出来る状態になるわけです。そして、次に考えることは、述語動詞の周辺に来て文の主要素として働く「名詞」でしょう。名詞は必ず「S・O・C・前置詞のO」という4つの役割しか果たしません。ですからこれを確定させればよいでしょう。あとは、名詞に付随する形容詞や冠詞を決定し、最後に副詞(文の主要素には含まれない、言ってしまえば「どうでもいい」やつです)を設定しておしまいです。ということで、2つ目のプロセスにおいては、

処理すべき語:(1)つなぎ言葉 (2)動詞 (3)名詞 (4)形容詞 (5)冠詞系 (6)副詞

という6つを順に考えていくとうまくいく、ということを提示しました。もちろん、上記のような「なぜこういう優先順位になるのか」という説明もちゃんと授業内で行いました。機械的に(1)→(6)を丸暗記しても意味ないですからねぇ。

 さて、解説自体の続きを書いていきましょうか。上記の傍線部の続きからです。isとliesはそれぞれ、どっちが左側、どっちが右側に来るでしょうか?「what it is lies…(それが何であるかは、…にあります)」ではよく分かりませんから、おそらくliesは左側、isは右側に来るでしょう。そして、lieという動詞は「lie in a bed」のように前置詞が後ろに伴いやすいですから、「lies behind」という形を想定。この時点で、「what ? lies behind ? is」まで完成し、後は「it」を2箇所の「?」のどっちに入れるかを考えればおしまいです。しかし、Whatは後方が不完全文になればよいので、「what it lies behind(前置詞の目的語が欠落)」であろうと「what lies behind it(主語が欠落)」であろうと文法的には問題ないのです。さあ、ここで手が止まってしまいますね。ここから先に進むためには、また何か「別の武器」が必要になってくると思うのです。……それが、「文脈」です。自分が組み立てたものを訳してみることで一歩前進するわけですね。ということで、

③文脈から内容を推測

これが最後のプロセスになります。このプロセスに限っては、どのタイミングで取り入れてもいいと思います。そもそも、「まずは空欄周辺の文を読んで、空欄に入りそうな内容を考えてみる」という解法をとっている人も多いはずです。ちなみに僕は、現役のときは、問題によって変えていました。センター試験の問題の場合は選択肢を真っ先に見て解答を作り、東大の問題の場合は文章を一読して空欄に入る内容を予測していました。いずれにせよ、「文脈判断」という視点を取り入れるのは重要です。

 さっきの問題に戻ってみましょう。上記の傍線部のところまで思考が進みましたね。ここで、itを入れる場所を勘で考えて「間違った!」ということになってしまえば、今までの努力は水の泡です。

 まず、itの入れ方が2通りありますが、前者でいくと「それが~の後ろにある」という前提、後者でいくと「~がそれの後ろにある」という前提が成り立ちます。では「それ(it)」とは何でしょうか。指示語は直前の内容を指しますから、それをチェックすれば、「U.S Sales of new DVDs fell by 20 percent this year」つまり「DVDの売り上げがダウンした」というネガティブな内容だと分かります(これ、完全に読解問題を解くときと同じ作業ですね)。では、「;」より先はどういう内容にすべきでしょうか?「;」が補足説明を行う記号であることと、空欄直後に「a prolonged recession(長引く不況)」という語があることに着目すれば、「;」以下では「売り上げダウンの理由(社会的背景)」を述べていると推測できますね。ここまでくれば、「behind」という単語が「~の後ろにある」という物理的イメージではなく、「~の背後(背景)にある」というイメージで捉えればよいことも分かります。「~の背後(背景)にある」の「~」の部分には「売り上げダウン」という内容を入れればよいですから、「it」を代入することができます。よって、「;」以下の文は

what lies behind it is a prolonged recession.
「それ(売り上げダウン)の背景にあるものは、長引く不況なのです。」

となるわけです。

 いかがでしたか?たくさんの解法プロセスを丸暗記して問題を解くよりも、上記の「出題意図を探る→語の働きに着目→文脈判断」という3つの視点を順に追うって解こう、と意識したほうが気が楽になりますよね。しかも解法が縛られすぎていない分、柔軟に考えることも可能になってきます。

解法

 改めてまとめます。

①与えられたものから出題者の意図を把握する

▶①文法事項 ②熟語・語法 ③構文

普通は、選択肢内に重要な知識が含まれている。でないと、出題する意味がないだろう。「重要な知識」は①~③が基本である。これを見つけたら、優先的にそこから組み立てていけば基本的に答えが決まる。見つける際には、選択肢内の語句だけでなく、「空欄の外側の語句」や「日本文」(ない場合が多いが)など、与えられたものは漏れなくチェックすること。近年のセンター試験の問題、そして私大の問題には、この作業だけで答えが決まる易しい問題が非常に多い。が、「知識不足」だったり「問題自体が難しい」ということになれば、次のプロセスに進んで欲しい。

②各語の働きを意識し、いくつかの「カタマリ」を作る

▶処理すべき語:①つなぎ言葉 ②動詞 ③名詞 ④形容詞 ⑤冠詞系 ⑥副詞

①だけで解けない問題は「難しい問題」ということになるだろう。並び替え問題で難しいものについては、「パズル」のように分かるものから片づけていくのが基本。従って、選択肢内の「処理すべき語」を順に見ていき、いくつかのカタマリを作っていくとよい。処理すべき語の優先順位は上に挙げた通りで、やはりまずは①を優先的にチェックしておくべきだ。これがあれば前後に「V」が2つ必要なわけだから自動的に②のチェックに入れるはず。「V」が確定すればその前後に置くべき「S」「O」「C」「前置詞+名詞」も決まっていくだろう。こうして文の骨組みを中心に確定させ、後はそれらを支える⑤や⑥をどこに入れるかを考えればなんとか解答が完成させられる。①~⑥それぞれ
の働きとそれを踏まえた処理の方法については、以下に具体的に書いておく。
①つなぎ言葉⇒「接続詞」「関係詞」「疑問詞」のこと。述語動詞の数ー1=つなぎ言葉の数を意識すること。
②動詞⇒「述語動詞[V]」「準動詞[V']」のこと。準動詞=toV・Ving・Ved。
③名詞⇒「S」「O」「C」「前置詞のO」として働く。すべての名詞に役割を与えよ!
④形容詞⇒「名詞を修飾」「Cになる」のどれかの働きを必ず持たせること。
⑤冠詞系⇒「冠詞[a/an/the]」「所有格[my/Tom's/..]」「指示形容詞[this/that/..]」のこと。名詞をくっつけること!
⑥副詞⇒「名詞以外を修飾」する。基本的には動詞を修飾する。一番最後に決定することになるだろう。

③文脈から内容を推測


難関大学となると、②までのプロセスで答えが決まらない、ということがよく起こる。つまり、「文法だけ」を利用して英文を構築しようとすると「こういう文も作れるしこういう文もあり得るし…」というように、複数の答えの可能性が考えられてしまうのだ。そこで自信を持って答えを確定させようと思ったら「意味を考える」ことが必要になってくる(この視点は①や②で取り入れても可)。自分が候補として作った複数の文それぞれを訳し、意味が合いそうなものを選べばよい。東京やかつての慶應(商)のように、長文中に空欄が設置されている場合は、「本文を読み、空欄に入る適切な内容を予測する」という読解問題を解くときと全く同じ視点で処理していくことも可能だ。

演習

 では、実際に練習してみましょう。題材は、先程紹介した青山の問題です。(1)は先程扱ったものと同じなので、改めておさらいで解いてください。

問 2014年青山学院大学教育人間科学部Ⅴ 想定時間:5分
次の1~5の文について、〔 〕内の語の順序を入れ替えてもっとも適切な英文を作りなさい。その際、(2)と(5)に入る語をそれぞれ一つずつ選び、解答欄のその数字をマークしなさい。ただし、不要な語を一語除いて、すべての語を一度ずつ使うこと。

(1) U.S. Sales of new DVDs fell by 20 percent this year;
( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) a prolonged recession.
〔①behind ②due ③is ④it ⑤lies ⑥what〕

(2) I feel very disappointed every ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 )( 5 ) ( 6 ) ( 7 ) in the street. People should have good manners.
〔①cans ②empty ③I ④leaving ⑤people   ⑥see ⑦time ⑧up〕

(3) It is true that ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 )
( 7 ) their self-confidence.
〔①a ②abroad ③as ④build ⑤challenge ⑥helped ⑦on ⑧taking〕

(4) Currently, non-native speakers ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 )
( 5 ) ( 6 ) ( 7 ) ( 8 ).
〔①comes ②English ③it ④native ⑤outnumber ⑥speakers ⑦they ⑧to ⑨when〕

(5) Everyone except us knew that the schedule changed a couple of days ago. It is a great pity that ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) ( 7 ) us.
〔①anything ②between ③either ④no ⑤of ⑥one ⑦said ⑧to〕

★☆解答☆★
(1) U.S. Sales of new DVDs fell by 20 percent this year;
⑥What ⑤lies ①behind ④it ③is a prolonged recession. (不要語:②due)
◎訳:アメリカでの新しいDVDの売り上げは、今年、20%下がった。その背景にあるのは、長引く不況である。
◎「due」は「due to」で使うことが多く、今回は選択肢に「to」がないため、一旦不要語だと判断して進める。
◎「lie」は「ある」。直後にinが来やすいが、ないので「behind(~の後ろに)」を置く。
◎「a prolong recession」が売り上げダウンの原因を言ったものであると捉え、「その原因は…」という文を作ることを試みる。すなわち「What節 is ~」という構造になることを推測。
◎「その原因」=「その背後にあるもの」と考え、What節内を完成させる。

(2) I feel very disappointed
every ⑦time ①I ⑥see ⑤people ④leaving ②empty ①cans in the street. People should have good manners. (不要語
:⑧up)
◎訳:私は、人が道に空き缶を捨てていくのを見るたびにとても落胆してしまう。マナーをきちんと守るべきだ。
◎「every」の直後に来そうなものは、選択肢中では「time」ぐらいしかない。「every time SV」で「SVするときはいつでも」である。
◎「cans」は、sがついていることから、助動詞canではなく名詞のcan(「缶」)であると考える。
◎知覚動詞seeを「see+A+B=AがBしているのを見る」という形で用いればよいことに気付く。

(3) It is true that ⑧taking ⑦on ①a ⑤challenge ②abroad ⑥helped ④build their self-confidence. (不要語:③as)
◎訳:外国に行ってさまざまな挑戦をすることがその当人の自信を身につけるのに役立つというのは、本当である。
◎buildは対応する複数形主語などがないことから、述語動詞ではないと判断。
◎述語動詞はhelpedしかありえない。
◎「help 人 原形」=「人が~するのを助ける」を想起。(「人」は省略可。)
◎「take on A as B(AをBだとみなす)」でつくるとうまくいかない
◎asを一旦不要語と判断し、asの置き場所を考える。
 →「take on」か「build on」か?
 →「build on」にして「自信に基づいて何かを築く」とするとよくわからない。
 →「take on」で組み立てていく。
◎「take on a challenge」で「挑戦する」であるが、マイナーな熟語である。
 ※「take on ~」だと、「手にとって自分にくっつける」ことから、「~を引き受ける」という意味。

(4) Currently, non-native speakers ⑤outnumber ④native ⑥speakers ⑨when ④it ①comes ⑧to
②English. (不要語:⑦they)
◎訳:最近、英語に関して言えば、非母国語話者のほうが母国語話者よりも数を上回っている。
◎「outnumber」=「~の数を上回る」は知っておかないと厳しい。
◎「when it comes to~」=「~のこととなると」も組み立てられるだろう。

(5) Everyone except us knew that the schedule changed a couple of days ago. It is a great pity that ④no ⑥one ⑦said ①anything ⑧to ③either ⑤of us. (不要語:②between)
◎訳:私たち以外はみな、2日前にスケジュールが変わったことを知っている。私たち二人に誰もそのことを伝えてくれなかったのがとても悲しい。
◎「anything」があることから、否定文か疑問文を作る。→noの活用。
◎「either」は「(2つのうちの)どちらか」。「either of us」のカタマリをつくる。
◎動詞sayの語法を考える。選択肢にtoがあることから、「say 事 to 人」の形を想定。

最後に

 いかがでしたか?
 解法それ自体はいたってシンプルですが、難しい問題はやはりネチネチ考えざるを得ません。ですから結局、文法知識がモノを言います。ただ、それにとどまらない、新しい視点も提供したつもりですから、しっかり頭に入れて今後過去問演習に挑んでくださいね。
P.S.知り合いに、東大英語で120点中110点を超えた帰国子女の友人がいるのですが、「お前なんでそんな英語できるの?」という問いに対して「ん?まぁ…響き?w」と答えていたのを思い出しました。これが理想なのでしょうねぇ。

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最終更新:2023年12月08日 07:46