解答・解説
◆問二
- 具体的事例が傍線部直後に2つあがっており、それを答案に活かすのが基本路線。
- 「精神医学」に限定していることを考慮し、「精神医学の特色」を、ネガティブ・ケイパビリティの定義から考えてみる。→精神医学は、人の内面を扱うため、正解が得にくい、つまり、症状に対する手の打ち方が簡単には分からない。だから、効果が上がらないのは、マニュアル的な対処の仕方では、効果が上がらないから。
精神医学に則り、患者の病状に応じて適切な治療を施したとしても、再発し重症化したり、治療効果が現れない事例のように、病気の完治ができない事態を招きうるということ。(80字)
◆問三
- 「必要/大切」の理由説明。
- ネガティブ・ケイパビリティを身につけるメリット、あるいは身につけないデメリットを考える。
- 身につけない「デメリット」として、「分かろう」とすることによる弊害が述べられている最後のほうをよく読んでおく。
- そうすると、「『分かった』つもりの理解が、ごく低い次元にとどまってしまい…」という表現がある。ここから、ネガティブ・ケイパビリティとは逆の状態、つまり「すぐに答えを出そうとする」状態について、正確に把握でき、いくつか表現の仕方を考えることができる。
本質に到達するためには、短絡的な(or思索なき)理解に陥らないことが大切だから。
本質に到達するためには、即断せずに考え続けることが大切だから。
↓
①本質に達するのに即断の姿勢は邪魔だから。(20字)
②本質に達するのに短絡的理解は邪魔だから。(20字)
OR
③短絡的な理解では本質に到達できないから。(20字)
④思索なき理解では本質に到達できないから。(20字)
OR
⑤性急な理解は本質への到達を阻害するから。(20字)
◆問四
- 「著者のことなどどうでもよくなった」理由。
- 理由の出発点は、傍線部に明示されている。「ネガティブ・ケイパビリティを知ってからは」とあるので、ネガティブ・ケイパビリティが理由と関係することは明確。
- 直後の段落で、「ネガティブ・ケイパビリティという言葉が、その後もずっと私を支え続けています」とあるので、ネガティブ・ケイパビリティが筆者の行動原理となっていることが分かる。ということは、ネガティブ・ケイパビリティという考え方に基づけば、著者のことなどどうでもよい、という理論になるはず。
- 答えを出さないでおくことで、本質に至ろうとする、というのがネガティブ・ケイパビリティの考え方。その考えに則れば、「著者のこと」は、本質に至るうえでは些末な情報、ということになる。本文の言葉で言えば、「生半可な意味づけや知識」。
ネガティブ・ケイパビリティが筆者の行動原理となったことで、生半可な意味づけや知識と言える著者の人物像を、論文の本質的理解を阻害するものと考えるようになったから。(80字)
ネガティブ・ケイパビリティが筆者の行動原理となったことで、生半可な意味づけや知識と言える著者の人物像を遮断し、論文の本質的理解を目指すようになったから。(76字)
◆問五
- 「裏返しの能力」とは、物事の処理能力。
- 「困難」な理由は、「なぜならヒトの脳には…『分かろう』とする生物としての方向性が備わっているから」と、明確に説明されている。
- 「必要」な理由は、「マニュアル化」には「落とし穴」があるから。
- 「落とし穴」の中身としては、理解の次元が低い次元にとどまること、理解が誤っていれば悲劇が深刻化することなどを押さえる。「悲劇」の中身は、これまでの文脈から、「対象の本質に到達できない」ことだと類推できる。
「裏返しの能力」である物事の処理能力は、目の前の事象に対し性急に意味づけを図ろうとするヒトの脳の傾向に沿うものだが、ネガティブ・ケイパビリティはそれと真逆の方向性をもつため、修得・発揮が困難である。また、物事を的確かつ迅速に処理する能力を磨いても、熟慮の伴わない短絡的な理解により、本質への到達を阻害する恐れがあるため、ネガティブ・ケイパビリティが必要となる。(180字)
最終更新:2023年12月06日 07:39