問題


講評

いかがでしたか。
複数テキストの問題もあり、読解問題のマーク数も例年より一つ多く、大変だった人もいたかもしれません。
ですが、「例年通り」、根拠が不明確で解答が決まらないような問題は一問もありませんでした。
ですから、内容的に理解できたかどうか。理解の精度の高さが結局は得点力に直結します。
もちろん、試験時間という制約の中で全問題を解答しきらなければいけませんから、「100%完璧に」理解する必要はありません。
特に、今回のような空間論というのは、抽象的な概念も多く登場するため、実感をもって理解できないことも多いものです。
しかし、そういう場合であっても、キーワードを字義通り脳内にインプットすることによって、解答を出すための最低ラインは超えることができます。
(空間論をもう少し読めるようになりたいなという人は、2008年・2011年のセンター過去問に是非チャレンジしてみてください。)
実際、僕自身、実感を伴う形で心から理解できたのははじめの問2の子規の説明箇所のところぐらいです。
それでも、傍線部の周辺文脈の「要点」や「キーワード」をざっくり意識し、きちんと自分の頭の中に尺度をつくってから選択肢に飛び込むことによって、正解が瞬時に目に入ります。
特に問6の(i)(ii)に関しては、「本当にこの選択肢でいいのかな・・・?」と不安を抱きながらマークし、速く解くことを優先しても10分でこの大問をすべて解答し終えました。
その後10分かけて見直しましたが、解答を直すことはありませんでした。
何が言いたいのかというと、共通テストらしく学力のミニマムを問えるように作られているというのは例年通りであり、解くにあたって変にひねくれる必要はないということです。具体的に言うならば、
  • なにか外部から特別な知識を引っ張ってくる必要もありませんでしたし(問5で「観照」という二字熟語が出てきましたが、知らなくても対応は十分可能でした)、
  • 仮に二択で迷ったとしても明確な基準が一切ないということもありませんでした。(問6の(i)は本文に戻っての検証がやや面倒ですが、見るべき部分をしっかり見れれば、判断は容易でした。)
ですから、試験時間と出題数に応じた現実的な読解スピード・読解精度で最低限のポイントをインプットし、出題者の意向や誘導にしっかり乗ることができれば全問正解することは無理ではありません。
今回も解説の中で、
  • 「どの程度まで」内容を押さえればいいのか
  • 「どうやって」解答に必要なポイントを整理するか
といったことを中心にお話します。
世間に出回っている解説サイトも一通り見ましたが、特に、問6をなんの戦略もなしにいきなり選択肢に突っ込んで消去法を使っているものが多くて衝撃を受けました(もちろん、空欄問題になっているので、空欄を含む文章はみんな読んではいると思いますが)。
「消去法」は否定しませんが、なんの尺度ももたずに「とりあえずおかしいものを消していく」姿勢よりは、解答に必要な要素を予めイメージしたうえで違和感のあるものを消していったほうが速いし確実です。
是非そういうところも意識しながら、解説をお読み頂けたらと思います。

解答

問1 (i) (ア)① (エ)③ (オ)② (ii) (イ)④ (ウ)③  (各2点)
問2 ③ (7点)
問3 ② (7点)
問4 ⑤ (7点)
問5 ③ (7点)
問6 (i)④ (ii)② (iii)③  (各4点)

解説

では読解に入ります。

まずリード文ですが、考察内容が2つあり、【と】で繋がれています。何と何を繋いでいるか、しっかりチェックしましたか。リード文を舐めたらいけなくて、こういうところを精読することが全体で見たときに大きな時間短縮になります。今回は、
正岡子規書斎にあったガラス障子【と】建築家ル・コルビュジエ建築物における
こんな感じですね。

そして、「引用文中の(中略)は原文のままである」の意味が分かりましたか。これは、出題者が意図的に略しているのではなく、筆者がもとから略していたんだ、ということを意味しています。こういうのを理解するためには、問題に解き慣れていくなかで、「そもそも入試問題に出される文章は出題者に加工されるものだ」、というデフォルトを押さえておく必要があります。切り取っての出題、中略、傍線部や空欄の設置、注の設置、ルビの設置、表記の変更・・・こういうものがあって問題は「つくられて」いるんです。それでも今回の「(中略)」はもとからあった中略ですよ、と出題者は言っているのです。

さて、【文章Ⅰ】の第1段落に入りますが、こんな冒頭から早速傍線部が設置されるのもなかなか珍しいです。しかも、一見すると「え、ここに傍線引いて何を聞くの?」という感じです。傍線部自体に難しい言葉は全くなく、文字通り、「子規」が「季節」や「日々の移り変わり」を「楽しむことができた」のです。何によって楽しんだか?もちろん、ガラス障子、ですが、そんな自明なことを補わせるような問題をここでつくるでしょうか。

それまで紙の障子だったものが、ガラスの障子に変わったわけですよね。人によっては、「変化」(before→after)を問う問題なのかな、と思った人もいると思います。ただ、この傍線部は「楽しむことができた」なのであって、「楽しむことができるようになった」となってはいませんから、変化や対比を問う問題とも言いにくいのです。(過去問を見てみても、最初の傍線部で「変化」を問う問題は2017年、2016年、2013年…と本当に頻出なのですが、今回はそういうわけでもなさそうです。)

一応、次の第2段落を読めば、このページ(4ページ)の最後から3行目になりますが「子規は、庭の植物に季節の移ろいを見ることができ、青空をながめることができるようになった」とあり、傍線部をより具体的に言い換えた箇所は出てきました。ですが、「自然」的なものが具体例・具体的事物として並んだだけであり、そんなところ押さえさせても、と思いませんか。

この設問が聞きたがっている本当のポイントが分かりますか?
それは、「何を」楽しんだかではありません。「どうやって」楽しんだか、です。
英語に「enjoy 〜ing」という表現があるように、「楽しむ」という表現は、なにかの動作を対象とするのが基本です。例えば、「遊園地で楽しんだ」と言ったりしますが、真意は「遊園地で遊ぶことを楽しんだ」なわけです。
もしこういう視点が持てれば、見えてきませんか。
傍線部Aと同じ行に、「子規は、視覚の人だったともいえる」とあったり、その前の行には「味覚のほかに視覚こそが」という表現まであります。
そもそも「なんで味覚が出てきてるんだよ」と突っ込んで読めたかも大事なのですが、要するに、書斎にこもっての生活において(こういう生活をしたことがある人なら分かるでしょうが)普通、一番に来る楽しみは「おいしいものを食べる」ことだけれども、ガラス障子におかげで見る」という楽しみ方が新たに加わった、と言っているのです。
こう解釈できれば、出題者がなぜ傍線部を設置したのかが分かりますよね。もちろん、そこまでしなくても、子規が楽しんでいる様子が頭でイメージできれば、今回の問2に関しては結果的に消去法でいけるのですが、「見る」とか「視覚を使って楽しむ」ということを分かってないと正解に至らせないように、もっと難しく選択肢を作り上げることもできなくはないので、一応、上記のような出題者の意図の汲み取り方もできるといいでしょう。英語も国語もある意味一緒で、ボキャブラリーに対する感度を高めることこそが、皆さんが時間をかけてやるべきことの一つなんです。

問2を片付けます。設問要求は「どういうことか」、まあそうなりますよね。実は「見る」という言葉を素直に入れた選択肢は❸しかありません。類義語として「眺める」が入った①は「現状を忘れる」で切れます。現状を忘れる「くらい」楽しむ、という比喩ならまだ分かるのですが。また、「視覚的」が入っている⑤は「作風に転機をもたらした」で切れます。②は「救済」、④は「想像」(実際に外にあるものを見るんですから)が誤りです。というわけで、迷いようがないのですが、もし時間が余れば、傍線部Aの一行前の「自分の存在を確認」という箇所が③の「生を実感」に対応していることに気付けると、なおよいです。(が、この対応を確認することは必要条件ではなく、あくまで、本文を読んでいない状態で傍線部を見ただけでは絶対に分かりようがない「どうやって楽しんだか」の部分を補えたかがどうか、というのがこの問題の最も本質的なポイントになります。)

完璧を期して、物凄く丁寧に解説してしまいましたが、実際には、設問を見てから答えを出すまで15秒かからないくらいで正解を選べてほしい問題です。(本文に戻ってぺらぺらやる必要もないでしょう。)

では次、「映画研究者のアン・フリードバーグ」の引用のところを見ていきましょう。
彼は「窓」を定義しています。「プロセニアム」は正直、写真などを見ないと分からない人はまるっきりイメージが湧かないと思います。(せっかくなので気になった人は画像検索して確認しておいてください。「額縁状」という説明の意味がよくわかります笑)
そんなことよりも大事なことは、引用文の前後で繰り返されている、「フレーム」と「スクリーン」というキーワードではないでしょうか。引用文が出てきたらそれを筆者がどうまとめるかに注目して読む
}、というのは基本的な読み方です。
わかりやすくまとめると、

「窓の縁〔エッジ〕が、風景を切り取る。窓は外界を二次元の平面へと変える。」
「スクリーンは平面であると同時にフレーム
映像〔イメージ〕が投影される反射面であり、視界を制限するフレーム

こういうふうに相同表現がボコボコ並んでいます。試験中、ここまでチェックをしろという意味ではありませんが、これだけ類似の表現が並び、かなりメッセージが明確に受け取れるような状況で傍線部Bに突入しているのですから、問3の出題意図はもう分かりますよね?
「視覚装置」という初出の表現に対して「なぜそう言えるのか」と聞きそうなことくらい、設問を見なくたって分かります。窓というものが、「スクリーン」や「フレーム」の役割を果たしていると言われれば、それを視覚「装置」と呼びたくなるのも分かりますね。

▶というわけで、問3ですが、選択肢後半を見て「何をするか」の部分を見るだけでも、④「解釈」、⑤「鑑賞」は落とせるでしょう。ここで悩んでいるようではダメです。そして、残った①〜③のどこに注目するかについては、上記の2ポイント(赤と青)のどちらを頭でイメージしているかで変わってくるので、個人差が生じるところではありますが、①「投影」、②「範囲を定める」「平面化」、③「制御」はどれも本文のポイントとマッチしています。このうち②のみ、両者のポイントを過不足なく揃えています。③は片方しかないですし、前半の「切り離したり接続したり」がピンと来ません。そんな、スイッチの切り替えのような描写は本文になかったはずです。また、①は実は「投影」だけだと不十分で、投影することで実際の三次元的で立体的なものを二次元的で平面的なスクリーンに変えるんだ、というニュアンスがほしいところですし、前半の「季節の移ろいを(ガラスに映す)」に関しても、対象を一部に限定していると言わざるを得ません。答えは❷です。

これまた細かく解説してしまいましたが、実際には2つのポイント(赤と青)をここまで意識して解く必要もなくて、外界のものに枠を与えて平面化するというニュアンスを「ひとまとめ」にしてイメージしたって正解はすぐに浮き彫りになったはずです(問2よりは時間はかかるでしょうが)。不正解の選択肢に不正解の根拠を丁寧に与えていくのは時間が余ったらやることです。本文が読めていることによってあっという間に正解を絞り込める力が重要です。場合によってはそれが暫定解、という状態で次に進んだっていいわけです(尺度をもって選択肢を見れている時点で、よほどの見落としがない限りそれは正解になるでしょうし、共通テストの場合、「引っ掛けてやる」という悪意を明確に感じるような問題は本当に少ないです。)

本文に戻ります。
傍線部Bの3行後から、「ル・コルビュジエ」が出てきます。
共通テストでは「複数テキスト」の問題も出ますから、今回みたいに複数の人物や事柄が並んだ場合は、その論理関係を吟味して読み進めることが大切です。
正直言って、この読み方はなかなか特殊です。
先ほどのアン・フリードバーグのように、考察の思考材料として誰かの引用文が出てきた場合の読み方(先ほど黄色で着色しました)は皆さん慣れているのですが、今回のように複数のものが対等に並んで出てきた場合の読み方は特殊で、慣れていない人が多いです。
その2つが本当に対等なのか、それとも、1つ目を踏み台や材料にして2つ目を本命のテーマとして扱っていくのか。そして、対等だとしたらなぜわざわざ(1つではなく)2つ持ってきたのか。対等でないとしたら、1つ目の踏み台はなんのために必要だったのか(問6(ii)でまさに問われました)。こういうことを考えて読むことが大切です。

すると、子規の書斎におけるガラス装置が「視覚装置」であったことを土台にして、ル・コルビュジエはそういう視覚装置たる窓の特性を重視している、という話に続いていきます。

▶このことをダイレクトに問うたのが問6(ii)です。「なぜわざわざ子規のことを取り上げたのかな。」→「それは、【 Y 】のだと思う。」という空欄補充になっています。上記で押さえた内容をもとにすれば、身近で分かりやすい子規の話から「視覚装置」の概念を引っ張り出すためだろう、ということは想定できます。そのうえで選択肢を見てください。後半部がおかしいものは③「子規の芸術に対して」という箇所でしょう。芸術への効果や影響については本文では一切語られていませんからね。明確に消せるのはこのくらい。つまり、この問題は、現代文の問題にしては珍しく、前半の選択肢にポイントが来る設問だというわけです。残ったもののうち、「視覚装置」の概念(=問3)をうまく言い換えているものは、と見てやれば、少し判断が難しいかもしれませんが②の「居住者と風景の関係」がマッチします。つまり、「風景」を切り取ってしまえば「居住者」の視界に影響を与えますよね。正解は❷です。残った選択肢ですが、①は「現代の窓」に影響を与えた、とは一言も本文中にないですし、④の「住み心地」というのもポイントから外れます。

このまま傍線部Cも片付けましょうか。
傍線部中に「確信をもって」というかなり強い表現があります。そのくらい、彼は「視覚装置」を意識して窓をつくっていることがわかります。
直前に子規の説明として「子規のガラス障子は、・・・操作されたフレームではない」と書かれていますから、裏を返せば、彼の窓は居住者の視覚を「操作」するものであると言えます。この「操作」のニュアンスを強く押さえることが問4に繋がっていきます。

ページをめくって6ページにいきます。
このページには漢字の問題以外に傍線部が一本も引いてありませんが、まさか1ページ分丸々設問に関係してこないことはないでしょう。せいぜい1ポイント、多くて2ポイントくらいあると思って読むべきです。
はじめの段落では、「見るための機会」とか「視界」を「優先した」とかいう形で、窓の「視界装置」という特性をただただ繰り返しているだけなのですが、「換気ではなく」「採光」、という新たなポイントや、「アスペクト比」という言葉が出てきます。

▶こうした内容をまとめて問うているのが問4です。設問の要求は「ル・コルビュジエの窓」の「特徴」と「効果」ですが、特徴と効果をそれぞれ本文から引っ張ってくるなんてご苦労なことをする必要はありません。傍線部に「フレーム」という表現もありますから、問3でも押さえた「視覚装置」の概念を踏まえて選択肢の特に後半部を見ることがまず大切です。これだけでも、①「制御」、③「切り取る」、⑤「限定」に絞れます。あとは消去法でいいでしょう。①は「風景がより美しく」、③は「アスペクト比の変更を目的としたものであり」が誤りです。アスペクト比が変わったのは結果論ですよね。ついでに他の選択肢についても触れておくと、②は「生活環境が快適」、④は「風景への没入」が本文不在です。正解は❺です。

これでも丁寧に解説したほうなのですが、実際自分が解いたときは、非常に粗いと思われるかもしれませんが、「操作」の1ポイントで⑤に絞りました。「視覚を優先」したことも「限定を施」したのもそこから導ける内容です。
ですが、選択肢の末尾にある「かえって広がりが認識される」という箇所がやや気になります。採光、つまり光が差し込んだのだから広がっている感じはするのですが、本文に明確な根拠があってほしいものです。
また、問4は「窓」について聞いておきながら、選択肢①②④には「壁」が出てきています。①②④の誤答理由は先述した通りですが、これらを「壁」の話が出てくるのはおかしいからバツ、としてもいいものなのでしょうか?

実はこうした疑問を解消するかのように【文章Ⅰ】の最後に出てきたル・コルビュジエの引用文を見ていくことが、そのまま問6(i)にも繋がります。
この引用文で筆者が伝えようとしていることが分かりますか?
ここでは彼が両親のために建てた家の話をしており、そこに「囲い壁」をつくった理由を説明しています。
その理由は「視界を閉ざすため」であり、その後も「視界を遮ぎり」と言い換えられます。「限定」や「選別」といった二字熟語もほぼ類義語です。
ところで、引用の最後でこう言っていますね。

まず壁を建てることによって視界を遮ぎり、つぎに連なる壁面を要所要所取り払い、そこに水平線の広がりを求めるのである。

このように「まず」→「つぎに」とあり、二段階の記述がなされています。一段階目として壁を建てているわけですが、では、二段階目として出てくる「壁面を」「取り払」うとは果たしてどんな作業を意味しているでしょうか?

これを明確に分かるために、【文章Ⅱ】の冒頭2行目に出てくる「壁をくりぬいた窓」という表現を待たなければならなかった人も多かったかもしれませんが、普通に考えて、壁をくりぬかなければ窓はつくれません。
この引用文の中に「窓」という表現は一度も出てきませんが、最後の一文の後半に出てきた内容は、明らかに「窓」についての内容なのです。

ここを厳密に押さえることによって、先ほど解いた問4の③「水平に広がって見える」や⑤「広がりが認識」の部分に正しいと初めて分かります。
(ついでに、「私たちは風景を眺める」という表現があったことから、問6(ii)の正解②の「居住者と風景の関係」という箇所が問題ないことに改めてここで気付けます。)

逆に、この引用文に「窓」への言及がないと仮に勘違いしてしまうと、問6(i)を解いたときに、②「窓の機能」、③「窓の役割」、④「窓の効果」を切らざるを得なくなり、(あとで解説しますが)残った①も後半部が明らかにおかしいために、「この問題どうなってるの?!」と混乱してしまう羽目になります。
初読時に引用文の内容をここまで精読することは難しいでしょうが(傍線部も周辺にないですしね)、それでも、問4や問6(i)の選択肢をさばくなかでこの引用文の精読が必要になることに気付く必要があったわけで、ここで余計な手間をとられてしまうのがこの年の第1問の一番大きな関門だったと思います

さて、【文章Ⅱ】に移ります。

まず冒頭部に「初期の古典的作品」とありますが、「なんの初期?」という疑問をしっかりここでぶつけられましたか。その疑問さえもてれば、「サヴォア邸」についている注6を確認しにいったはずです。すると、これがル・コルビュジエの作品であることから、彼の初期の作品だとわかります。ちなみに僕はこのタイミングで「彼っていつ生まれたんだろう?」と思って注5も確認しました。1887年生まれで、1920年代にサヴォア邸をつくっているので、だいたい彼が30代ぐらいの頃の話でしょうか。ここまでイメージしながら読めるとかなりいいです。

冒頭段落を見るからに、話のメインは「壁」です。

そして、次の段落で「住宅は沈思黙考の場」、「瞑想の時間」という話が出てきます。細かいですが、「あるいは」と出てきたときは片方だけではなく前後両方を対等に押さえるのが基本です。
さらにその次の段落で補足的な説明を行い、引用文をもってきています。

さて、この引用文ですが、【文章Ⅰ】における引用文と内容的にほぼかぶっていることに気付けたでしょうか。もちろん、問6(i)を解く中で気付いていけばいいのですが、「小さな家」に関する引用文が文章Ⅰ・Ⅱの両方に出てくることはリード文の段階で予告されていたのですから、できることなら設問を見る前から両者の関係性には意識を払っておきたいものです。

そして、この引用文の途中に「(中略)」があり、【文章Ⅰ】のほうには入っていた「窓」の話が省かれています。

▶ではこのまま問6(i)の選択肢に行ってしまいます。まず中略部について触れているのは①④しかありませんからそこを重点的に見ます。すると、中略内容について明確に書かれているのは④「壁にを設けることの意図が省略されて」です。正解は❹でいいのですが、「窓の効果」という表現が問4の設問文と対応していることもできれば気付いておけるといいです。要するに、問4では窓の「特徴」と「効果」を聞いていて、正解の⑤の後半部に出てきた「広がりが認識される」というのが「効果」にあたるものであり、これが今回の「(中略)」の内容にあたる、という連続性をつかむことです。そういう意味でも、②「窓の機能」や③「窓の役割」という表現はベストとは言えないことに感づきます。答えを出すだけならここまでできれば十分ですが、一応消去法もしっかりやっておくと、①の「壁の圧迫感」というのは非常にネガティブな言い方で、「(水平線の)広がり」という内容になっていません。せっかく選択肢前半で「開放」という言葉を使えていたのですから、「開放感」とでも言えばよかったのです。そして③は完全に「窓⇔壁」の対比になっていますが、【文章Ⅰ】の引用文でも壁の話は十分にしています。むしろ話の大筋は壁であり、窓がちょこっと出てきた程度です。最後に②は、「どの方角を遮るか」は話の重点ではないので誤りです。

本文に戻ります。
引用文以降、「動かぬ視点」という言葉が多用されて、明らかにこれがキーワードであることが分かります。
【文章Ⅰ】では「視覚装置」、【文章Ⅱ】では「動かぬ視点」がキーワードです。
そして傍線部Dです。「観照」とは「冷静に見つめる」という意味ですが、それが分からなくても、傍線部にあるように「壁がもつ意味」を理解すれば問5はそんなに苦労しないはずです。そしてそれは「動かぬ視点」というキーワードから、「視点を固定する」ことなんだと理解できます。

ところが問5の設問では、壁については直接聞いてません。「これによって住宅はどのような空間になるのか」です。そこで、最終段落の内容が効いてきます。
ここで「沈思黙考」という内容が再び出てきました。最後から2行目にまた出てきますが、「瞑想」もセットで出てきてることに注意してください。
内容的な理解は皆さんにお任せしますが、僕は「壁に窓をくり抜いて視点を固定することで、あちこちに気がいかないため、静かに落ち着いて物事を考えることができる」ということが言いたいんだろうなと受け取りました。

さて、残った問題を一気に片付けてしまいましょう。

問5ですが、「沈思黙考/瞑想」というポイントを意識して選択肢の後半部だけ横に並べて見ていけば、反応できるのは③「思索」と⑤「自己省察(せいさつ)」のみです。そして、いくら沈思黙考するといっても、その対象が「自己」だとは一言も言っていませんから、余計な限定がかかってしまっているという意味で⑤も切れます。あっさりと正解は❸に決まりです。

どう考えても、この問題で消去法を使うのは愚かですね。問4よりも選択肢は長いのに、問5のほうが一瞬で解けてしまいます。

問6(iii)の空欄補充問題ですが、空欄の前を読めば、【文章Ⅱ】の内容を「子規の話題」に結びつけた解釈が入ればいいことは明確です。本来別々になっている内容をあえて結びつけている、ということを考えれば、「【文章Ⅰ】になくて【文章Ⅱ】にしかないもの」を引き出してくる必要はあります。が、そんなに難しくはありませんよね。問5で確認したように、「動かぬ視点」によって「沈思黙考」できる住宅、というのが【文章Ⅱ】の核となる内容です。すると、このポイントを網羅している選択肢は、と見てやれば③に綺麗に詰め込まれていると分かりますから、正解は❸です。絶対に選んではいけないのは、「視覚装置」が入っている④です。このキーワードは【文章Ⅱ】には出てきませんでした。①は「主題化された宗教建築」、②は「仕事の空間」(「仕事」は「瞑想」とは逆の概念)がどちらもポイントを外しています。最後から3行目に「このテーマ(=沈思黙考)は・・・再度主題化され」とあるので、宗教建築が主題化されたのではありません。

まとめ

問2以降の読解問題について、まとめてみました。復習時の参考にしてください。

無印:出来て当たり前/設問を見てから解答を出すまで30秒以内目安
☆:30秒以内で正解を出したいが、正解の表現にやや困惑してもやむを得ない
★:本文を注意深く検討する必要あり
設問 設置箇所 設問要求 本文のポイント・キーワード 正解選択肢の表現
問2 傍線A 子規の楽しみ方 「見る」「視覚」 「見る」
「自身の存在を確認する感覚」 「生を実感」
問3 傍線B 「視覚装置」と言える理由 「フレーム」=「制限」 「範囲を定める」
「スクリーン」=「平面」 「平面化」
問4★ 傍線C 窓の特徴と
効果
「視覚装置」「操作」「窓はフレーム」 「視覚を優先」「限定」
「水平線の広がり」 「かえって広がりが認識」
問5 傍線D 壁がもつ意味 「沈思黙考」&「瞑想」 「思索」
問6 (i)★ 空欄X 引用文間の相違点 「広げる」 「窓の効果」
(ii)☆ 空欄Y 子規を出した意図 「視覚装置」 「居住者と風景の関係」
(iii) 空欄Z 【文章Ⅱ】と子規の繋がり 「動かぬ視点」
「沈思黙考」
「動かぬ視点」
「沈思黙考」

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最終更新:2023年12月19日 11:42