問題
次の英文を読み、以下の設問に答えよ。
Equivocation means using words ambiguously. Often done with intent to deceive, it can even (1)deceive the person who is using the expression. Equivocation occurs when words are used with more than one meaning, even though the soundness of the reasoning requires that the same use be kept throughout.
‘Happiness is the (2a)end of life.
The (2b)end of life is death;
So happiness is death.’
‘Half a loaf is better than nothing.
( 3 ) is the better than good health;
So half a loaf is better than good health.’
Equivocal use of words is misleading because it invites us to transfer what is true of one concept onto another concept which happens to have the same name. Logic, which deals with the relationship between concepts, is useless if the concepts themselves change.
‘Elephants are not found in Britain, so if you have one, don’t lose it or you will never find it again.’ (The word ‘found’ represents two different concepts here.)
Many of the equivocal uses are easy to spot. Many more of them are not. Fortunetellers specialize in equivocal expressions to protect themselves in case things turn out otherwise than they expect. Politics would be a totally different art if it had to avoid equivocation. So would business correspondence.
‘You can rest assured that (4)your letter will receive the attention it fully deserves.‘ (As it makes a gentle curve in the air towards the waste paper basket.)
‘Anyone who gets Mr Smith to work for him will indeed be fortunate.’
Puns and music hall jokes often depend on equivocation.
‘My dog’s got no nose.’
‘(5)How does he smell?‘
‘Terrible!’
The advice given to a political candidate facing a selection committee is ‘When (6)in doubt, equivocate.’ The simple fact is that you cannot please all of the people all of the time, but you can have a fairly good chance of fooling most of them for much of it. The candidate assures those in favor of the death penalty that he wants ‘realistic’ penalties for murder. (7)To those against, he wants ‘humane consideration.’ But he could be in favor of realistic light sentences or humane killing.
Equivocation is a particularly powerful paste for pouring into the cracks of international discord. It joins irreconcilable differences with a smooth and undetectable finish. Many ‘full and frank’ discussions are terminated happily by the appearance of a joint treaty, whose wording is carefully chosen to mean ( 8 ) things to each of the countries that have signed it.
The vocabulary of equivocation may be learned from the visitors’ gallery in the Houses of Parliament. (9)If you have a seat in Parliament, there is nothing you have to learn about it.
【問題】
(1) 下線部(1)の解釈としてもっともふさわしいものは次のどれか。その記号を記せ。
(ア) だました人にだまされる
(イ) 自分が論理のわなにはまる
(ウ) 嘘をついたために損をする
(エ) 言葉のトリックを見破られる
(2) 下線部(2a)、(2b)はそれぞれどのような意味か。その記号を記せ。
(ア) aim
(イ) means
(ウ) last day
(エ) termination
(3) 空所( 3 )を埋めるのに適当な1語を記せ。
(4) 下線部(4)は2通りの意味に解することができる。それらにもっとも近いものを次の中から2つ選び、その記号を記せ。
(ア) we will be honest in replying to your letter
(イ) we will offer you good advice in response to your letter
(ウ) your letter will be considered carefully because it is important
(エ) your letter will be dealt with carefully because it may cause some trouble
(オ) your letter will not be taken seriously because it is not worth bothering about
(5) 下線部(5)では、話し手と聞き手の間にsmellという語についての誤解がある。それぞれの解釈にしたがって、下線部を2通りに訳し分けよ。
(6) 下線部(6)の言い換えとして、もっとも適当なものを以下から選び、その記号を記せ。
(ア) if you are not sure what to say
(イ) if you are suspected of dishonesty
(ウ) if you are afraid of being deceived
(エ) if you don’t think you will be selected
(7) 下線部(7)を和訳せよ。
(8) 空所(8)を埋めるのにもっとも適当な語句を以下から選び、その記号を記せ。
(ア) fairly indefinite
(イ) entirely different
(ウ) exactly the same
(エ) utterly unreasonable
(9) 下線部(9)の説明としてもっともふさわしいものを1つ選び、その記号を記せ。
(ア) If you are a politician, you must already be good at equivocation.
(イ) You don’t have to know the art of equivocation in the world of politics.
(ウ) You should have studied the art of equivocation before entering Parliament.
(エ) If you are clever enough to be a politician, there is no need to resort to equivocation.
和訳
equivocationとは、曖昧に言葉を使用することである。多くは誰かをだます意図で使用されるが、時に使用者自身がその表現にだまされてしまうことすらある。論理の正しさ(明晰さ)とは語が一貫して同じ意味で使用されることが前提である。にもかかわらず、語が2つ以上の意味で使用される時にequivocationは生じる。
「幸せは人生のend(目的)である。
人生のend(終わり)は死である。
従って幸せは死である」
「たとえパン半分でもnothing(何もない)よりは良い。
健康より良いものはnothing(何もない)。
従ってパン半分は健康より良い」
equivocationが誤解を招くのは、ある概念において真であるものを、たまたま同じ名を持つ別の概念へと移し替えるよう仕向けるからである。論理とは概念間の関係を扱うものであるが、概念自体が変化してしまうならば、役に立たない。
「象はイギリスには生息していない(not found)。だからもし持っているのなら、失くしてはいけない。失くしたら二度と見つからない(never found)だろうから」
多くのequivocationは簡単に見抜くことができる。しかし、見抜くことのできない場合の方が多い。占い師は占いが外れた場合に自分を守れるよう、equivocationを使うことを専門にしている。もしもequivocationが使えなければ、政治も全く違ったものになるだろう。ビジネス上の文書のやり取りも同様である。
「あなたの手紙には相応な注意を払いますので、ご安心ください」(この時、その手紙はゴミ箱に向かって、空中にゆるやかな曲線を描いているのだ)
「スミスさんが自分のために働いてくれたら本当に幸運だ」(スミスさんが有能である場合)
「スミスさんを働かせることが出来たらラッキーだ」(スミスさんが怠け者である場合)
ダジャレや漫談においても、equivocationは欠かすことができない。
「うちの犬には鼻がないんだよ」
「どうやってにおいを嗅ぐの?(どんなにおいがするの?)」
「とても臭いんだ」
選挙委員会と面接した立候補者に与えられるアドバイスと言えば、「迷ったらequivocationを使え」というものである。当然のことであるが、あらゆる人を、あらゆる場合において喜ばせることなどは出来ない。しかしほとんどの人を、ほとんどの場合においてごまかすことはそれなりに可能なのである。候補者は死刑賛成派に対して、殺人犯には「現実的な」刑罰を求めるといい、死刑反対派に対しては、「人道的な考慮」を求めると請け合う。しかし現実的な軽い刑、あるいは人道的な死刑に賛成していると言えなくもないのだ。
equivocationは国際的な対立(不和)の割れ目の部分に付ける、特別に強力な接着剤でもある。合意のできない対立も、equivocationにかかれば、当たり障りなく痕跡も残らない仕上がりにまとめることができる。多くの「徹底的で腹を割った」議論は共同の条約という形でつつがなく終了するが、そこに使われる語は調印した両国にとって全く違った意味になるよう、慎重に選ばれている。
equivocationに使用される語彙は、英国議会の傍聴席でも学ぶことができるかもしれない。もしもあなたが国会に議席を持っているなら、equivocationについてそれ以上学ぶ必要はないだろうが。
解答
⑴ イ
⑵ (2a)ア (2b)エ
⑶ Nothing
⑷ ウ、オ
⑸ どうやって匂いを嗅ぐの?/どんな匂いがするの?
⑹ ア
⑺ 死刑反対の人に向かっては
⑻ イ
⑼ ア
解説
⑴
Often done with intent to deceive, it can even (1)deceive the person who is using the expression
➡直訳は「equivocationがだますことを意図して行われることが多いものであるならば、そういう表現を使っている人自身をだますことさえありうるのだ」です。
つまり、equivocationを使っている本人が、自分で自分をだますこともある、という趣旨をつかむことができれば、正解はイしかありません。
⑵
「end」が2通りの意味で使われていることをイメージした上で解きましょう。
(2a)は「目的」という意味で使っているので、ア=aimが答えです。
(2b)は「終わり」という意味で使っているので、エ=terminationが答えです。
⑶
これは非常に簡単ではなかったでしょうか。直前の「end」の具体例もうまく活用できると思いますが、要は「AはBだ。BはCだ。よってAはCだ」という三段論法になっていることに気付けたかどうかです。つまり、1文目の補語がそのまま2文目の主語に来るという構造になっていますから、答えは「Nothing」しかありません。
⑷
「deserve」は「〜するに値する」という意味の動詞で、目的語に動名詞や、動詞の名詞形が来る確率が非常に高い単語です。それを意識してまずは和訳してみると、
your letter will receive the attention it fully deserves.
➡「あなたの手紙は、注目を受け取るだろう。そして、手紙は注目に値する。」
➡「あなたの手紙には、それ相応に注目する価値があるだろう。」
となりますが、「それ相応」ってどのくらいなんでしょうか。直後の文で、
(As it makes a gentle curve in the air towards the waste paper basket.)
➡空中に向かってゆるいカーブを描くように飛んでいき、ゴミ箱に向かっていく。
とあります。つまり、一見すれば「注目する価値」と言われたらプラスに聞こえるものの、その逆もあり得る、と言っていることが分かります。あとは両者を具体的に的確に説明した選択肢を選べば、ウとオしか選べません。
⑸
「how」と「smell」という単語についての理解を問うています。
「how」は「どのように(方法)」と「どれくらい(程度)」の2通りの意味があります。
前者で解釈するならば、howは副詞の答えを要求することになりますから、smellは第1文型をとる動詞ということになり、「嗅ぐ」の意味になります。
一方、後者で解釈するならば、howは形容詞の答えを要求することになりますから、smellは第3文型をとる動詞ということになり、「〜のにおいがする」の意味になります。
聞き手側としては、「私の犬は鼻がないんだよね」という発言を聞いたら「え、どうやってにおいを嗅ぐの?」と、前者の解釈で聞きたくなります。
ですが、答える側(=話し手)は「terrible」と形容詞で答えていますから、「その犬はどんな匂いがするの?」と聞かれたように捉えていることになります。
となれば、「どうやって匂いを嗅ぐの?」「どんな匂いがするの?」が答えです。出題者の意図としては、howやsmellを問いたいわけですから、「he」の訳出は不要です。会話文ですから、わざわざこの人称代名詞を補う必要もありません。
⑹
When (6)in doubt, equivocate.
➡「in doubtな時、equivocateしなさい」というアドバイス内容になっています。
in doubtは通常「疑って」という意味ですが、これだと意味が通りませんから、文脈を考える必要があります。「candidate」が「立候補者」という意味だと分かれば、政治の話をしていることが分かるでしょう。そんな、政治家になろうとしている人に対して、どういうときにequivocateするようにアドバイスしているのでしょうか。「equivocateする条件」を確認する必要があります。
そこで、直後の文を読解すると、
The simple fact is that you cannot please all of the people all of the time, but you can have a fairly good chance of fooling most of them for much of it.
とあります。ここに「not all」という部分否定が入っていることに注意してください。動詞のpleaseは「喜ばせる」ですから、「すべての人に対して常に喜ばせてあげることができるわけではない」と言っています。つまり、equivocationを発したときに、喜んでくれる人もいればそうでない人もいると言っています。but以下の内容は、「fool=馬鹿にする」という動詞があることを意識すれば、「それでも相手をだますことはできる」という趣旨のことを言っていることが分かります。より単純化して言うなら、「equivocationを使えば、全員を喜ばせられる」という内容になるわけです。
となれば、政治家になるべき人にアドバイスしている内容はどんな内容か、もう分かりますよね。「ストレートに伝えてしまえば喜ぶ人・喜ばない人が両方出てきてしまうとき」です。この方向と大きくズレていないのは、アの「何を言っていいのか分からない場合」です。
⑺
東大では頻出の、省略を補うべき和訳問題です。まずは直前の文が第4文型であることに気付いてしっかり和訳できましたか。
The candidate assures those in favor of the death penalty that he wants ‘realistic’ penalties for murder.
➡「立候補者は、死刑に賛成する人々に、殺人に対する現実的な刑罰を望んでいることを強く訴えている」
となります。そのうえで、今回の文を見てください。
(7)To those against, he wants humane consideration.
「those」と「wants」という表現が直前の文とかぶっていることを意識すれば、同型反復が起こっていることに気付きます。つまり、「against」は「in favor of」と対をなしており、「死刑に反対する人々には、人道的な配慮が必要だと訴えている」となります。
ですから、「死刑反対の人に向かっては」や「死刑反対派の人に対しては」が答えとなります。
「死刑」という言葉が補えていないとこの問題は一点も点数が入らないことになります。
ちなみに、内容的な補足をすると、その次の文で、
But he could be in favor of realistic light sentences or humane killing.
➡「しかし、(実は)立候補者は、(本当はどっちに賛成ということはなくて)現実的な軽い刑にも人道的な配慮にもどちらも支持しているのだ」
(ここでの「sentence」は「判決/刑罰」という意味です。)
と言っています。言い換えれば、どっちつかずということです。どっちを支持しているのかが表面の言葉からは悟られないように、equivocationを使うわけです。すると、賛成派の人の支持も反対派の人の支持も得られるわけです。うまいですよね。いわゆる「玉虫色の決着」(どっちつかずではっきりしない終わり方)というやつです。
⑻
文脈的にはここも政治的な話になっていて、今回は、
・・・a joint treaty, whose wording is carefully chosen to mean ( 8 ) things to each of the countries that have signed it.
となっていますから、「treaty(条約)」を結ぶときの「言葉」が「調印したそれぞれの国にとって」どんなものかを聞いています。
もちろん、equivocationが用いられるわけですが、かといって、「曖昧」と考えてア「非常に不明確」を選んではいけません。ここでのポイントは「each」、つまり一つ一つのそれぞれの国にとって、ということです。
となれば、「各国が納得して結んでいるものであるが、その言葉の意味の解釈は国ごとに違う(変わる)」と解釈してあげたほうが論理的な整合性はとれます。したがって、答えはイです。
⑼
The vocabulary of equivocation may be learned from the visitors’ gallery in the Houses of Parliament.
(9)If you have a seat in Parliament, there is nothing you have to learn about it.
まず、少しレベルは上がりますが、「Parliament」が「国会(議会)」という意味であること、また直前に出てきた「visitors' gallery」が「傍聴席」という意味であることが分かると意味がはっきりつかめると思います。
ですが、論理的にもある程度輪郭を固めることができます。まず、直前の文では、なにかからequivocationが学べる、ということを述べています。しかし、下線(9)はどうでしょう?「Parliamentに座れば、equivocationについて学ぶ必要は全くない」と言っています。一見矛盾するように見えますが、この矛盾を解消するには、直前の文と下線(9)の文で主語が異なると考えるしかありません。
そこで、選択肢を見ると、ア・イ・エには「politics」「politician」、ウには「Parliament」がありますから、おそらく、Parliamentというのは政治に関する言葉であろうことが推測できます。となれば、「(政治家ではない)一般人」と「政治家」の対比であることが推測できます。つまり、「一般人はともかくとして、政治家はequivocationについて学ぶ必要はもうない」と言っているのでしょう。そしてそれはなぜかと言われたら、(7)で解いたことが一つヒントになりますが、政治家はequivocationを日常的に行っているから、新たにそれについて習得する必要がないわけです。
しかも、本文前半に、「Politics would be a totally different art if it had to avoid equivocation.」という文がピンポイントで存在しています。訳すと「政治は、equivocationを避けねばならないとしたら全く違った生業になっているだろう」(仮定法)となりますから、「政治においてはequivocationをするのが当たり前」であることは分かります。
以上を踏まえてれば、迷うことなく答えはア「政治家なら、既にequivocationが得意でなければならない」となります。
代ゼミ・富田一彦先生の解説
最終更新:2024年01月09日 05:08