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盗賊議会プレイヤーズ・ガイド Council of Thieves Player's Guide

エイローデンの死後、混沌に突き落とされたシェリアックスは無秩序と破壊の末に新しい精神的なよりどころを見出した――アスモデウスである。「三重に忌まわしきスルーン家」により支配された今日、シェリアックスは地獄の火で熱せられた鋼の刃のように厳正なる法で支配される土地となっている。そこは無慈悲に押し付けられた調和により、高潔さと徳が二の次になってしまった土地である。そこは過去の栄光の話がただ影で囁かれるのみとなった場所であり、英雄的な野心はただ胸のうちにしまわれ、一般民は群衆にまぎれて主張しないよう努めている。ここがかつてのこの国の首都、ウエストクラウンであり、盗賊議会アドベンチャー・パスの舞台である。

このアドベンチャー・パスでは、君と仲間の冒険者達は、全ては永きに渡り悩み続けてきた巨大都市に輝きを取り戻すため、粉々になったウエストクラウンの誇りを取り戻す手助けをし、数十年来の呪いと戦い、単なる魔物よりもはるかに恐ろしい敵と戦う。しかしこの冒険を始める前にこのガイドを読むことで、君と相棒が直面するであろう困難に対して心構えをすることができるはずだ。このガイドによくよく目を通すことで、君の命だけでなく、魂までも救うことがあるかもしれない。

このガイドの使い方 How to Use This Guide

盗賊議会アドベンチャー・パスの導入とは別に、このガイドは、プレイヤーがシェリアックスに生きる者“らしい”キャラクターを作成する手助けをするつもりである。このガイドの情報は、一般的な知識であり、特にシェリアックスを故郷と呼ぶキャラクターなら尚更だ。このガイドはウエストクラウン――このアドベンチャー・パスを通して焦点となる場所――内やその周辺に根付くキャラクターを構築する手助けとなるだろう。どのようなキャラクターであっても、盗賊議会アドベンチャー・パスに参加することはできるが、このガイドを使用して作られたキャラクターならば、このアドベンチャー・パスで引き起こされる事件をより自らの動機付けにできることだろう。最初の冒険でありPathfinder Adventure Path#25巻にある「Bastards of Erebeth」はウエストクラウンを舞台とし、キャラクターは、この共同体を地元にするか、この地方に長く停泊する理由を考える必要がある。君がシェリアックスの国境の外から訪れたキャラクターを作成しようと考えているのなら、GMとともにそのキャラクターがウエストクラウンにいる理由を明確にすること。

このガイドを読むことで触発され、シェリアックスについてより多くの情報を得たいと思うなら、この国についての詳しい説明や、ウエストクラウンの概要が丁寧に書かれているパスファインダー年代記サプリメントである「Cheliax: Empire of Devils」を確認するとよいだろう。加えて、GMに向けた分かりやすいウエストクラウンの記事がPathfinder Adventure Path#25巻に掲載されている。またGM向けの追加資料として、ウエストクラウン地方を拡張する情報をまとめたものが予定されているが、その内容は現在このサプリメントの『ウエストクラウンを取り巻く環境』の項に纏められており、プレイヤー、GM双方にとって十分な情報を提供している。更なるキャラクターのアイデア、話し合い、ウエストクラウンやこのアドベンチャー・パスや取り巻く世界の新事実については、パスファインダーのウェブサイト(paizo.com/pathfinder)と今後の巻を確認すること。安心して欲しい、このガイドは単なる第一歩に過ぎず、シェリアックスにおける冒険は始まったばかりなのだ!

冒険者 Adventurers

シェリアックスは欺瞞と策謀、中傷と欺きの国である。影で覆われたいくつもの通りで暮らしている穏やかで道徳的な個々人のあらゆる様式を保持しながら、ウエストクラウンは呪われた歴史において際立って苦衷にある。しかし薄暗いウエストクラウンの中では炎はより輝きを増し、努力と正義の心を持つ冒険者は、自らの力がまさに必要とされていることに気付き、優れた能力は英雄達を国中から引っ張り出す。(ウエストクラウンの市民としても知られている)ウエストクラウン都民は時に辛い生活を送るが、それにもかかわらず、彼らは誇りを持って振舞う。

次のセクションでは、この盗賊議会アドベンチャー・パスの過程において栄光を掴むかもしれない一般的な種族とクラスの情報についてまとめている。ゴラリオンに住むこれらの種族とクラスについて更なる情報を得たいのであれば、“Pathfinder Chronicles Campaign Setting”を参照のこと。

種族

シェリアックスの国の住人のほとんどは人間であるが、ウエストクラウンなどの大都市を探せば、どのような人型生物も見られるだろう。ゴラリオンにある大抵の国と異なる点として、シェリアックスにはティーフリングなどといった魔物の血を引く種族が、異常なほど多く住んでいることが挙げられる。しかしティーフリングは基本種族に比べるとわずかではあるが強力な種族であるため、キャラクター作成の前に、GMにティーフリングのキャラクターを作成してもよいか確認すること。

エルフ

ウエストクラウンのすぐ北にある塚森には小さなエルフの居住地がある。ここ数十年のうちに、森から出て行ったエルフもいる。この国から離れる者はまったくと言っていいほどおらず、残っている者は、ウエストクラウンや他のシェリアックスの都市にある小さなエルフの共同体に居住している。

エルフの共同体は孤立しがちであり、自らの区域内に入ってきた人間とティーフリングに不審の目を向ける;他の人型生物に対しては敵意は下がる。特に、ここではアスモデウスへの帰依(アスモデウスを合法なものとしたことと、表向き信仰していること)と悪魔崇拝が極めて一般的に行われているため、エルフはシェリアックスの人間の貴族たちを非常に疑わしく感じている。その結果、シェリアックスに住むエルフは上層の人々よりも貧しい種族と一緒に暮らすものがずっと多い。

ティーフリング

ティーフリングはシェリアックスでの通常でない立場を享受しているが、“享受する”というのはおそらく悪い単語であろう。シェリアックスの悪魔崇拝者はティーフリングを人間より劣った存在として扱う。ティーフリングは格下の存在であり、人間の過ちや悪魔のいたずらにより生まれてきたと考えられている。貴族の家ではティーフリングの跡継ぎを隠し、彼らの存在そのものを恥じ入るか、(通常は他に有効な跡取りがいない場合)いやいやながら家業の一部をさせる。

その汚れた歴史から、シェリアックスに住むほとんどのティーフリングは強い憎悪と怒りを胸に秘めている。自らの価値を証明する手段や、自らの能力を正当に評価しない者たちに見せつける手段を、重要なことと考えて努力するティーフリングもいる。自らの血筋を受け入れ、盗みや殺しといった違法なことをすることで、定命のフィーンドとなろうとしているものもいる。ほとんどのものは述べた両極端の間といったところであり、暗い裏通りを抜け出す方法を探してあがいている。

ティーフリングをプレイする

ティーフリングは基本種族よりわずかながら強力な種族であるため、ティーフリングのキャラクターを作成する前にGMに確認すること。君がティーフリングをプレイするのをGMが拒む理由としては、力の差異は十分なものといえるが、以下の必要条件は、他の種族との格差を是正するため手助けとなれる――GMは、ティーフリングをプレイする際に、以下の制約(もしくは、同程度の制限)を一つ与えるかもしれない。プレイグループでの納得がいく結論を、GMと共に導き出すこと。

経験点の負債:レベルを上げるのに十分なXPを得る前に、通常なら2レベルになるのに必要となる経験点の半分を負債として支払わなければならない。この場合、君は一行の他のキャラクターよりわずかに成長が遅れ、他のキャラクターは君のキャラクターよりも早く高レベルになるだろうが、レベルを上昇させていくうちに、その差はわずかなものとなっていく。

NPCクラス:1レベルの時点で、ティーフリングはコモナー、エキスパート、アデプト、あるいはウォリアーを選択しなければならない、という制限をGMはつけるかもしれない。

ティーフリングの特徴:GMがボーナス特徴を認めるならば、ティーフリングは〔地獄の落とし子〕特徴(9ページ参照)を選択しなければならない、という制約を課すかもしれない;この特徴は基本のティーフリング種族を“弱める”ものであり、一般的なPC種族と同程度の能力にティーフリングを落とし込むことができる。

PCへの恩恵:GMは単に、ティーフリングに見合うように僅かに高い程度まで他のPCの種族に恩恵を授けるかもしれない。ティーフリングでないPCは、種族ボーナスがまだ適用されていない任意の能力値1つに+2のボーナスを種族ボーナスとして与えるというのは一つの解決策であり、ティーフリングでないキャラクターは初期所持金を500GPぶん上昇してはじめる、という手もある。

ドワーフ

ウエストクラウンやシェリアックスの他の大都市では、没落貴族の所有財産から遺品や拾い出された物品などを修繕する仕事が盛んであり、ドワーフの交易商人たちは珍しいアイテムを求めてしばしばシェリアックスを訪れる。シェリアックスの都市には大抵全体が忘れられ、遺棄されたために建物はみな朽ちてしまっている、廃墟区画がある;ドワーフの冒険者の多くはこれらの「都市遺跡」の探索を楽しんでいる。

ドワーフの中には生まれ故郷から使節団としてシェリアックスへやってきた者もおり、ここで裕福な家に従事する仕事をする。ドワーフの共同体では、鉱山採掘をすれば、地に住むフィーンドどもとの小競り合いを引き起こすという噂がある。ドワーフの使節団はシェリアックスにそうしたフィーンド達と戦う、よい方法を探しにきたのかもしれない――ひょっとしたら、自分個人の利益のためにそのような技術を探し出そうとしているのかもしれない。

人間

シェリアックスの人口のほとんどは人間が占めており、ほとんどの人間は貴族の血統に連なるものである。とはいえ、自分たちが貴族であるように振舞おうとはしない――実のところ「スルーン家」は公式に250ほどの貴族の家柄を把握しているのだから。多くは貴族であることを主張するか、正当な家系の1つと関係がある振りをしている。一部の仲間うちにとっては、血統と身分は、金と同様に価値のある貨幣だ。

シェリアックスの現地人はシェリアックスの人間の総数の実に3/4を占める。それ以外のこの国のほとんどの人たちはアズラント人とタルドール人により構成されている。多くのシェリアックス人は古アズラントに由来する血脈だと主張しており、真のアズラント人を自称する者さえいる(だが、アズラント人の純血種であると証明できるものは誰一人としていない)。タルドール人は上流社会に入り、強い印象を与えることが有益であることを利用して、うまくシェリアックスの貴族社会に入り込むことができた。タルドール人の女性はシェリアックスにおける流行の魁として名高く、常に最新のファッションの先端におり、それらを導くことができなかったものは排斥される。タルドール人の男性は魅力的であり、若い貴族の女性に興味を持つことから、何年にも渡りシェリアックスの貴族におけるさまざまな問題の原因となっている。

はるか遠くから訪れてくる交易人は一般的であり、特定の目的を持つ訪問者も同様だ。シェリアックスの魔法のアイテムや高品質の武器を作成する力が、多くの地域から交易人を呼び寄せるのだ。目的のある犯罪者は、シェリアックスを薄暗い生活を営むのに適した場所であると感じるだろうが、それはシェリアックスの組合の融通の利かない法に従うならばの話だ。

ノーム

強力なデヴィルを召喚し束縛する方法を学ぶために、召喚魔法の才能を持つノームがシェリアックスへ興味を持つこともある。ノームのウィザードの中には、貴族の後見人を獲得するものもいるが、その際に交わされる取り決めから逃れる手段を後になって探すのは難しい。ほとんどのノームは「そのとき次第」での労働を好み、賃金を古代の文書が眠るかもしれない遺跡へ探索に行くための資金として活用する。

漂白化の進んだノームは使えるかもしれない無謀な実験を求めてシェリアックスへ訪れ、悪魔崇拝者や裏切りの危険と戯れることになるのかもしれない。その手の仕事は、引き受けるのはたやすいが、忘れるのは困難なものだ。そのような仕事を引き受けたものは生きてその仕事を終えるかもしれないが、その経験は、黒く染まった髪や炎のように色づいた瞳、あるいは異様に長い爪といった様々な形で彼らに影響を与えることになる。

ハーフエルフ

ウエストクラウンは社会の爪弾きものが住む場所だ、という噂がシェリアックスに広がっているため、この都市は時にハーフエルフを惹きつける。個人的な理由で他の国からやってきて、ウエストクラウンへ居住するものがほとんどだが、自らの混血の血筋の者は殆どいないという事実を享受することになる――通常であればハーフエルフが受ける人種差別の矛先はここではティーフリングに向かう。実のところ、あまりフィーンド的な特徴があらわではないティーフリングは、しばしば自分たちがハーフエルフだとして過ごそうとする。双方の種族にとって不幸なことに、このやり方はよく知られており、ハーフエルフが信用されない一因となっている。特定の区画に入る前に、ハーフエルフは自分が見た目通りの存在であることの証明を要求されることさえあるかもしれない。

ハーフオーク

ハーフオークはウエストクラウンのような都市では気持ちのいい奴として生活することができる。ティーフリングと悪魔崇拝者の存在が、ハーフオークを恐れるほどではない、歩行者のような存在にさえ感じさせるのである。進行中の無数の政治的な仕事には、しばしば筋骨隆々としたものを雇う必要があり、貴族の館では常に多くの護衛を雇っている。ハーフオークの中には単なる暴漢として振る舞い、罪人になる者もいるが、多くの者は密かに犯罪的な仕事を見つけている。一部のハーフオークはウエストクラウンやエゴリアンの巨大都市の通りを心地よく感じ、そこに永住する者もいる。他のハーフオークは自分に利益があるかぎりシェリアックスに留まり、それからは他の場所で冒険へと乗り出すつもりでいる。

ハーフリング

退廃的な貴族の家には財産を管理するために多くの従者が必要である。シェリアックスのハーフリングは――他の地域と同じように――そのスタミナと従順な気質から、奴隷として好まれている。さらによいことには、背丈が半分しかないため、住む場所を提供するときに通常の半分の大きさの部屋しか準備しなくてよい。数年も経てば、彼らの雇い主が死ぬかこの国を逃げ出すような時に、ハーフリングの奴隷は見捨てられ、ウエストクラウンなどの大都市に住むハーフリングは、そのような解放された奴隷の子孫であることがある。

ハーフリングはシェリアックスの都市のいたるところにおり、彼らの気付かれない能力をうまく活用する者もいる。ハーフリングの従者は他の貴族の家や組合、秘密の組織、あるいは冒険者一行をスパイするという仕事を密かに行っているかもしれない。貴族の館の維持から裁判所の書記官まで、ハーフリングは多くの異なる都市の職務の一部を担っており、もし情報が必要ならば、普通はその情報を知っているハーフリングの一人は見つかるものである。

クラス

シェリアックスにおいて、通常より力強い存在として描かれるクラスもあるが、11の基本キャラクター・クラスは全て存在し、この複雑な国で繁栄を収めている。シェリアックスは、かつては現在の多くの国をまたぐ強大な帝国であったものの、シェリアックスの国境は後退し、この巨大都市の歴史は様々な種類の英雄が誕生し得るものとなっている。

ウィザード

ウィザードは学者や訓練された秘術の学び手として尊敬されている。もちろん、フィーンドの招来と束縛に専門化したウィザードがシェリアックスでは一般的であり、彼らの仕事は至る所で見られる。招来術を学ぼうと他の国から訪れたウィザードは、召喚術を学ぶのにシェリアックスより優れた場所は無いと分かるだろう。多くのウィザードは貴族の徒弟となり、奉仕の見返りとして、援助を受け古代の書物に触ることができる。しかしこの契約の中には、隠れた文言が含まれているものがあり、借金をスポンサーに支払うために仕事を長い時間こなすことになる者もいる。

スポンサーのために働くことに興味の無い個人主義のウィザードは、ウエストクラウンや他の大都市にあるうち捨てられた区域に研究所を置く機会を探している。死霊術や操影の魔法に特に興味をそそられたウィザードはその手の知識を、大都市の破壊された古代の塔を調査することで簡単に見つけることができる。

使い魔を得るウィザード(およびソーサラー)は、「ローグ」項に記載された技能にボーナスが得られる使い魔を選択することを考えた方がよく、キャット、ホーク、アウル、ヴァイパーはとてもよい選択だ。ラット、トード、ウィーゼルもウエストクラウンにおいて人気の選択だ。

加えて、ウエストクラウンの下水道にはトーブルあるいは「粘体蟲」と呼ばれる奇妙な液体状の蟲がはびこっている。トーブルについては、Pathfinder Adventure Path#25巻の怪物図鑑にまとめられている;もし君がトーブルに興味を持ち使い魔にしたいと思うのなら、GMに詳しい情報を教えてもらうこと――トーブルの使い魔は〈製作:錬金術〉に+2のボーナスを与える(これはほとんどの使い魔が提供するボーナスより低いが、ずる賢いトーブルの酸の噛みつきとその特殊な生理機能は、一般的な使い魔に比べると少しだけ強力なものである)。

クレリック

シェリアックスの貴族はアスモデウスを敬愛すると口にはするが、国民のほとんどは他の国と大して変わらない――実際の信仰が抑圧され監視されているだけだ。彼らのほとんどは、アスモデウス信仰の燃えるような瞳の下にいるが、隣国と同じ望みや目的を持つシェリアックスの人々は他の国の人々と同じ神々に魅力を見出す。このような感じで、罪悪感を胸に秘めながら表向き過激な悪魔崇拝者を装っていても、どんな神の信者もシェリアックスで見つけ得る。秩序属性でない神格のクレリックの数は驚くほどに少なく、旅の神官程度しかいないが、あらゆる神格のクレリックがこの国で活動している。ウエストクラウンはかつてエイローデン信仰の中心地だったが、彼の死後100年が経過し、彼の神殿が未だ残っていたとしてさえ、この死したる神の実質的な崇拝者は全員消え失せてしまっている。ほとんどの場合、アイオメデイのクレリックはエイローデンの遺産を崇めて心に刻み込んでいる。

エラスティル、アバダル、そして特にアイオメデイの小さな寺院はウエストクラウンに存在しており、前者の多くは田舎の共同体に、それ以外は大都市にある。アイオメデイ信仰が存在するところには、彼女の一面である統治や正義が、名誉や平等以上に強調されている傾向がある。このことはシェリアックスにおける厳格な貴族の支配層の影響、あるいは上流階級たちが持つ地獄への信仰の力、あるいは生き残る手段なのかもしれない;ウエストクラウンの通りで堂々と善性や公平性について説教することは、自らの教会に面倒を招く可能性がある。

その他の神に帰依するクレリックと信者もシェリアックスに存在しているが、彼らの行動のほとんどは密やかに行われるか、個人レベルのものである。シェリアックスにおいて禁止される信仰はないが、伝統に抗した行いは、いらぬ注目を浴びることになる。その例外はシェリンの教会である。彼女の信者たちは神殿を維持し、鮮やかで美しい公的な(通常は曲芸師や音楽家を招く)式典を堂々と開催する。シェリアックスのいたるところに浸透している闇のために、退廃的な貴族でさえ美の女神の魅力や催し物を我慢することはできないのだ。

ソーサラー

シェリアックス生まれのソーサラーのほとんどが、その超常的な力をたどると地獄の先祖に行き着くというのは、まったく驚くに値しない。ティーフリングは時にその汚れた血脈のお陰でソーサラーの力を発現する;ティーフリングの教育組織のために、ソーサラーは一般にいくらかの疑いの目を向けられる。ソーサラーは訓練されたウィザードと比較して混沌とした制御できないものとしても見られており、そのために秩序を愛する一般市民から更なる猜疑心を持たれている。時折、シェリアックスの外からやってきた、その力が地獄の血脈からやってきたと信じるソーサラーが、自らの起源を調べるためにシェリアックスの街に訪れることがある。そのような探索者は、自らの家系の真実が、壊れた宝物庫の中に埋没して横たわっているか、貴族の所有する図書館に収められた歴史書の中に書き込まれていると信じている。その情報をさらけ出すことには数ヶ月あるいは数年かかることもある――もし存在していればの話だが。

シェリアックスのソーサラーは地獄の血脈であることがほとんどだが、すべての血脈がウエストクラウンにはある程度受け継がれている。存在こそするものの、奈落の血脈はおそらく一番少ない血脈だろう。

ドルイド

シェリアックスの田舎では、農業の追求、動物の統制、天候に関係した要素によってドルイドが居住区を時に支援している。村人はその知識のある老隠者や垣根の魔女をドルイドと認識できないかもしれないが、例え完全に理解されていなくても、普通は受け入れられている。ウエストクラウンのような都市でさえだ。港町でも、水や天候に注力しているドルイドはしばしば助言や援助を頼られることがある。ネズミ、カラス、その他の動物による、ウエストクラウンの疫病に関する問題を救おうと考えるドルイドや、都市化と自然との衝突を和らげようとするドルイドはいつもシェリアックスで歓迎される。動物の相棒を連れてウエストクラウンの通りを歩くドルイドの姿は、珍しいものではない――ウエストクラウンに住むドルイドのほとんどは、バジャー、鳥、ドッグ、ホース、ポニー、ウルフを動物の相棒としているが、日々の生活から気を散らすために奇抜な喜びを探すこの街においては、エイプ、ディノサウルス、スネークといった奇妙な相棒でさえ前例のないものではない。

都市におけるドルイドの中には、万人が楽しめるような公園や庭園を造るという形でシェリンの教会を援助しているものもいる。それ以外の者は、周囲の野生生物の中心にある都市からの侵食を食い止める方法や、都市に野生の要素を導入する手段を探して、ただ一人でいることを好む。大都市における、悪魔崇拝と影の魔法の影響はときどき周囲の野生生物を歪めてしまうため、ドルイドの中には、この腐敗の原因を暴きそれらを終わらせるために全力を尽くそうと思うものもいる。

バード

貴族の家の豪華に飾られた部屋ではバードは大人気だ。闇と倒錯への嗅覚はシェリアックスのバードにとってとても役立つ;上流層の多くは、単なる恋物語よりも怪談を好み、乱れた道徳は、大団円の構成に納得させることを難しくするからだ。曲芸、ジャグリング、音楽家は、いつでも宴会や祭典で引っ張りだこだ。歴史家もまた、シェリアックスに惹かれる。しかし、ウエストクラウンにおいて最大の名誉を獲得できる芸人は概して俳優である;〈芸能:演劇〉に技能ランクを有するバードは、ウエストクラウンの都市においては他のどんなバードよりも圧倒的に有利だ。この国はそうした惨劇と失われた情報でいっぱいの豊かな動乱の歴史を持ち、過去に興味を持つものにとっては本当の財宝のように見える。系図や血塗られた歴史に精通したバードは家系の割り出しで実入りのある仕事を得ることができるだろうが、まずい情報には蓋をするよう用心することだ。

バーバリアン

シェリアックスで成功しているバーバリアンはほとんどいない。時には追放されたショアント人や虐殺された部族のわずかな生き残りがシェリアックスに居住していることもある。それ以外の時には、バーバリアンには最近職務から解放され、自由になった異国民の奴隷が当てはまるかもしれない。そのような者は、過去の悲劇に取り憑かれている傾向があり、その結果、彼らの多くは危険な仕事や退廃的な娯楽を探す、気難しい一匹狼のように見える。自分の故郷となる部族のいた場所を見つけることのできなかったハーフオークのバーバリアンがシェリアックスを訪れることもある。ウエストクラウンなどの大都市でバーバリアンが見つけられる仕事には、単調で辛い仕事――ボディガード、脅し屋、剣闘士、殺し屋など――しかない。しかし雇い人は、バーバリアンの荒っぽさや雑然とした戦い方から、重要人物の護衛などに従事させるほどにはバーバリアンを信用しない;シェリアックスのような秩序立った国では、バーバリアンはほとんどの人々の神経を高ぶらせるのである。

パラディン

シェリアックスにおいては、パラディンはクレリックが受けているものと同じ、多くの苦難に直面している。アスモデウスの信者は通りを堂々と闊歩しており、残忍ではあるが正当なスルーン家に守られている。シェリアックス、特にウエストクラウンやエゴリアンのような主要な都市に住むパラディンは、自らの義心から生じる強い思いを抑え、期待よりも強引に実行される法に従うことに心を配らねばならない。悪に対する善意の攻撃は政府により認められた残忍な報復を招く結果となり、投獄されたパラディンは自由であったときに比べ、悪と戦うことに際しずっと無力な存在となる。しかしながら、この国の支配者たちの堕落が元となり、この国内で直面するものよりも強大な悪が多く存在しており、パラディンは、より頭がよく破壊を好む潜在性さえある悪と戦うことで、シェリアックスの人々が注目するようなすばらしい偉業を行うかもしれない。アバダル、アイオメデイ、シェリンに仕えるパラディンのほとんどはシェリアックスで最も自らの生き方を見つけ、彼らの規律への献身は、人々にとってこの地をよりよいものとするための十字軍としてでさえ、概してこの厳格な社会を十分に満足させるものとなる。

ファイター

ゴラリオンのどの地域でも、ファイターが職を失うのは非常に稀なことだ。シェリアックスの都市においても、ボディガード、財産の見張り、事細かな個人警護の団長、人足として常にファイターの需要はある。ファイターを後継者のトレーナーとして雇う貴族も多い。もちろん、都市の警備団も、訓練を受けたファイターをいつも探している。ファイターの汎用性と経験は、シェリアックスの貴族が有益であると判断する助けとなる。信用できるファイターは価値のある魔法のアイテム、家宝、貴族の後継者などの護衛といった特に重要な仕事を依頼されるかもしれない。しかしながらそうした仕事は危険を伴う;自らの仕事を果たしたなら、ファイターは喉からまずい情報を漏らされるよりは従業員を殺したほうがいいと考えるであろう雇い主から身を守らねばならない。

ヘルナイト

ヘルナイトの秩序だった騎士団はウエストクラウンの非常に大きな要素である。もっとも近くのヘルナイトの要塞「リヴァド砦」(10ページ参照)にはヘルナイトの最古の騎士団――拷問騎士団――が居を構えている。このアドベンチャー・パスの間、「拷問騎士団」は比較的敵対的に振舞うため、ヘルナイトになりたいPCはこの騎士団と関わるべきではない。Pathfinder Chronicles Campaign Settingには、ヘルナイトの他の騎士団に関する多くの情報が掲載されており、Pathfinder Adventure Path#27巻にはそうした騎士団についての拡張された情報を、ヘルナイトになろうと熱望するキャラクターに向けての上級クラスも含めて掲載する予定である。特に、「鞭打ち騎士団」はヘルナイトのPCにとってもっともよい選択である、この騎士団は(他の部隊よりは)組織犯罪に対して非常に真面目に抵抗しているからだ。

その上級クラスの詳細についてはここでは述べないが、15レベルあるヘルナイトの上級クラスになるためには、君のキャラクターは以下の条件を満たす必要がある:

基本攻撃ボーナス:+5

武器の習熟:すべての軍用武器に習熟していなければならない。

鎧の習熟:重装鎧に習熟していなければならない。

属性:秩序なら何でも。

特殊:他のヘルナイトが証人となる特別な儀式の一部として、君はデヴィルを打ち負かさなければならない。この儀式の詳細はPathfinder Adventure Path#27巻に掲載されるが、キャラクター作成や初期のレベルの間にそう心配する必要は無い。

モンク

シェリアックス人には素手戦闘の専門家の価値を理解しているものが多い。政治的取引や秘密会議のほとんどでは武器の持ち込みは禁止されているため、その場所ではモンクは極めて価値が高くなる。貴族は武器が無い状況であってさえ自衛できる能力によって後継者を武装させることを賢明と感じる。いくつかの理由により自らの組織を捨てることを強いられたモンクは、シェリアックスでトレーナーとしての仕事をしばしば見つけることができるだろう。

レンジャー

レンジャーはシェリアックスを放浪する多くの理由を見出す。他の地で見ることのできない歪んだ獣たちがこのデヴィルの帝国には数多く存在し、特に珍しい種を狩る、あるいは手なずけようとするレンジャーを魅了するのである。クリーチャーの追跡や破壊に特に心を傾けたレンジャーは主要都市でさえ職を見つけられ、この国が多くの原野を保持していた統治の数世紀後の現在であってもそれは変わらない。あらゆる種類の暴漢や山賊が国の至る所を退廃させる原因となっており、人型生物を狩ることに長けたレンジャーは、都市の警備団や貴族から役に立つ者として声をかけられる。シェリアックスの都市にある古代の、時に倒壊した通りでは、暴れ続ける精霊が彷徨しており、現代を生きる冒険者たちが探す財宝を守り続けている。もちろん、悪魔崇拝者によって統治されている国では、フィーンドの血を引くものを狩ることを好むレンジャーは極めて価値があり――そして極めて危険な存在と認知される。

盗賊議会において、レンジャーの得意な敵として最もよい選択は(五十音順に並べると)以下の通りである:アンデッド、人型生物(人間)、来訪者(悪)、来訪者(原住)、来訪者(秩序)。その次によい選択には異形、人型怪物、人造、動物、人型生物(巨人)、フェイ、魔獣が含まれる。このアドベンチャー・パスでは、あらゆるモンスター種別と戦う可能性があるが、ここに述べたものは登場する機会が多い。

レンジャーの得意な地形として最もよい選択は地下と都市である。その次によい選択には森林、山岳/丘陵、湿地、水中が含まれる。それ以外の得意な地形の選択は盗賊議会アドベンチャー・パスにおいては有益な選択とはいえない。

ローグ

道を踏み外した居住者や黒い噂にもかかわらず、シェリアックスは法と秩序を強く重んじている。この国のデヴィルとの繋がりと生来の支配欲は、シェリアックスの民に“法に従うこと”へのある種の尊敬を感じさせるように影響を与えている。しかし、最高に秩序を維持しこの都市を支配している貴族でさえ、熟達したローグの使い道を常に見出すことができる。シェリアックスの厳格な法と用心深い歩哨は、チンピラの結集と無法の思惑の大半を始まる前に終了させる一方で、より繊細でより組織化された犯罪事業の努力を実質的に推奨するという素晴らしい両面の成果を上げた。エゴリアンとウエストクラウンの為政者たちは存在を否定しているが、両都市には、この地に浸透している犯罪組織に関する想像力に富んだ噂が飛び交っている。

貴族も密偵や屋敷に潜入する者をたびたび使用する。稀なことだが、ライバルの家系から金品を盗み出すために、盗賊たちが使用されることもある――そのような行いは無作法で品の無い行為だと見られる。しかし暗殺は、貴族社会において尊重される昔からの伝統であり、暗殺者、誘拐業者、密偵はシェリアックスで仕事を見つけるのに困ることはほとんどない。

ローグ(あるいは、多くの技能をとることのできるキャラクター)は盗賊議会において以下に示す技能に特に多くの技能ランクを割り振ることを考えるとよいだろう:〈隠密〉、〈芸能:演劇〉、〈言語学〉、〈交渉〉、〈呪文学〉、〈真意看破〉、〈装置無力化〉、〈知覚〉、〈知識:なんでも〉、〈はったり〉、〈変装〉、〈魔法装置使用〉。

盗賊議会のキャンペーン特徴

あらゆる職種がウエストクラウンの人口を構成している:英雄、ならず者、悪魔崇拝者、聖徒、そしてそれらの中間など。このガイド、「Pathfinder Companion: Cheliax, Empire of Devils」、そして「Pathfinder Character Traits Web Enhancement」――パスファインダーRPGのルール用に最近更新され、paizo.comにて閲覧可能――は君のキャラクターに変わったところを付け加える為に設計されており、より個人として特徴的なものにし、標準的なクラスのものと差別化し、そのキャラクターの歴史に肉付けをする手助けとなる。ここに示すのは、盗賊議会アドベンチャー・パスに参加するキャラクターに向けた、いくつかの特別なキャンペーン特徴である。

キャンペーン特徴

キャンペーン特徴はあるアドベンチャー・パス専用に仕立てられたもので、新しいキャンペーンの最初の冒険を始めるためにあらかじめ組み込まれた理由をキャラクターに与える。一部のキャンペーン特徴は、君が別のPCとの既存の関係を自分のキャラクターに持たせてこのキャンペーンを始めようと決める場合、共同作業の利益も与える。

キャンペーン特徴は他の特徴に比べてキャラクターの背景について多くが記載されており、それらの想定の多くは君の歴史においてキャラクターを形成する幼少時の出来事でなく、ごく最近のものだ。君は、選択した自分に合うキャンペーン特徴が想定している背景をある程度調整したり変更したりできるが、背景を修正する前にGMに許可を得ること。

以下に述べる特徴は、すべて盗賊議会アドベンチャー・パスの重要な要素となる。これらの特徴を、このアドベンチャー・パスにおいていつか直面する敵の種類や問題に関する情報として、ネタばれを気にすることなく読み解いて構わない――意図してそのような記述を行っている。盗賊、影の怪物、デヴィルといった要素が登場するだろうことを知っていれば、君が参加しようとしているこのキャンペーンにより合致したキャラクターを作成することができるだろう。以降に述べる特徴は、冒険者、傭兵、解放奴隷、警備兵、監視つきの悪漢などの落ちこぼれ集団としてキャラクターたちをまとめあげるように作られている。

〔陰謀の狩人〕/Conspiracy Hunter:君は「ウエストクラウンで悪事が進行中である」という噂を長い間耳にしてきた。追跡されることも疑問に思われることも無いまま失踪した、貴重品の積荷。まるで初めから存在していないかのように、姿を消す人々。幕の裏側でのつながりについてこそこそ話す貴族やビジネスの王と、彼らですら従わなければならない主人の不慮の失脚。ウエストクラウンの裏社会を支配している王は何者なのか? はるか遠いところにあるという犯罪組織の物語は、真実のヒントになるのだろうか? 何年も前にこの都市から追放されていたといわれている伝説に名高い盗賊議会は、何らかの形で生き残ったか再び作られたのだろうか? そして今日、何がこの都市を掌握しているのだろうか? 君はそれらについて何も知らないが、見つけようと決心している! 以下の技能から一つを選ぶこと:〈はったり〉、〈交渉〉、〈知識:地域〉、〈知覚〉、〈真意看破〉、〈隠密〉。君は選択した技能に+1の特徴ボーナスを得るとともに、それは常に君のクラス技能として扱われる。

〔ウエストクラウンの扇動者〕/Westcrown Firebrand:この世界にはままならない問題がある。既婚者は愛する者が仕事から安全に帰ってくる日を、希望と恐怖を綯い交ぜにしながら来る日も来る日も窓辺で待つはずではなかった。両親は近所の人に何が起こったのかについて質問される時に、子供の口をつぐませるはずではなかった。市民は衛兵が自分の旧友を通りで殴りつけているときに、目をそらすはずではなかった。ウエストクラウンの人々は、もう十分に、長い間苦しんできた! いまこそ変革の時だ。しかしどうやって? 街全域に布かれた外出禁止令の後の自由な考えを持っている者たちの集まりの噂を、君は耳にした。ひょっとしたら、彼らは君の理想を共有してくれるだろうか? 君は肉体的にも精神的にも機会に目敏く、突然ではあっても迅速な行いが多くの闘争を解決する最良の方法であることを知っている。君はイニシアチブ判定に+1の特徴ボーナスを得、不意討ちラウンドに行動する際、あらゆる攻撃ロールに+1の特徴ボーナスを得る。

〔汚名の子〕/Child of Infamy:君の家族は、長い間ショー・ビジネスに関わってきた。君の両親かもしれないし、兄や姉かもしれないし、おじやおばかもしれない――いずれにせよ、君の近しい血縁者は今も有名で人気のある役者であるか、かつてそうであった。その血縁者は妥協して死に、そのばつの悪い手段は君の家族の名声をほとんど変えることはなかった――変えたとしても、その不幸な死は名声を増した。人々が君の姓を知ると、彼らはすぐに「あのツキのなかった血縁者のように、君も大変な生活をすごしているんだろう」と決め付け、君がこの汚名を甘んじて受けるか、血統を隠すために最善の努力をするかどうかに拘わらず、芸能界との数年のやり取りは効果を持った。君は確かにその血縁者の才能を受け継いでおり、並外れた体型を持つか、演劇じみた振る舞いで辺りの注目を惹けるか、あるいは狡猾に感情を操作できた。君は〈芸能:演劇〉技能判定に+1の特徴ボーナスを得るとともに、君にとってその技能は常にクラス技能として扱われる。さらに、君は関係者の資産の一部を受け継いでおり、望むならば消費できる300GPの貯蓄を持ってゲームを開始する。

〔影の子〕/Shadow Child:ウエストクラウンは長い間奇妙な呪いで痛めつけられており、夜毎に起こる荒廃は影を狩る恐ろしい獣たちも連れてくる。誰もそれら夜の恐怖がどこからやってくるのかを明言することはできない――神秘的なニダルのウィザードを疑うものもいれば、エイローデンの凋落により引き起こされた呪いだと言い張るものもいるが、何らかの影の多い首謀者がウエストクラウンの北の遺跡の深淵から漆黒の輩を操っているのだと主張するものもいる。真相が何であれ、ウエストクラウンの人々は長い間、君ではなく夜を恐れている。君の目標は、闇の中に隠れる獣どもから暗黒を取り戻すことだ。君は暗闇に自分を順応させ、そうして、ほとんどの者よりも影の中でより精密に行動する。君は薄明かりの中にいる目標に攻撃する場合であっても、攻撃ロールで薄明かりによる20%の失敗確率を受けない。

〔地獄の落とし子〕/Infernal Bastard:君はティーフリングだ。君は逃亡奴隷か、隠された不名誉か、住むところのない放浪者かもしれないが、君がどのように養育されたにせよ、生きることは君にとって特に厳しいものであった。君は大いに苦しんできた、ある冬は餓死する一歩手前まで追い込まれ、ある夏は人種差別の船員に撲殺されかける、といった具合で。それらの経験が、君を冷酷でシニカルな悪党にしたか、敬虔で希望に満ちた楽天家にしたかは君次第だが、一つ確実なことがある――君はティーフリングとしてさえ不十分なのだ。ひょっとしたらそれは君の辛い人生によるものかもしれないし、フィーンドから受け継いだ遺産に何か失敗があったからかもしれないが、君はティーフリングが生来持っている[氷雪][雷撃][火炎]の抵抗を失っている――その代わりに、君はそれらの効果に対するセーヴィング・スローに+2のボーナスを得る。同様に、君はダークネスを擬似呪文能力として1日に1回使用する能力も持っていない――その代わりに、君は0レベル呪文から1つを選び、回数無制限の擬似呪文能力として使用する能力を得る。

〔立ち上がった悪魔崇拝者〕/Diabolist Raised:君は人生のすべてを、悪魔の所有物であるシェリアックスの支配の中で生きてきた。君はこの国の宗教に対して少しも関心を持ってはいないが、世界でもっとも壮大なるこの帝国においては宗教が生きる手段であるのに帝国の統治者の信仰を疑う君は、何様なのだろう? 君はより理想主義的な友人たち幾人か程には確実に愚かではなく、私的な自由と平等主義的な統治について奇妙な理想を持っている――そのより理想主義的な友人らに起きたことを誰が口にできるというのだ? 君は地獄とその厳格なる支配者の揺るがぬことを知っており、君はデヴィルを見た事さえあり、彼らを制御する力を以って、デヴィルをどのように使役するかを理解しており、そしてこの国の闇の信仰を知っている。君は自分はデヴィルの利益を享受する者になるまいとしているが、シェリアックスに生きていることは事実であり、裏側でうごめいているものについて知っておくというのは常によいことだ。悪魔崇拝の知識により、君はウエストクラウンの貴族に対する〈はったり〉、〈交渉〉、〈威圧〉、〈真意看破〉の判定に+1のボーナスを得、君はデヴィルからの[精神作用]攻撃に対するセーヴィング・スローに+1のボーナスを得る。

〔パスファインダーの亡命者〕/The Pathfinder's Exile:ウエストクラウンの荒廃しているパスファインダー支部「デルヴヘイヴン」は長い間、君の想像を掻き立てるものだった。悪魔のような支配者の命によりデルヴヘイヴンは強制的に閉鎖され、ウエストクラウンのパスファインダーは追放され、彼らが持っていた無数の冒険から得られた公開されていない知識と財宝は、この都市に残されたままになっている。今日、恐ろしい噂と闇の魔法の境界の下に「デルヴヘイヴン」は横たわっており、官僚的な赤い帯により支部は保護されており、不法侵入は阻まれている。密かに不正規な連絡を受けたパスファインダーの遂行者である君はシェリアックスでの彼らの冒険を手助けすることに楽しみを感じている――デルヴヘイヴンに調査の目を殊更に向ければ、そこは長年探し求めていた冒険でいっぱいだ。驚くべきことに君は数日前、この国の裏で活動している名もなきパスファインダーからメッセージを受け取った。彼は君にこの支部を調査してアブサロムの協会本部に調査結果を報告することを頼むとともに、使い古して色あせてはいるものの、まだ機能するウェイファインダーを送った。君はこの見知らぬ人に、このアイテムの費用として500GPを返済することを己に誓ったが、それまでの間、このアイテムは君のものだ。ウェイファインダーは魔法のコンパスであり、道に迷うかどうかを決定するための〈生存〉判定に+2の状況ボーナスを提供し、標準アクションとして、呪文と同様のライト(CL5)を放つことができる。パスファインダー協会とウェイファインダーのより詳細な内容については、Pathfinder Campaign SettingあるいはPathfinder Chronicles: Seekers of Secretsを参照のこと。

ウエストクラウンを取り巻く環境 Westcrown Environs

ウエストクラウンは古い秩序の最後の名残であり、「三重に忌まわしきスルーン家」により築かれた新しい悪魔のような法がこの国のここ以外を支配下に置いてから、貴族制がしぶしぶ逃げ延びた場所である。黄昏時に薄れゆく暖かさと同様、ウエストクラウンにかつての栄光が残っているとしてもそれは亡霊であり、不可視の脅威と死を招く影による衰退の病に冒された夜でいっぱいの倒壊した北区には、古の、様式の折衷した建造物がひしめいている。

この街こそ盗賊議会アドベンチャー・パスの舞台だ。ウエストクラウンについてのGM向けの完全な資料は、PathfinderAdventure Path#25巻に掲載されているが、以降の情報はこの輝けるメトロポリスを取り巻く地域、地獄の貴族制の視界のすぐ外であらゆる種類の英雄たちが一旗揚げられるであろう小規模な共同体や農家のひしめく土地の概観として設計されている。ウエストクラウン生まれのキャラクターを作成しようと思うプレイヤーは、プレイヤー向けのこの都市のサマリー「Pathfinder Companion: Cheliax, Empire of Devils」を参照すること。

ウエストクラウンの礎 Westcrown’s Foundations

ウエストクラウンの島々と西岸に興味を持つ者もいるが、この都市にあまり注意を払っていない者がほとんどだ。つまるところ、拷問騎士団が目を光らせているため、「今日確かなことを超える過去の混乱」について考えないことが肝要となっている。ウエストクラウンのまわりの様々な僻地に隠されている物は、それらを注視する者にとっては歴史のかけらなのである。まず明らかなことは都市の通りの下にある下水道と水路、そして今なお残るパレゴ・レジコナの運河だ。アンドーラン式の、タルドール式の、そしてジストカ式さえある追加の建造物の例や断片は、都市の下で見つけられる。

都市の地下に挑む者は、シェリアックスの民によるものではなく、何百年も前の開拓者により作られた下水道の水門と分流がそこにはあることを知っている。下水道は時がたつにつれ広がっていき、単なる地表にもっと大量の(但しもっと小さな)島々があった頃にはそれらは天然の洪水を起こす水路や、初期の住居に沿った運河であった。西岸もまた元々の土手を奥に拡張したものであり、島々の内側にはぬかるんだ浅瀬の中に倒れたあるいは沈没した建物や道がいっぱいだ。定命の者の世界に誉れ高きエイローデンを帰還させる為のシェリアックス人の計画の一部であるスパラ半島の強化と完成は、ここたった1000年の間の話だ。

アディヴァスIV世の誓約――「わが家系の血が残るところでは、電光の源から脚元の最も深い洞窟まで、その土地への所有権は熱く燃え盛る!」――にまだ従う多くのシェリアックスの貴族にとって、都市の真下にある水域や穴に潜り込む人は非常に危険な存在である。つまり、彼らの土地所有の概念は、その上の空域と彼らの下の地中まで(地中で発見されたものも)を含んでいるということだ。「失われた都市」の吹き溜まりの周りを右往左往するのが最良の通行方法であり、最悪が窃盗や器物損壊で、ここで公職のものに捕まったなら、しばしば問答無用で殺されることになる。

ウエストクラウンの地域 The Westcrown Region

ウエストクラウンでの日常生活に重要な場所の多くは、惣構の内側にあるわけでも街の水域の上にあるというわけでもない。ウエストクラウンの権力者の多くは、影響力を強めたり他者を従えるために、こうした場所や構造物を使用したり、そこの影響力を利用したりする。さらに、南アディヴィアン地域の地理や環境は、そこで生活する者と彼ら支配する者全員に影響を与えている。興味深かったり影響力のある場所はいくつもあるが、抜粋して以下に記述する。

アディヴィアン川/The River Adivian:力強い南アディヴィアン川は、東側に位置する激流セレン河と流れの激しさ、神秘さと水深、この地域の交易と移動における重要さで比肩しうるほどだ。広く緩やかな流れの場所が多いが、ジェムクラウン湾に近付くにつれ力強い流れとなる。なりたての探検家や一部の交易商が今日も大いに不便に感じているのは、アディヴィアン川では様々な理由のために大きな船がウエストクラウンから80マイルを超えて遡上できないことだ。ゴズラン月の終わり2週間、メナドール山脈の雪解け水が悲哀湖と河川に流れ込み、最大で2フィート深さを(それに従って流れも)増す(そして場所によっては1/2マイルほど川幅が広がる)。加えて、多くの場所の川床が変化し、多くの船を沈没させるごつごつした岩の浅瀬を隠してしまう。シェリアックスの西部において、この川や湾で失われた物品や宝物を探すのは、無謀な仕事だ。

アディヴィアン橋/Adivian Bridge:ヘルナイトの拷問騎士団はこの都市から西北西へ1マイル向かったところにある、アディヴィアン橋に駐屯している。シェリアックス人により建造されたこの橋はダンフロウ川水面から30フィート以上上にあり、その橋の両端にある城門それぞれには20人ほどのヘルナイト――最低でも4人のシグニファー(術士兵卒)とパラリクトル(尉官)1人――が配置されている。それぞれの門に据え付けられた2重の落とし戸を使えば、警備兵たちは旅人を門の間に捕らえ、頭上にある岩落としの下に放置できる。

ヴァリグナス峡谷/Valignus:「燃える谷」はリヴァド砦の南西のすぐそば、拷問街道の北に位置しており、曲がりくねってリクトル門に続く。何世紀もかけて多くの船が峡谷の斜面を摩耗させ、不均一な天然の競技場にした。ヴァリグナス峡谷の下にある人間ほどに大きな焦げた燃えカスは、リクトル(将官)のアルマンソールによって毎月行われる「明快なる火葬」(焚書)の無言にして雄弁な証拠だ。没収された「面倒な資料」を夕方から明け方まで焼いた後には、それらの周りの地面や燃えカスのかたまりは少なくとも5日はくすぶっている。

三連滝/The Three Falls:悲哀湖とジェムクラウン湾の間にある南アディヴィアン地域には900フィートの上下差があり、川には多くの急流や3つの滝の集まりがある。これらの滝全ての下にある浅瀬と岩石によって、浅瀬用の艀や急流に乗れる非常に小さな船でもなければ、いかなる船であっても通ることはできない。このため、河川運輸の大半は貨物用艀と「アデルス船」(陸上の四頭立ての馬車の代わりに、個人的な輸送に使用されるシェリアックス独自の艀)により行なわれている。AR3875年から、滑車とロープでできた仕掛けにより、リカン滝以外の場所では荷物をいっぱいまで積んだ艀でも引き上げられるようになり、リカン滝では、岸に沿って商品と艀を陸運水路により運ぶ必要がある。ウエストクラウンから北上すると、川を昇って最初にぶつかるのが26マイル先にある5フィートの瀑布が3つある場所スリー・タンブル・プールだ(最も危険な場所は2つ目と3つ目の滝の間にある非常に浅い水域にある)。次にあるのはチャルラカの涙であり、ウエストクラウンから33マイル北に位置し、巨大な丸石が川底から張り出して川を2つの滝に分割している。名も知られていない芸術家が、悲しむアズラント人の女性の表情をこの丸石の下流側に彫り込んだ。西側の滝は狭く、高さ15フィートの峡谷の壁のすぐそばで深い水域に向けて高さ7フィートから流れ落ちる。東側の瀑布は岩がちな斜面の浅瀬まで4フィートしかなく、そこでは東の峡谷の壁か東側の川の水面のすぐ下にある岩に向けて船を動かしてしまう。17マイル北には3番目の、そしてもっとも有名な滝がある。下に幅4マイルの湖が広がる高さ15フィートの馬蹄形の滝であるリカン滝の名は、「遙かなる開拓地旅行記」のアンドーラン人執筆者に由来しており、彼はAR1896年、最初にこれらの滝について記し、およそ40年後にアルマスにおいてこの旅行記を出版した。

スタヴィアン水路橋/The Stavian Arches:初めて公式訪問を行った際に起こったアディヴィアン川をのぼる出航の失敗に対する抑えられない怒りにより、タルドールの皇帝スタヴィアンI世は技術者やウィザードに「かつて私があらゆる障害に対して行ったように、汝らの皇帝がこの川を征服する」方法を見つけ出せと命じた。彼らは川のそばにはじめは木材で、その後は石材で弓状の建造物を造り上げ、滑らかに川岸を削り、滝よりもなだらかな坂になるように岸に砂利を敷き詰めた。AR3850年、小さな船が、滑車とロープにより滝のそばを通って引き上げられるようになった(強制的に集められた奴隷も必要とされ、彼らの多くはこの橋のそばの小さな村の住人だった);AR4100年には、見事な石製の橋により、中規模の船もアディヴィアン川を横切ってリカン湖へ至れるようになった。AR4085年(訳注:誤記と思われるが原文に従った)に完成した第3スタヴィアン水路橋――リカン滝の西岸の大規模な範囲を占める――によってもっとも大きな船でさえ上流へのぼって悲哀湖まで上げられるようになった(その船と商品を水路の傾斜に引き上げられる奴隷が十分にあればの話だが)。シェリアックス内戦の終了以降で最大の反逆行為は、AR4660年におきた第3スタヴィアン水路橋の破壊であり、これによりまた大きな船の遡上はできなくなり、シェリアックスの首都へ簡単には向かえなくなった。水路橋の再建は試みられたが、帝国監督官の暗殺と働いていた奴隷の解放や虐殺により失敗した(どちらの事件も、スルーン家の問題を引き起こした)。

ダンフェンス湿地/The Dhaenfens:この名は黄昏都市の西北西25マイル以上先にある、アディヴィアン川上流域の終わりに位置する丘の尾根にある何十ものせせらぎ、浅い水たまり、湖、沼地をひっくるめたものである。こうした水浸しとなったこの低地の中には、多くの種類のアンデッド、ハグ、ウィル・オ・ウィスプが生息し、ハーピーの金切り声が聞こえてくる。

ダンホールド城/Dhaenhold:この長きにわたり遺棄された城は、ダンフェンス湿地における植物の繁茂と生物のために腐り、ぼろぼろに崩れている。“発狂した”ラークエッサ・オラーラ・ダンと彼の父、“狂気の”ラークェス・ローカー・ダンが長い間守り続けてきた宝について語る噂もある。彼らとその一族はウエストクラウンに住む敵からこの沼地の深みに逃亡するのに充分な力を保持していて、闇より引き出した石から3階建ての城を建造した。「最後には、恐ろしき魔法が使用人、兵士、息子を腐敗したアンデッド・モンスターに変え、そして娘は、沼じゅうを徘徊する泣き叫ぶ幽霊になった」と物語には綴られている。何十人もの冒険者が、オラーラの宝や悪魔の知識を求めてダンフェンス湿地に入っていった。このような冒険から帰ってきた者の話を聞いた者は、ウエストクラウンにはほとんどいない。

チュラニア丘/Turanian Hills:ウエストクラウンの周り何マイルにも渡る沿岸地域は、そこに位置するチュラニア丘と同じように起伏のある地域である。オリーブ、ブドウなどのベリー類や果実のなる木がこの丘を覆っているため、この土地は多くの交易品を得ることで裕福になった。また、流れ込むアディヴィアン川と多くの河川がそれらの丘を分断し、その粘土層をあらわにしている。粘土層は悲哀湖の周りでは栗色をしているが、アディヴィアン川では独特の赤い色をしている。この粘土は焼かれると、他のどこにもないような独特の緋色の陶器になる。スリー・タンブル・プールとリコーン滝群との間でとれる粘土は特に鮮やかな赤色になり、春の雪解けの際、峡谷の壁から血を流しているように見えることから、この粘土は「血の土」という名でもよく知られている。

塚森/Barrowood:悲哀湖のはるか北には事実よりも物語に彩られる塚森がある。人々が知っていることは、そこに生えている木々は下流域や大陸の東の交易人や職人にとって非常に価値があるということだ。ウエストクラウンの造船工が管理している「塚楢」は黒く艶があり、余分な重みがないため、これを素材にすれば通常では考えられない操縦性や堅牢製をもつ船が完成する。ウィザードたちは、更に珍しい、極めて容易にワンドやスタッフとして魔力を付与できる硬い木材「陰楓」について語る。一方でウエストクラウンから300マイル近く離れたところにある塚森は、ウエストクラウンの交易人や職人にとって垂涎の的だ。噂によるとこの森奥深くにはエルフの小さな集落があるが、彼らは現状を保とうとし、旅人を避ける傾向があるという。

リヴァド砦/Citadel Rivad:黄昏都市から西へ馬で一日弱の場所に位置する丘には、シェリアックスにおいて最大の禁域の一つがある――ヘルナイトの原型の最初の1つである「拷問騎士団」を生み出した丘の上の砦だ。かつてはアンドーラン貴族の長期流刑地であったリヴァド砦は、今では不吉な壁、2つの門、周囲を囲む鉄条網を持った銃眼付きの胸壁に覆われている。薄暗い、3つの塔を持ったこの要塞は、全方位の視界を兵士たちに提供する。囲いの中にある7つの建造物には150人の騎士団の兵士、付添いの奴隷、雑務用の使用人と管理者が駐留している。最初のヘルナイト騎士団の最高の所有地であるリヴァド砦は、多くのヘルナイトから誉れ高き駐屯地として人気がある。

リカン港/Rikkan Ports:川下を旅する際には多くの問題があるため、湖岸にある2つの小さい港町が成長することになった――ウエストプールと東リカンである。いずれも人々が休憩できる多くの旅館、宿屋、休憩所を抱えている。また、どちらも品物を買い求める商人に欲しいものを提供し、彼ら自身や大荷物や奴隷、雇い人を上流へ運ぶ。スタヴィアン大水路橋により、ウエストプールは大きな共同体となり、現在は滝に沿って広がっている。他方、東リカンは滝より下にあり、より多くの漁師を抱え、旅人がよりアクセスしやすい港を保有している。多くの者が、この地にあるスタヴィアン大水路橋を破壊した人物はまだこの地にいて、地獄の女帝の栄光への不満を誘っていると信じたため、AR4674年以来帝国軍は頻繁にウエストプールを占拠し、スルーン家の統治に逆らう革命軍と内通者を捜索した。ウエストプールの市長ティバルト・クロシーニは、宮廷にいる特定の家系の敵の船と乗組員を徴発し、強制的に奴隷にすることで多くの権力と利益を得た(この事件は「アディヴィアン橋の崩落に伴うヴィスマルグレイヴ」と呼ばれている)。これにより彼は(船でなければ)商品の上流への流れと、悲哀湖とエゴリアンへの輸送用のウエストポリタン様式のアデルス船への積み込みを維持できるようにもなった。

リファドナ/Rifardona:「エイローデンの砂州」という名前を持つにも拘わらず、リファドナは、実際にはアディヴィアン川を流れる泥と残骸により補強され確立した、大規模な砂州である。僅かに弧を描いた堤は12マイル以上の長さがあり、どこでも水面から5フィートを超えて盛り上がらず、厳しい潮汐から河口を守るとともに、海軍の侵入による直接的な襲撃からウエストクラウンを守っている。リファドナの南の浜に打ち寄せる波の下には、何十隻もの沈没船が横たわっているのは、無謀なる冒険者や傲慢なる操縦者、あるいは単なる航海士といった犠牲者が、北の港にあるエイローデンの見事な彫像に目を奪われてしまったからだ。何百隻もの難破船は、こんなにも長い間、この都市が強国のまま東方において「知られずに」いた理由を教えてくれる。川の水と海水が混ざる汽水域に安全に入るためには、遠洋航海船はこの湾の東西にあるジェムクラウン断崖に沿ってジグザグに進み、北の岸を2マイル以内に収めて曲がらなければならない。ジェムクラウン湾とリファドナの間で守られるこの黄昏都市は、潮流や嵐にもほとんど悩まされない。

河川勅令 The River Edicts

ウエストクラウンとその周りの水域を運行する人は河川勅令とも呼ばれている旅行法について知っており、理解もしている。誰も――帝国軍人でさえも――リコーン滝群の南から公海までの水上旅程を止めることはできない。(帝国の印も法もなく旅程を止めるなら、不法なる障害による海賊行為として起訴されるだろう。)ドゥクソタル、地方ドッタリのドゥロタル、都市の帝国海軍司令官によって権力を与えられた者からを除き、ウエストクラウンの運河が妨げらたり閉じられたりすることはない。帝国の水域――運行している帝国の船の周囲50フィートおよび係留された船の周り100フィート――への権限のない侵害は、予告なしの攻撃と潜在的な死によって罰せられる。岸から船への攻撃は、都市が所有する防衛力にのみ許可されている。河川勅令を理解するのは簡単であり、その抜け道を見つけるのは時間潰しにもなる。一般的には、以下の見解でこの法律を回避する。帝国の公務中の者を除いて、港や川中を旅する者や入港する者にとって、義務となっている操船余地はない。(一時的にせよそうでないにせよ、埠頭を管理する者なら、誰でも船の入港を拒むことができる。停泊に法外な料金を課さない者は、停泊した船の警護に料金を追加するかもしれない。)

最終更新:2021年07月11日 07:37