問1
3問とも、辞書の定義から考えれば一発で答えが出る。ウについては、①の「けはい」を選ぶ人がいるかもしれないが、「気配」であるとするならば、なんらかの人や動物や生き物などのそこに存在していることが必要であり、文脈と照合すると、弟が感じ取っているのはあくまで夜の光が露わにした異様な世界の「風景・景色」なので、「けはい」はNG。
問2
弟が自分のことを「乳飲み子のように道理をわきまえない子」だと考えている理由を探る。すると直前で、弟「帰ろうよ」→兄「お金をもらったら帰る」という会話があり、さらに「弟の目には兄がおとなっぽく映った」とある。ここから「おとなっぽく←→乳のみ児」の対比が確認でき、「お金を得るという目的の達成を諦めていない兄と違って、そこから逃げようとする未熟な自分に腹立たしく感じる」というポイントが得られる(根拠a)。そして傍線部直後の「いったい兄は皿の桃をどう思っているのだろう」や「どうして平然とおちつきはらっていられるのだろう」という表現から、弟から見た兄について「「輝くばかりの桃に全く動じない兄」というポイントもあたらに得られる(根拠b)。この2つを合わせて、「桃にも動じず、お金を得ることだけを考えている兄に比べて、その場から逃げようとする未熟な自分に腹立たしさを感じている」という趣旨のものを選べば、④しかない。
問3
「要するに」という接続語と「こんな」という指示語から、直前に対応する内容があると考える。すると、
【社長ともあろう方=昔自分のことを「世話」するぐらいの高い地位にいた社長】
が、
【こんなケチなペテン=「屑米と糠」を「たっぷり混ぜ」るという行為】
をしたことに対して、
【残念=「あんまりみくびってもらいたくない」】
と思う気持ち。
という形で整理することが出来る。これを踏まえているのは、⑤しかない。
問4(これが一番解説に苦労しますねぇ。)
まず、傍線部に注目すると、「まあ何だな」「~しさ」といった口調で書かれている。このような言い方をしていることにはどんな意図があるのかを考えねばならない。なぜ、「桃を食べなかった」という自分の行動をわざわざ振り返っているのだろうか。そのことを確認するために、傍線部周辺から兄の心情を拾う必要がある。まず、傍線部直後からは木犀の話に移るので傍線部より前が根拠拾いの範囲である。すると、弟が異様な夜景に惹かれる中、兄は、「どうしよう」「がっかりしたな」という表現からも分かるように「不安/落胆」の気持ちである。これは要するに「お金が手に入らなかったことへの悔しさ」と考えることが出来る。そういう中「桃は食べなかったしさ」というセリフを言っている、という文脈をまずは確認する。
その上で、次に「桃は食べなかった」という行為の意味を考える。問2(傍線Aの問題)で確認したように、弟が桃に関心を持つ中、兄は桃には無関心であった。この行為は、「自分の役目を果たすために唯一なしとげられたこと」と言える。つまり、兄は、「桃を食べなかった」という自分の唯一の成果を自分で口にすることで、「不安/落胆」の気持ちを少しでも紛らわそうとしている(orやわらげようとしている)のである。しかも、傍線部の数行前には「『なんだよ』」「とげとげしい返事」とあり、一種の「強がり」な気持ちが表明されている。このこととリンクさせればより確信が持てるはずである。結局、この設問は、兄が持つ「強がり」と「不安」というアンビバレントな心情が描かれていることを確認させる設問だったのである。このことを踏まえれば、③が答え。
問5
「本文を通して」とあるが、まずは傍線部とその周辺を分析するべきであり、必要に応じて傍線部から離れた箇所も確認すればいい。傍線部を参照すれば、兄と弟の見ているものが違う、ということが確認出来るので、「兄の見ているもの」「弟の見ているもの」という2つのポイントを拾っていくのがまずやるべき作業である。すると、弟は目の前の異様な世界の光景という、幻想的なものを見ていることが分かる。一方、兄については、「ここはどこだろう」と言って震えており、また、「え?」という返事からも分かるように弟に同調することが出来ていないため、目の前の(現在の)状況を見ていると言える。こうした2人のすれ違いが把握出来る。この段階で選択肢チェックをかけてもいいが、こうした対比とほぼ同じことを問うていた問2に遡ってみると、現在の状況を見ている兄と、目の前の桃を見ている弟、という対比があり、ここまで確認すれば解答のポイントに確信を持つことが出来るだろう。その上で選択肢を見れば、即答で①がマーク出来る。
問6
「木犀」の役割を問うているので、傍線部Cの次の行から改めて確認していけばいい。すると、以下のようなことが確認出来る。
a)兄の「さがしてみよう」という発言から、今までお金を得られず「がっかり」していた兄とのギャップが読み取れる。つまり「木犀」が「不安(or現実)からの解放感」を兄弟(少なくとも兄)に与えている。このことは、数行後の「月の光のもとで何かをさがすというのは秘密めいた昂奮をおぼえるものであり、店での屈辱を忘れることもでき」というところからも確認出来る。
b)弟が兄との別行動を「ためらった」ために、2人で一緒に木犀を探している。このことから、木犀は「兄弟の絆」を(読者に)印象付けるような働きもしている。
c)しかしながら、木犀を追い続けて遠くまで来た兄弟の中には、問5(傍線D)で確認したような「心情の対立」が生じている。このことから、木犀は、この文章全体を通して描かれていた「兄弟の心情的対立」「兄弟の性格の違い」を改めて確認させるような働きもしている。
以上を踏まえて選択肢を参照すれば、
①→aを踏まえている
②→木犀は結局見つからなかったのだから、「何かを強く望めばそれが手に入ることもあり得るという実感」は明らかに×。
③→aとcを踏まえている
④→bを踏まえている
⑤→aを踏まえている
というふうに分析でき、②が答え。
最終更新:2023年11月27日 02:40