アール・ヌーヴォー

Art Nouveau



19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパで起こった新しい装飾美術の傾向。
狭義に19世紀末のフランスの装飾美術を指す場合と、広義にアーツ・アンド・クラフツ以降、世紀末美術、ガウディの建築までを含めた各国の傾向を総称する場合がある。

フランス語で「新しい芸術」を意味し、パリの美術商、サミュエル・ビングの店の名前 「Maison de l'Art Nouveau」に由来する。

特徴

産業革命により大量生産されるようになった鉄やガラスなどの工業製品を使って、植物などの様な有機的で自由な曲線形を用い、過去の様式にとらわれない新しい装飾様式を生み出した。

当時流行していたジャポニズムの影響を強く受け、浮世絵に見られるような平面的かつ装飾的な空間構成を取り入れている。
ビングの店でも日本美術を主に扱っていた。

工芸品やポスター、建築など多岐にわたる。
曲線や植物の模様などを取り入れ、従来の様式に捉われないデザインだったが、しばしばグロテスクな造形にも陥り、飽きられるようになった。
また、1920年代に装飾を否定するモダンデザインが普及するようになると、アール・ヌーヴォーの装飾性は批判され、世紀末の退廃的なデザインだとして、美術史上もほとんど顧みられなくなった。近年になって豊かな装飾性、個性的な造形が再評価されるようになった。



フランス・ベルギー

  • アルフォンス・ミュシャ
チェコ出身の画家。パリで活躍した。

  • エミール・ガレ
ガラス工芸

  • ルネ・ラリック
ガラス工芸。活動期間は長く、アール・デコの時代に及ぶ。

  • エクトール・ギマール(建築家)
カステル・べランジェ、パリのメトロ入口など

  • ヴィクトール・オルタ(建築家)
ベルギー出身。タッセル邸、ソルヴェイ邸など。

  • ヴァン・デ・ヴェルデ

イギリス

  • ウィリアム・モリス
アール・ヌーヴォーに先行してアーツ・アンド・クラフツ運動を起こし、そのデザインや活動はアール・ヌーヴォーにも影響を与えた。

  • チャールズ・レニー・マッキントッシュ(建築家)
スコットランド出身。モリスの影響を受け、グラスゴーで活躍する(グラスゴー派)。

  • オーブリー・ビアズリー(画家)
「サロメ」(ワイルド作)の挿絵が有名。官能的な絵画はアール・ヌーヴォーの典型。

ドイツ・オーストリア

特にドイツ、オーストリアのドイツ語圏のものをユーゲント・シュティール(青春様式。雑誌「ユーゲント」から)という。
オーストリアではウィーン分離派(ゼツェッシオン、セセッション)が旗上げし、総合的な芸術運動を目指した。

  • オットー・ワーグナー(建築家)
  • グスタフ・クリムト(画家)
ウィーン分離派の中心人物。

  • エゴン・シーレ(画家)
  • オスカー・ココシュカ(画家)

スペイン

スペインのものをモデルニスモ(モダニズムの意)などと呼ぶ。

  • アントニ・ガウディ(建築家)
  • ドメネク・イ・モンタネル(建築家)
  • プッチ・イ・カダファルク(建築家)
  • ジュゼップ・マリア・ジュジョール(建築家。ガウディの協力者)

チェコ

プラハ駅

ハンガリー

  • レヒネル・エデン(建築家)
ブダペストの応用美術館、郵便貯金局。

日本への影響

日本美術から刺激を受けたアール・ヌーヴォーだが、日本にも影響を与え、明治30年代半ばから大正にかけて流行した。

  • 橋口五葉
夏目漱石の「猫」など一連の本の装丁

  • 藤島武二
与謝野晶子の歌集「みだれ髪」・雑誌「明星」の表紙

  • 杉浦非水
ポスター

北九州市の旧松本健次郎邸(現西日本工業倶楽部)の内装にアール・ヌーヴォーの影響。


関連項目


















最終更新:2012年05月03日 02:48