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江國香織

号泣する準備はできていた


 「間宮兄弟」を読んだ後でこれ。短編集でいくつか入っていて全部恋愛絡みの、似たトーンのお話でした。
 お洒落で大人の女性が読むような感じで、私はどうも馴染めませんでした。意味深な描き方で共感する人はするのだろうけれど、私とは遠い世界で分からなかった。知ったかぶりして「分かるかも」とも言いたくない。
 題名のリズムが気持ちよかったのでずっと気になっていたのですが、私には面白くなかった。この人はいろんなものを描くなぁと思います。でも気になってたまんまは嫌だったので、読めてよかったかな。私は結局オチがつくお話が好きなのだなと実感。
(2007/09/20)

間宮兄弟



 なべてこの世はこともなし。と言った感じのお話。ちょっと変わり者ではあるけれど平凡な生活を営む兄弟の、ごく普通っぽいお話。世界が危機に陥るわけでも、誰かが死ぬわけでも、秘密組織が暗躍するわけでもないお話。ハラハラドキドキしたわけでもないのに、読みやすくて一気に読んでしまった。
 この本は映画になったらしくて、読む前に既にジャケットだけ見たことあった。普段は本の画像しか貼らないけど、今日は是非実写版も貼りたい。先にこの写真を見てしまったので、私の頭の中ではこの二人が動き回っていた。このキャスティングの妙。すばらしい。絶賛したい。
 間宮という苗字の兄弟。兄の明信は細身で几帳面。スーツに着るようなカッターシャツとチノパンを合わせる。弟の徹信は少しオデブさん。イメージは身軽なデヴ。猪突猛進な性格で数々の失恋履歴あり。今は二人で暮らしていて、母親が大好きで、兄弟仲良くて、インドアな多趣味。社会人になっても女性とまともに付き合ったことはなく、割といい歳。
 この二人の会話というか行動が、変わっている。微笑ましいとキモいの間を針が行ったりきたりして、やっぱりキモいにちょっと振れるような、そんな微妙なさじ加減。いい歳した男が二人リビングに寝そべって幸せを感じたりする。出かける時に歩きながら「歌うか?」と二人で歌を口ずさむ。しかも人がいる場所では慎む位の嗜みは持っている。女性と仲良くなろうと誘うときは自宅でパーティ。なんかウキウキしてる。二人でジグゾーパズルに熱中する。飛行機を夜の公園に飛ばしに行く。日常的に思い出話をする。
 いわゆる秋葉系オタクとはまた違う。でもやはり立派な変人に見えるこの二人の日常が、えらいリアルに描かれていてなんだか好奇心を刺激されてしまう。もしかして世の中の男兄弟はこんなんなのかしら、だとしたらちょっと嫌かもという思いに捕らわれる。二人ともいい奴なのに、なぜか彼らの恋を応援する気にならない。むしろこっ酷く振られてしまえばいいのに、と思う瞬間すらある。もちろんその逆も。登場人物の中で彼らだけが異世界にいるようだ。
 「好き」「嫌い」のどちらにも振れない主人公ってあまりいないような気がする。それを狙って書いたのならすごい。危ういバランス。私は自分には間違いなくオタク属性があると確信しているし、オタク耐性もついていると思う。むしろ「オタク」というのはあるジャンルを極めた人に送られる称号で、自分まだまだオタクだなんて名乗れないっすよーという想いがある。今の私はこうもりのようなもので、オタクに対して嫌悪を抱くときは「同属嫌悪か?!」、親近感を感じると「贔屓目に見やがって」と自問自答する。どっちつかずでちょっと寂しいような、行ってしまったら戻れないような、中途半端な位置に立っている。それでもなんだか間宮兄弟に対してはどちらの気持ちも抱けない。まるで観察対象のように見てしまう。なんでだろう。
 よくあるパターンでは、心はきれいで性格もいいけど生きづらいオタクが自分を理解してくれる女性に出会ってハッピーエンドとか、実はすごいスキルを持ったオタクが大活躍するお話とか、そういうのはたくさんあるけど、このお話に至っては読んだ後「だからなんなのさ」とつぶやきたくなる。憤慨するのではなく、あくまでつぶやきたい。
 感動したり、生きる指針になったり、泣いたり笑ったり、そんなこと全くなかった本だった。強いて挙げれば「こんな人いるのねー」ってとこか。多分私は忘れる。きっと今まで読んだ本の記憶の中にうずもれる。なのになんだかいぶし銀のような渋さがあって、振り返った時に他とは違う輝きをするんじゃないのかなぁなんて思ったりする。
(2007/09/18)

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最終更新:2007年09月21日 01:33
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