




2010年はあと数か月残っているけれど、間違いなく今年ナンバーワン。ものすごく面白かった、よくできていた、感動した、誰にでもお奨めする。っていうか、え?見てないの?なんで?って不思議に思うほど。
思うに、1)トイストーリー3と同時期の上映であること、2)宣伝がまずいこと、3)ポスターのヒックの顔が今一つな出来に見えること、が不運だったように思う。かくいう私も、某映画批評サイトが高得点を付けていなければ観に行っていなかった。
1)に関しては、トイストーリーの知名度の高さや、3Dアニメという同じカテゴリというのはかなりのハンデだと思う。しかもトイストーリー3もとても良かった。まさに三重苦。私も先にそっちを観たし、ヒックとドラゴンは余力があれば観ようかなってところだろう。
2)は私個人の意見だけど。確かテレビCMではベッキーの歌が流れていた。全然関係ないし、本編でも流れない。流れない方がいいんだけど、じゃあベッキー採用する意味あるんか、と。後で述べるけど、この映画は音楽も素晴らしかった。今なら音楽だけでも泣ける。なのになぜベッキー。ベッキー悪くないけど、それで宣伝になるならいいんだけど、ベッキーが歌ってるのかーって観に行く人が果たしてどれだけいるのか。なんか、ほら、もっと、こう、強調するとこあったやん?!いっぱいあるやん?!最近では珍しくこの映画は有名人声優を起用しておらず、なので宣伝が少し難しくなったのかなとは思う。私は「有名人を声優起用」には元々懐疑的(下手くそな場合)なので、「ヒックとドラゴン」チーム(そんなんあるんか知らんけど)のその判断は支持したい。ただアバターみたいに、映画の出来自体をアピールすることが宣伝につながらないのか、それが残念だ。きっと観に行く側にも問題はあるのだろうけれども。
3)ポスターは完全に私が思ってた意見なんだけど、ドラゴンにまたがって飛んでいるポスターのヒックの顔は、だいぶ駄目だ。あれで観に行こうとは思えない。なんか顔だけがやたらでかくて、映画本編では気にならないけど、なぜよりによってそこを切り取るのか疑問だ。
長々と不利な条件を挙げたけど、それを踏みしだいて観に行って良かった!本当に良かった。3回観に行ったところで、3Dの興業が終わってしまった。まだトイストーリーは5回/日やってるのに、終わったときは泣きたくなった。3Dで観るべきだと思っていたので、映画館で観られなくなったのが悲しくて、それで上のようなことを長々と考えてしまったのだろう。ああ、もう一度映画館で観たい。
ストーリーはかなり王道。舞台は、家畜を襲うドラゴンと戦うバイキングの村。リーダーのストイックの息子ヒックは、ムキムキの父とは正反対のヒョロヒョロしたおよそバイキングには向かない少年。体力では叶わないので生来の器用さでお手製の武器を作るが空回りし、迷惑をかけ通し。なんとかバイキングの仲間入りをしたいが、父にすら諦められる始末。そんな折傷ついたドラゴン(トゥース)を見つけるが、ドラゴンが怯えていると思ったヒックは結局とどめを刺せなかった。次第に友情を深める二人だが…。というまぁどっかで観たことあるようなお話。
そんなありきたりな映画の何が良かったのか。改めて考えると突出した部分はなく、全てが素晴らしかった。どこ褒めていいかわからない。悪いとこあったっけ?って感じ。褒めるけど。
まず度肝を抜かれたのは3D。3Dって必要?と思っていた私に「3Dとはこういうことさ」と魅せてくれた。ありがとう、3D不要論撤回。トゥースが空を飛ぶシーン、まるで遊園地のアトラクションを体験したよう。映画館に通い詰めた理由はここにあって、これは映画館でないと体感できないと思ったから。椅子に座っているのに、落下するときのあの嫌な感じを味わったくらい、3Dすごかった。すごすぎて技術の進歩の裏側の人の努力を見た気がして泣いた。
次に音楽。あ、こりゃサントラ買うわ。と思った。特に、湖のシーンの音楽最高ですよ。エンディングロールで音楽を味わえる喜び。あの時間がこれ程幸せな映画があっただろうか。音楽が涙を後押しする。
そしてストーリー。少年と獣の友情話と共に、父と息子の葛藤も描いている。父ちゃん必見ですよ。いつの間にか父ちゃんの視点になっていることに気付いて泣いた(色んな意味で)。
ウォルスとグルミット風のデザインも素敵。リアリティを追及するところはして、アニメっぽくするところはアニメっぽく。すごく表情豊かで、顔は口ほどに物を言う(違う)んですよ。サイレントにして白黒で観るのも素敵かも。
と、こんな風に手放しで褒めて、もう一度観たくて、好きだ~と思える映画に巡り会えて幸せなのです。
以下ネタバレ含みます。
3Dでガツンとやられた感はあるけど、2回目3回目ではむしろ脚本の素晴らしさにノックアウトされたように思う。登場人物が全て憎めないキャラで、どれも愛おしい。ヒックはヒョロヒョロだけど、どうにかして父に認められたいと思っている。皮肉屋だけど卑屈になってなくて、頑張っている。この卑屈じゃないってすごく良い。卑屈な人が自信を持って成長するって、実際はあんまりない。失敗した後、「みんなの仲間になりたいんだよ」ってなかなか言えない。自分を信じられる人間が努力を信じられるのだと思う。
父ちゃんのストイックとヒックのすれ違いも切ない。ストイックは筋肉ムキムキのヒックがドラゴンを倒すことが素晴らしいことだと信じて疑わない。トゥースと仲良くなることでドラゴンの習性をつかみ村の人に賞賛されたとき、ストイックはヒックをべた褒めする。それも何だか恐る恐る「ちょっと話そう」とか言ったりして、ぎくしゃくしてる。父が褒めているのは本当の自分ではないと分かっても、父をがっかりさせたくなくて「僕もう寝ないと」と誤魔化すヒックに泣ける。父に癇癪を起すのではなく、ここでヒックは一歩大人になったと思う。完全に仲違いした時の、「一生に一度くらい僕のいうことを聞いてよ」と叫ぶ台詞はたまらん。ストイックもヒックもお互いを愛しているだけに、すれ違っていることが切ない。
ヒックとトゥースが仲良くなるシーンも好き。湖の傍でヒックがステップを踏んでいつの間にかトゥースに近寄っていくあのシーンの音楽は、菊次郎の夏や、戦場のメリークリスマスや、ニューシネマパラダイス級の名曲だと思う。2回目以降の鑑賞では、ほのぼのしたシーンなのにしゃくりあげる程に泣いてしまった。年を取るとほのぼのした幸せのシーンでも泣いてしまうなぁ。
空を飛ぶシーンの3Dは、落下する時におなかに感じる嫌な感触まで味わえるほど、すごかった。3Dってこんなことができるんだ!また観たい!何度でも観たい!って思った。もう映画館で観ることができないなんて、本当に残念。
脇キャラも素敵。アスティがラスボスに向かって行くヒックとトゥースに向かって「行け」ってつぶやくシーンはしびれる。ゲップも良い。ストイックの良き友人振りと、ヒックへの中間的な見方。ヒックといる時は大人で、ストイックと戦いに赴くシーンは子供みたいで癒し系だ。「今僕の全部を指差した?」とか「いろよ。そこに。必ず(うろ覚え)」とか「全部、丸ごと、じゃないがな」とかの掛け合いも楽しい。
トゥースは言葉をしゃべらないだけにあまり印象がない。登場シーンからだんだん猫みたいに可愛くなっていくけど、大きく感情を表していないところが、お話に貢献しているように思う。「けなげな動物」っていう位置づけだと逆に変というか。
ヒックの片足がなくなるラストはかなり議論を呼んだとパンフレットに書いてた。確かに、子供向けアニメではなかなかないように思う。よくみる超映画批評では「ヒックとトゥースの関係はこのラストをもってようやく均等になり、プラマイゼロになる。」と書かれていて、確かにそうだと納得した。「このラストはないよ」と思うことは、結局は「対等」「共生」なんて考えていないことになるんじゃないか。そしてそれを悲観的に受け止めず、相棒と共に空を飛ぶシーンは美しいラストだと思う。
長々と書き連ねたけど、きっとまた観たらもっと言いたいこと出てくるんだろうなぁ。
(2010/12/05)
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最終更新:2010年12月06日 01:37