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山本鈴美香

エースをねらえ!






 言わずとしれたテニススポコン漫画の傑作です。岡ひろみというテニス強豪高の一年生が宗像コーチに見いだされ、一流のテニスプレーヤーになっていくお話です。かなり古いお話(私の産まれた頃)なのですが、今読んでも面白いです。なんせ皆熱い!人生教訓のような逸話が至る所に入っている。割と長いお話ですが、綺麗にまとまっているのかな。最後の方は割と急いでる感じはありましたが。
 脇役も魅力的です。テニス一筋の宗像コーチ、先輩の誇り高きお蝶婦人、ライバルの緑川蘭、男子テニス部の藤堂さん達、皆熱くて一生懸命で深い!現代を描く漫画ではもう無理だろうなぁと思います。もし現代を舞台にしてこんな話を描いたら、「話は面白いけど、実際こんな高校生おるか!」って言われてしまいそう。一人ならまだしも皆がテニスだけに一生懸命ですから。軽い、若者としての楽しみは極力外されているように思います。それとも昔は誰もがこんなだったのでしょうか。まぁ時代が古いとしても、こんな高校生可能かなぁとは思いますけどね。だって皆大人で思慮深くて努力家で礼儀をわきまえてて、かつ勉学面でも優秀なのですよ。
 泣きたい人にもお勧めです。その熱さ故に感動ポイントは随所にあります。冷めた目で見ないで最初からどっぷりこの世界に入り込んで読めばよいでしょう。読んだ後、私も何かしようかな、しなくちゃという思いに囚われます。落ち込んだ時に読んではいかがでしょうか。損はさせません。

 宗像コーチが途中で死んでしまうところは、雑誌掲載時さぞかし話題を呼んだのではないかと思います。超主要人物ですよ。タッチでかっちゃんが死んだみたいなものです。すごい山場の作り方ですね。
 作者は今は宗教活動をされているらしいです。それを聞くと確かに宗教っぽい考え方が随所にあるなぁとは感じます。悪い方にではなく良い方にですが。訓話的な話が多いかな。それは違うだろうと思うような主張は私には見当たりませんでした。あーでも桂コーチが「女は一流の男に育てて貰わなければ立派になれない。女は家庭を守り…」ていう主張は、自分が女なだけにちょっと違和感を感じました。そんなもんなんですかね、本当に。
 好きなお話は、宗像コーチが若い時に限界領域児童(もしかして使っちゃいけない言葉なのかも)の男の子と知り合った話を、桂コーチが生徒達にする回です。彼はちょっとひねてたんですが、余命いくばくもない少年をおんぶした時に「お兄ちゃん重くない?」と自分を気遣うところに心打たれます。子供と死という、まぁ狡いといっちゃー狡いシチュエーションですが、お約束通り泣けてしまいました。いいのですベタでも。
 お蝶婦人と西さんはどうなっちゃうんでしょうね。お蝶婦人は桂コーチに惹かれているようにも描かれていましたが、この漫画に出てくる人達の自制心の強さにはあきれてしまいます。そのストイックさも魅力ではありますが。宗像コーチはひろみを女性としても愛していたのでしょうけど、ある意味恋人よりも確立した位置を獲得できてたと思います。それが幸せなのかは私には判断できませんけどね。ただ藤堂は一生コーチを越えられませんな。

 こんな高校生いないだろうと思う反面、こういうお話を描くには学生じゃないと駄目なんだろうなとも思います。テニスを中心に物語を作ろう、伝えたい事を描こうとすると、生活が入ってくると難しいと思うんです。彼らはテニスのことだけ考えていられる。生活費のことを心配しなくてもよいし、それ以上に(学業はあっても)優先順位が高いものがない。仕事じゃないからテニスを辞めたければ辞めてもいい。不純物が少なくていられるので、精神的なお話に絞り込める。私はらんま1/2というお気楽漫画が大好きですが、成長させてしまうと「格闘だけで食っていける?」「大学行ったら離ればなれよね」とか趣旨が変わり、純粋に楽しめないような気がするのです。だからやはり舞台は高校生なんだろうなと。(大学でも良いけど、この時代皆行ってたのかな)
それからコーチ陣が既に私より年下というのが一番ショック。
(2006/09/17)

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最終更新:2009年06月07日 17:44
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