有川浩

阪急電車


 とても読み易い、気持ちのいい本だった。表紙もキュート。阪急ユーザではないけど、地元のお話で親近感が湧く。ここの舞台に住みたくなる。
 阪急電車を舞台とし、駅一つにつき一エピソードの短編集。一つ一つが微妙に繋がっていて始発から終点まで。その後折り返しとして後日談が伺える。ほんわかした気分になって、読後感が爽やかでよかった。あまり本を読まない人にもお勧めしやすそう。
 阪神間には居住地カーストのようなものがある。山手に行くほど高級住宅街という、暗黙の決まりごと。須磨より西側になるとまた違うようだが、三宮以東だとそれが顕著だ。まず家賃が違う。治安も違うらしい。阪急電車はその山手を走る、えんじ色の可愛らしい電車だ。スピードならJRには敵わないし、そのJRと似たような所を走っているのにもかかわらず、阪急は愛されている。それは阪急電車沿線に住んでいるというのが一種のステータスになっていることが影響していると、私は思う。見方を変えると選民意識だけど、地元愛に溢れているとも言える。例えば芦屋に住んでいる友人って、芦屋が好きなんですよ、誰になんと言われようと。私も理屈でなく神戸が好きなので、それで良いと思う。
 話はそれたけど、まぁこのお話はほのぼのとした地元密着なお話。知らない人でも面白い、知っている人は尚面白いお話です。私が一番好きなのは、モラハラな彼氏に困っている彼女が出てくる回。おばあちゃんの「くだらない男ね」という台詞が格好良い。元彼の結婚式に出る話も好き。ドロドロしそうなところが紙一重で爽やかになっている。
 他の本も読みたい!と思わせる本でした。満足満足。
(2009/03/08)

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最終更新:2009年06月07日 17:28
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