矢口敦子

償い


 この作者の本は初めて読んだ。貸してくれた人の反応が今一つだったので、「面白くないのかな~」と思いながら読んだら、普通に面白かった。
 主人公の日高は浮浪者である。少し前は仕事人間だったが、そのせいで家族の絆を壊してしまった。自分を「日高」ではなく名前も持たないただの男として、鬱々と生きている主人公はある学生の男の子真人と出会う。過去に会ったことのある日高は、なんとなく彼と交流を深めていくが、不可解な死が彼らの周りで起こるようになり…というお話。ちょっと前に読んだので、正直ちょっとうろ覚え。面白かったんやけど、題名だけ見ると内容思い出せなかった。
 途中でオチが分かったような気になったけど、少しずつずれたところに着地した感じ。読みやすかったし、とても綺麗に終わったと思う。綺麗に終わったから、そこで安心して忘れちゃうのかな。
 何も感じないように生きていた主人公が、少年と出会って少しずつ自分を取り戻していく。目を背けようとしていた過去を振り返る。その辺りはとても気持ちよく読めた。
 癖が無く読み易いけど、悪く言えば華が無い感じ。他の本も読んでみたいかなぁと思う。
(2010/05/09)

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最終更新:2010年05月10日 00:39
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