2006年5月映画館にて

ナタリーポートマン主演の政治色の濃い作品でした。舞台は近未来の英国。第三次大戦以降、独裁政治が行われている状況を打破すべく「V」(ヴィー)という仮面の男がテロを行う様子が描かれていました。ナタリーポートマン演じるイヴィーは偶然Vと知り合い、次第に彼と関わり合う事になりますが…。というお話。
感想は「すごく面白かったけど、よくわからなかった」に尽きると思います。続きは気になるし、割とハラハラしたし、豪華で面白く、時折切なくなるお話でした。が、が!政治色とか下敷きになっている素材が難しく、それを知っていたらもっと楽しめたんだろうなぁと思うのです。そこが残念。
Vはヒューゴ・ヴィーイングが演じているそうです。でも仮面だしね。あの仮面よくできていると思いました。能面みたいに、色んな表情が感じられるのです。
スタッフはマトリックスと同じメンバーみたいですが、マトリックスっぽいものを期待していくと、多分裏切られると思います。娯楽色は強くないし、アクションもそんなにありません。とにかく暗いです。ナチスドイツを訪仏とさせる描写がてんこ盛り。PG12だそうで、それも納得。日曜なのに昼間やってませんでした。色々な意味で大人向けでした。音楽は非常によかったと思います。爆破シーンもかなり豪華。
Vは反体制ですが、正義の味方ではありませんでした。分かり易い勧善懲悪物ではありません。んー、暴力や残酷描写が苦手な人はやめた方がいいかもしれません。私は所々少しきつかったです。あくまで少しですが。綺麗で可愛いナタリーポートマンが好きって人もやめた方がいいかもしれませんが、彼女はすごいと思いました。綺麗な服着てお化粧してちんまり座っているような役よりずっと活き活きしてた。彼女がこの映画のぬくもりだったと思います。えらい目に遭いますが。頭丸刈りにされちゃったり、ごっついやつれた顔してたり。
Vの仮面を最後まで剥がなかったこと、イヴィーが出て行った時一度だけ見せたVの葛藤、もっと見るべきところはいっぱいあったかもしれませんが、私はVの恋がすごく切なかったです。ちょっと泣きそうになった。ほんのちょっとだけだけども。「拷問するんかい!そら怒るわ!」って思ったけど、そういうところが逆に切なくて。イヴィーのご飯作っている時に、手を見られて手袋でかくして「これで大丈夫」みたいな手振りをした時のVの仮面がおどけている様に見えて、逆に哀しかった。大丈夫イヴィーはそんなこと気にしない。そんな風にご飯作ってあげちゃったり、逆にイヴィーの為だと思って拷問しちゃったり、最後にもう一度会いたいって言って、来てくれないかと思ったって言っちゃったり。彼は純粋な正義の味方ではなく、ばんばん向こうの人間殺しちゃうし、自分の復讐も兼ねているし、熱い志みたいなのがなくて最後死んじゃうし。なんかそのアンバランスなとこが哀しくて、ちゃんとイヴィーが分かってくれててよかったね、って思いました。
Vは撃たれて死んでしまったけど、あれは半分自殺みたいなものだったんじゃないでしょうか。きっとあんな目に遭わなくて済むようにできたはず。でももう未練はないから、この為にやってきたから、覚悟してたんじゃないかな。後はイヴィーに託したんだし。
きっとこの作品は賛否両論だと思います。私は日本人で背景がないけれど、痛みを感じる人もいると思いますし。でも結構好き。テンポはよかったし、何より豪華でした。
(2006/05/24)
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最終更新:2007年04月03日 00:09