J.K.ローリング

ハリーポッターと死の秘宝


 ★前半は極力ネタバレしないよう気をつけて書きます。

 とうとうハリーポッターが完結した。私のテンションは多少の中だるみはあったものの、最終巻で再度ヒートアップ。現在私の頭の中はハリーポッターが7割を占めています。
 久しぶりに徹夜して爽やかな夜明け。読むとやっぱり面白くて、引き込まれた。一回だけ中断したけど、あとはノンストップで読了。しーあーわーせー!週末を待って正解だった。途中でやめたら、仕事になりませんわ。
 シリーズ通して今回のが一番面白かった。今までの伏線がばんばん回収されていく気持ちよさもあるけど、色んなできごとが矢継ぎ早に起こって、本なのに目が離せない感じ。やっぱりハリーが、ロンが、ハーマイオニーが大好きなのです。三人がたくさん出ていて幸せ。最初の何ページかで「あぁ前作もう一回読んどきゃよかった」と思い、読み終わった後「さてもう一回この本読み直すか」と思い、今では「一から全シリーズ読み直さなきゃ」と思っている。発売前は「これ買ったら全巻揃えて売りに出そう」とか思っていた私の馬鹿馬鹿。どうせ手放すなら暗記するほど読んでから売ろう。
 読み始めて色んなところで涙ぐみ、ところどころで普通に泣けた。ハリポタと涙は今まで結びつかなかったのに、今回は違った。入り込みすぎ?でも泣けちゃうんですもの。期間が長いだけに、感情移入もひとしお。大人になったねぇ、あんた達…(何様?)。
 ネタバレされることを何より嫌う私は、この日のためにささやかながらネット断ちをしてました。ニュースでハリポタの話題が出てもyahoo程度しか見ない!ファンサイト巡らない!話題が出そうなページは封印!それでもどこでネタバレされるかびくびくしてた。英語版出てたしね。結果的にまっさらな状態で読み出せたことは、とても幸せなことだと思った。
 感想としては「面白い」としか言えない。疑問は数あれど、やっぱり売れる本というのは面白い。どうせこの本買う人は今まで読んでいた人でしょう。ここでやめちゃうのは勿体無いので、是非皆、最後まで読んで欲しいと願う。そして誰か私に感想を語ってください。周り誰も読んでないよー(泣)

 ここから先はネタバレです。読むつもりの人は、絶対読まない方がいいと思います。無駄に長いです。ひかないでください。

 私は流し読みする方で、先を予想したり、深読みしたり、謎を解き明かそうとか全くしていなかった。だから、「スネイプは味方」という持論にもさしたる根拠はなく、「敵だとするには怪しすぎる」という斜めな読者視点から出たものに過ぎない。邪道だと思う。だから、このハリーポッターシリーズの根底に流れる壮大な、ある男性の生涯をかけたラブストーリーには気づきもしなかった。私的、影の主役は間違いなくこの男だ。

 ここで率直な気持ちを。
 スネーーーイプー!!何?なんなの?急に、いや急にじゃないんやろうけど、こいつあんな嫌な奴やった癖に!ネットリ頭髪でネチネチした喋り方で(映画やけど)、ハリーを目の敵して、あからさまに嫌な奴やったやん!どんでん返しあると思ってたけど、そんな、なんか、もう、純愛だなんて、「僕を見てくれ」とか、「永遠に」とか、「勇敢な男」とか、そんなんもう、泣けるやんけ!泣いたわ!今も泣きそうやわ!してやられたよ!

 もう一回読み返そうと思ったのは、スネイプをもう一度見たかったから。最初から全部、ダンブルドアやスネイプの視点でもう一度。あーもうなんか駄目だ。スネイプ切な過ぎるやん。小さい時から一途に好きだった女の子(リリー)が、自分を苛めた奴(ジェームズ)と結婚して子を設けて。あまつさえ、その忘れ形見を命と生涯をかけて守るなんて。しかも忘れ形見はジェームズにそっくりで自分を嫌ってて、可愛くないし。周りを欺き、ダンブルドア以外には心を許さず、裏切り者として死ぬんやで。死の瞬間にハリーが傍にいなければ、誰にも気づかれないまま、報われないままやったんやで。最後の瞬間にリリーそっくりの目を見ながら死ぬなんて。そんなん、泣けるっちゅうねん。「僕を見てくれ」は「Look at me」だったらしいですよ。なんか英語と日本語だとニュアンス違うね。松岡祐子さんがそこで「僕」に変えたのは、個人的にはグッジョブだ。「永遠に」は「Always」。いやぁ英語でも感慨深い。
 ラストシーンでハリーが息子を諭すシーンも泣けた。リリーの眼を受け継いだ息子。「お前の名前は、父さんが知る限り一番勇敢な人の名前だ(うろ覚え)」て。あーもう、スネイプは死んじゃったけど、少しはここで報われたのだろうかって。
 ローリングさんはすごい。最初からゴールを見据えて、ここまで辿り着いたことがすごい。どうもありがとう。楽しませてくれてありがとう。リアルタイムでやきもきしながら、本買って映画見て次作待ち望んで、とても楽しかった。こうやって最後を見届けたいとずっと思っていたけど、いざそうなってみるととても寂しい。これ以上続けて欲しくはないけれど、番外編とかスピンオフが出たらまた間違いなく買ってしまう。
 訳の松岡祐子さんも、誤訳問題とかもあったらしいけど私は楽しめた。元々「英語を訳しました!」て文章が苦手なのに、すごく読みやすかった。日本語訳が発売されるまで1年かかるので、原書に少し興味を持ったけど、英語を日本語にするのって本当に難しいと思ったもん。パズル的な部分や、韻を踏んだ歌を、日本語にするのはきっと大変だと思う。でも違和感なかった。今まで別の本で文章が受け入れられずに、途中で止めてしまった本があるから、そうならなくて本当によかった。あ、原書は一段落でリタイヤ。興味を持ったっちゅー言い方すらおこがましいですね。買っただけっす。
 その他の感想は思いつくままに。
 やっぱりロンはハーマイオニーとくっついた。嬉しいような、喧嘩してた時の方が微笑ましかったような複雑な気分。なんかスキンシップ多いんですけど、やっぱそれは外国の文化なんやろか。人前で抱き合ったり熱烈なキスはしないでくださいよ。でも全部ハリー視点だからこそこそされると分からんのよね。うーん。でも一押しカップルだったので、素直に祝福ですよ。
 ロンはこの最終巻でやっと大人になった。上に兄が多く、下は紅一点の妹で、家族仲が良くてもコンプレックスあったんやね。しかもハリーとハーマイオニーが自分をいらないと思ってるんじゃないか、って恐れてて。それをやっと最終巻で自分の手で克服。遅いよ!って言いたくなるけど、まぁいいんじゃないかな(適当)。剣を振るったのが、ペンダントにか、幻のハリー達になのかが気になる。愛するハーマイオニーを刺すのは躊躇するよねぇ?
 ペンダントを持っているとイライラするのは、指輪物語を思い出した。フロドもそんなんやった。ハーマイオニーはそんなに影響されてなかったって、どんだけ強いねん。彼女はずっと一貫して男の子達より少し大人。でもロンが絡むとちょっと子供っぽくなるところがまた可愛い。(ご贔屓フィルター稼動中)
 ハリーとジニーは、あまり感想がない。というかジニーの印象が恐ろしく薄いので、へぇとしか思わなかった。読み返せばきっと出て来るんだろうけど、性格がよくわからんので、なんでハリーは彼女が好きなんやろ、って疑問に思ってしまう。秘密の部屋のジニーは可愛かったけど、今はどうなんかなぁ。
 ヘドウィグ、フレッド、ムーディ、ルーピン、トンクス、ドビー…。色んなことが矢継ぎ早に起こって、あっさりした描かれ方のとこもあったけど、良く考えたらすごく哀しい結末でした。ハリポタはお涙頂戴なシーンがあまりないので、ドビーのところは珍しかった。案の定泣いた…。特に自由な妖精のくだり。たくさん死んでしまいましたね、しょうがないんでしょうけど。シリウスの時もあっさりしてるなと思ったけど、今回は人数が多いので読み流しそうになった。特にヘドウィグ。冒頭いきなりやし。
 ハリーがヴォルデモートにアバダケダブラをかけられて、ハリーの頭の中でダンブルドアと話すシーン。映画マトリックスの3作目、設計者とネオが話すシーンを思い出した。ダンブルドアは一体どこから来たんだ。あと額縁の中からスネイプに指示を出すって、それって生きてるのとほぼ一緒やん。戦いが終わった後、スネイプの肖像画は校長室に飾られたんやろうか。そんでハリーと話したんだろうか。スネイプは嫌がりそうやけど、でもそうなってて欲しいな。そんで個人的な希望としては、マクゴガナル先生とスネイプが和解したらいいと思う。彼女はダンブルドアの信頼厚き部下だったのになんだか蚊帳の外で、スネイプを最後にホグワーツから叩き出したから。真相を知ったら後悔するんちゃうかなと思う。私は先生達がアルバスとかミネルバとかセブルスとか、ファーストネームで呼び合うのがとても好きだった。
 マグルや屋敷しもべ妖精への差別、リータ・スキーターによるゴシップ、私がいる世界にも通じる問題を描いていると思った。人種差別や報道被害を思い出す。ハーマイオニーは、馬鹿にされても屋敷しもべ妖精への待遇改善についてずっと言い続けてきた。それが最終巻でむくわれるところ(ドビーがハリーを助けるところ、クリーチャーが「ご主人様のために戦え」って来るところ、純血のロンが彼等は逃げなければって言うところ)は、泣きはしないけど胸が熱くなった。ロンは屋敷しもべ妖精というあり方に何の疑問も持っておらず、ハリーはあまり興味がないって立ち位置だった。それが当然だと思っている人(この場合ロン)の意見を変えるのは、正反対の意見を変えるよりも難しいことだと思う。ハーマイオニーはそれをやってのけた。すばらしいことだ。
 ハリーはいろんな大事なことを、失ってから気づくことが多かったように思う。シリウスが死んでしまったこと。スネイプが隠していた想い。クリーチャーへの態度を少し変えれば関係は格段によくなったこと(これは失くしてないけど)。ダンブルドアを疑ったこと。私はハリーを「ハーマイオニーの助言が正しいのに向こう見ずな行動によって台無しにしてしまう子供な奴」と思っていて、そういう展開はあまり好きじゃなかった。でもこのシリーズは成長を描くお話で、最終巻でちゃんと大人になっていた。そういったたくさんの失敗を経ないと、この感動はなかった。というか私も昔は子供だったくせに、偉そうだった。
 エピローグは19年後。この19年間という記述と、「傷は痛まなかった」という釘を刺すことで、続編はないなと思う。36歳からの冒険でもいいとは思うけど、少し無理があるかな。あるとしたら子供世代だろうか。ぐだぐだでもいいから、戦いその後の皆を、詳しく描いて欲しかったな~。
 ところでローリング女史はインタビューや、色んな場で本には描かれてないことを喋っているらしい。うろ覚えだけど、
 ・テディとキスしていたのは、ビルとフラーの子供。
 ・ハリーとロンは魔法省勤め。闇払いになった。
 ・ジニーはクィディッチのプロに入り、結婚を機に引退。
 ・ジョージはアンジェリーナと結婚。
 ・ネビルは漏れ鍋の女主人と結婚。
 ・ルーナは学者になった。
 ・パーシーの子供にはモリー(母親)って名前がつけられた。(心配かけたからか)
 その他にも、ハリーの長男はジェームズ・シリウス、長女はリリー・ルーナという名前で、ミドルネームあるっていいなぁと思った。ルーナの名前が付けられたところは意外だった。ロンとハーマイオニーの子供にはフレッドってついてないけど、きっとジョージがつけるんだろうなと思う。アンジェリーナは4巻でフレッドのパートナーだったけど、色々乗り越えて結婚したんだろうか、と妄想が膨らむ。哀しい妄想だけど。
 その他にもたくさん後日談を話した(チャット?)らしいので、興味ある人は調べてみたらいいかもしれません。最後少し物足りない私には、とても嬉しい情報でした。あーそれにしても終わったしまったかー。
(2008/08/12)

ハリー・ポッターと謎のプリンス


 今更ながら感想です。ハリポタもとうとう6作目。前作分までネタバレしますので、それも読んでいない人は読まない方がいいです。
 彼等も16歳になりました。物語も佳境に入ってきます。全巻に比べると同じ上下巻でしたが一冊は薄く、割と早く読み終わったと思います。途中からの展開が早く、一気に読んでしまったのもあるでしょうが。
 それにしても巻を重ねる毎にダークになっていきますね、これ。幼い子はショックなんじゃないかなぁ。私はほのぼのよりずっといいけど。実は読み終わった後はかなり興奮してて、今は落ち着いてこれを書いています。「そろそろハリポタはええかな」と思っている人は、それでもやっぱり読んだ方がよいと思います。びっくりするから。今までで一番びっくりして、今までで一番続きが気になりました。ラスト一作!ローリングさんには頑張って欲しいものです。
 前作で大切な名付け親シリウスを失った失意のハリーは、ヴォルデモートと戦う準備を始めます。マルフォイ家やスネイプの怪しげな動き、ダンブルドアと決戦の準備とかが、通常の学校生活に挟まります。そしてラストできゅーっと収束するわけです。そのへんは今までと同じ描き方。
 なんかネタバレしないで書くの難しいですね。ただ、ハリーを初めて好ましく思いました。今まで子供だったのが大人になったなぁと。相変わらず向こう見ずな所はあるのですが、慕っていた人を無くし、自分の責任を自覚したってとこでしょうか。そんでロン…、君は三人の中でやはり一番子供だ…。ロンファンの私としてはちと哀しい。先超されてるよ!

 こっから先は超!ネタバレだから、ちょっとでも「読もうかな」って思ってる人は絶対読まない方がいいです。本当ですよ!




 ダンブルドア死んじゃった…。びびった。えええええ!って思った。
 最後の最後まで「生き返るんちゃうーん」と思って読んでましたが、葬式まで済ませちゃってほんまびびりました。「生きている、スネイプは裏切っていない」という想いはやはり持ち続けていますが「もしかして…!」という気持ちもあるのです。実はダンブルドアもどっかに分霊箱作っとるんちゃうの?と想いましたが、そうするとダンブルドアも殺人してないと駄目なんですよね。でもスネイプはやはり味方だと思います。根拠はありませんが。スネイプがダンブルドアに呪文をかける前、「懇願するような」っていうくだりがありましたが、あれはダンブルドアがスネイプに「お前は私の味方よね?」って懇願したんじゃなく、「ドラコを助けてやってくれ」つまりドラコの目的(ダンブルドア殺害)を遂げさせてやってくれって意味だったんじゃないかなって思うんですね。
 まぁダンブルドアの生死に関わらず、生徒の為に犠牲になるところはダンブルドアらしいと思います。ハリーが「やっぱり僕がずっと言っていた通りスネイプは敵だったんじゃないか!」っていう結末になるのは、何となく腹立たしいのでそれは避けて欲しい。
 ただ、「人は死んだらおしまいだ」ってとこは崩しちゃ駄目だと思うので、それを考えると「ダンブルドア実は生きていました説」は説得力がないかなと。特にハリポタは魔法絡みなんだから、できることとできないことの線引きをはっきりしないと。魔法だから何でもできちゃうの、だと面白味に欠けますから。もしダンブルドアが生き返るとしても、「あれは死んでなかった」じゃないと嫌かも。まだスネイプ涙の告白「あれはダンブルドアの望みだった。我が輩だってあんなことしたくなかった」になる方が遙かにましです。
 また今回はあちこちに恋愛話が転がっていましたね。ハーマイオニーはロンを好き!と主張してきた私めでしたが、正しかった!と思うと感激もひとしおです。クラムとキスしてたかどうかは定かじゃありませんが、してて欲しくない親心。だからといってロンの子供のようなヤキモチは許しませんが。あほかロン。だからあんたは子供なんだ…(泣)男だったらどーんと構えておきなさいよどーんと。
 邦題はハリー・ポッターと謎のプリンスとなっていますが、これなんで「謎の」なんでしょうね。「half blood」やったら「混血」でええやん!途中まで気付かなかったのですが、これ教科書の持ち主のことだったんですね。「半純血」とか紛らわしいよ!「混血」という言葉を使っちゃいけないからでしょうが、なんか納得いかないなぁ。
 ジニーもいつの間にか大人になっていて、ハリーばかりを見ていた故に外に目を向けてみたり、ハリーの決意を受け容れたり、もうお姉さん(ここはあくまでお姉さんです)びっくり。女の子は一足先に大人になるもんなんでしょうか。それにしてもジニーを好きになるとは思いつきませんでした。ハリーが「ジニーはロンの妹なんだぞ」と自分に言い聞かせるところで、ロンを失いたくないんだなと切なくなりました。ハリーが世界で一番大事なのは、やっぱりハーマイオニーではなくロンだと思うのですね。
 最後ハリーがヴォルデモートと戦う決意をするところ、その為に大切なものを切り捨てようとするところ、でもロンとハーマイオニーは着いていくところ。賢者の石から始まった長い長いフリはここに行き着く為だったのだなぁと感じました。軽口を言ってハリーを笑わせようとするロンは、ちょっと大人に見えてかっこよかったです。
 いつもダンブルドアは全てを知っているような顔をしていたから、ハリーがヴォルデモートと対決する為に、彼が消えてしまうのは予想できたことかもしれません。それによってハリーの決意が固まるというのも自然な流れだと思います。キャラクターに愛着を持つばかりに物語の流れを阻んでしまうと面白くなくなるでしょうし。そのへんローリング女史は迷いが無くて(葛藤はあるでしょうけど)潔い人です。「児童文学だから」「人気のあるキャラだから」とか言い出したら、こんな展開にはならないでしょうね。って書いている内に、ダンブルドアが死んでしまっても、それは必然なのかもしれないと思えてきました。でもそれも哀しい。私はキャラに愛着を持っちゃうので。
 何はともあれ、次作に期待!
(2006/06/13)

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最終更新:2009年06月07日 17:41
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