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石田衣良

アキハバラ@DEEP


 久しぶりの石田衣良の本でした。マニアックな内容でした。結構な数の本を出して、雑誌やテレビのメディアにも登場して、かつマニアックな分野だから取材もいるだろうに、一体いつ描いているんだろう?と疑問に思います。割とソフトな顔立ちなので(顔を覚える位にはメディアに登場してる)、出演依頼がきやすいのかなと妄想したり。きっとモテるんだろうな。実はゴーストライターがいましたなんてオチが素敵かも。
 と妄想はこの位にしておいて。私は秋葉原には行ったことがありません。秋葉原はもちろん電気街と呼ばれるような所へもです。ただ最近「秋葉原」は元々の電気街ではなく、オタクの聖地として有名になり、行ったことも無いのに「こんな所である」というイメージに関しては、なんとなく詳しくなったような気がします。情報源は全てネットですが。
 このお話は秋葉原をホームとする奇妙な三人組(ページ:吃音、ボックス:潔癖症、タイコ:光で硬直)が、アキラという攻撃的美少女達(あと忘れた)に出会い、仕事を始めるところから始まります。それぞれが一癖ある彼等はお互いがお互いを補い、何かすごいことができる筈だ、と控えめに活動を開始。そして出来上がったクルークという検索エンジンを巡って、大手企業と戦いを始めるのです。無理やりまとめると「社会的には力の無いオタクと、儲け主義な大人との戦い」でしょうか。オタクに優しい造りです。
 私の中では石田衣良という人の作品の印象は面白くて読み易くてちょっと暴力的。この本もサクサク読めましたし、十分面白い。でも座右の書にはならない。ハリウッド娯楽大作みたいな感じ。今回のオチは時代を先取りしすぎたものだと思いますが、それも娯楽だからま、いいかなってとこでしょうか。ストーリーやジャンルが多岐に渡っていて、ほんと引き出しが多い。これで「読者をマインドコントロールしちゃうようなもん描くぞ!」と気合を入れたら、さぞかし立派そうなものができあがるでしょうね。絶対しないと思いますが。面白かったし続きが気になったし気分爽快だけど、多分二回は読まない、そんな本でした。
 今回は秋葉原やネットが舞台です。私はパソコンを生業にしているので違和感無く入り込めましたけど、普段パソコン全く触らなくても面白かったのかな。説明口調ではなく、かつ分かりやすかったとは思うけど。この作者は電脳的なネタや時事関係に強い。何年か後にはもう賞味期限の切れているであろうネタを、果敢に扱うところは尊敬に値すると思う。一体いつ勉強するんだろなぁ。

 ここから先はネタバレです。
 クルークが自ら思考するプログラムになったのは、いくらなんでもそれはないやろと思ってしまいました。どんなコード書いたらそんなんなるんや。感動的ではありますけども、ユイのイルカと言い、ちょっとのけぞった。ネットの海というのは確かに神秘的ではあるかもしれませんけど、こうなりゃーなんでもありやな。
 ただ学習型検索ロボットというのは、いつ商品化されてもおかしくないと思います。本当にそういうの出そう。むしろ出して欲しい。「クルーク」という名前も素敵だし、手を抜かない人だなぁと変なところばかり感心したりして。クルークが意思を持ったときの口調が淡々としていて、なんか好き。でも0と1の塊なんよねぇ。
(2007/11/02)

下北サンデーズ


 ドラマになった小説です。主人公は世間知らずの大学1年生なりたての「ゆいか」。彼女は産まれて初めて見た演劇に感動し、大学進学のため上京したその足で、その劇団「下北サンデーズ」に入団します。ドラマではこのゆいかを上戸彩がやっており、読み始めからそのイメージでした。
 下北沢というところは劇団がひしめいている所らしく、町全体で演劇を後押ししているそうです。私は東京人ではないのですが、なんとなくそういうイメージは持っていたので納得。下北には演劇ヒエラルキーのようなものがあり、それは興行を打てる劇場で決まるそうです。常に最下層の劇場でしか使えなかった下北サンデーズですが、ゆいかが入団したタイミングから、なんとなく上向きに。カリスマ性のようなものはある座長や、マドンナ役や男前役やボケ役やマネージャと、この先劇団はどうなっていくのか?というお話。
 面白かったんですけど、評価は分かれるのじゃないかなと思いました。私は少しだけ演劇が好きで(もちろん内部事情や勢力を語れる程知らないけど)、何回か見に行ったことがあり、割と入りやすかったです。大人計画の松尾スズキとか新感線の古田新太とかをもじった名前があったので、もっと知ってる人は「にひひ」と笑える楽しみもあるんじゃないかと。劇団の名前や、芸名は割と特徴があって、そういう雰囲気が感じられるのも面白かったです。下北沢を知っていて、演劇好きな人は違う楽しみ方ができそうでうらやましい。
 ただ、どかーんと面白いわけではなく、小技が聞いているなぁって印象でした。ある意味サクセスストーリーなわけですが、そんなにシリアスでも重くも無く、また恋愛はあるものの綺麗でもなく、「この人はこういうのも描くんだ」という感想です。ドラマは今ひとつだったらしいですが、これを映像化するのは難しそう。ドラマの中でもう一つ演技をしないといけないわけですし、なぜこれを選んだのかは疑問。
 作中に出てくる台本をどっかの劇団がやったら見に行きたいです。特に、ストリッパーが過去の自分とお話をするやつ。
(2007/04/15)

4TEEN


 読んでいて「どっかで読んだことある文章だ」→「石田衣良っぽい」→「あ、そうか石田衣良だった」という思考を繰り返しました。分かりにくいな。石田衣良っぽいようで石田衣良っぽくない(そんなにたくさんは読んでいませんけど)。とても、面白かったです。
 主人公は4人の中学生の男の子。語り手はその中の一人、テツローというニュートラルな存在の子でした。短編がいくつかあって読みやすかったです。青春物であるように見せかけて、そうでもなくて、でもやっぱり青春物。重い爽やか炭酸飲料とか、焼酎の純粋ソーダ割りのよう。かつて中学生男子ではなかった私からすると、「中学生男子ってこんなんなのか」と感心するようながっかりなような。エロ本には興味津々(しかも割とマニアック)、不治の病を抱えていたり、拒食症の女の子がいたり、暴力を振るうお父さんがいたり、出会い系サイトで人妻と知り合ったり。大人が望む無邪気な子供達の話ではなく、扱うテーマは割と重いです。でもそこは少年達なので絶望的になったりはしない。でもでも、なんだか彼等は冷めていて、これまた無邪気な子供達ではない。印象を一言で言うのがむずかしく、堂々巡りになるような本でした。
 大人の望む子供の物語って、子供達で解決できない問題ってあまり出てこないと思います。子供達が子供らしい発想の元、問題を解決してハッピーエンドって話はあるけど、この本はそうではありませんでした。大人の問題や社会的な問題、そういうものを拒絶するでもなく無条件で受け入れるわけでもなく、ただ受け止めるだけ。愉快痛快な話ではないけれども、絶望を伴わず、読んでいて面白かったです。最近の子供の目から見た大人ってこんな感じなのかな。
 昔の私は、ダイエットを気にしても拒食症まではいかないし、深刻な病気もなかったし、部活で汗を流して負けて泣いて、好きな子と喋ってきゃあきゃあ言ってるような、わりと健全な中学生(自分で言うなとお思いでしょうが)でした。まぁ何か1mmでも違えば、このお話に出ている子供達のようになっていたかもしれないとは思いますが。ただ、今の私はテツロー以外のちょっと冷めた子供達に、共感することはないでしょうね。性別もあるので、もしかして私のすぐ傍にいた男子は実はこんなのだったのかな?もし私が中学生女子だったら、どんな感想を抱くんだろう。
 東京は月島近辺の描写が細かくて、知っている人なら面白いのかもしれません。私はあまり知らないけど、行ってみたくなりました。
(2007/04/09)

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最終更新:2007年11月03日 01:51
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