



大好きな川原泉さんの漫画です。ちょっと大きめで、五巻完結です。
これは元々短編があったのです、確か。そんでその設定を引き継いでいるので、Ⅱとなったのじゃないかな、多分ね。なので主人公キラと社長とナッシュコピーとコンピュータアンブレラは前回も出ていました、よね?という甚だ頼りない記憶の元、だってどの本に入っていたんだか忘れたんだもん、と開き直ることにいたします。
宇宙飛行士キラ・ナルセは、別名イレブンナイン。99.999999999%というなんかすごい数値を叩き出せる、つまりは優秀な人なのです。何がその数値なのか忘れちゃいました。9が続くほどすごいんだって。そしてキラの勤める会社の社長ナッシュ。めっちゃ偉い筈なんですが、駄菓子と旅が好き。二人の出会いは短編で、社長がキラの乗る宇宙船にこっそり乗り込んじゃったわけですよ。社長がいない間は、超優秀なそっくりロボットアンドロイドナッシュコピーが代わりを務めます。
世は科学が進化し、銀河系以外の星にだって人間が移住する世界。新婚旅行で宇宙旅行やら、新天地を求めて海に、じゃなく空に飛び出るような世界なのです。さて科学が発達し働く場所が増えたので、女性が社会進出いたします。そうすると少子化の問題も出てきちゃうわけです。そこでモーゲンスターン博士は考えました。減少した人間の変わりに働く人(?)材を!
そして「働く動物たち」通称ブレーメンが世に出ます。キラが乗船を命じられた宇宙船はキラ以外すべてブレーメン。副艦長のダンテ君はマウンテンゴリラ、以下うさぎさんライオンさんかえるさん山羊さん達が制服を着て敬礼しているわけです。川原さんの絵は年々リアルになっていってるように感じますが、そこに動物が混ざり、妙にファンタジーな絵柄になっておりました。
さて出世街道まっしぐらのキラ艦長は優秀なブレーメン達に支えられ、問題なく輸送船の役割を果たそうとしますが、そうはいかない宇宙空間。小さな事件がいくつも起きます。それをブレーメン特有の力を発揮して解決する、そんなお話なのです。
前置きがえらい長くなりましたが、この作者が好きな人は読んで損はないと思います。男性でもよいと思います。ラブストーリーを求める方はちょっと違っているかも。だけど長らく川原泉の新作に飢えていた(途中まで読んでいたんですが、続きが出ているのを知りませんでした)私にとっては、えらく嬉しかったです。号泣はありませんが、ホロリとするんです。この人はいつも一生懸命な人を書きますが、今回はブレーメンがけなげです。
この人の本を読むといつもちょっと反省します。打ちのめされたり、心から悔やんだりするわけではなく、「おごりたかぶっていないか?」ってちょっとだけ自らを振り返るのです。大上段から説教するわけでなく、けなげな人を描くだけ、それだけで私をそういう気分にさせるのです。「北風と太陽」みたいに「コートを脱げー!」って強引に来られたら「脱ぐもんか!」って思うけど、「無理強いはしないけどさ、コート脱いだ方がいいんじゃない?君少し暑苦しいよ?見ない振りしといてあげるからさ」って言われると「こっそり脱いじゃおっかな、でも知らん振りしててね」って思うように。長いな。つまり私の弱いところを優しーく攻撃してくるわけですよ。これは痛い。
ブレーメンはこのお話の中でけなげに生きる弱者として描かれています。偏見や差別もソフトにではありますが、しっかり描かれています。これはフィクションなので、最終的にはハッピーエンドです。ただそこで私達は「よかったよかった」で終わらせてはいけないんだろうな、と思います。
(2006/12/05)
レナード現象には理由がある
久しぶりに川原泉の新作を読みました。この人も私の琴線をがんがんはじく漫画家さんであります。しばらく新しいの出てなかったので、嬉しいです。
この人の魅力は、例え恋愛話を書いてもラブラブしすぎないあっさりしたところ、でもよく読むとじわじわくるところでしょうか。割ときっつい目にあっていても、考えすぎず前向きで読んでいても気分が悪くなりません。楽観的とは違うんですよね。普通なら背景真っ黒で涙を流しながら「どうして私がこんな目にあうの…!」って延々と数ページも続きそうな暑苦しいシーンも、この人にかかれば数コマで終わっちゃうような。泣く為じゃなくて、進む為に描いているからって感じがするなぁ。
台詞回しも小難しくてリズムがあってて好きです。声に出したくなります。この題名も「れなーどげんしょうにはわけがある」と読みます。声に出したくなりません?中の短編の題名も「ドングリにもほどがある」「あの子の背中に羽がある」「真面目な人には裏がある」とリズムがよろしいです。
新作ですが、珍しく恋愛ものでした。エリート高校を舞台にした短編がいくつか入っています。恋愛ものであることすら驚きなのに、BL(ボーイズラブ)という単語まで出てきたのは衝撃でした。(BLが何かを知りたい人は漫画を好きな女の人に聞くといいと思うよ!)自分がロリコンなんじゃないかと悩む高校男子が出てきていましたが、川原泉の作品には年の差カップルが多かったので「何を今更」って感じですかね。あのお話が一番好きでした。
あまり悩みすぎない高校女子と、割と思い悩む高校男子がなんとも頬笑ましかったです。私にとってこの人の本こそ、マイナスイオンの源です。
(2006/07/05)
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最終更新:2009年06月07日 17:43