近藤史恵

サクリファイス


 自転車のロードレースのお話。競輪とはまた別らしい。ツール・ド・フランス位しか知らないけど、そういうプロの世界が日本にもあるのは知らなかった。
 サクリファイスは日本語で言うと「犠牲」。題名の意味は読み始めてが分かった。自転車レースの世界は個人の戦いのように見えるけど、実はチーム単位で考えるようだ。レースを引っ張ってペースを掻き乱したり、エースの前を走り空気抵抗を少なくして体力を温存させたり、エースの自転車に不具合が起これば自分の自転車を差し出したり。勿論脚光を浴びるのはエースだけど、そういう役割分担が出来上がっているらしい。だからチームとしても、色んな役割の人間が必要となる。
 主人公の白石は自転車は好きだけど、「俺がエースだ!」といった自己顕示欲がなくアシストに徹する。チームには石尾というエースがおり、彼のために走ることに疑問を持っていない。だが、白石の実力がついてくると外野から色々なチャチャが入り、石尾が過去実力のある選手を、自分がエースであるために事故に追い込んだということを聞かされる。白石は石尾を信じていいのか、用心した方がいいのか、判断に悩む。果たして、次のレースはうまくいくのか?というお話。
 自転車の知識がないのにさらっと読めました。説明が巧いんだと思う。なんとなく分かったような気になれたし。
 白石がとても静かな性格のせいか、物語は淡々と進む。もちろん混乱したり、怒ったりするけど、もともと暑苦しくない男なので全然熱く無い。ただエースになりたいという欲求がないだけで、自転車に対する思いは大きく、炭火のような男だなぁと思った。
 物語は「石尾は何をしたのか」というのが大きな柱だった。翻弄されたなぁという気はある。面白かったので他の本も読みたいと思う。
(2009/04/13)

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最終更新:2009年04月14日 00:15
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