ダン・ブラウン2

パズル・パレス



 「ダヴィンチコード」を書いた人の作品です。ラングドンシリーズではありません。ダヴィンチコードは宗教的なお話でしたが、今回のお話は一転、情報処理のお話です。暗号というキーワードでは繋がっていますね。引き出しの多い人だなぁという印象を受けました。
 主人公ソフィアは暗号技術に長けた、まぁめっちゃ頭の良い女性です。これがアメリカの暗号だかの専門機関に勤めています。この機関は世界中の通信を監視し、テロやら戦争やらを未然に防ごうという志の元に動いていますが、それに反発する元社員が「何人もプライバシーは守られるべき」と「絶対に解けない暗号技術」を開発します。これが世に出てしまってはさぁ大変。どうやって阻止すんべ?ってとこが大まかなストーリーでしょうか。そこにソフィアの恋人が別の場所で同時進行のストーリーと絡んできたり、ごくごく短い時間での息詰まるお話になっております。ちょっと最後投げやりになってしまいました。ごめんなさい、面倒臭くなった。
 感想なんですが、「よくできてるなぁ」と思いました。が、面白かったかと自問すると疑問が残ります。展開の早い映画を見ている気になりました。「技術に長けている」と「感動する」のは違うと思うのに似ているんです。確かに続きは気になりましたし、オチも割と好きです。10年近く前に書かれた物らしいですが、情報処理のくだりも違和感なく受け容れられます。IT業界の隅っこに生息している私ですが、変な所はなく勉強になった部分もありました。少し知っている分野だけに、面白く思えたとこもあります。でもなんなんでしょうね、なんだか消化不良というか「勿体ない」と思ってしまいました。
 ダヴィンチコードの時も思ったのですが、出来事をなぞっていてトリックとかオチとかはいいんですけど、次々と何かが起こっても人物に感情移入できないのですよね。一人称で書かれている部分もあるし、それぞれの登場人物の感情を全く書かれていない訳ではないのに、入り込めない。物語の中で私は誰でもなく、傍観者なのです。誰にも自分を投影できない。個人的な好みだと思いますが、まず出来事ありきのお話には私は着いていけないようです。人の心の動きがあって、それ故に何かが起こってしまう/起こすお話が好きなのです。それで行くと、登場人物の個人の思想なんかをもっと掘り下げていたらもっと面白く感じるのになぁと残念に思いました。
 あと作中には何人か日本人が出てきていましたが、名前が変でした。エンセイ・タンカドとか。どんな漢字やねん。他にも出てきてましたが忘れちゃいました。山田太郎だったりしても嫌ですが、そんな変わった名前にせんでも~と思いました。巻末に「日本に対しての明らかに間違った描写は修正しました」と書かれていましたが、他どんなこと書いてたんですかね。興味津々です。

 例えばソフィア達がいかに愛し合っているか、長官がどんな風にソフィアを愛していてそれ故にこんな行動に出たのか、エンセイ・タンカドは自身のどのような願いからこんなトリックを使おうとしたのか、その当たりを掘り下げてくれたらもっと面白かったと思うのです。特に長官が最後の方でソフィアへの愛を自問するところなんて、うまく持っていけばかなり感動できるシーンだと思うのですね。私は信念を持った男性がなんかやってしまうお話が好きなので、つくづく惜しい。
 秘書たら技術者たらは正直いらんかったんちゃうかなと思いました。大して絡んできていなかったし。でも最後のシーンで、古参の技術者がオペレーター達を仕切っているシーンは、実写で見たいかも。ああいうキャラは好きです。
 全てはエンセイ・タンカドの自作自演だった。協力者などおらず、解けない暗号なんて開発されていなかった、というオチは楽しめました。多分個人的な好みだと思います。やられた感が好きです。
 ダヴィンチコードは大ヒットしましたが、このお話の実写化はないかな?コンピュータ触る場面って動き少ないですからね。あまりドラマティックにはならないか。あと理屈を説明するのが難しそう。
 それにしても登場人物の名前を全く覚えていませんね、私。調べるのも面倒なんでもういいか。
(2007/01/10)


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最終更新:2007年04月02日 23:48
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