崖の上のポニョ

崖の上のポニョ






 久しぶりのジブリ作品。条件付で面白かった。ニュースで評判があまり芳しくないのは知っており、期待しないで観たのがよかったのかも。
 条件付というのは「子供向け」であること。全体的に説明不足で消化不良な部分があるのは否めないが、その一点を飲み込めばとても面白い映画だった。なんと言っても絵が綺麗。オープニングでフジモトという男が海の中でくらげを養殖(?)しているシーンは、本当に綺麗だった。CGでのリアリティのある綺麗さではなく、アニメ調のそれ。私は最近のCGには食傷気味なので、とても好ましく思った。アニメはアニメでしかできないことをすれば良いと思う。
 観ながらずっと感じていたのは「大人になっちゃったな」という残念な気持ち。物語が進むにつれ、少しずつ現実離れしていくのだけど、そこに一々ツッコミを入れてしまう。その辺が我ながら残念だった。そんなこと気にせずに、不思議を楽しめば良いのに。きっと私が子供ならワクワクしたに違いないのに。
 造船ドックのある海辺の小さな街を舞台にして、お話は始まる。ある日ソウスケはガラス瓶に頭を突っ込んで、抜けなくなった魚を助ける。この魚に「ポニョ」と名づけたソウスケだが、ポニョの父親によってポニョを取り返されてしまう。海に戻ったポニョは「人間になりたい」と不思議な力を発揮するが…。というお話。
 ツッコミを入れた部分というのは、「子が親を呼び捨てにする必要ある?(ポニョが呼びやすいように?)」「ミサの運転乱暴すぎね?」「下手すると虐待になりますよ」「車でじゃないと麓に行けないような山の上に住んでるのに、子供の足で庭から海まで行けるんかい」とか、そんな瑣末なところ。現実とファンタジーの境界線の引き方が、微妙に外れているように思った。
 ソウスケとポニョが二人だけで冒険にでかけるシーンは、私が子供なら絶対にわくわくした。昔読んだ「いやいやえん」という童話を思い出す。あのお話は保育園で積み木の船を作ってごっこ遊びをしているうちに、本当に船出しているお話。その、ごっこ遊びがいつしか本当になっていく経過がすごく自然で、今でもあれは名作だと思う。三鷹の森美術館に行った時に、これを原作としたショートアニメが上映されていてすごく嬉しくなったのを覚えている。宮崎監督はあんなお話を作りたかったんじゃないだろうか。蛇足だが絵本「そらいろのたね」もものすごーくわくわくした。
 嵐のシーンのアニメーションは圧巻。ジブリアニメの液体の扱い方は個人的にはとても好き。粘度がある、たぷたぷとした水。海が舞台なだけに、それは堪能できたと思う。それから忘れてはならないのが、ご飯。今回も相変わらずおいしそうなハムでした。
 今回も声優を使わないキャスティングだったけど、あまり違和感はなかった。ただ大満足て訳でもなく、文句はないかなって程度で、声優を使って欲しいという思いは変わらない。ポニョは可愛くて良かったかな。天海さんは彼女以外の何者でもなかったので、今一つ。映像に比べると、声は平凡な感じ。
 この映画の評判についてだけど、世間はジブリに多くを求めすぎているように思う。特にニュースが取り上げるのは興行成績が多い。「良い映画=興行成績が良い」という図式は当てはまらない。じわじわと人気が出てくるのもあるし。カリオストロやナウシカやラピュタと、最新作を比べることが多いけれど、皆本当に映画館で見たの?テレビで何度も放映して、だんだん好きになっていったんじゃないの?私は「ナウシカとラピュタで育った」って本気で言っちゃう位その二作品が好きやけど、何度も何度も観て気付いたら好きになっていた。子供の頃の感性で「好き」とずっと刷り込まれているから、それを超えるようなものが出てくるってあまり期待していない。単なる「映画として好き」以外の要素がたくさんあって、これは別格、永久欠番のようなもんだ。
 ニュースを見る限り、世間はそれを「超えろ」と言っている。正直「無理じゃね?」と思う。「幼少から食べ続けているおふくろの味を超えるものを作れ」と言っているに等しいと思う。それくらいインパクトがあるものを作って欲しいと言う気持ちは私にだってあるけれど、さも当然かのように言うのは違うんじゃないの?
 ポニョが入っても、私のジブリランキングの1位、2位は変わらなかった。でも面白かった。私が子供の頃見たら、絶対わくわくした。この映画がジブリではなく、他のプロダクションが作ったものならそれなりに絶賛されていたんじゃないだろうか。それともハードルが高くなるのは世間的にしょうがないのかな。評判なんか気にせずに、創りたいもの(スケールが小さくても)をどんどん創り続けて欲しいと思う。

 以下、ネタバレです。
 このお話は二人のほのかな恋心を描いているが、個人的には男の子と女の子ではなく、男の子同士がよかったなぁと思う。この年齢で「恋」を根拠に大きな決断をさせてしまうのはあまりにむごいというか、そもそもソウスケの想いは恋心じゃないように思う。おばちゃんは、「心変わりしたらポニョは泡になるのかな」「この歳で婚約者?」「ポニョさんお行儀悪いんですけど」とか思っちゃうわけですよ。他ツッコミとしては、
 ・ポニョ、ソウスケのところ、来た!って、現実でやられるとちょっと怖い。
 ・結構な大災害なんですけど。しかもポニョの暴走のせいやし。
 ・ソウスケとコウイチのモールス通信ってなんか意味あった?
 ・こんだけ大災害やったら何人かは亡くなっているのでは…
 ・水が押し寄せてきているのに、強行突破するなんて!
 ・海の上を走っているポニョが、ちゃんと水面に移っているところは芸が細かい
 ・波が砕けるまで道路にいるのに、なぜ海に戻る
 ・5歳の子供だけを家に残すのはちょっと。
 ・洪水になったら水はこんな綺麗ちゃいますから!(でも子供の頃に想像した洪水はこんなだった。ここは好き)
 ・水がサッシすれすれまで上がってきているのですから、窓は閉めましょう。タコが入ってるよ!
 ・子供二人で「リサを探しに」って、止めろよ大人!
 ・トンネルにはなにかあったの?結局試練ってなに?
 ・養育費は?コウイチに確認取らなくていいの?
 ・5歳のソウスケに大きな決断をさせすぎでは?
 ・沈んだ町は綺麗に戻らないよねー。

 あー、私野暮ですね。ごめんね小さなことが気になったの。でも面白かったよ。本当に願わくば、童心に還って観たい。
(2008/10/24)

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最終更新:2008年10月25日 00:23
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