迷宮シリーズ最新巻です。地味に大好きです。全巻愛読。
ざっとこの漫画の趣旨を説明すると、資産家の一人娘の私生児として育った天才綾小路京と、田舎の大家族の長男山田君。大学入学時に不動産屋のダブルブッキングのため、この二人が同居することになり、物語が始まります。京は幼い頃に母親を亡くし、その複雑な出生ゆえにかなりひねくれて育っています。が、天真爛漫な山田君によって、少しずつ少しずつその心を開き始めるのです。物語がどう進むかというと、それはもうコナン君もびっくりする位、事件に遭遇します。刑事事件になるようなものから友人同士の確執等内容は様々ですが、いくらなんでもそれは無理ちゃうかっちゅー位、いざこざが京めがけてダイブしてくるわけです。天才だからしょーがないよね、ってそんなわけあるかい。そして教訓めいた主題を語って、幕を下ろすのです。大体一話読みきりとなっているので、読みやすいです。
前巻の「白迷宮」で京の伏線がだいたい回収されたのか、この巻は連載終了後の番外編のような内容でした。安心して読めます。京がまだ山田君を信じていなかった頃、スーパーでよく会う折り紙好きの小学生が姿を消してしまう。誘拐かそれとも忙しい母親に傷ついた故の家出か、というお話。それから海外から帰ってきた京のエピソード2本。全身火傷のため醜くなった身体を嘆き、恋人に心を開けない女子大生のお話と、座敷童子が出る民宿の子供が抱える嘘と謎のお話。
雑誌は読んでいないのでよくわかりませんが、この先もこんな感じで迷宮シリーズは続くんですかね。個人的には京の謎も解けたし、結城とアキラもそれなりに落ち着いたし、山田君も結婚したし、綺麗に終われそうな感じはします。むしろ終わり時を間違えて欲しくないと切に願います。思うところはあれど、私はこのシリーズ結構好きだったので終わって欲しくないという気持ちもあるんですけどね。終盤の京の出生に関するあたりは、最初からぽつぽつ読んでいる身としては混乱するところがあったものの、綺麗に収束したという印象を受けました。連載当初からこの結末を想定していたのであれば、すごいなぁと思います。
ここから先は童迷宮以前のネタバレを含みます。
私はこのシリーズ好きなんです。かーなーり好きなんですが、なんか正しすぎる印象は受けるんですよね。悪いことしたやつは最終的に痛い目見ますし、いじめなんかも許さない。今回で言えば、引っ越し先の子供達に馴染めずに一人でいる少年を見た山田君が、「皆で遊ぼう」って言ってめでたく仲間に入れますよね。それはとても理想的で気持ちいいのですが、心のどこかで「そんなうまくいくか?」って疑心暗鬼になる私がいるのです。私は「正しいこと」を大切にする傾向があるんですけど、そういう人間が(作者は不本意かもしれませんが)お話を描いたらこんな風になるのかな、という感じがします。正しいことが大切な私が読んで「うん、そうあるべきだ」と共感するのに、反対に「そんなうまくいくはずがない」と思ってしまうのは矛盾しているのですが、それが長い間受けていた印象です。ずるくて悪い奴がずっと得しているような表現がないので、現実的ではないにしろ少年少女に読んで欲しいかなぁと思います。基本的に作者の考え方は共感できます。
結城とアキラはなんだか微妙。結城がただアキラに恋しているのはよかったのですが、アキラは本当に結城に恋をしているのか?と疑問が残ります。結城がゲイであることは抵抗無いのに、アキラがそうなるのか?というところが受け入れられません。アキラは今まで女の子が好きだったわけだし。やっぱりそのへん私の頭が固いのでしょうか。
同じく京が生涯独身宣言をされちゃったこともなんだか釈然としません。ただこれは結城とアキラのような感情ではなく、ただ不憫だなぁと思ってしまうからだと思います。伴侶を得ることだけが幸せではないでしょうが、もっと京には幸せになってほしかったなぁとそこが残念なわけです。でもこればっかりは作者が神様ですし、そのへんに文句つけるつもりはないです。京はそれが幸せなんだ、と言われればそう受け取るしかないですしね。ただ性的欲望皆無って、実際そういう男性はいるのかしら?京ちゃんどんな身体してんだ?そういうことがあり得ないのか、医学的にはわかりませんが、なんとなくドリーム入っているような気はします。いいけど。
迷宮シリーズではありませんが、単行本に入っていた短編がとても好きです。題名は忘れましたけど、幼馴染の男の子に恋をしている女の子のお話。彼女は幼い頃から幼馴染と過ごしてきますが、ある日突然恋のスイッチが入ります。が、幼馴染が自分を女として見ていないことを知っているので隠し続けます。そんな幼馴染は実は同じ高校の男性に恋をしていて、どちらの恋も実らないけどなんだか気持ちいい終わり方をするのです。「わたしたちの恋は続く たとえそれが実らなくても」という結びのエピローグが好きでした。
(2007/02/26)
- その読みきりの題名、ピロコの恋・・とかじゃなかったかな?とは思うのですが、自分も記憶があいまいで・・・ -- とくめい (2009-11-27 17:33:54)
- そんな感じでした。幼馴染の男の子が幼い頃ハ行に○をつけて喋るんですよね。だから主人公(ヒロコ)のことをピロコと呼んでいた気がします。 -- May (2009-11-30 01:26:31)
- 気になったので確認しました。「純愛惑星~ピロコの恋~」です。宝迷宮に収録されています。 -- 通りすがり (2011-10-10 17:23:29)
- 宝迷宮ですか、覚えておこう!実家にあるので、なかなか読めないんですよねぇ。 -- May (2012-06-22 20:29:42)
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最終更新:2012年06月22日 20:29