あああああ速水かっこいいいい!とアドレナリンが出るお話だった。バチスタから粘ってよかった!と思う。やっぱり田口先生出ないとねー、て感じ。バチスタが好きな人にはお勧め。関係者が一杯出てくるから、前作まで読んだ上での方がきっと面白い。
舞台は東城病院で、メインとなるのは救急。血まみれ将軍との異名を持つ救急の部長速水が実質主人公だ。赤字体質の救急を圧倒的なカリスマで支配する速水。ある日田口の元に「速水は業者と癒着している。看護士長の花房は共犯だ」という告発文が届く。院長高階にまたいいように使われた田口が、この問題を自分を目の敵にする沼田がいるエシックスに持ち込むこととなった。果たして癒着は本当か?本当だとすればどうする?というお話。バチスタのような犯人探しではないけれど、すごーく面白かった。速水かっこいい!だけじゃないっす。
血まみれ将軍ってあだ名とか、「将軍のお供は隼じゃないとね」といちいち芝居がかってるところとか、タイミング良過ぎじゃね?てところとかあるけど、気にしない!ねちっこい奴(沼田)はとことん嫌われ役で、本当にそんな嫌な奴いる?とかも思うけど、気にしない(いるかもしれないし)!
これはバチスタと同じく映画になるみたいで、速水見たさに見に行ってしまいそう。私としては速水は及川光博がイメージ通りだけど、他の人に言ったら却下された。口紅似合う男性はミッチー位しかおらへんと思うのに…。原作では田口は昼行灯ながらも偉くなってるし、年齢も救急の部長の速水と同じって設定だけど、映画は明らかに若い竹内結子でその辺は変わってるんかなぁ。田口と速水の学生時代の麻雀エピソードが結構好きだったけど、映画ではカットかな。
とにかく、バチスタより後のやつがパッとしないなぁと思っていた人は、ジェネラルまで頑張って下さい。
ここから先はネタバレです。
速水が将軍の異名を取った時と、最後のショッピングセンター事故で采配を奮うシーンは、ご都合主義かもしれないけど、ぞくぞくして大好き。極限状態のカリスマってかっこよすぎる。映画で一番見たいのはここだ。
告発文を誰が書いたか、って私はあまり重要視してなかったので、その辺も意外でよかった。最後は怒濤の展開だけど、それまでも飽きずに読めたし。人によっては、花房と速水と翔子の話はいらなかったりするかな~と思ったけど、私はそれがあるから速水に人間らしさを感じられて好き。ただ速水と翔子の間柄が今イチ翌分からなかった。
何作か読んで、作者が現在の医療を憂いていることを強く感じる。今回は医療ヘリとお金の話だろう。「救急で金儲けしてどうする」という主張。経理担当が事故に巻き込まれた妻を見て、ヘリ導入を拒んでいたことを悔やむシーンは、作者の願望かもしれない。
今、現実のニュースでも医療に対する様々な問題を見る。信じられないような杜撰な治療をする医者、過酷な労働状況に耐えて勤務する看護士、両方いるのだろう。普段健康な私は、医者や看護士に対して、完全な治療やナイチンゲールのような高潔な意思を持った人、という漠然としたイメージしかない。そこにいるのも私達と同じ完璧ではない人間だ、と理解していないように思う。他の人もそのずれを感じたときに、医療訴訟等に発展するのではないか。
勿論職業に対してプロ意識を持つのは当たり前のことだけど、「医者は神ではない」と全員が分かっているかと言うと、そうではないと思う。そして、ことが生命に係わるだけにおおごとになっている。
医療の現場で治すのも治ろうとするのも、私と同じ人間だ。誰もが病む可能性があること、お金がないとやっていけないこと、そして営利団体ではないことを、私達は強く自覚しないといけないのだろう。
(2009/03/20)

チーム・バチスタの栄光、ナイチンゲールの沈黙に続くシリーズ第三弾、だと思って読み始めた。実際は舞台が碧翠院桜宮病院という病院で、田口など東城大学病院のレギュラーはあまり出てこない。出てくるのは白鳥や姫宮、他にも前作に出てた名前が挙がったりで、シリーズ好きな人は嬉しいかも。
主人公は天馬という医学部学生。友人に「潜入取材してこい」と画策され、渋々ボランティアとして碧翠院に潜り込む。終末医療を掲げている家族経営の碧翠院は普通の病院とは趣が異なるが、それにしても尋常じゃなく入院患者が亡くなっていく。一体この病院で何が行われているのか、病院院長とその家族の謎に迫る。
ナイチンゲールで少々残念な気持ちになったが、この本でもそれは変わらなかった。やはりバチスタが面白すぎたのだと思う。とは言え、医療物としては面白かった。碧翠院にまつわりつく、不気味な雰囲気。それは多分私が「死」から目を背けたい気持ちから来ているように思う。
作者が小説を通して伝えたいこと。「死亡時検索をもっともっと充実させろ!」(「死亡時検索」という言葉が耳慣れなくてこの使い方であっているのか分からないけど)と、3作を通して訴えている。さらっと読んでいる私がやっと認識したのだから、よっぽどだ。これを伝えたくて、でも難しいと一般人は敬遠するから、娯楽という手段を選んだんじゃないかな。
終末医療の病院の碧翠院には死が身近にある人が集まっている。ただ私が漠然とホスピスに対して描いている雰囲気とは違う。
京極夏彦みたいなおどろおどろしい雰囲気。謎の多い院長夫妻と得体の知れない姉妹。ただなーんか不気味だけどちゃんとオチはつくから大丈夫。誰もが信念の元歩んだ結果の、少し哀しいお話だった。
舞台が変わるからか、前作を読んで無くても大丈夫。何よりこの後の「ジェネラル・ルージュの凱旋」がバチスタ並みに面白かったので、ここでやめなくてよかったー!
(2009/03/17)


「チーム・バチスタの栄光」の続編。病院で事件が連発するんは現実的じゃないし、そんな病院いややな~と思いつつ手に取った。
結論から言うと、前作の評価が高かっただけに少し残念な感じだった。これはこれで面白いんだけど。前作の持ち味があまり活かされていないような気がする。たとえば白鳥のうざさと凄さや、田口のしなやかなしたたかさとか、論理的にびしばし追い詰めていく過程とか。前作は前作として新しいのが読みたいような、でも白鳥や高階、田口、藤原さんのキャラは捨てがたいような。
これ単体でも読めそうだけど、前を読んでいた方が面白いのでそこからをお勧めする。続きがあるなら読みたいので、まぁ読んどいてよかったかな、ってとこ。
お話はバチスタ事件のしばらく後からという設定だった。病院に有名な歌手水落冴子が入院してきて、また病院には目を病んだ二人の男の子が治療中。この二つに看護士小夜が絡んできて事件は起こる。お膳立てが整うまでが、なんだか長かったなぁという印象が強い。
推理小説なので、ここからネタバレ(前作含む)ありです。
バチスタで面白かったのは、田口が聞き取った人間模様が、白鳥登場後どんどん違う風に見えていくところだと思う。一旦納得したものが覆されていく、小気味良い展開が持ち味だった。今回はそういう気持ちよさがなかったというか、「やられた!」と思うことがなかった。
事件が起こった後、しばらく小夜が犯人?とミスリードされていた。そういう手法は嫌いではないけど、あまり鮮やかには決まらなかったように思う。なんと言っても不完全燃焼の元になったのは、小夜の能力が核になっていることだった。小夜が何かを思いながら歌うと、歌を聴いた人にも同じものを見せることができる能力。本当にあるのかどうかは私は知らないので強くは言えないが、「なんじゃそら」と思ってしまったことは確かだ。あまりにその現象を共有できる人が多すぎて、しかも細かいというのが眉唾だなぁと感じてしまう。自分の無知を棚に上げておいてなんだけど、「そういうもんなんですよ」と説得して欲しかったなと勝手なことを思った。
事件が連続するのも変なので、前回の主要人物の上に起こった事件ではないことは良かったと思う。舞台が病院なだけに事件を起こすのは難しいように思うけど、次回作も読みたいとは思う。
(2009/02/12)

久しぶりに犯人を探す話を読んだ気がする。とても面白くて、一気に読んだ。前評判なしで読んだらきっと「ええもん見つけた!」って小躍りしてたに違いない。
バチスタとはある心臓手術の方法で、本当は小難しい名前がついているけど通称でバチスタと呼ばれているらしい。肥大した心臓を切り取って小さくしちゃおう、という「言うのは簡単やけど、そんなことできんの?」て疑問に思う理論をやっちゃったんだからすごい。そんな実在(?)の手術法、バチスタ。我家は医療に関する読み物(難しいのは却下)が好きで、漫画やら小説やらノンフィクションを読み漁っていたので、単語は知っていた。最近だと「医龍」でも出ていたので、なんとなく医龍の登場人物を当てはめながら読み進める。
主人公田口の視点で物語は始まる。舞台は大学病院で田口は不定愁訴外来、通称「愚痴外来」の担当だ。患者の愚痴をひたすら聞くような業務内容。田口に出世意欲はなく、ただ保身には長けており、医局の主流から外れてはいても自分の居場所がある現状に満足している。ところがある日、学生の時分に世話になった高科病院長に面倒な依頼をされる。
田口のいる病院には、桐生というバチスタ手術を得意とする医師が率いる、世間でも有名な心臓手術チームがある。そのチームが手がける手術に、術中死が連続しているという。しかもその依頼元は当の桐生とのこと。いやいや引き受ける田口だが、桐生の術技に魅せられ、次第に本腰を入れて調査し始める。
手術室での事件だなんてできるのかな、専門的になり過ぎない?と穿ちながら読んだが、門外漢にも分かりやすく書かれていた。登場人物の性格がはっきりしていて、メインは人間関係。もしも病院が舞台と聞いてしり込みしている人がいたら、そんなことは気にせずGO!
文章が派手、とか展開がドラマティックとか、そんな感じは全然しないのに、中だるみはない。でも下巻で白鳥という男が出てきたあたりから、ページを繰る手が止まらなかった。上巻が静なら、下巻は動。畳み掛けるように展開する。
田口の、一見いい加減だけど懐が深いところも良いし、高階の老獪さも良い。特に最後の辺りの、人前で一劇ぶちあげるところが素敵すぎる。ああいう、二人の呼吸が合っているの大好き。桐生のストイックさもよかった。出てきたとき、医龍の鬼頭をイメージした。漫画の方ね。似てると思いません?
それから恐らくこの本をここまで面白くしている立役者、ロジカルモンスター白鳥。彼のキャラ立てが絶妙だと思う。興味のあることは猪突猛進。感情を逆撫でして本音を引き出す。相手の気持ちには頓着しない。でも彼に傷つけられてもなぜか最終的にはうまくいってしまうような、そんな人。京極夏彦の京極堂シリーズに出てくる、愛する榎木津のような人。実際目の前にいたら凡人の私はいじめられるどころか、素で無視されるやろうな。
田口と白鳥がそれぞれ同じ人間から聞き取り調査を行うエピソードがあるけど、それが特に面白い。田口はじっくり話を聞き、白鳥はわざと相手を怒らせる。パッシブ・フェーズとアクティブ・フェーズと言うらしい。田口は自分が聞き取りをした時と、白鳥が聞き取りをした時、それぞれ対象者を人間以外のものに例える。その印象が大きく変わるのが見て取れた。そんで、それはお話の中の特別な人だからじゃなくて、その辺にいる人が皆抱えているような普通の性格でしかない。だから余計にいい。
とにかく売れるだけはあると思う。映画も見に行きたくなった。しかも映画は白鳥が阿部さんですとー!上田次郎に通じるものもある…かな?小説は続編もあるらしいし、ほんとに、あー面白かった!
(2008/06/22)
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最終更新:2009年06月07日 17:14