よしながふみ

西洋骨董洋菓子店




野郎ばかりが出てくるお話。幼い頃誘拐されたトラウマを持つ、要領が良くなんでも一通りこなせる店長。店長に高校時代に振られた過去を持つゲイの天才パティシエ。店長の幼なじみで強面男前だがとろくさい千景。元プロボクサーのお菓子好きパティシエ見習い。の計四人が繰り広げるスリルもサスペンスも抑えたお話。線が細くホモ絵っぽい(実際ホモ話も書いているみたい)ので、好き嫌いはあるかもしれません。身体のデッサン狂い気味?ってところもしばしば見られます。でも割と面白い。永久保存版よりもちょっと下って感じ。

もっと踏み込んで書こうと思えば書けるけど、わざとさらっと流してるんだと思う。店長が見続けている悪夢は、結局なくならないし。単純な勧善懲悪ではない。ハッピーエンドかって言うと微妙で、でもそういう感じを目指してるような。人気あったと思うけど、四巻できっちり終わってて無駄に引っ張ってない。めでたしめでたしではなく、「日々はこれからも続いていくんですよ」って終わり方がひねてていいなぁと思う。そういえば誰も綺麗に幸せになっていないなぁ。店長の悪夢は終わらないし、店長の誘拐犯は捕まってないし、千景は店長からちょっと距離を置いちゃうし(まぁ仕事は続けるみたいだけど)、パティシエは誰か特定の人とくっつく訳でもないし、見習いははっきりとパティシエになれた訳でもないし。救いがないと言えばないんだろう。でも人生きっとこんなもんだよ。
(2006/03/21)

大奥



 3巻まで読了。
 この人すごいなぁ、と1巻読みながら思った。発想とか、展開とか、完成度とか、雰囲気とか。そんなにたくさんこの人の本を読んだわけじゃないけど、「満を持して登場」って感じがした。
 舞台は江戸幕府。男子がかかる病気が蔓延し、今や世間は女社会。成人せずに死んでしまう男達に代わり、力仕事は元より跡継ぎも女が勤める。男は貴重となり、遊郭では男が売られ、子供を持ちたいと思う女が買いに行く。婿をむかえられるのは一部の金持ちだけ。1巻はそんな時代に生まれた男が大奥、つまり逆ハーレムに志願するお話。その男の話が一段落すると、なぜそんな世界になったか、遡って語られる。
 1巻は世界観みたいなのを確認するために描かれていたように思う。真打はそれ以降かな。面白かったけど、考え込んでしまう。男と女の立場が逆転していて、なんだか良く分からなくなる。大奥や遊郭は女性蔑視だって思ってたけど、逆の立場になっても同じようなことをしてる。大奥は男ばっかりで、男盛りの男達は一人しかいない将軍様しか抱けない。なんか不憫。女は男を子種として見てて、あー女も男からはこう見られてたのかな、とか。若くて綺麗な男を連れていることがステータスとか。子供が欲しいから男を買う、できるだけいい男を、とか。それって今まで女達が改善しようとしていたことよな、とか。価値観がぐるぐるしてしまう。
 この本は色んなこと主張しているわけでもないし、男性が読んだら嫌な気分になるか、爽快な気分になるかはよくわからない。着眼点はすごいなーと思うし、話の続きも気になる。
(2008/12/04)

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最終更新:2009年06月07日 17:30
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