読み終わった後に一言目が出てこない漫画でした。「面白い」と転げまわることも、読むのをやめることも、気持ちよく涙を流すこともできず。なぜこんな風にお話を綴れるのか、ただただ敬服するばかりです。思えば単行本でたった7巻。その7冊を読む間に、どんどん肩の上に石が増えていくような感じになりました。受ける印象は十人十色でしょうが、切ない、悲しいお話です。お勧めします。
お話は北海道の高校生の男女が付き合いだすところから始まります。男の子の名前はシュウ。ちょっとぶっきらぼうでクールっぽいキャラです。女の子はちせ。小さくて丸っこくて足が遅くてドジッ子。口癖は「ごめんなさい」。ちせから告白し二人は付き合い始めますが、二人初々しくて、どうすればよいか分からない様子。けど微笑ましくて暖かい気持ちになる、どこかにありそうなラブストーリー。でした。
1巻途中からお話は急展開します。ある日突然日常は崩れ去り、シュウはありえない格好をしているちせを発見します。「最終兵器彼女」は比喩でもなんでもなく、言葉通りの漫画でした。そしてどこまでもラブストーリーでした。
この作者はドラマ化もされた「いいひと」他、独特のほんわかした絵柄で漫画を描く人です。最初私はその絵柄、そして出だしを見て、「彼女の可愛さの破壊力は兵器並み」みたいな漫画を想像していました。全然違いました。可愛い絵柄とは対照的に、重いお話。いや可愛いだけに、その凄惨さが際立ちました。
大変面白いですが、やらしい表現があるのでお子様にはお勧めできません。ただ、やらしいんだけど眉を顰める気にはならないというか、むしろ「営みなんだなぁ」と思ってしまったり。これ以上書くのはこっぱずかしいのでやめますが、不道徳だとはあまり思いませんでした。この作者の絵柄でやらしいシーンを描かれると、破壊力が強いです、いろいろと。
ここから先はネタバレです。
あくまで二人を中心に描かれているので、どこが戦争してるのか、結局地球はどうなったのか、そもそもなんで兵器になったんだとか、どんなテクノロジーやねんとか。潔くはしょってますよね、この漫画。それに入り込めるか入り込めないかが、まず勝負の分かれ目だと思います。読み進めていくうちに分かるのかと思いきや、全く分かりませんでした。ちょっともどかしいかも。あと線の少ない絵なので、どこを描いているのか分からないコマもあったり。多分よーく見たら分かるんでしょうけど。でも主題はそこじゃないから、とくとくと説明されるよりよかったのかな。
物語があれよあれよという間に急展開していくので、わけ分からないまま読み進めていたのですが、ある段階で「これはラブストーリーなんだ」と再認識した瞬間の切なさ。ちせの強さ、弱さ。駆け足で読んだのですごくもったいなかった。もう一度じっくり読みたいと強く思います。
お話の中で苛つくことは少なかったと思います。シュウは事態をなかなか見つめようとせず、「何も変わらない」とずっとごまかしているように見えましたが、苛つく前に共感してしまいました。彼女が兵器だなんて、戦争が始まっただなんて、そんな簡単に受け入れられないですよね。不器用なりに距離を詰めようとしていた矢先だったのに。純粋な悪役が全く出てこないのも、この作者らしいような気がします。
ラストの世界が終わるとき、シュウが一度家に帰って両親に会いますよね。あそこのシーンで語られた「一人しか守れない」という言葉が、もしかしたら主題だったのかなと思います。というか、心に響きました。両親を忘れて恋にだけ走るシュウちゃんじゃなくてよかった。そしてきっぱりと「行くから」って言うシュウちゃんがよかった。他にもたくさん良いシーンはあったんですけど、今のところそれが一番心に残っています。
ベタなラブストーリーなんでしょ、なんてずっと勘違いしたままでいなくてよかったと思います。
(2007/03/01)
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最終更新:2007年04月02日 23:57