羽海野チカ

ハチミツとクローバー 10巻 完結


 東京出張先で、ハチミツとクローバー最新刊を買いました。待ち望んだ最終巻でした。
 早く帰ってきてよかった。ご飯食べた後に読んでよかった。テレビを消していてよかった。
 私を楽しませ続けてくれたハチクロは、見事に幕を引いた。意外な結末だった。意外というのは少し違うかもしれない。いつも「続きが読みたい」と願う一方で、続きを予想することは無かった。ただこの人の描く物語に乗っかっていたかった。私が何を考えても、この人の作るものよりいいものにはならない、ならばあれこれ考えるのはやめて、ただ続きを待とう。そんな気持ちだったんじゃないかなと思う。今となっては分からないけど。
 私にとってハチクロはいつも物足りない漫画だった。もっと日常風景を描いてくれればいいのに、そんなに先を急がなくてもいいのに、もっと登場人物の過去話に時間を割いてもいいのに。だけど竹本君はいつも終わりを予感していたし、真山やあゆはあっさり卒業してしまった。サザエさんワールドはファンにとっては嬉しいが、マンネリ化してしまう諸刃の剣だと思う。私はハチクロがそうならないことを嬉しくも寂しくも思っていた。ハチクロの中のクリスマスもお正月も夏休みももっと一杯見たかったなと思う。ハチクロは最初から「限られた時間だからこそ美しい」とずっと主張していて、10巻で終わると聞いた時はやっぱりな、と思った。9巻は「終わりの始まり」だったし、そんなに長く続くお話ではないだろうと思っていたから。でも寂しさは消えない。漫画でも小説でもシリーズ物、続き物のファンにとっては、永遠のジレンマだと思う。
 最終巻も物足りなさは変わらなかった。私にとってはダークホース的な展開で、どうしてそうなったのかそれだけでももう一冊いけるんじゃないの?って思えた。でも恋(?)は盲目なので、その物足りなさすら受け入れられるような気がする。私は尊敬する人の言うことなら、黒でも白って言えるのです。心の底から。だから作者が満足しているものなら、それが完璧なんでしょう。寂しさや物足りなさは感じても、そこに文句はつけられません。でも番外編出たら買うね。全力で買いに行く。
 映画ハチクロのパンフレットの中に、山崎まどかという人が書いた文章がある。『もしも「ハチクロ」が想った人に想われることを目的とした、1対1の恋愛ドラマであったら。あるいは、連帯を壊さないようにお互いを思いやって、恋愛の気配がちらつきながらも友情をメインとする群集劇だとしたら。そして、学園を舞台にした多くのコミックスが陥るように、永遠に終わらない日常としての青春を描いたコメディだったら。この物語が、今のように読者の心をつかんだかどうか、怪しいところです。』私がハチクロに感じる魅力、ずっと思っていてでも言葉にできなかったのは、つまりこういうことなのだ。山崎さんが指摘しているような漫画はかなりたくさんある。少女漫画の恋愛がテーマの漫画はほとんどがそうだと言っていい。だからハチクロは少女漫画でありながら、少女漫画的ではない何かをいつも感じさせていた。男女問わず受けているのはそのせいじゃないのかな。それしてもすごく的確な文章だと思う。こんな風に感じたことを文章にしたいなぁ。

 ここから先はネタバレです。
 ともかく物語は終わってしまった。「全部やるよ」で入り込み、「ハチミツとクローバー」で耐え切れずに泣いた。終わってしまう寂しさと、四葉のクローバーが見つからずにべそをかいているはぐちゃんがオーバーラップして、しばらくそのページから先には進めなかった。ハチクロで「ホロリ」とすることはあっても、こんな風にこみ上げるように泣けたことはなかったような気がする。
 修ちゃんが「ああ好きさ 大好きさ!」と言ったシーンでは、リアルであゆのようになっていました。その前の辺りのも匂わせるシーンがあったのに、まるで圏外だったもの。修ちゃんと竹本君のやり取りですら、保護者としての修ちゃんって立場からものを言ってるのだと思っていた。修ちゃんとはぐちゃんは叔父と姪の関係だと思い込んでいたし。でもそれがなきゃよく考えたらありなんですよね。むしろ今までなんでそう思わなかったのか不思議。真山とリカさんがくっつけるなら、修ちゃんとはぐちゃんなんてあり得ない話じゃない。
 あゆと野宮、真山とリカ、山崎と美和子さんはどうなるのかなとか、修ちゃんとリカさんの間にある感情はどんなのかしらとか、修ちゃんはいつからはぐちゃんを好きだったのかしらとか、はぐちゃんはどういう意味で人生をくれと言ったのか、知りたいことは山ほどある。そんで情けないことに私には予想がつかない。勝手に続きを妄想することもできないくらい、私はこの漫画の信者になっているみたいだ。とりあえずもう一度読み返して、修ちゃんがはぐちゃんを好きになったところを探してみようと思う。
(2006/09/11)

ハチミツとクローバー 9巻


 待望の最新刊です。長かったなぁと思ってたら、一年ぶりだそうです。どうも雑誌が休刊になったりしてたみたいですね、それで遅くなったのかな?単行本派としてはその辺りはよくわからないのですが、色々あるのでしょう。
 で、中身なんですが。もうネタバレなしではなんとも言えません。「急展開」だなぁと感じました。
 このお話は元々ちゃんと時間が流れていて、ループしたりしないんですね。ファンとしてはそういうところが好きでもあり、寂しくもあり。終わりに向かってちゃんと歩いているので、そんなに長く続かないんだろうと思っていましたが、この巻から「最終章」が始まっているような気がします。
 こっからネタバレです。
 読んだ後の感想はただ一言、「重い…」でした。重いよ!はぐちゃん…(泣)。竹本君が悩んでいるところでも読んでいて辛いものがありましたが、今回は重かった。はぐちゃんも重いですが、ちょっとブラック気味な森田さんも重いです。今まで悩む人は竹本君と山田さんだったのに、いきなりシフトしちゃいましたね。はぐちゃんの修ちゃん先生に対する想いも大きすぎて、とにかく重い巻でした。終わりに向かっているんだなぁと思います。今回は山田さんや美和子さんの登場がとてもほんわか感じました。
 実はこれを読む前日前々日と、出張先でハチクロアニメをやっていたんです。なぜか出張先でしかアニメを見たことがないんですけど(関西でもしてるはずなのに)、うまいことそれに当たったみたいなんですね。ちょうど野宮が青春スーツを再装着するところだったんですが、そこで森田さんのお父さんの存在をちょっと匂わせていたのですよ。まだ最新刊読んでいないので、「本誌ではそこまで行ってるのかな、それともアニメオリジナル設定やろうか」って思っていたら、最新刊で登場でしたね。森田さんの謎が徐々に暴かれてきて、馨兄の闇みたいなものも出てきて、ほんと森田さんからこの枷が外れたらいったいどうなるんでしょう。
 とても気になったのが最後のセリフ「生きててくれればいい 一緒にいられればいい オレはもうそれだけでいい」は、修ちゃん先生と森田さんどちらが言ったのでしょう。もし森田さんがはぐちゃんを目の前にして言ったのなら、絵を描かないで生きることに恐れを抱いている彼女に、よりによって森田さんのその言葉は救いにはなるんでしょうか。森田さんは森田さんで、恐らく父親を亡くしてその上兄までいなくなってしまったことに衝撃を受けているんでしょうけど、あのセリフは泥沼への一歩のような気がするんですよね。続きが気になってしょうがないけど、この芸術家肌二人がもっと欝展開になりそうな気がして怖い。でも続きが気になる。あぁやっぱり本誌読もうかしら…(ワンピースの二の舞です)
(2006/07/14)

ハチミツとクローバー 1~8巻




 久しぶりにハマった少女漫画です。純粋な恋愛もので胸がキュンとするなんて久しぶりです。2006年4月時点でまだ完結していません。ちゃんと作内で時間が流れており、続きが楽しみな漫画です。
 主役誰なんでしょうね。主な登場人物は美大に所属する森田さん、真山、竹本君、はぐちゃん、山田の男女5人と、はぐちゃんの叔父修ちゃん先生です。(さん、君、ちゃんづけは私の脳内での呼びかけ方です)修ちゃん先生は叔父といっても若いんですよ。同級生の理花さんに真山が惚れちゃう位ですからね。
 で、彼等が甘酸っぱい青春時代を過ごすお話です。普通でしょ?少女漫画でしょ?でも面白いんですよ~。平凡な生活の描写でも、壮大なスペクタクルではなくても面白いものは書けるんですね。男性にも女性にも自信を持ってお勧めします。騙されたと思って読んで下さい。特に「ちょっと大人になっちゃったかな。ついこの間まで学生だったのに」って年代(つまり私なんですが)だと、本気で切なくなります。号泣する話ではありません。ほんのり涙ぐむような感じです。
 読んだ時、昔の少女漫画でも最近の少女漫画でもない、何だか不思議な位置にあるように思いました。かなり偏見入ってますが、昔の少女漫画は「超プラトニックで内気な片思いでも涙が出ちゃう女の子だもん早く王子様迎えに来てくれないかな♪」って感じ。最近の少女漫画は「男は皆美形だぜ!皆私のことを好きなの困っちゃうでも私が好きなのは貴方だけだし愛があればヤっちゃってってOKだってそれは愛の証だから♪」って感じなんですよ。学生メインで恋愛を扱う漫画に限りますが。どっちにしたって女性の妄想なんですが、もうそういうのはいいかなーって敬遠していたのです。
 ところがこのハチクロはなんだか違うのですよ。これ!といった大きなテーマはないし、恋愛要素ばっちりなんですけど、大きく違うのです。これを読むと、普通の日の放課後の喧噪とか文化祭や体育祭の後の空気とか、そんなものが思い出されるのです。もう二度と味わえない、それ故に強烈に愛おしく感じます。読んだ後「いいなぁ…!」とごろごろ転げ回りました。私も青春スーツ装着したい!

 とは言うものの私は既に年齢的には修ちゃん先生側なので、そっちにも共感してしまいます。修ちゃん先生が、死んでしまった親友原田と、残された原田の恋人理花と過ごした学生時代について考えるシーンは、どれも切なく感じます。「帰りたいといつも思っているのにどこに帰ればいいか分からない」とか「子供は大人は全て分かっていると思うけどそんなことない。大人になったって、階段上ったら息が切れるくらいだ」ていう趣旨のこと(うろ覚え)を呟く心情が、分かるような気がするのです。

 登場人物は誰も好きなのですが、何だかいいなぁと遠い目になってしまうのは、森田さんと山田の友情らしきものです。山田に対して時折真面目になる森田さんがとても好きなのです。私も森田さんに真剣になられてみたい!慰められたい!怒られてみたい!でも付き合うのは無理!ま、あちらからお断りされると思いますが。

とにかくワンピースに並んで、単行本の発売が待ち遠しい漫画です。
(2006/03/31)

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最終更新:2010年08月30日 00:38
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