夜刀神参仕

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*夜刀神 参仕(やとがみ さんじ/Yatogami Sanji) 年齢:24 学年/職業:警備員 性別:男 レベル:12 メイン:戦士 サブ:錬金術士 エクストラ:悪魔使い 追加サブ:異能者・学徒 上級:暗黒騎士 種族:人間 参戦回数:14回 アライメント:中庸 表の顔:警備員 身長:181 体重:76 PL名:みこみこ アイコンイメージ:大倶利伽羅(刀剣乱舞) ---- *&bold(){&italic(){「俺は生きよう。お前達の為に」}} #region(記憶ノ欠片)記憶ノ欠片 ~ 正義喪失 #region(欠片零)欠片零 到達 彼はある名家の長男だった。 正義感が強く、子供の頃からよく困ってる人を助けていた。 時々無茶をしたが、日頃の行いが良いからと温かい目で見守られてきた。 独り善がりな正義になる事無く、時には失敗をしながらも誇り高く立派に育った。 大学卒業後すぐに警官になった。警官はずっと夢の職業だった。 #endregion #region(欠片一)欠片一 失望 彼は憧れの警官になった。だがそこでは腐った現実が待ち受けていた。 いくら必死に犯罪者を捕まえても  「勘弁してくれよお巡りさんよお!後で親父が金出すんだからよ!」 保釈金ですぐに釈放されたり、    「はっはっは、若いな君は。はて、指紋?足跡?何の事かね?」 証拠を偽装したり賄賂を流したりで無罪放免。 彼らはそうやって何も反省せずに犯罪を繰り返した。   「なんで私だけこんな目に会うのよ!主犯はあいつなのに!」  「俺はタダのアルバイトなんだよ!信じてくれよ!」 一方で金も権力も無い貧乏人は彼らのスケープゴートにされ、必要以上の処罰を背負わされた。 金と権力が全てだという世の中に失望した。 何よりも彼が失望したのは、彼自身もそうやって親の金と権力で守られてきたと言う事だ。 自分の正義が全ての人に認められたと思っていたのは間違いだった。 #endregion #region(欠片二)欠片二 消耗 それでも彼はめげなかった。 困ってる人を助けたいという気持ちは間違いじゃないはずだと、己の正義を貫いた。 彼は魔法使いになった。 理由は違法使いに対抗する為というのもあるが、それ以上に人を守りたかった。 しかしその気持ちは長くは続かなかった。 何をやっても上手く行った学生時代と違い 何をやっても上手く行かなかった。 罰するべき人には何もできず、守るべき人は守れなかった。 そもそも権力者に独りで勝てるわけが無かった。味方は一人もいなかった。 疎まれ、呆れられ、咎められ、笑われ、それでも耐えていたものの、 懲戒処分をきっかけに彼の気持ちは冷めていった。 #endregion #region(欠片三)欠片三 守レズ 「ねえ!まっ……」 青年が人通りの少ない道を歩いているとそんな声が聞こえた。 青年はその声に聞き覚えがあった。 声の出処に向かうと、以前関わった少女、少女を殴り引き連れようとする少年がいた。 少年が少女をいじめているようだった。少女は口を塞がれていた。 「おい、何をやっている」 「くそっ……何だよお前」 「その女に何をしている。今すぐやめろ」 「うっせえな引っ込んでろよ!」 「やめないなら貴様を……」 「そういやお前どっかで見た事あるな……警官か?あっはーなるほどね」 「俺が悪い事してるってわけ?ひゃははは!」 「こいつが俺を怒らせるからこうしてんだよ。俺は悪くねえ!」 相手が警官と気付いても悪びれるどころか開き直った。 ふてぶてしく青年に正面から立ち向かった。 「明らかにやり過ぎだ。それ以上は止めろ」 「うっせえなあ警察風情が!」 少年は苛立って少女を壁に叩き付けた。少女は物言いたげな目を青年に向けていた。 「俺に勝てると思ってんのか!俺は代議士の長男だぞ!」 その言葉に青年は顔を歪めた。こいつも親の力で好き勝手やってる連中かと、少年を憎んだ。 こいつを逮捕しても無駄だからせめてこの場を収めようと思った。 「犯罪は犯罪だ。その女を解放するまで俺はここを動かないぞ」 「…………ちっ!糞が!」 数秒睨み合い、そして少年は少女を乱暴に突き放して何処かへ行った。 少女に怪我は無かった。だがようやく解放されたのに未だに青年を睨んでいた。 「ねぇ……なんでもっと怒らなかったの?」 「言っても聞かないなら仕方ないだろ」 「なんであいつを捕まえなかったの?」 「あいつは捕まえても無駄だからな」 「だったらもっと叱ってよ!」 「前に言ったわよね!?困ってる人は助けるべきだって!」 「人を困らせちゃいけないってあんなに言ってたじゃない!」 「なんであいつを叱らないのよ!」 「……俺の役目じゃ無い」 「………………信じてたのに」 そう言って少女は去った。感謝の言葉は無かった。 後にその少女は死体で発見された。 少年にマンションから突き落とされたようだ。 決定的証拠が複数あり少年は逮捕され、少年の父親である代議士は辞職した。 罰するべきものには罰を与えられたが、失ったものは元に戻らなかった。 #endregion #region(欠片四)欠片死 殺メル 青年は惰性で過ごしていた。 目の前で守れるものを守れなかった自分を責めていた。 以前持っていた熱血的な正義感はその様子からは欠片も見られなかった。 そんな時、通報があった。 「監禁されている。助けて欲しい」という少女からの通報だった。 青年は誰よりも真っ先に監禁現場に駆けつけた。 もう二度と守れるものを失いたくなかった。 そこでは炎に包まれる中、刃物を持った少年と素手の少女が無防備に蹲る少女を追い詰めていた。 知識の弱い青年でも二人は魔法使い、戦士と魔道士だと分かった。炎は魔法のものだった。 (守れるものを失うくらいなら――) 青年は二人を殺そうと刀を抜いて突っ込んだ。 考えるより先に体が動いた。 「なっ!?」 右側の少年を袈裟斬り。 「いやっ!?やだっ!!」 続いて隣の少女を切り上げる。 二人とも一撃で倒れた。 未熟な魔法使いでは背後からの奇襲には対応できなかった。 かくして監禁された少女は救われた、はずだった。 #endregion #region(欠片五)欠片誤 堕チル 俺は二人を斬った後すぐに女の子の元に駆け寄った。 「おい!大丈夫か!俺は警察だ!」 「うぐ……怖かったよぅ……」 目立った傷は無かった。安心した。今度は守れた。 震える少女を強く抱きしめた。 「大丈夫だ……大丈夫だ……っ!」 少女を抱きながらそんな言葉を繰り返した。 少女を安心させる為に。 自分を安心させるように。 できればずっとこのままでいたかったけど、ずっとここにいるわけにはいかない。 「よし、安心しろ!今すぐ病院……に……っ!」 この子を安全な所に連れて行こうとしたその時だった。 体が動かなかった。 まるで体が固まってるようだった。 何をされた?さっきの魔道士の仕業か? そう思い、命令を聞かない体を力ずくで動かし後ろを振り返ろうとした。 「ぐっ!!」 少女から目を逸らした瞬間に頭に衝撃が走った。 何が起こったのか分からなかった。頭が上手く回らなかった。 「このっ……!」 左手で頭を支えて必死に意識を保つ。 この攻撃は何だ。ただの魔法攻撃じゃない。 じゃあ精神攻撃?異能者がいる?まだ共犯者がいたのか? なら殺さないと駄目だ。 よろめきつつも刀を握り、 がむしゃらに体を捻って背後を斬った。 ――この子を守りたい。   この子は俺が守らなきゃいけない。   ここでこの子を守れなかったら……!―― しかし、何も斬れなかった。 後ろには誰もいなかった。 血を流した二つの死体しか無かった。 「どういう……ことだ……」 意識が朦朧としてきた。 まとまらない頭を無理やり回そうとしたら 体中を壁やドアか何かで挟まれるような痛みが走った。 否――押し潰された。 「がああっ!!」 体中、指の先まで潰された。 この魔法には覚えがある。 「こいつはシャドウボックス!!」 空間を圧縮して敵を押し潰し恐怖を与える魔法。 以前受けた事があった。その威力も。その恐怖も。 そして攻撃された方向も分かった。 この方向は――後ろだ。 だが後ろにはあの子供しか―― 駄目だ。怖い。それ以上考えちゃ―― 「何をしてるバカ!早くそいつを逮捕しろ!」 それは同僚の声だった。 二つの死体の傍らで蹲ってる俺にそいつは――  「加害者は一人の女性!被害者は――                 ・ ・ ・ ・ ・                二人の男女だ!」 「うあああああああああああああああああああ!!!」 #endregion #region(欠片六)欠片録 ソレカラ 監禁犯は捕まらなかった。 あの少女はパラライズとデストラクションを駆使して弱い魔法使いを攫う違法使いだった。 麻痺と放心と恐怖に囚われながらトラウマを負った彼は数日間廃人状態だった。 退院後、罪無き子供を二人も殺した責任を問われて警察から追放された。 本人も警官を続けたいとは思わなかった。 身も心も堕落した。悪魔と契約しチンピラになるまでにそう時間はかからなかった。 今ではとっくに熱血的な正義感は無くなっていて、組織の命令に従う事だけが夜刀神の全てとなっていた。 守るべきものを守れないどころか、自分の手で殺めた彼に正義を名乗る資格は無かった。 #endregion #region(欠片前)欠片善 憧レノ全テ 「KEEP OUT」のバリケードテープが広げられた、どこかの地下の構内。 たくさんの野次馬が蠢く傍ら、人が通らない柱の下で 十歳にも満たない男の子が高校生の少女に抱きしめられていた。 是は彼の欠片。 是は彼の全て。 是は彼が進み始める前の記憶。 是は彼が覚えた最初の想い。 「うぐっ……えぐっ……ひっく……」 「ええぇん……よかったですぅ……ぐす……」 「おいおい……おちつけって」 「坊やが生きてて……えう……本当によかった……えぐっ……」 「抱きつくほどじゃ……」 「だってっ……君には……死んでほしくなかったからっ……」 「今までずっとっ……君を探してたんですっ!」 「うわああああん!」 「い、痛いって……なんでお姉ちゃんがそんな事したんだよ」 「母さんか父さんの知り合い?」 「いえ……さっき道に迷った時に……うぐっ……君が案内してくれたんです」 「坊やに案内されなかったら私、逃げ遅れてました……」 「ああ……さっきの」 「だから……坊やは無事でいてほしいって、心配でっ……ぐすっ」 「……それだけで俺を」 「はいっ!……私……今まで誰かに助けて貰った事ってあんまり無くて……」 「ドジ踏んでばっかりだし……何やっても全然上手くいかないし……」 「だから坊やだけは助けたいって思ったんですっ!」 「………………えっと、その……」 「ひっく……どうしました?」 「……ごめんなさい」 「へ?」 「あれは、その、適当に言ったんだ……」 「映画館なんて行ったこと無いし……それに…………」 「それに?」 「……その……嘘でもいいやって……」 「ふふん、大丈夫ですよ」 「嘘でもいいんです!気にしません!」 「え……?」 「だってあなたのおかげで助かったんですから!」 「で、でも……」 「いいんです!むしろ私の方からお礼を言わせてください!」 「私を助けてくれて、ありがとうございます!」 「………………お姉ちゃんみたいな人、見たこと無い」 「え?」 「……みんな嘘をついたら怒るし……それに」 「そんな笑顔は初めて見た」 「笑顔……ですか?」 「うん……お姉ちゃんの笑顔……凄くキラキラしてる」 「お姉ちゃんみたいなキラキラした笑顔、初めて見たよ」 「は……ぅ……」 「……そんな風に言われたの、私も初めてです」 「…………えへへ」 「……俺変なこと言った?」 「いえ、嬉しいです!」 「嬉しいの?」 「はい!とてもとても……嬉しいですっ!……ぐすっ」 「そう……変な人」 「変でもいいです!ありがとうございます!」 「お礼に頭をなでてあげますね!」 「ひ……う……」 「よしよし」 「なんで……」 「なんでそんなに俺と仲良くできるんだよ」 「だって……えっと、お友達だから、でしょうか?」 「友達……」 「あ、もしかして……嫌ですか?」 「嫌じゃ……無いよ」 「うん……嫌じゃ無い」 「えっと、あの、ありがとうございます」 「えへへ、何だか涙が出てきちゃいました」 「あ、でも最初から泣いてるから同じですね、あはは」 「あはは……お姉ちゃんって凄いな」 「へ?」 「だって凄く笑うし、凄く泣くもん」 「凄く面白い」 「そうでしょうか……よく分からないや」 「たぶんそうだよ」 「うーん……まあいいです!じゃあ、私とお友達になってくれますか?」 「うん、いいよ」 「俺もお姉ちゃんの事、もっと知りたい」 「わあい!ありがとうございます!」 「うわっ……お姉ちゃんすぐに抱きつくな」 「だってお友達ですから!」 「そうかなあ……まあいいや」 「うん!じゃあ早速私と遊びましょう!どこがいいですか?クレープなんてどうでしょう!」 「うーん……お姉ちゃんに任せる」 「分かりました!私に任せて下さい!えーっと……」 「そう言えば私達、まだ名前を知らないですね」 「あ……そう言えば」 「まずは名前の交換ですね!」 「私の名前は―――― ――――記憶はそこで途絶えている。 #endregion [[過去譚等>http://weemo.jp/v/0aa75fa4]] #endregion #region(参加記録) |参加回数|日時|GM|シナリオ名|同卓メンバー|ログ| |No.1|2/1|梅酒|ゴブリン退治|[[松田永梨]]/[[滑川霧人]]/[[餡餅童子]]/[[Mr.ジョンソン]]|[[LOG>http://ur0.work/rQkI]]| |No.2|2/6|ぴゃー|【運命のルーレット】|[[ケラウノス・L・サンダーボルト]]/[[ほむーん]]/[[ミラ・カーティス]]/[[勅使河原・フィン]]|[[LOG>http://ur0.link/rXe8]]| |No.3|2/9|レン|解き放たれしゴリラ|[[東雲陽翔]]/[[デュー]]/[[ケラウノス・L・サンダーボルト]]/[[ジェネラル]]|[[LOG>http://urx2.nu/s0EU]]| |No.4|2/10|梅酒|『こんにちわ赤ちゃん』|[[アラン・フォスダイク]]/[[エカテリナ]]/[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[滑川霧人]]|[[LOG>http://goo.gl/vUlDkl]]| |No.5|2/20|FEマン|地下闘技場の謎|[[Mr.ジョンソン]]/[[デュー]]/[[エカテリナ]]/[[エクレア]]|[[LOG>http://u0u0.net/sdk4]]| |No.6|2/21|リース|聖者無き地に咲く桜 2話|[[東雲陽翔]]/[[毒島聖]]/[[ベン・ケノービ]]|[[LOG>http://u0u0.net/sdkb]]| |No.7|2/24|梅酒|ホムンクルスは無邪気に笑う|[[滑川霧人]]/[[エカテリナ]]/[[エル]]|[[LOG>http://urx.mobi/shye]]| |No.8|2/28|灰人|TARGET:EX 「仇敵」|[[松田永梨]]/[[水野ケイ]]/[[ナハシュ=シャホル]]/[[ジムゾン]]|[[LOG>http://urx.blue/sqeJ]]| |No.9|3/4|スネコ|『【耐性生物駆除】』|[[松田永梨]]/[[オリバー・L・ウォード]]/[[ビリー]]/[[のらくろ]]|[[LOG>http://ur0.link/sAkQ]]| |No.10|3/5|ペンネ|『魔石=300円』|[[ほむーん]]/[[水野ケイ]]/[[丹赤朱美]]/[[蕪姫]]|[[LOG>http://ur0.xyz/ssUD]]| |No.11|3/7|たまこ|まどろみ、或いは嘆色の夢|[[丹赤朱美]]/[[勅使河原・フィン]]/[[灰空曇]]/[[レイン・A=G]]|[[LOG>http://ur0.link/sAjZ]]| |No.12|3/14|レン|麻雀物語|[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[武也・D・プロドセル]]|[[LOG>http://urx3.nu/sGTF]]| |No.13|3/20|レン|ヒーロー爆散|[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[オリバー・L・ウォード]]/[[H・D・エイブラムス]]/[[ナハシュ=シャホル]]|[[LOG>http://qq4q.biz/sN4t]]| |No.14|3/21|梅酒|『クレイジーフェイク』|[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[松田永梨]]/[[アラン・フォスダイク]]/[[滑川霧人]]|[[LOG>http://qq4q.biz/sNzY]]| #region(ドラマリスト) ・[[No.3 デュー<被>(敵)>http://ur0.pw/sfzI]] ・[[No.5 デュー(好)>http://urx.red/spaB]] ※時系列はNo.7~No.8の間 ・[[No.6 東雲陽翔(好)>http://ur0.pw/sfB7]] ・[[No.7 エカテリナ<被>(好)>http://urx.mobi/sinF]] ・[[No.8 松田永梨(好)>http://urx.red/spaE]] ・[[No.9 松田永梨(好)>http://ur0.link/sAkT]] ・[[No.10 ほむーん(好)>http://ur0.link/sAsC]] ・[[No.11 東雲陽翔(好チケ)>http://urx.mobi/sEa6]] ・[[No.12 クラン(好)>http://qq4q.biz/sM9K]] ・No.13 クラン(好) ・No.14 松田永梨(好) #endregion #region(特記アイテム) ・アルケーの帽子 アルケーがこの世界から消滅した時に遺した形見。 ちゃぶ台の上に大切に保管され、 殺風景な夜刀神の家の唯一の装りになっている。 ※関連セッションNo.7 [[ホムンクルスは無邪気に笑う>http://urx.mobi/shye]] #endregion #endregion #region(夜刀神の日記帳) #region(001 <1~3ページ目>) ※関連ドラマNo.11 [[東雲陽翔(好チケ)>http://urx.mobi/sEa6]] 俺には自分というものが無い。 ……と言えばまたあいつに笑われるんだろう……いや笑いはしないな。あいつなら怒るか。 兎に角俺は過去を捨てた……違う。過去を捨てたい。捨てて割り切りたい。 だが俺は割り切ったつもりでいて未だに割り切れていないようだ。あいつに言われた通りにな。 ああそうだ。俺は過去に囚われている。あの醜悪な地獄に囚われている。 だがあの地獄を後悔はしない。 あれは馬鹿げた正義に取り憑かれた俺に相応しい最悪の末路だ。あれは昔の俺には当然の結果だ。 いや。 そうじゃないな。 俺が本当に割り切れるやつなら、昔の地獄を地獄だとは思わない。 そうだな。俺は未だに後悔している。あの地獄を、そして俺がやってきた全てを後悔している。 きっと俺はそれを永遠に後悔するのだろう。 忘れたくても忘れられないのだろう。 それを戒める為に俺は日記をつける。まあそれだけが理由では無いのだが。 どんな地獄を経験してきたかなどには意味が無い。それが地獄であったと言う事実が重要だ。 なのでそれについては筆録しない事にする。 まあ、簡潔に記せば、監禁犯を被害者と勘違いし、無実の子供を2人殺したのだ。 あの監禁犯は精神を犯す魔法を使って俺の動きを封じ込めた。あれで俺は暫く廃人状態になった。ああ忌々しい。 本当に書きたい事を忘れそうなので話を戻す。 どの道過去には戻れない。あいつらエリートは俺のような落ちぶれた輩は相手にしない。 これからの事を記す。 これから残せるもの……陽翔は人と過ごした時間と思い出だと言った。 たかが思い出に何の意味がある、と、以前の俺ならそう言って吐き捨てただろうな。 だが今の俺は、不思議とそれを捨てられない。 俺の知り合いに残り1年で死ぬホムンクルスの少女がいる。 あいつの事を想うと思い出がとても大切なものに思えてくる。 あいつが何も楽しい思い出が無いまま死ねば、あいつはきっと最期まで悲しく寂しいのだろう。 そう想うと何故か胸が苦しくなる。 どうせ1年で死ぬと言うのに、何を気に病んでいるんだろうな俺は。 しかし陽翔に言わせればそれも強がりらしい。自分を誤魔化しているらしい。 ああ。 そうだ。 俺はあいつに死んで欲しくないのだ。 あいつには1年と言わず何年でも生き続けて欲しい。 だがそれは叶わない願いだ。 ならばせめて最期まで幸せのままで居て欲しい……と言うのは俺の我儘だろうか…… 眠くなった。 続きは明日だ。 既に消えたホムンクルス。 いずれ死ぬホムンクルス。 善性の使徒であり、悪を怨む怨霊でもある少女。 人間では無く、人間らしい、人間以上に輝くあいつらの事も、いずれ記すとしよう。 #endregion #region(002 <4~6ページ目>) (文字を消したり、ページを破った跡がある) (破られていないページには松田やほむーん、アルケー、陽翔の事が箇条書きに書かれている) 日記というからにはすらすら書けるものだと思っていたが、思うように書けない。 そもそも思い出や記憶をまとめるノートは日記と言えるのか怪しい。 これはきっと日記では無く備忘録なのだろう。 忘れた時の為に備える記録。 備忘録にしては長すぎるノートになるが、 過去も未来も今も何もかもを置き去りにしてきた俺には丁度いいかもしれない。 なら連日書かなくても問題無い。しかしこのまま貯めておくというのもバツが悪い。 貯まった課題は早めに消化しておきたいものだ。 #endregion #region(003 <7~9ページ目>) ※関連ドラマNo.12 [[クラン(好)>http://qq4q.biz/sM9K]] 暫く続きを書けないでいたが、ようやく書けるようになった。 今日は依頼で知り合った女に会った。 会ったとは言うが、自分から会いに行ったのでは無く向こうから押しかけてきた。俺の部屋に勝手に侵入してきた。 何とも非常識な奴だ。不法侵入罪で訴えてやりたい。ここに警察はいないが。元警察しかいないが。 名前は伏せておくべきか。あいつのように誰かに覗かれないとも限らない。 ……いやいいか。俺の日記を覗き込む奴など、人の心にズケズケと入り込む奴など、あいつくらいだろう。 しかし俺に恨みのある奴に見られたら不味いな……簡単には見られないように隠しておかなければ。 どうせこの日記帳の存在を知ってるのはクランだけだ。 あいつは人を誂うのが好きなようだ。 「風の吹くまま気の向くままに」と俺に遊びに来たようだが、余程退屈なんだろうか。 音も無しに勝手に侵入するのはどうかと思うが…… しかし見られて困るものは無い。家財も装飾も大してない殺風景な家だ。 勝手に覗かせておけばいい。 アレはアレで面白い奴だ。普段煽られるのは鬱陶しいが、あいつには悪い気はしない。 暇で退屈ならいつでも俺に遊びに来いと言ってもいいくらいには気を許している。 まあ、とっくにこれを覗かれたから手遅れとも言えるが……好きにさせておこう。 きっとあいつも退屈なんだろうからな。 さて本題だ。 今まで他人との繋がりを避けてきた俺はその借金を返さなければいけないようだ。 女慣れ以前に人慣れ。俺は初歩的な問題から始めなければいけない。 己の過去を捨て、己を切り離してきた俺には当然の義務なのだろう。 ……義務というのもどうなんだかな。 俺はそれを義務だと思ってやりたいのか?違うな。 俺は好きな人の為に生きたいのだ。これはそうする為に必要な責務であり、 それをなおざりにしてきたツケだ。 相手の望み、意志、傍にいる事、言葉で言えば簡単だが、俺には困難だろうというのは想像に難くない。 果たして俺にそれが務まるのだろうか……意識はしておくが…… そう言えば「焦りは禁物」とも言われたな。ならばあまり強く意識しない方がいいのかもしれない。 まあ……何とかやっていこう。気長に学んでる時間は無いかもしれないが、他にやる事も大して無いのだ。 月が流れるようになだらかに進めばいい。 明けない夜は無いが、夜はまだ長いのだから。 ……こう書いていると、俺よりクランの方が俺の事を知っている気がするな…… それはそれで不甲斐ないのだが……まあ自分の事は他人の方がよく見えるとも言うしな。 気にしてもしょうがない。だから気にしないでおこう。 きっとそれがいい。 #endregion #region(004 <10~14ページ目>) ※前半 関連セッションNo.13 [[ヒーロー爆散>http://qq4q.biz/sN4t]] ※後半 関連セッションNo.7 [[ホムンクルスは無邪気に笑う>http://urx.mobi/shye]] 「心が変われば態度が変わる」とは誰の言葉だったか。 「見方が代われば態度が変わる」とも言ったか。もしかしたら逆かもしれない。 まあどうでもいい。兎に角変わったのだ。 オリバー・L・ウォード。ナハシュ=シャホル。 以前一度会ったはずだが、全く印象が違って見えた。 ナーシアは以前は鬱陶しい奴だという印象だったが、今回は機敏に動ける器用な奴という印象だ。 それに観察眼だか洞察力だか……まあ中々できる奴だな。口数の多さは玉に瑕だが。 オリバー……あいつは子供という印象だった。 猿を連れているがむしろ猿に飼われているんじゃないかと思うくらいにガキだ。 まあその猿の実態は悪魔だが。そう、ガキだ。正しく子供。 異常への覚悟、恐怖や悪への警戒心、そんなこの街にいるならあって当たり前のものがあいつには欠けているように見える。 まあ、その印象は今でも変わらないが、あいつにも意地を張るくらいの度胸はあるようだ。 猿を飼い慣らす程度には成長したのかもしれない。 俺が変わったのか、見えていなかったのか、或いはあいつらが変わったのか。 いずれにしても面白くなったものだ。この灰色にくすんだ凡庸な街も中々に彩られているようだ。 俺やエイブラムスという黒も、あいつらを引き立てる色と言えるのかもしれない。 彩りと言えば、あの赤い奴らは無事に生き返ったらしい。 仲間も殆ど生き返った。悪魔に操られた亡霊少女は救われた。 あいつらもまたこの街を彩るのだろう。 ……まあ仲間の1人は俺の仲間が殺したのだが。 あいつはあいつで無鉄砲過ぎる。とんだお転婆少女だ。 少しは自制を覚えるべきじゃないか?まあ煩く咎めるつもりは無いが。 仕事の邪魔にならないように見張っておく必要はあるかもしれない。ドジを踏む可能性が万が一にもあり得る。 ……………… 一人じゃない、か。 本当に好き勝手やりやがって。あいつめ。 しかし以前から惹かれた奴らの事は未だに上手く書けないな……そう昔の事でも無いんだが…… 昔の事より今持っている印象を書くべきか。昔の事に囚われるべきでは無いだろう。 今回のようにあいつらにまた会えば違う印象を持つかもしれないしな。 それにしてもあいつらには久々に会いたいものだ。長い間会っていないように感じる。 ざっと3人の事をまとめよう。 既に死んだホムンクルス、アルケー。 いずれ死ぬホムンクルス、ほむーん。 善性の使徒であり、悪を怨む怨霊、松田永梨。 あいつらの記憶を手短に書く。 アルケーは以前依頼で護衛を任された奴だ。 護衛、と言うよりはベビーシッターに近い。 白い髮に青い目。俺の肘下程度の身長で、まあ、美しい少女だ。 何よりもずっとにこにこと微笑む奴だった。それは陰りが無く純粋で、何かを偽るものでも誤魔化すものでも無く、 ただそれをありのままに見て綺麗だの楽しいだのかっこいいだのと素直に思い微笑むような奴だ。 きっとあいつはあらゆるものを受け入れるのだろう。 悪を拒まない。どんな悪でも受け入れる。 何でも受け入れると書くとまるでシスターや女神のようだが……あながち的外れでは無いんだろう。 マスターの理想。神の領域に至った理想のホムンクルス。 そのせいで3日しか生きられない儚い子。 偶然産まれてしまったと聞いたが、まあそんな情報は些細な事だ。 あいつは俺の過去を覗いた。憐れみや同情はしなかった。恐怖も無かった。 ただ楽しそうに無邪気に、興味のあるものをもっと知りたいという純粋な子供のように俺の心を覗くのだった。 あいつは…………完全体だった。 シスターどころか女神と言ってもいい程に、理想のホムンクルスだった。 あいつは最期にお姉ちゃんといつか会えると告げた。 お姉ちゃんとは子供の頃によく遊んだ、まあ、幼馴染のようなものだ。 よく笑いよく泣く、子供みたいな奴だった。俺より7,8つ程度は年上なのだが。 数年間付き合って、というか遊んで、じきに進級か何かの事情で会わなくなった。 あの頃の記憶は殆ど曖昧だが、まあ、楽しかった。 人を助けて泣くような奴など、あいつくらいだろう。 この落ちぶれた身ではもう会う事は叶わないと思うが、それでもアルケーは会えると言ってくれた。 もしかしたらそれは俺への慰めで、本当は会えるのか、そして繋がってるのかは知らないのかもしれない。 だが、救われた。 俺の闇一色の過去の中で唯一楽しかった思い出がそれだから。 俺は、救われた アルケーは、俺と2人しかいない場所でそう告げて……そして、消えた。 ああ。 消えたとも。 あいつは。 神の領域に至ったから。 だから、消えた。 「よかった」 「もう 寂しくない ね」 それがあいつの最期の言葉だった。 それだけは今も忘れていない。 哀しくないと言えば嘘になる。 これが哀しくない訳が無い。 哀しいにきまっている。 それでも俺は前を向くしか無いのだ。 過去には戻れない。 未来は見えない。 ならば今を大事にするしか無い。 アルケーには3日と言わず、俺が死ぬまでずっと生きていて欲しかった。 いや、死ぬまでと言わず俺が死んだ後もずっとずっと生きていて欲しかった。 だがそれは叶わない願いだ。 だから俺はせめてアルケーの事を忘れないでいく。 アルケーと過ごした事、アルケーと遊んだ事、そしてアルケーの最期も、 一生手放さない。 一生忘れない。 ああ。 俺は一生後悔するのだろう。 何も守れなかった俺の生涯を一生悔やみ、嘆き、哀しむのだろう。 だが、それでいい。 俺には今がある。 今があればそれでいい。 今の幸せがあればいい。 例えそれがこの先無くなってしまうとしても。 何かを失うとしても。 失い続けるとしても。 そこに幸せだった証は残っているのだから。 それがあれば、今が無くても、何も掴めなくても、 生きていける。 ……生きていける……はずだ。 時間をかけ過ぎた。もう寝ないと明日に支障が起こる。 今日はここまでにする。 #endregion #endregion #region(キャラクターメモ) &memox(cols=75,rows=20,submit=更新<>■キャラ 夜刀神 参仕(やとがみ さんじ)\n\n《基本データ》\n年齢:24歳 性別:男 身長:181cm 体重:76kg\nML10 /HP106/MP79/LP4/行動値6/信仰1\n筋9/知3/器7/敏2/感2/精6\n\n《判定など》\n命中2D+17/物攻2D+23/射程1/回避2D+1\n[特筆判定]罠探知(ボヤンス)・メトリー2D+6\n物理防御18/魔法防御9/結界強度5\n\n《スキル》\n[パッシブ]\n魂の錬成/特異術式【増幅ディフェンダー】/悪魔契約 SL3/その他\n\n[セットアップ]\n高速付与:8\n+硬質化:5 SL5\n瞬間移動:2\n\n[ムーブ]\n霊魂武装:4+LP1 SL5\n\n[マイナー]\n亜空間殺法:6\n\n[メジャー]\nデス・ブリンガー:8 SL5 EX貫通\n\n[その他]\n時間停止:6 [イニシアチブ]\nブルクラッシュ:0 [ダメロ直前]\nカバーリング:3 [ダメロ直後]\nディフェンダー:4 [リアクション] SL5 EX増幅\nチャクラ:5 [クリンナップ] SL3\n運命改竄:8 [判定直後] SL2\nストーカー(アイテム)[命中判定直前] 判定を自動成功にする\n\n《ダメージロール》\n2D+57 デスブリ\n2D+57+50 デスブリ+亜空間殺法+ブルクラ\n\n《非戦闘スキル》\nサイコメトリー:4\nクリアボヤンス:4\n強制転移:8\n\n《所持品14/21》\n携帯電話/7つ道具\n賢者の石/大魔石*2/神丹/一角散/金丹\n飛翔符/イカサマの金貨\n\n■技能\n鉄の胃袋\n犯罪歴/秘密〈犯罪歴〉\n運転免許/特殊運転免許〈船舶〉/大学教育\n外国語〈英語/中国語〉/専門技能〈捕縛術/パソコン〉/人物特徴〈捕縛術〉 \n) #endregion
*夜刀神 参仕(やとがみ さんじ/Yatogami Sanji) 年齢:24 学年/職業:警備員 性別:男 レベル:12 メイン:戦士 サブ:錬金術士 エクストラ:悪魔使い 追加サブ:異能者・学徒 上級:暗黒騎士 種族:人間 参戦回数:14回 アライメント:中庸 表の顔:警備員 身長:181 体重:76 PL名:みこみこ アイコンイメージ:大倶利伽羅(刀剣乱舞) ---- *&bold(){&italic(){「俺は生きよう。お前達の為に」}} #region(記憶ノ欠片)記憶ノ欠片 ~ 正義喪失 #region(欠片零)欠片零 到達 彼はある名家の長男だった。 正義感が強く、子供の頃からよく困ってる人を助けていた。 時々無茶をしたが、日頃の行いが良いからと温かい目で見守られてきた。 独り善がりな正義になる事無く、時には失敗をしながらも誇り高く立派に育った。 大学卒業後すぐに警官になった。警官はずっと夢の職業だった。 #endregion #region(欠片一)欠片一 失望 彼は憧れの警官になった。だがそこでは腐った現実が待ち受けていた。 いくら必死に犯罪者を捕まえても  「勘弁してくれよお巡りさんよお!後で親父が金出すんだからよ!」 保釈金ですぐに釈放されたり、    「はっはっは、若いな君は。はて、指紋?足跡?何の事かね?」 証拠を偽装したり賄賂を流したりで無罪放免。 彼らはそうやって何も反省せずに犯罪を繰り返した。   「なんで私だけこんな目に会うのよ!主犯はあいつなのに!」  「俺はタダのアルバイトなんだよ!信じてくれよ!」 一方で金も権力も無い貧乏人は彼らのスケープゴートにされ、必要以上の処罰を背負わされた。 金と権力が全てだという世の中に失望した。 何よりも彼が失望したのは、彼自身もそうやって親の金と権力で守られてきたと言う事だ。 自分の正義が全ての人に認められたと思っていたのは間違いだった。 #endregion #region(欠片二)欠片二 消耗 それでも彼はめげなかった。 困ってる人を助けたいという気持ちは間違いじゃないはずだと、己の正義を貫いた。 彼は魔法使いになった。 理由は違法使いに対抗する為というのもあるが、それ以上に人を守りたかった。 しかしその気持ちは長くは続かなかった。 何をやっても上手く行った学生時代と違い 何をやっても上手く行かなかった。 罰するべき人には何もできず、守るべき人は守れなかった。 そもそも権力者に独りで勝てるわけが無かった。味方は一人もいなかった。 疎まれ、呆れられ、咎められ、笑われ、それでも耐えていたものの、 懲戒処分をきっかけに彼の気持ちは冷めていった。 #endregion #region(欠片三)欠片三 守レズ 「ねえ!まっ……」 青年が人通りの少ない道を歩いているとそんな声が聞こえた。 青年はその声に聞き覚えがあった。 声の出処に向かうと、以前関わった少女、少女を殴り引き連れようとする少年がいた。 少年が少女をいじめているようだった。少女は口を塞がれていた。 「おい、何をやっている」 「くそっ……何だよお前」 「その女に何をしている。今すぐやめろ」 「うっせえな引っ込んでろよ!」 「やめないなら貴様を……」 「そういやお前どっかで見た事あるな……警官か?あっはーなるほどね」 「俺が悪い事してるってわけ?ひゃははは!」 「こいつが俺を怒らせるからこうしてんだよ。俺は悪くねえ!」 相手が警官と気付いても悪びれるどころか開き直った。 ふてぶてしく青年に正面から立ち向かった。 「明らかにやり過ぎだ。それ以上は止めろ」 「うっせえなあ警察風情が!」 少年は苛立って少女を壁に叩き付けた。少女は物言いたげな目を青年に向けていた。 「俺に勝てると思ってんのか!俺は代議士の長男だぞ!」 その言葉に青年は顔を歪めた。こいつも親の力で好き勝手やってる連中かと、少年を憎んだ。 こいつを逮捕しても無駄だからせめてこの場を収めようと思った。 「犯罪は犯罪だ。その女を解放するまで俺はここを動かないぞ」 「…………ちっ!糞が!」 数秒睨み合い、そして少年は少女を乱暴に突き放して何処かへ行った。 少女に怪我は無かった。だがようやく解放されたのに未だに青年を睨んでいた。 「ねぇ……なんでもっと怒らなかったの?」 「言っても聞かないなら仕方ないだろ」 「なんであいつを捕まえなかったの?」 「あいつは捕まえても無駄だからな」 「だったらもっと叱ってよ!」 「前に言ったわよね!?困ってる人は助けるべきだって!」 「人を困らせちゃいけないってあんなに言ってたじゃない!」 「なんであいつを叱らないのよ!」 「……俺の役目じゃ無い」 「………………信じてたのに」 そう言って少女は去った。感謝の言葉は無かった。 後にその少女は死体で発見された。 少年にマンションから突き落とされたようだ。 決定的証拠が複数あり少年は逮捕され、少年の父親である代議士は辞職した。 罰するべきものには罰を与えられたが、失ったものは元に戻らなかった。 #endregion #region(欠片四)欠片死 殺メル 青年は惰性で過ごしていた。 目の前で守れるものを守れなかった自分を責めていた。 以前持っていた熱血的な正義感はその様子からは欠片も見られなかった。 そんな時、通報があった。 「監禁されている。助けて欲しい」という少女からの通報だった。 青年は誰よりも真っ先に監禁現場に駆けつけた。 もう二度と守れるものを失いたくなかった。 そこでは炎に包まれる中、刃物を持った少年と素手の少女が無防備に蹲る少女を追い詰めていた。 知識の弱い青年でも二人は魔法使い、戦士と魔道士だと分かった。炎は魔法のものだった。 (守れるものを失うくらいなら――) 青年は二人を殺そうと刀を抜いて突っ込んだ。 考えるより先に体が動いた。 「なっ!?」 右側の少年を袈裟斬り。 「いやっ!?やだっ!!」 続いて隣の少女を切り上げる。 二人とも一撃で倒れた。 未熟な魔法使いでは背後からの奇襲には対応できなかった。 かくして監禁された少女は救われた、はずだった。 #endregion #region(欠片五)欠片誤 堕チル 俺は二人を斬った後すぐに女の子の元に駆け寄った。 「おい!大丈夫か!俺は警察だ!」 「うぐ……怖かったよぅ……」 目立った傷は無かった。安心した。今度は守れた。 震える少女を強く抱きしめた。 「大丈夫だ……大丈夫だ……っ!」 少女を抱きながらそんな言葉を繰り返した。 少女を安心させる為に。 自分を安心させるように。 できればずっとこのままでいたかったけど、ずっとここにいるわけにはいかない。 「よし、安心しろ!今すぐ病院……に……っ!」 この子を安全な所に連れて行こうとしたその時だった。 体が動かなかった。 まるで体が固まってるようだった。 何をされた?さっきの魔道士の仕業か? そう思い、命令を聞かない体を力ずくで動かし後ろを振り返ろうとした。 「ぐっ!!」 少女から目を逸らした瞬間に頭に衝撃が走った。 何が起こったのか分からなかった。頭が上手く回らなかった。 「このっ……!」 左手で頭を支えて必死に意識を保つ。 この攻撃は何だ。ただの魔法攻撃じゃない。 じゃあ精神攻撃?異能者がいる?まだ共犯者がいたのか? なら殺さないと駄目だ。 よろめきつつも刀を握り、 がむしゃらに体を捻って背後を斬った。 ――この子を守りたい。   この子は俺が守らなきゃいけない。   ここでこの子を守れなかったら……!―― しかし、何も斬れなかった。 後ろには誰もいなかった。 血を流した二つの死体しか無かった。 「どういう……ことだ……」 意識が朦朧としてきた。 まとまらない頭を無理やり回そうとしたら 体中を壁やドアか何かで挟まれるような痛みが走った。 否――押し潰された。 「がああっ!!」 体中、指の先まで潰された。 この魔法には覚えがある。 「こいつはシャドウボックス!!」 空間を圧縮して敵を押し潰し恐怖を与える魔法。 以前受けた事があった。その威力も。その恐怖も。 そして攻撃された方向も分かった。 この方向は――後ろだ。 だが後ろにはあの子供しか―― 駄目だ。怖い。それ以上考えちゃ―― 「何をしてるバカ!早くそいつを逮捕しろ!」 それは同僚の声だった。 二つの死体の傍らで蹲ってる俺にそいつは――  「加害者は一人の女性!被害者は――                 ・ ・ ・ ・ ・                二人の男女だ!」 「うあああああああああああああああああああ!!!」 #endregion #region(欠片六)欠片録 ソレカラ 監禁犯は捕まらなかった。 あの少女はパラライズとデストラクションを駆使して弱い魔法使いを攫う違法使いだった。 麻痺と放心と恐怖に囚われながらトラウマを負った彼は数日間廃人状態だった。 退院後、罪無き子供を二人も殺した責任を問われて警察から追放された。 本人も警官を続けたいとは思わなかった。 身も心も堕落した。悪魔と契約しチンピラになるまでにそう時間はかからなかった。 今ではとっくに熱血的な正義感は無くなっていて、組織の命令に従う事だけが夜刀神の全てとなっていた。 守るべきものを守れないどころか、自分の手で殺めた彼に正義を名乗る資格は無かった。 #endregion #region(欠片前)欠片善 憧レノ全テ 「KEEP OUT」のバリケードテープが広げられた、どこかの地下の構内。 たくさんの野次馬が蠢く傍ら、人が通らない柱の下で 十歳にも満たない男の子が高校生の少女に抱きしめられていた。 是は彼の欠片。 是は彼の全て。 是は彼が進み始める前の記憶。 是は彼が覚えた最初の想い。 「うぐっ……えぐっ……ひっく……」 「ええぇん……よかったですぅ……ぐす……」 「おいおい……おちつけって」 「坊やが生きてて……えう……本当によかった……えぐっ……」 「抱きつくほどじゃ……」 「だってっ……君には……死んでほしくなかったからっ……」 「今までずっとっ……君を探してたんですっ!」 「うわああああん!」 「い、痛いって……なんでお姉ちゃんがそんな事したんだよ」 「母さんか父さんの知り合い?」 「いえ……さっき道に迷った時に……うぐっ……君が案内してくれたんです」 「坊やに案内されなかったら私、逃げ遅れてました……」 「ああ……さっきの」 「だから……坊やは無事でいてほしいって、心配でっ……ぐすっ」 「……それだけで俺を」 「はいっ!……私……今まで誰かに助けて貰った事ってあんまり無くて……」 「ドジ踏んでばっかりだし……何やっても全然上手くいかないし……」 「だから坊やだけは助けたいって思ったんですっ!」 「………………えっと、その……」 「ひっく……どうしました?」 「……ごめんなさい」 「へ?」 「あれは、その、適当に言ったんだ……」 「映画館なんて行ったこと無いし……それに…………」 「それに?」 「……その……嘘でもいいやって……」 「ふふん、大丈夫ですよ」 「嘘でもいいんです!気にしません!」 「え……?」 「だってあなたのおかげで助かったんですから!」 「で、でも……」 「いいんです!むしろ私の方からお礼を言わせてください!」 「私を助けてくれて、ありがとうございます!」 「………………お姉ちゃんみたいな人、見たこと無い」 「え?」 「……みんな嘘をついたら怒るし……それに」 「そんな笑顔は初めて見た」 「笑顔……ですか?」 「うん……お姉ちゃんの笑顔……凄くキラキラしてる」 「お姉ちゃんみたいなキラキラした笑顔、初めて見たよ」 「は……ぅ……」 「……そんな風に言われたの、私も初めてです」 「…………えへへ」 「……俺変なこと言った?」 「いえ、嬉しいです!」 「嬉しいの?」 「はい!とてもとても……嬉しいですっ!……ぐすっ」 「そう……変な人」 「変でもいいです!ありがとうございます!」 「お礼に頭をなでてあげますね!」 「ひ……う……」 「よしよし」 「なんで……」 「なんでそんなに俺と仲良くできるんだよ」 「だって……えっと、お友達だから、でしょうか?」 「友達……」 「あ、もしかして……嫌ですか?」 「嫌じゃ……無いよ」 「うん……嫌じゃ無い」 「えっと、あの、ありがとうございます」 「えへへ、何だか涙が出てきちゃいました」 「あ、でも最初から泣いてるから同じですね、あはは」 「あはは……お姉ちゃんって凄いな」 「へ?」 「だって凄く笑うし、凄く泣くもん」 「凄く面白い」 「そうでしょうか……よく分からないや」 「たぶんそうだよ」 「うーん……まあいいです!じゃあ、私とお友達になってくれますか?」 「うん、いいよ」 「俺もお姉ちゃんの事、もっと知りたい」 「わあい!ありがとうございます!」 「うわっ……お姉ちゃんすぐに抱きつくな」 「だってお友達ですから!」 「そうかなあ……まあいいや」 「うん!じゃあ早速私と遊びましょう!どこがいいですか?クレープなんてどうでしょう!」 「うーん……お姉ちゃんに任せる」 「分かりました!私に任せて下さい!えーっと……」 「そう言えば私達、まだ名前を知らないですね」 「あ……そう言えば」 「まずは名前の交換ですね!」 「私の名前は―――― ――――記憶はそこで途絶えている。 #endregion [[過去譚等>http://weemo.jp/v/0aa75fa4]] #endregion #region(参加記録) |参加回数|日時|GM|シナリオ名|同卓メンバー|ログ| |No.1|2/1|梅酒|ゴブリン退治|[[松田永梨]]/[[滑川霧人]]/[[餡餅童子]]/[[Mr.ジョンソン]]|[[LOG>http://ur0.work/rQkI]]| |No.2|2/6|ぴゃー|【運命のルーレット】|[[ケラウノス・L・サンダーボルト]]/[[ほむーん]]/[[ミラ・カーティス]]/[[勅使河原・フィン]]|[[LOG>http://ur0.link/rXe8]]| |No.3|2/9|レン|解き放たれしゴリラ|[[東雲陽翔]]/[[デュー]]/[[ケラウノス・L・サンダーボルト]]/[[ジェネラル]]|[[LOG>http://urx2.nu/s0EU]]| |No.4|2/10|梅酒|『こんにちわ赤ちゃん』|[[アラン・フォスダイク]]/[[エカテリナ]]/[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[滑川霧人]]|[[LOG>http://goo.gl/vUlDkl]]| |No.5|2/20|FEマン|地下闘技場の謎|[[Mr.ジョンソン]]/[[デュー]]/[[エカテリナ]]/[[エクレア]]|[[LOG>http://u0u0.net/sdk4]]| |No.6|2/21|リース|聖者無き地に咲く桜 2話|[[東雲陽翔]]/[[毒島聖]]/[[ベン・ケノービ]]|[[LOG>http://u0u0.net/sdkb]]| |No.7|2/24|梅酒|ホムンクルスは無邪気に笑う|[[滑川霧人]]/[[エカテリナ]]/[[エル]]|[[LOG>http://urx.mobi/shye]]| |No.8|2/28|灰人|TARGET:EX 「仇敵」|[[松田永梨]]/[[水野ケイ]]/[[ナハシュ=シャホル]]/[[ジムゾン]]|[[LOG>http://urx.blue/sqeJ]]| |No.9|3/4|スネコ|『【耐性生物駆除】』|[[松田永梨]]/[[オリバー・L・ウォード]]/[[ビリー]]/[[のらくろ]]|[[LOG>http://ur0.link/sAkQ]]| |No.10|3/5|ペンネ|『魔石=300円』|[[ほむーん]]/[[水野ケイ]]/[[丹赤朱美]]/[[蕪姫]]|[[LOG>http://ur0.xyz/ssUD]]| |No.11|3/7|たまこ|まどろみ、或いは嘆色の夢|[[丹赤朱美]]/[[勅使河原・フィン]]/[[灰空曇]]/[[レイン・A=G]]|[[LOG>http://ur0.link/sAjZ]]| |No.12|3/14|レン|麻雀物語|[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[武也・D・プロドセル]]|[[LOG>http://urx3.nu/sGTF]]| |No.13|3/20|レン|ヒーロー爆散|[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[オリバー・L・ウォード]]/[[H・D・エイブラムス]]/[[ナハシュ=シャホル]]|[[LOG>http://qq4q.biz/sN4t]]| |No.14|3/21|梅酒|『クレイジーフェイク』|[[玖蘭・アーデルハイト]]/[[松田永梨]]/[[アラン・フォスダイク]]/[[滑川霧人]]|[[LOG>http://qq4q.biz/sNzY]]| #region(ドラマリスト) ・[[No.3 デュー(敵)(被)>http://ur0.pw/sfzI]] ・[[No.5 デュー(好)>http://urx.red/spaB]] ※時系列はNo.7~No.8の間 ・[[No.6 東雲陽翔(好)>http://ur0.pw/sfB7]] ・[[No.7 エカテリナ(好)(被)>http://urx.mobi/sinF]] ・[[No.8 松田永梨(好)>http://urx.red/spaE]] ・[[No.9 松田永梨(好)>http://ur0.link/sAkT]] ・[[No.10 ほむーん(好)>http://ur0.link/sAsC]] ・[[No.11 東雲陽翔(好チケ)>http://urx.mobi/sEa6]] ・[[No.12 クラン(好)>http://qq4q.biz/sM9K]] ・No.13 クラン(好) ・No.14 松田永梨(好) #endregion #region(特記アイテム) ・アルケーの帽子 アルケーがこの世界から消滅した時に遺した形見。 ちゃぶ台の上に大切に保管され、 殺風景な夜刀神の家の唯一の装りになっている。 ※関連セッションNo.7 [[ホムンクルスは無邪気に笑う>http://urx.mobi/shye]] #endregion #endregion #region(夜刀神の日記帳) #region(001 <1~3ページ目>) ※関連ドラマNo.11 [[東雲陽翔(好チケ)>http://urx.mobi/sEa6]] 俺には自分というものが無い。 ……と言えばまたあいつに笑われるんだろう……いや笑いはしないな。あいつなら怒るか。 兎に角俺は過去を捨てた……違う。過去を捨てたい。捨てて割り切りたい。 だが俺は割り切ったつもりでいて未だに割り切れていないようだ。あいつに言われた通りにな。 ああそうだ。俺は過去に囚われている。あの醜悪な地獄に囚われている。 だがあの地獄を後悔はしない。 あれは馬鹿げた正義に取り憑かれた俺に相応しい最悪の末路だ。あれは昔の俺には当然の結果だ。 いや。 そうじゃないな。 俺が本当に割り切れるやつなら、昔の地獄を地獄だとは思わない。 そうだな。俺は未だに後悔している。あの地獄を、そして俺がやってきた全てを後悔している。 きっと俺はそれを永遠に後悔するのだろう。 忘れたくても忘れられないのだろう。 それを戒める為に俺は日記をつける。まあそれだけが理由では無いのだが。 どんな地獄を経験してきたかなどには意味が無い。それが地獄であったと言う事実が重要だ。 なのでそれについては筆録しない事にする。 まあ、簡潔に記せば、監禁犯を被害者と勘違いし、無実の子供を2人殺したのだ。 あの監禁犯は精神を犯す魔法を使って俺の動きを封じ込めた。あれで俺は暫く廃人状態になった。ああ忌々しい。 本当に書きたい事を忘れそうなので話を戻す。 どの道過去には戻れない。あいつらエリートは俺のような落ちぶれた輩は相手にしない。 これからの事を記す。 これから残せるもの……陽翔は人と過ごした時間と思い出だと言った。 たかが思い出に何の意味がある、と、以前の俺ならそう言って吐き捨てただろうな。 だが今の俺は、不思議とそれを捨てられない。 俺の知り合いに残り1年で死ぬホムンクルスの少女がいる。 あいつの事を想うと思い出がとても大切なものに思えてくる。 あいつが何も楽しい思い出が無いまま死ねば、あいつはきっと最期まで悲しく寂しいのだろう。 そう想うと何故か胸が苦しくなる。 どうせ1年で死ぬと言うのに、何を気に病んでいるんだろうな俺は。 しかし陽翔に言わせればそれも強がりらしい。自分を誤魔化しているらしい。 ああ。 そうだ。 俺はあいつに死んで欲しくないのだ。 あいつには1年と言わず何年でも生き続けて欲しい。 だがそれは叶わない願いだ。 ならばせめて最期まで幸せのままで居て欲しい……と言うのは俺の我儘だろうか…… 眠くなった。 続きは明日だ。 既に消えたホムンクルス。 いずれ死ぬホムンクルス。 善性の使徒であり、悪を怨む怨霊でもある少女。 人間では無く、人間らしい、人間以上に輝くあいつらの事も、いずれ記すとしよう。 #endregion #region(002 <4~6ページ目>) (文字を消したり、ページを破った跡がある) (破られていないページには松田やほむーん、アルケー、陽翔の事が箇条書きに書かれている) 日記というからにはすらすら書けるものだと思っていたが、思うように書けない。 そもそも思い出や記憶をまとめるノートは日記と言えるのか怪しい。 これはきっと日記では無く備忘録なのだろう。 忘れた時の為に備える記録。 備忘録にしては長すぎるノートになるが、 過去も未来も今も何もかもを置き去りにしてきた俺には丁度いいかもしれない。 なら連日書かなくても問題無い。しかしこのまま貯めておくというのもバツが悪い。 貯まった課題は早めに消化しておきたいものだ。 #endregion #region(003 <7~9ページ目>) ※関連ドラマNo.12 [[クラン(好)>http://qq4q.biz/sM9K]] 暫く続きを書けないでいたが、ようやく書けるようになった。 今日は依頼で知り合った女に会った。 会ったとは言うが、自分から会いに行ったのでは無く向こうから押しかけてきた。俺の部屋に勝手に侵入してきた。 何とも非常識な奴だ。不法侵入罪で訴えてやりたい。ここに警察はいないが。元警察しかいないが。 名前は伏せておくべきか。あいつのように誰かに覗かれないとも限らない。 ……いやいいか。俺の日記を覗き込む奴など、人の心にズケズケと入り込む奴など、あいつくらいだろう。 しかし俺に恨みのある奴に見られたら不味いな……簡単には見られないように隠しておかなければ。 どうせこの日記帳の存在を知ってるのはクランだけだ。 あいつは人を誂うのが好きなようだ。 「風の吹くまま気の向くままに」と俺に遊びに来たようだが、余程退屈なんだろうか。 音も無しに勝手に侵入するのはどうかと思うが…… しかし見られて困るものは無い。家財も装飾も大してない殺風景な家だ。 勝手に覗かせておけばいい。 アレはアレで面白い奴だ。普段煽られるのは鬱陶しいが、あいつには悪い気はしない。 暇で退屈ならいつでも俺に遊びに来いと言ってもいいくらいには気を許している。 まあ、とっくにこれを覗かれたから手遅れとも言えるが……好きにさせておこう。 きっとあいつも退屈なんだろうからな。 さて本題だ。 今まで他人との繋がりを避けてきた俺はその借金を返さなければいけないようだ。 女慣れ以前に人慣れ。俺は初歩的な問題から始めなければいけない。 己の過去を捨て、己を切り離してきた俺には当然の義務なのだろう。 ……義務というのもどうなんだかな。 俺はそれを義務だと思ってやりたいのか?違うな。 俺は好きな人の為に生きたいのだ。これはそうする為に必要な責務であり、 それをなおざりにしてきたツケだ。 相手の望み、意志、傍にいる事、言葉で言えば簡単だが、俺には困難だろうというのは想像に難くない。 果たして俺にそれが務まるのだろうか……意識はしておくが…… そう言えば「焦りは禁物」とも言われたな。ならばあまり強く意識しない方がいいのかもしれない。 まあ……何とかやっていこう。気長に学んでる時間は無いかもしれないが、他にやる事も大して無いのだ。 月が流れるようになだらかに進めばいい。 明けない夜は無いが、夜はまだ長いのだから。 ……こう書いていると、俺よりクランの方が俺の事を知っている気がするな…… それはそれで不甲斐ないのだが……まあ自分の事は他人の方がよく見えるとも言うしな。 気にしてもしょうがない。だから気にしないでおこう。 きっとそれがいい。 #endregion #region(004 <10~14ページ目>) ※前半 関連セッションNo.13 [[ヒーロー爆散>http://qq4q.biz/sN4t]] ※後半 関連セッションNo.7 [[ホムンクルスは無邪気に笑う>http://urx.mobi/shye]] 「心が変われば態度が変わる」とは誰の言葉だったか。 「見方が代われば態度が変わる」とも言ったか。もしかしたら逆かもしれない。 まあどうでもいい。兎に角変わったのだ。 オリバー・L・ウォード。ナハシュ=シャホル。 以前一度会ったはずだが、全く印象が違って見えた。 ナーシアは以前は鬱陶しい奴だという印象だったが、今回は機敏に動ける器用な奴という印象だ。 それに観察眼だか洞察力だか……まあ中々できる奴だな。口数の多さは玉に瑕だが。 オリバー……あいつは子供という印象だった。 猿を連れているがむしろ猿に飼われているんじゃないかと思うくらいにガキだ。 まあその猿の実態は悪魔だが。そう、ガキだ。正しく子供。 異常への覚悟、恐怖や悪への警戒心、そんなこの街にいるならあって当たり前のものがあいつには欠けているように見える。 まあ、その印象は今でも変わらないが、あいつにも意地を張るくらいの度胸はあるようだ。 猿を飼い慣らす程度には成長したのかもしれない。 俺が変わったのか、見えていなかったのか、或いはあいつらが変わったのか。 いずれにしても面白くなったものだ。この灰色にくすんだ凡庸な街も中々に彩られているようだ。 俺やエイブラムスという黒も、あいつらを引き立てる色と言えるのかもしれない。 彩りと言えば、あの赤い奴らは無事に生き返ったらしい。 仲間も殆ど生き返った。悪魔に操られた亡霊少女は救われた。 あいつらもまたこの街を彩るのだろう。 ……まあ仲間の1人は俺の仲間が殺したのだが。 あいつはあいつで無鉄砲過ぎる。とんだお転婆少女だ。 少しは自制を覚えるべきじゃないか?まあ煩く咎めるつもりは無いが。 仕事の邪魔にならないように見張っておく必要はあるかもしれない。ドジを踏む可能性が万が一にもあり得る。 ……………… 一人じゃない、か。 本当に好き勝手やりやがって。あいつめ。 しかし以前から惹かれた奴らの事は未だに上手く書けないな……そう昔の事でも無いんだが…… 昔の事より今持っている印象を書くべきか。昔の事に囚われるべきでは無いだろう。 今回のようにあいつらにまた会えば違う印象を持つかもしれないしな。 それにしてもあいつらには久々に会いたいものだ。長い間会っていないように感じる。 ざっと3人の事をまとめよう。 既に死んだホムンクルス、アルケー。 いずれ死ぬホムンクルス、ほむーん。 善性の使徒であり、悪を怨む怨霊、松田永梨。 あいつらの記憶を手短に書く。 アルケーは以前依頼で護衛を任された奴だ。 護衛、と言うよりはベビーシッターに近い。 白い髮に青い目。俺の肘下程度の身長で、まあ、美しい少女だ。 何よりもずっとにこにこと微笑む奴だった。それは陰りが無く純粋で、何かを偽るものでも誤魔化すものでも無く、 ただそれをありのままに見て綺麗だの楽しいだのかっこいいだのと素直に思い微笑むような奴だ。 きっとあいつはあらゆるものを受け入れるのだろう。 悪を拒まない。どんな悪でも受け入れる。 何でも受け入れると書くとまるでシスターや女神のようだが……あながち的外れでは無いんだろう。 マスターの理想。神の領域に至った理想のホムンクルス。 そのせいで3日しか生きられない儚い子。 偶然産まれてしまったと聞いたが、まあそんな情報は些細な事だ。 あいつは俺の過去を覗いた。憐れみや同情はしなかった。恐怖も無かった。 ただ楽しそうに無邪気に、興味のあるものをもっと知りたいという純粋な子供のように俺の心を覗くのだった。 あいつは…………完全体だった。 シスターどころか女神と言ってもいい程に、理想のホムンクルスだった。 あいつは最期にお姉ちゃんといつか会えると告げた。 お姉ちゃんとは子供の頃によく遊んだ、まあ、幼馴染のようなものだ。 よく笑いよく泣く、子供みたいな奴だった。俺より7,8つ程度は年上なのだが。 数年間付き合って、というか遊んで、じきに進級か何かの事情で会わなくなった。 あの頃の記憶は殆ど曖昧だが、まあ、楽しかった。 人を助けて泣くような奴など、あいつくらいだろう。 この落ちぶれた身ではもう会う事は叶わないと思うが、それでもアルケーは会えると言ってくれた。 もしかしたらそれは俺への慰めで、本当は会えるのか、そして繋がってるのかは知らないのかもしれない。 だが、救われた。 俺の闇一色の過去の中で唯一楽しかった思い出がそれだから。 俺は、救われた アルケーは、俺と2人しかいない場所でそう告げて……そして、消えた。 ああ。 消えたとも。 あいつは。 神の領域に至ったから。 だから、消えた。 「よかった」 「もう 寂しくない ね」 それがあいつの最期の言葉だった。 それだけは今も忘れていない。 哀しくないと言えば嘘になる。 これが哀しくない訳が無い。 哀しいにきまっている。 それでも俺は前を向くしか無いのだ。 過去には戻れない。 未来は見えない。 ならば今を大事にするしか無い。 アルケーには3日と言わず、俺が死ぬまでずっと生きていて欲しかった。 いや、死ぬまでと言わず俺が死んだ後もずっとずっと生きていて欲しかった。 だがそれは叶わない願いだ。 だから俺はせめてアルケーの事を忘れないでいく。 アルケーと過ごした事、アルケーと遊んだ事、そしてアルケーの最期も、 一生手放さない。 一生忘れない。 ああ。 俺は一生後悔するのだろう。 何も守れなかった俺の生涯を一生悔やみ、嘆き、哀しむのだろう。 だが、それでいい。 俺には今がある。 今があればそれでいい。 今の幸せがあればいい。 例えそれがこの先無くなってしまうとしても。 何かを失うとしても。 失い続けるとしても。 そこに幸せだった証は残っているのだから。 それがあれば、今が無くても、何も掴めなくても、 生きていける。 ……生きていける……はずだ。 時間をかけ過ぎた。もう寝ないと明日に支障が起こる。 今日はここまでにする。 #endregion #region(005 <15~18ページ目>) ※関連セッションNo.14 [[クレイジーフェイク>http://qq4q.biz/sNzY]] この間の依頼は正直堪えた。 守る権利を奪われるわ女にされるわで調子が狂う。 恥じらう余裕も無かった。 オッサンは腑抜けになるし松田と滑川はノリノリだしクランは参るし散々だった。 戦闘の時こそクランを奮い立たせる為に威勢良く怒声を放ったが、あれは俺の為でもあった。 守る権利を奪われた俺の身ではああでもしないとあいつらを守れなかった。 魂を削ってでも意地を張らなければ誰も守れなかった。 ああ、物凄くきつかった。 おまけに麻痺と重傷の呪いで体を縛られる。 終いには神の雷に灼かれる。 生きてるのが不思議なくらいだ。 あの体が痺れ鈍る感覚と雷撃──ありとあらゆる細胞が破裂し神経を悉く焼き尽くし焦がすような痛みは今も忘れられない。 もう二度とあんな羽目にはなりたくないが、それであいつらを守れたなら、 俺はそれでもいいと心から思う。 それに、俺は死ななかったしな。 悪魔から押し付けられた呪いで俺は死ななかった。 不死の呪い。 死を許されない呪い。 代償は魔力と信仰──想い。 想いの強さ。信じる力。 俺は──あいつに想われた。信じられた。 俺はこんな所じゃ死ねない、終われないと。 いや……それだけじゃないな。 あの時、クランに抱きとめられていた時、微かに聞こえたものがある。 焼け爛れた体でも、焦がし尽くされた意識でも、あいつの想いは聞こえた。 あの時は頭が焼けていてよく分からなかったが、今なら分かる。 あいつは俺に、死んで欲しくないと、生きていて欲しいと、 願った。そして叶った。 ならばこれは願いなのかもしれない。 不死の願い。 ああ…………悪くないな。 願われるなら、生きてやろうという気になる。 はあ。 俺はあいつに背負われてしまったのだな。大して何も持って無い癖に。 まあ、お転婆娘なあいつなら俺が死んでも案外ケロッとしてるのかもしれないが、 しかし全く平気とはならないだろう。あいつはあいつで平気そうに振る舞っておきながら内面で気にするように見える。 もし俺が死んだらあいつはどれだけ哀しむんだろうか……考えても仕方ないな。 それにしても妙にあいつの事が気にかかる。 割りと話しやすいし、気を許してるし、教えを請うたり助けられたというのはあるが、それだけでは無い気がする。 親近感、慕い、敬い……どれも近いが何か違うな。 何よりあいつの場合、近くにいると安心すると言うより不安になる。 何故だろう。嫌では無いのだが…… さて。 話を切り替える。 久々に会いたいと思っていた松田に会えた。 先程も名前を出したが、今回の依頼のメンバーだった。 まあ、会えた。会えたはいいんだが……筆舌に尽くし難い。 状況が状況だし、俺は調子が狂っていたし、松田は変なノリだったし、戦闘では俺も松田も皆夢中だったし、 色々ありすぎて書く事がまとめられない。 いや、無理。マジであの異界はおかしい。正気の沙汰じゃない。イカれてる。 とてもじゃないがついていけない。 ……ああ、でも松田に話がしたいと言ったんだったな。 確か夢中になってる最中に言ったはずだ。 女の声だからいまいち自分で言った感覚がしないんだが……まあ、言った。 近いうちに会いに行こう。それまでに俺の感情を整理しておかなければ。 でなければまたあいつの思いを聞き逃してしまう。 それと俺と会った時にあいつが何を思っていたのかもなるべく振り返るとしよう。 ……やめだ。人の気持ちを考える余裕が無かった頃の俺の心象など当てにならない。 まあせめてあいつの言葉だけでも可能な限りまとめておくか。 しかし眠い頭でやる事じゃないな。 焦ってはいけない。 落ち着ける時に考えよう。 続きはそれからだ。 #endregion #endregion #region(キャラクターメモ) &memox(cols=75,rows=20,submit=更新<>■キャラ 夜刀神 参仕(やとがみ さんじ)\n\n《基本データ》\n年齢:24歳 性別:男 身長:181cm 体重:76kg\nML10 /HP106/MP79/LP4/行動値6/信仰1\n筋9/知3/器7/敏2/感2/精6\n\n《判定など》\n命中2D+17/物攻2D+23/射程1/回避2D+1\n[特筆判定]罠探知(ボヤンス)・メトリー2D+6\n物理防御18/魔法防御9/結界強度5\n\n《スキル》\n[パッシブ]\n魂の錬成/特異術式【増幅ディフェンダー】/悪魔契約 SL3/その他\n\n[セットアップ]\n高速付与:8\n+硬質化:5 SL5\n瞬間移動:2\n\n[ムーブ]\n霊魂武装:4+LP1 SL5\n\n[マイナー]\n亜空間殺法:6\n\n[メジャー]\nデス・ブリンガー:8 SL5 EX貫通\n\n[その他]\n時間停止:6 [イニシアチブ]\nブルクラッシュ:0 [ダメロ直前]\nカバーリング:3 [ダメロ直後]\nディフェンダー:4 [リアクション] SL5 EX増幅\nチャクラ:5 [クリンナップ] SL3\n運命改竄:8 [判定直後] SL2\nストーカー(アイテム)[命中判定直前] 判定を自動成功にする\n\n《ダメージロール》\n2D+57 デスブリ\n2D+57+50 デスブリ+亜空間殺法+ブルクラ\n\n《非戦闘スキル》\nサイコメトリー:4\nクリアボヤンス:4\n強制転移:8\n\n《所持品14/21》\n携帯電話/7つ道具\n賢者の石/大魔石*2/神丹/一角散/金丹\n飛翔符/イカサマの金貨\n\n■技能\n鉄の胃袋\n犯罪歴/秘密〈犯罪歴〉\n運転免許/特殊運転免許〈船舶〉/大学教育\n外国語〈英語/中国語〉/専門技能〈捕縛術/パソコン〉/人物特徴〈捕縛術〉 \n) #endregion

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