すごく地味な、心が温まるような、でも地味なお話だった。読んだ時の私のコンディションは今ひとつだったので、感動しなかった。「いいお話」を受け入れられなくなっているのかも。「へぇ」と冷めた目で読んでしまった。
友人からは「天然」だと言われる香恵という女子大生。ある日自分の部屋のクローゼットに前の住人が忘れたと思われるノートを見つける。そのノートは小学校の先生をしている伊吹先生の日記だった。子供達や片思いの同級生に対して、温かく率直に想いを綴る伊吹先生にいつしか香恵は魅せられていく。てな感じのお話。
伊吹先生の日記は本当に温かい。こんな人がいたら間違いなく好きだ。この伊吹先生の日記にはモデルがあるらしく、そんなよくできた先生が実際にいるんだなぁと思った。日記の中で伊吹先生も成長していく。主に恋愛面で。その成長に感化され香恵も自分の気持ちを自覚する。
私がずっと冷めた目で読んでいたのは、きっと香恵がよくわからなかったからだと思う。「天然」てとこが今ひとつ(会話で天然さをだそうとしてるとこが特に)分からないとこと、香恵にちょっとイライラしてた。なんか好かん。まぁあり得ない強気な性格とかよりも等身大でいいのだと思う。あと「日記を読む」という行為が受け入れられなかった。誰にも見せる気の無い自分の日記をもし読まれたら、私はたまらん。逆の立場ならきっと読むけど(あかんがな)。「私が伊吹先生やったら嫌やなぁ」って思ってた。そんなこと言うたら話進まんのですけどね。
いつか読み直した時は違うことを思うのかもしれない。伊吹先生の日記には文句無しでじーんとしたし、後は香恵を受け入れるだけだ。私がもうちょっと大人だったらもっと面白かったと思う。もしかしたら泣けちゃったかもしれない。これを面白い感動した、と思った人には失礼なことを言っているように思うけど、今のところはこんな感想でごめんなさい。心が広くなったら出直します。
以下、ネタバレ含みます。
どこかで読んだような気がするなぁと思ってたんだけど、「今、会いにゆきます」とか「天使の~」とかそれ系統なお話。香恵が日記を読むのがとてもゆっくりで、日記の終りと香恵の日常がうまいことリンクして盛り上がっていく。私は人の日記読んでしまった後に、その人に会いたいと思いつく感覚がよくわからんけど、予想通り伊吹先生は亡くなっていて、伊吹先生の片思いの相手は香恵の思い人だった。隆が同一人物というのは、物語を読んでいる自分だからわかることであって、現実ではそう思いつかないだろう。そこはしょーがない。でも気付くタイミングうますぎね?とか、最後に伊吹先生の日記の内容を自分の口から伝えちゃうのってどうなの?伊吹先生それで嬉しいの?とか余計なことを考えてしまうのだ。意外性もあまりないから、続きが読みたいー!って感覚にもならなかった。鹿島さん関連のとこ位かな。
何度も言うけど、伊吹先生の日記はよかった。ちょっと考えさせられるところもあった。具体的にどの言葉とは言えないんだけど、自分の気持ちを相手に伝えていかなかければ、ってな意味合いのくだり。
伊吹先生が既に亡くなっていた結末は、作者にとって意外性を持たそうとした結果なのだろうか?流石にそれはないか。隆と香恵がくっついたわけじゃないからまだいいけど、なんかありがちすぎるような気がする。実は生きてました、じゃ駄目なのか。予定調和過ぎて拍子抜けした。
他のお話と違うところは、万年筆ネタが多いことくらいかな。多分万年筆好きなんでしょうね。影響されやすい私は、万年筆が欲しくなってしまった。ドルチェか~、試し書きさせてもらおうかな。
(2007/10/30)
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最終更新:2009年06月07日 17:10