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ハチクロよりは、ちと暗め。恋愛メインではなく、「ある少年の成長の物語」になるのかな。ただ
羽海野チカのほのぼのとした描写が、描こうとしている主人公の孤独や苦悩を和らげていて、決して暗いだけのお話ではないのです。一巻は特に暗いけど、徐々に明るくなってきているようにも思う。
主人公の零は高校に通う現役プロ棋士。両親と妹の事故死をきっかけに父親の友人の家へ引き取られるが、義理の家族とうまくいかずプロ転向をきっかけに一人立ちする。近所に住む川本家三姉妹や棋士仲間と交流しつつ、成長していく(であろう)お話。
零は孤独で、自分を取り巻く環境の中で常にもがいている。胸がキリキリする位私が零を愛しく思うのは、自分の存在が誰かを苦しめないようそこから離れても、絶望せず、投げやりにならず、生きることと戦うことをやめないからだ。己の存在意義に悩みつつもプライドは捨てないところを、とても好ましく思う。温かい川本家の面々や理解のある友人を配置しつつも、あくまでも自分で立たせようとしている作者の、零への愛情を感じる。手を出して誰かが助けて零の孤独を癒して、前向きなお話にするのは簡単だけど、そうしないところがたまらなく好きだ。
私は自分で言うのもなんだけど、普通に育った。自分の努力以外の部分、例えば家庭の事情とか身体的な理由が、人生に影響することはほとんどなかった。足りないものはいつも自分の頑張りだったと思う。頑張りが足りないせいでの色々は、それはあったけど、全て自分に返るので暗くなりようが無かった。自業自得だからね。
年を取るにつれ、色々事情がある人と知り合うことも増えた。増えたというか、子供の頃はそういうのを気にしなかっただけかもしれない。もしくは皆普通に口に出せるようになっただけかもしれない。カルチャーショックだったのは最初だけだった。んで、普通だと思ってる私の家庭も、他の人から見たら普通じゃないかもなんて考えたり。でも30数年生きて、やっぱり私の経歴は平凡なもんだと思ってる。
ハチクロもライオンも、羽海野チカの描くお話の登場人物は、家庭に何がしかの事情がある場合が多い。ハチクロの竹本君やはぐや森田さん、ライオンの零もだし川本家も色々ありそう。最近、それは珍しいことではないのかなぁと思うようになった。前述の通り、私は普通に育った(と思っている)ので、零や川本三姉妹の気持ちが本当には分からない気がする。というか「分かる」と言ってしまうこと自体がおこがましいんじゃないかと不安に思う。零を好ましく思うこの気持ちも、ある種の上から目線ではないかと。まぁ仮にそう言われても、零のようなキャラが好きなので変えようはないのだけれども。
話がそれたけど、零の経歴はまだ謎がある。引き取られた先でどんなできごとがあったのか、そこはまだ明かされていない。家庭の事情による零の孤独を「興味深い」と言ってしまうのは、なんだか傲慢なような気がするのだけれど、「孤独」というキーワードに弱い私なので、続きを待ちわびている。
(2012/06/30)
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最終更新:2012年06月30日 22:53