鬼灯

「さて」

眠れる樹海
大樹スリーピーウッドの根本に広がるこの樹海
まだ浅い部分とはいえ、少しでも気を抜けば樹海に取り込まれてしまう
そう錯覚させてもおかしくはないこの場所で、何をしているのかといえばーーーー


樹海探索部
この眠れる樹海の探索を目的した部活動
……ということになってはいるのだが、各々目的は違うようだ。
私も樹海の踏破にはそこまで興味がない
目的は如何にスリーピーウッドへと近づくか、樹海探索部はその目的に一番近かった
いずれ深部へと足を進めるにもこの部活動に所属していれば許可が降りやすいだろうという狙いもある
それともう一つ
それが今、樹海探索部の面々から少し距離を取り一人でこの場所にいる理由だ


小型の魔獣を見つける、一人でも十分対処が可能な相手なのかを確認すると
辺りを注意深く観察し他の魔獣が側にいないかを入念に調べる
もし複数いるのならば絶対に相手にはしない、何故なら「その後」が目的だからだ
準備を終え、視界に収めている小型の魔獣を取り囲むように意識を集中させ
業、と一気に発火させる
魔獣には当てないよう繊細に、焼き尽くすのは魔獣の周囲にある「空気」だ
それも一瞬の内に、逃げられては元も子もない
異能を解き、倒れ伏した魔獣に近づくと手早く息があるかどうかを確認し全ての準備が整う

「それでは少し"分けて"貰うぞ」

ぞる……と異能の力が倒れ伏す魔獣から魂を抽出する

『概念捕食』文字通り相手の概念、魂を『捕食』する異能で視覚化した魂の一部を『切り取る』
片手に持つ、極彩色に輝く瓶へと切り取った魂を押し込める
瓶の中の極彩色の輝きがまた一つ増えたのを確認し、厳重に封印を施していく


処置を済ませ倒れ伏した魔獣を尻目に足早に立ち去る。
調べたとはいえ、他の魔獣が寄ってくるとも限らない
なによりそろそろ戻らなければまた何を言われたかわかったものではないからな、と
白衣のポケットから取り出したスマートフォンで時間を確認し
戻しながら立ち去ろうとしたその視界の隅に写った一輪の花へと視線を送る

「鬼灯の花か……場所が場所なだけに色々な植物があるのだな」
「しかし、この調子では……別の手段も講じるべきか」
片手に持った瓶を弄びながら急いで探索部と合流する


どこへ言っていたんだと鼻息を荒くする毛玉の塊のようなこの物体が我が探索部の部長だ
その言葉に対し、いつもの返事をする


「何、日課の"解剖"を少し行っていただけさ」

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最終更新:2018年12月29日 14:01