ダブル主人公(創作)

登録日:2019/02/25 Mon 08:06:39
更新日:2025/05/05 Mon 14:38:21
所要時間:約 16 分で読めます





「ダブル主人公(W主人公)」とは、創作物でしばしば見られる物語形式およびジャンルのひとつ。類義語に「ダブルヒロイン」がある。
ここでは似た概念である「バディもの」についても解説する。

●目次


概要

読んで字の如く「主人公にあたる人物が二人存在する」こと。
三人以上となると主人公が常に行動を共にする場合以外、基本的には群像劇へと分類されるため、「トリプル主人公」や「クアドラプル主人公」という単語はさほど使われない。

パターンとしては「公式で最初から主人公が二人設定されている、もしくは途中から主人公が一人追加された」ものと
「公式が設定した主人公は一人だが、主人公でない別の一人が主人公と見ていいレベルの行動や活躍をしている」ものに分かれる。
前者の場合は名実共に「ダブル主人公」だが、後者はあくまで主人公は一人と決まっているので、
公式が「もう一人の主人公」として認定しない限りは「事実上の主人公」「バディもの」「ヒロイン」「ライバル」「人気キャラ」「キーパーソン」などの位置づけになる。

なお、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや大河ドラマ『葵~徳川三代~』のように、章によって主人公が変わる作品は新旧主人公が一緒に行動していてもそう呼ばれることはあまりないし、
「実はこのキャラはこの物語の裏でこんな頑張っていて~」的な所謂「裏主人公」ともまた違う。

通常、物語においては主人公の視点で物語が進むことになる訳だが(視点変更による場面展開や回想シーン、過去編や未来編などの作劇演出はまた別)、
たとえば作中に二つの対立する陣営・側面が存在する場合、その双方を描くことによって物語に深みを持たせられるため、それぞれに属する主人公を作ることで、よりスムーズに読者に双方の陣営に触れてもらうことができるのだ。
特に二陣営が思想的・立場的に対立していれば、各陣営の思想・在り方をそのままそれぞれの主人公に持たせることで、両主人公の対立がそのまま両陣営の対立の縮図として描けるなど、そういう意味でも何かと便利な手法と言えるだろう。
逆に主人公が常に行動を共にする場合、何気ない掛け合いにより考えていることを、画を退屈なものにすることなく可視化することができる。
強大な敵に立ち向かう展開を敵と1人の主人公によるパワーゲームで終わらせず、「相性の有利不利を鑑みてどちらかが立ち向かう」「チームワークや能力の相乗効果を活かして格上相手にジャイアントキリングを果たす」といった1+1が2ではなく3にも10にもなる展開を見せるなど、マンネリ化を防ぎやすいのも強み。

しかし、上手に描けなければダブル主人公のうちの片側だけが目立ってしまうなんてことも起こり得るので、制作者の力量が問われる要素でもある。

なお、クロスオーバー作品においては別々の作品からそれぞれの主人公が来る都合上、自然とダブル主人公となるし、
原作ありのゲームなどで原作主人公をしっかりと登場させたうえでゲームオリジナルの主人公を採用した場合、それもある意味でダブル主人公と言えるだろう(あくまでもサブキャラの範囲に収まっている場合は流石に異なるだろうが)。


ダブル主人公にみられる特徴

ここからはダブル主人公の作品でよくみられる現象について、例となる作品を交えつつ大まかに挙げていく。
当然だがここにあるものがダブル主人公の作品共通の要素ではないし、ましてや「こうじゃないとダブル主人公じゃない」というものでもないので注意。

1.主人公同士の立場や思想が真逆

前述した通り二つの陣営が対立しあっている作品に多い手法なので、自然と主人公同士の立場・思想も真逆となる。

たとえば有名なダブル主人公の作品として『コードギアス 反逆のルルーシュ』があるが、
これはある理由から体制への反感を持ち、武力によって世界を変えようとする主人公、ルルーシュ・ランペルージと、
彼の友人であり、ルルーシュ同様に体制に不満を持ちながらもルールを遵守し中から変えていこうとするもう一人の主人公、枢木スザクの友情と対立がメインであった。

どちらも「世界を変えたい」という望みを持ちながらも、「結果の為なら手段は選ばない」ルルーシュと「間違った手段で得た結果に意味はない」とするスザクは、
「テロリストと軍人」「個人の正義と社会の正義」の縮図として、相容れない同士の対立と彼らが再び手を取り合いどう世界を変えるのかまでが描かれた作品であった。

ほかにこのタイプで有名どころとしては、『銀河英雄伝説』が挙げられるだろう(主人公はラインハルトヤン・ウェンリーがラスボスだとも言われているが)。
この作品は対立する国家の構造の全く違う二国が舞台であり、両国にそれぞれ主人公格が存在する。
専制主義国家生まれのラインハルトは国家の腐敗を正す為に軍に入り、若くして元帥までに至り市民から搾取する腐敗した貴族を排除し、最高の専制政治を成す。
民主主義国家生まれのヤンもまた軍に入り若くして出世するが、「政治の腐敗の一掃はあくまで文官の成すべきことであって軍人の自分が立ち入るべきじゃない」とあくまで一線を引いて自制し、その結果依然として最低の民主政治が続くこととなる。
また、作中では「戦略のラインハルト、戦術のヤン」「常勝の天才、無敗の魔術師」と呼ばれ、双方の得意分野を端的に表したワードとして有名。

これら二作はそれぞれ「ダブル主人公」という形態をある意味で一番分かりやすく描いている訳だが、
このように二つの立場・思想の視点から描くことにより、世界観を深く描くと同時に「受け手がどれくらい主人公に共感・同意してくれるか」という、
創作には度々ついて回る問題を解消しやすくしているのである。

2.主人公の性格・精神性が逆

「主人公」という物語で一番特別な立ち位置のキャラが二人もいるのだから、当然主人公二人の性格も逆に近くなる。

これまたダブル主人公の作品として有名な『仮面ライダーW』がある。
私立探偵の主人公、左翔太郎は「いついかなる時も情に流されない男の生き方」としてハードボイルドを気取っているが、
その実周囲からは「ハーフボイルド」とも揶揄されるほど情に流されやすく、アツく、お人好しで、街と人の危機とあらば誰よりも早く駆け付けるような感情的な性格として一貫している。
それに対し、翔太郎の相棒であるもう一人の主人公、フィリップは物語序盤は自分の興味優先、何かあってもまず対策を立ててから行動しようとするタイプであり、
「依頼を解決する」という目的はほぼ常に同じであるものの、このスタンスの違いから衝突することもままあった。

このように立場的には対立していなくても性格面ややり方の違いで対立することもダブル主人公では多く、そんな二人がどう足並みを合わせていくのかも見どころの一つ。
また『仮面ライダーW』でもそうだが、「一見真逆に見えてだいぶ似たもの同士」というのもよくあること。どこかしらで似てないと足並み合わせようないし

3.主人公の属性・得意分野がまったく違う

ここでいう「属性」とはキャラクターの外見的・内面的特徴だけではなく、火属性水属性のような意味のそれも含む。
役割分担の一環かつ2の延長として扱う属性も異なっていることが多く、片方ともう片方が対になった属性を扱ったり、
属性の概念がない世界観でもたとえば片方が近接戦が得意でもう片方が遠距離戦が得意…などなど、それぞれ得意分野が異なるのがスタンダード。

これは仮にもダブル”主人公”である手前どちらかだけを強くする訳にもいかないので(「既に強い」と「これから強くなる」の対比になっているものは別として)、
自然と違う分野で活躍して双方の欠点を補いあうような特性になるのだ。
なお、必ずしも主人公同士で属性や得意分野が真逆かというとそうではなく、むしろ「同じ分野で同等の技量を持つ息の合った二人のコンビネーションで戦う」というものも少なくない。

4.主人公二人の性別が同じ

ここまでは「違う部分」についてだったが、今度は逆に「同じ部分」について。
と言っても別に大した話ではなく、単に主人公二人で性別が違うと「ダブル主人公」というより普通の「ヒーロー」「ヒロイン」と見做される場合が多く、
受け手にしっかりと「二人とも主人公」だと認識させるために同じにする、というだけ。もちろん、お互いに相手を恋愛対象と見ていなかったり、片方が性別を偽っているなどの例外もある。
恋愛対象という意味では同性でも百合、BLは逆にダブル主人公と言うべきか悩ましいところである(視点固定、群像劇はまた別として)。
フォーマットやジャンル分けが曖昧なことも多いのでやっぱりややこしい。

このことを踏まえた特殊な例としては『魔法少女リリカルなのは』シリーズが挙げられる。
同作は1作目こそ高町なのはが完膚なきまでに主人公で他が脇役というスタンスであったが、
2作目は1作目ヒロインのフェイト並びに新ヒロインである八神はやての視点でも物語が紡がれ、
世代交代が進んだ3作目ではスバル・ナカジマ、4作目ではなのはの養女であるヴィヴィオが主役となっている一方、相も変わらずなのはは主人公として話をひっかきまわしている。
いわば本シリーズは主人公(高町なのはという『英雄』)と主役(物語の視点となる『挑戦者』)が別という作風にもとれる。
5作目以降は群像劇になりつつあるけどね(とうとうタイトルから『少女』が抹消されたし…)


バディもの

ダブル主人公とは似て非なる概念で、明確な定義はないものの概ね「事態解決を図る主人公とそのサポートをする一人の主要人物」、
あるいは逆に「サポート要員の視点から事態を解決する人物を描く」という図式が作中通して使われている作品がこう呼ばれる。
前者では『相棒』、後者では『シャーロック・ホームズ』シリーズが分かりやすいだろうか。

ただし、どちらも「事態を解決する人物」と「サポートをする人物」が通して同じ人物か、変わるにしてもそれなりの長期スパンである作品でなければこう呼ばれないことが多い。
「ひとつの事象に対して二人で解決に導く」ことになるため、刑事ものや探偵ものでよく使われる傾向にある。

その性質上「ダブル主人公」と「バディもの」は両者で重なる要素が多く、これらを明確に区別するのは難しいのだが、
バディものにおいては必ずしもサポート要員が主人公とは限らず、あくまで「主要登場人物」の枠に収まっているものも少なくない。
むしろ「それぞれ別の概念だが、それ故に両者を兼ね備えた作品も存在する」と考えた方がいいかもしれない。


ダブル主人公やバディものの作品

五十音順、シリーズものの場合は作品順に記載。

テレビドラマ

  • 相棒
  • アナザヘヴン
  • あなたの番です
  • あぶない刑事
  • Xファイル
  • 国盗り物語
  • 草燃える
  • 獅子の時代
  • シャーロック アントールドストーリーズ
  • 翔ぶが如く
  • 利家とまつ
  • 功名が辻
  • いだてん~東京オリムピック噺~
  • MIU404
  • スーパーナチュラル
  • 特捜刑事マイアミ・バイス
  • ナポレオン・ソロ

映画


ゲーム

アニメ・漫画等と違いゲームは自らがキャラクターを操作するコンテンツである。そのためゲームにおけるダブル主人公は主人公ごとに操作方法が大きく変わることが多い。
たとえば『ロックマンX4』では『エックス』は射撃武器を使いこなし、『ゼロ』は主に近接戦闘を主体とするなど。これによって同じゲームでも違った楽しみ方ができる場合がある。
また複数の視点を描けることから、選んだ主人公によってシナリオが変化することも王道である。


小説


漫画


アニメ


特撮



追記・修正は二人の力を合わせてお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 創作
  • アニメ
  • ゲーム
  • 漫画
  • 小説
  • 相棒
  • ライトノベル
  • 映画
  • ドラマ
  • ダブル主人公
  • W主人公
  • ホームズとワトソン
  • バディ
  • 仮面ライダーW
  • 相棒
  • あぶない刑事
  • メン・イン・ブラック
  • バディムービー
  • ラッシュアワー
  • バッドボーイズ
  • シャーロック・ホームズ
  • ライバル
  • 性別選択
  • コメント欄ログ化項目
最終更新:2025年05月05日 14:38

*1 正確には主人公は3人いるのだが、シナリオ毎にメインとなるキャラクターはその内2人ずつではあるのでダブル主人公に該当する。