「生田、どう思う?」
漠然とした質問に、マドラーで氷をつついていた愛は「は?」とその手を止めた。
里沙はそれに動じることなく、言葉を続ける。
里沙はそれに動じることなく、言葉を続ける。
「変わったって、思う?」
「生田が?」
「生田が?」
里沙の言わんとすことを噛み砕こうとするが、愛にはいまひとつピンとこなかった。
変わったかと聞かれても、愛が卒業してまだ2ヶ月しか経っておらず、その間、9期の立ったステージは、ミュージカルとモベキマスでのイベントだけだ。
そのふたつを見たところで、生田が大きく変化したかと聞かれれば愛は素直に頷けない。
確かにモベキマスのイベント映像では、10期が加入したことで、9期の先輩としての自覚が見えてきたことは分かる。
だが、それだけで、里沙が「変わった?」とまで聞いてくるだろうか。
彼女の言葉の真意が読めず、愛は「う~ん」と唸り声を上げながらマドラーでかき混ぜていると、里沙は「田中っちがね」と言葉を発した。
変わったかと聞かれても、愛が卒業してまだ2ヶ月しか経っておらず、その間、9期の立ったステージは、ミュージカルとモベキマスでのイベントだけだ。
そのふたつを見たところで、生田が大きく変化したかと聞かれれば愛は素直に頷けない。
確かにモベキマスのイベント映像では、10期が加入したことで、9期の先輩としての自覚が見えてきたことは分かる。
だが、それだけで、里沙が「変わった?」とまで聞いてくるだろうか。
彼女の言葉の真意が読めず、愛は「う~ん」と唸り声を上げながらマドラーでかき混ぜていると、里沙は「田中っちがね」と言葉を発した。
「田中っちからメールが来たの」
人のことを言えた口ではないが、脈絡なく話が飛ぶなと思いながらも愛は里沙の言葉に頷く。
「この間なんだけど」
「なんて?」
「まあ普通の話だったんだけどさ。スケジュールの確認とか」
「なんて?」
「まあ普通の話だったんだけどさ。スケジュールの確認とか」
里沙は鍛高譚の入ったグラスを傾ける。温かい焼酎が喉に沁み込んでいくのが分かった。
「で、そのあとにね、『気になることがあるんです』って書いてあったの」
その言葉に愛はマドラーを動かす手を止める。
「生田って最近変わった気がするんですけど、どう思いますかって」
正直、興味深い話だと思った。
あまり他人に干渉しないタイプのれいなが気になることとして挙げたのが、後輩の変化だった。
同郷だからだろうか、なんにせよ、れいなはなにかを感じ、そしてリーダーに相談した。
あまり他人に干渉しないタイプのれいなが気になることとして挙げたのが、後輩の変化だった。
同郷だからだろうか、なんにせよ、れいなはなにかを感じ、そしてリーダーに相談した。
「私も少し気になってたの」
「里沙ちゃんも…?」
「里沙ちゃんも…?」
愛の言葉に里沙は頷く。
ずっと気にかかっていたことがある。
なにが?と聞かれても明確に言い表せないほどの些細なこと。
生田衣梨奈の中に、ほんの少しのズレが里沙には見えた。それがなんなのかは分からない。
分からないのに気になって仕方がない。
悩んでいることでもあるのだろうかと思うが、それを聞いて良いのかさえも分からない。
ずっと気にかかっていたことがある。
なにが?と聞かれても明確に言い表せないほどの些細なこと。
生田衣梨奈の中に、ほんの少しのズレが里沙には見えた。それがなんなのかは分からない。
分からないのに気になって仕方がない。
悩んでいることでもあるのだろうかと思うが、それを聞いて良いのかさえも分からない。
「生田って、あんなんだったかなぁ……?」
「あんなんってどんなんよ?」
「あんなんってどんなんよ?」
愛がファジーネーブルに口をつける。
黄色い液体が喉を潤していくのを見ながら、里沙はふと口を開いた。
「……カメ」
「は?」
「カメなの、最近」
黄色い液体が喉を潤していくのを見ながら、里沙はふと口を開いた。
「……カメ」
「は?」
「カメなの、最近」
愛はグラスをテーブルに置く。里沙の言葉を噛み砕こうとするが良く分からない。
いったい何を言っているのだろうと思うが、どう考えたって、彼女の言う「カメ」とは亀井絵里のことでしかないのだけれど。
いったい何を言っているのだろうと思うが、どう考えたって、彼女の言う「カメ」とは亀井絵里のことでしかないのだけれど。
「生田がカメっぽく見えるんだよね」
やはり、亀井絵里のことらしい。
だが、衣梨奈が絵里に見えるとはどういうことだ。
確かにKYである衣梨奈と、PPP(ぽけぽけぷぅ)である絵里は似ている部分もあるだろうが、それだけで?
手のかかる後輩だから? それとも衣梨奈がよく里沙を慕っているから?
だが、衣梨奈が絵里に見えるとはどういうことだ。
確かにKYである衣梨奈と、PPP(ぽけぽけぷぅ)である絵里は似ている部分もあるだろうが、それだけで?
手のかかる後輩だから? それとも衣梨奈がよく里沙を慕っているから?
「なんでだと思う?」
「いや、私に聞かれても……」
「そーだよーねぇ…でもさぁ……そうなのよ」
「いや、私に聞かれても……」
「そーだよーねぇ…でもさぁ……そうなのよ」
里沙は半ば投げやりに言うと、くいと焼酎を飲む。
焼酎なんて愛は滅多に飲まないが、あんなに強いお酒をそんなに勢い良く飲んで良いのだろうかと心配になる。
里沙がお酒に強いことは知っているが、まさか酔っているのだろうか。
焼酎なんて愛は滅多に飲まないが、あんなに強いお酒をそんなに勢い良く飲んで良いのだろうかと心配になる。
里沙がお酒に強いことは知っているが、まさか酔っているのだろうか。
「生田がカメなわけないんだけどさぁ…なーんかそんな気がするの」
愛はそっと里沙に水の入ったグラスを渡しながらどういう状況だろうともう一度考える。
生田衣梨奈と亀井絵里。
確かに似ている部分があることは認める。しかし根本は違う。
里沙の言葉を聞く限り、なぜ「生田がカメ」なのか、そう思う理由もよく分からない。
そうであるのに頭に引っ掛かって悩んでいる。
生田衣梨奈と亀井絵里。
確かに似ている部分があることは認める。しかし根本は違う。
里沙の言葉を聞く限り、なぜ「生田がカメ」なのか、そう思う理由もよく分からない。
そうであるのに頭に引っ掛かって悩んでいる。
「……入れ替わってたりして」
愛がそう呟くと、里沙は顔を上げる。
「なーんてね」
そのあとそうおどけて続けたが、里沙の目は丸くなり、ぽんと手を叩く。昭和なリアクションだな、相変わらず。
「それだ!」
「んなわきゃない!」
「んなわきゃない!」
愛の冗談を真に受ける里沙を止めた。
そんなことあってたまるか。
そんなことあってたまるか。
「だってもう、そうとしか思えないんだって」
「いくらなんでも里沙ちゃん、それはないって。漫画じゃん、それじゃあ」
「そーだけどさぁ……もう、じゃあ、会ってよ、生田に」
「いくらなんでも里沙ちゃん、それはないって。漫画じゃん、それじゃあ」
「そーだけどさぁ……もう、じゃあ、会ってよ、生田に」
どうしてそうなるんだと愛は頭をかく。
「じゃあ里沙ちゃんは、絵里に会う?」
「んー……会って確かめるのもアリだよね。どっちにしても、話したいこと、あるし」
「んー……会って確かめるのもアリだよね。どっちにしても、話したいこと、あるし」
里沙はふと視線を落としてそう言った。
そっか、と愛は思う。
例のことを発表するのは1月2日。メンバーに話すのは12月の末だと聞いているが、それを絵里にも相談するのだろうか。
もし、愛の言った冗談が正しければ、里沙は生田衣梨奈に、「卒業」のことを相談するという結末になるのだが。
そっか、と愛は思う。
例のことを発表するのは1月2日。メンバーに話すのは12月の末だと聞いているが、それを絵里にも相談するのだろうか。
もし、愛の言った冗談が正しければ、里沙は生田衣梨奈に、「卒業」のことを相談するという結末になるのだが。
―……なわきゃないって、ガキさん…
愛はそう思いながらも、里沙の言葉をなんどか反芻した。
あり得ないと考えながらも、心のどこかで、冗談を本気にしている自分がいた。
あり得ないと考えながらも、心のどこかで、冗談を本気にしている自分がいた。
ファジーネーブルをぐいと飲み干す。
甘い液体が喉を潤し、体に沁み込んでいく。
甘い液体が喉を潤し、体に沁み込んでいく。
さて、いったいモーニング娘。でなにが起きているのだろう?