同期である生田衣梨奈に憧れの先輩・亀井絵里の影を感じたその時から、聖の中にその感情は芽生えた。
普通に考えればあり得ないことなのは分かっている。
一人の人の中に全く別人の人格が宿る、などということは小説の中の話でしかないと聖も思っていた。
あの出来事があるまでは…。
一人の人の中に全く別人の人格が宿る、などということは小説の中の話でしかないと聖も思っていた。
あの出来事があるまでは…。
「まだ聖がエッグだった頃にね、ライブの時に楽屋への帰り方が分からなくなって迷子になっちゃったことがあるの」
「うん」
「そしたらね、たまたま通りかかった亀井さんが聖のこと楽屋まで連れて行ってくれたの。聖の大切な思い出」
「そうなんだ」
その時、相槌を打ちながら話を聞いていた衣梨奈がふわっという音が聞こえそうなほど柔らかく微笑んだ。
それは今まで衣梨奈が聖に見せたことのない表情だった。
こんな風に笑うえりぽん、見たことない…。
見たことない?いや。聖はこんな風に柔らかく微笑む女性(ひと)を知っている。
ずっと憧れて憧れ続けている先輩、亀井絵里。
「うん」
「そしたらね、たまたま通りかかった亀井さんが聖のこと楽屋まで連れて行ってくれたの。聖の大切な思い出」
「そうなんだ」
その時、相槌を打ちながら話を聞いていた衣梨奈がふわっという音が聞こえそうなほど柔らかく微笑んだ。
それは今まで衣梨奈が聖に見せたことのない表情だった。
こんな風に笑うえりぽん、見たことない…。
見たことない?いや。聖はこんな風に柔らかく微笑む女性(ひと)を知っている。
ずっと憧れて憧れ続けている先輩、亀井絵里。
それからは、そう思って見れば見るほど衣梨奈のちょっとした仕草やしゃべり方に絵里の影を感じるようになった。
衣梨奈の中に、絵里がいる。
理屈ではあり得ないと思っても、聖の感覚的な部分が真実だと告げていた。
衣梨奈の中に、絵里がいる。
理屈ではあり得ないと思っても、聖の感覚的な部分が真実だと告げていた。
そしてそれと時を同じくして、聖の心にも変化が現れた。
衣梨奈の中に絵里を感じるたび、胸を刺す甘く切ない痛み。
愛しくて、苦しくて、触りたい。姿が見えないと、会いたくて会いたくて狂おしいほどだった。
聖はこのどうしようもなくふわふわして落ち着かない感情を抱えて戸惑いの中にいた。
もう、聖自身気付いていた。
衣梨奈の中に絵里を感じるたび、胸を刺す甘く切ない痛み。
愛しくて、苦しくて、触りたい。姿が見えないと、会いたくて会いたくて狂おしいほどだった。
聖はこのどうしようもなくふわふわして落ち着かない感情を抱えて戸惑いの中にいた。
もう、聖自身気付いていた。
人は、この感情を"恋"と呼ぶのだろう。