2007年9月1日、札幌。
新垣里沙はモーニング娘。誕生10年記念隊のコンサートツアー最終公演を終え、人気のない通路で一人余韻に浸っていた。
もう一緒にツアーを回ることはないと思っていた先輩たちとの夢のような時間。
完全燃焼はしたけれど、やはり終わってしまった寂しさを感じずにはいられなかった。
新垣里沙はモーニング娘。誕生10年記念隊のコンサートツアー最終公演を終え、人気のない通路で一人余韻に浸っていた。
もう一緒にツアーを回ることはないと思っていた先輩たちとの夢のような時間。
完全燃焼はしたけれど、やはり終わってしまった寂しさを感じずにはいられなかった。
「どうしたの?ガキさん」
物思いにふけっていると、いつの間にか先輩の安倍なつみが里沙のそばに立っていた。
「あ、安倍さん。いえ、何でもないです。ただ、終わっちゃったなぁ…と思って」
「そうだね。でも、充実してたからこそあっという間に感じるんだよ。このツアーの思い出を宝物として心にしまって、またお互い頑張ろ!」
「そうですね!さ、楽屋に戻りましょうか」
なつみの言葉に里沙も笑顔になり、立ち上がった。
物思いにふけっていると、いつの間にか先輩の安倍なつみが里沙のそばに立っていた。
「あ、安倍さん。いえ、何でもないです。ただ、終わっちゃったなぁ…と思って」
「そうだね。でも、充実してたからこそあっという間に感じるんだよ。このツアーの思い出を宝物として心にしまって、またお互い頑張ろ!」
「そうですね!さ、楽屋に戻りましょうか」
なつみの言葉に里沙も笑顔になり、立ち上がった。
楽屋まで戻りなつみに続いて里沙が中に入ろうとした時。
「新垣さーーーん、どいて下さぁい!!」
久住小春の大きな声に里沙は振り返りながら、
「こらー、小春ー!廊下は走っちゃだめでしょーが…ワッ!!」
小春にもの凄い勢いでぶつかられ、里沙は吹っ飛ばされてすぐ前にいたなつみの背中に激突した。
二人はもつれ合うようにして倒れ、気を失った。
「新垣さーーーん、どいて下さぁい!!」
久住小春の大きな声に里沙は振り返りながら、
「こらー、小春ー!廊下は走っちゃだめでしょーが…ワッ!!」
小春にもの凄い勢いでぶつかられ、里沙は吹っ飛ばされてすぐ前にいたなつみの背中に激突した。
二人はもつれ合うようにして倒れ、気を失った。
「…うーん。あ、いたた」
里沙は目を覚まし、頭を押さえながら周囲を見回した。どうやら使用していない控室のようだった。
すぐ近くのテーブルに小春の書き置きがあった。
里沙は目を覚まし、頭を押さえながら周囲を見回した。どうやら使用していない控室のようだった。
すぐ近くのテーブルに小春の書き置きがあった。
"新垣さんと安倍さんへ
ごめんなさーい!お医者さんが「まず大丈夫だけど、後で病院で検査を受けるように」って言ってました。
お二人なら大丈夫ですよ♪ということで後はよろしく頼みまーす!by小春"
ごめんなさーい!お医者さんが「まず大丈夫だけど、後で病院で検査を受けるように」って言ってました。
お二人なら大丈夫ですよ♪ということで後はよろしく頼みまーす!by小春"
「なぁにがよろしく頼みます、よ。今度会ったらお説教してやらなきゃ」
ぼやきながらふと隣を見ると誰かが眠っていた。
「ん?なぁんだ私かぁ」
一瞬納得しかけて里沙は鋭く振り返って二度見した。
「えええええーーー!!あたしぃ?!」
あわてて鏡に駆け寄る。
「嘘でしょおぉ?!」
鏡に映っているのはどう見ても安倍なつみだった。
「安倍さんと入れ替わるなんて、そんなアニメみたいなこと…」
ぼやきながらふと隣を見ると誰かが眠っていた。
「ん?なぁんだ私かぁ」
一瞬納得しかけて里沙は鋭く振り返って二度見した。
「えええええーーー!!あたしぃ?!」
あわてて鏡に駆け寄る。
「嘘でしょおぉ?!」
鏡に映っているのはどう見ても安倍なつみだった。
「安倍さんと入れ替わるなんて、そんなアニメみたいなこと…」
「騒がしいなぁ…」
背後で里沙の姿をしたなつみが目を覚ました。
「あれ?なっちじゃん。なんだ夢かぁ。おやすみぃ」
なつみがまた眠ろうとするのを見て里沙はなつみを揺さぶった。
「安倍さぁん!寝ちゃだめですぅ!」
里沙は無理矢理なつみを起こし、鏡の前に連れて行った。
「え?え?なんでぇ??どうしよどうしよ。おかあさーーん!!」
「安倍さん!それは私の左手だからお母さんにはつながってませんから!」
パニックに陥り左手首の目に見えない通信機に向かって話しかけるなつみを里沙は必死でなだめた。
背後で里沙の姿をしたなつみが目を覚ました。
「あれ?なっちじゃん。なんだ夢かぁ。おやすみぃ」
なつみがまた眠ろうとするのを見て里沙はなつみを揺さぶった。
「安倍さぁん!寝ちゃだめですぅ!」
里沙は無理矢理なつみを起こし、鏡の前に連れて行った。
「え?え?なんでぇ??どうしよどうしよ。おかあさーーん!!」
「安倍さん!それは私の左手だからお母さんにはつながってませんから!」
パニックに陥り左手首の目に見えない通信機に向かって話しかけるなつみを里沙は必死でなだめた。
ようやく落ち着いたなつみに、里沙は言った。
「信じられませんけど、さっきぶつかった衝撃でぶつかったみたいです」
「そんなアニメじゃあるまいし…」
なつみはまだ呆然としていたがふと時計を見て、
「ともかく今日は打ち上げも遠慮してホテルに戻ろう。ガキさん、明日は?」
「明日は東京に戻って夜から娘。のツアーのリハです…って、もう秋ツアーまで3週間くらいしかないですよ?」
「どうすんのさ…」
二人は頭を抱えた。
しかし、結局すぐには結論が出ず、東京に戻ってから話し合うことになった。
「信じられませんけど、さっきぶつかった衝撃でぶつかったみたいです」
「そんなアニメじゃあるまいし…」
なつみはまだ呆然としていたがふと時計を見て、
「ともかく今日は打ち上げも遠慮してホテルに戻ろう。ガキさん、明日は?」
「明日は東京に戻って夜から娘。のツアーのリハです…って、もう秋ツアーまで3週間くらいしかないですよ?」
「どうすんのさ…」
二人は頭を抱えた。
しかし、結局すぐには結論が出ず、東京に戻ってから話し合うことになった。
里沙が帰る準備をする間、なつみは外の空気を吸いにそっと裏口から出た。
「んーっ!」
なつみは大きく伸びをして、ひんやりとした外気に首をすくめた。
まだ9月になったばかりだが、北海道の夏は短い。風の冷たさが故郷にいることを実感させた。
それにしても大変なことになっちゃったな。そんなことをぼんやり考えていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「お姉ちゃん」
びっくりして振り返ると、小学生くらいの少女がすぐ近くでじっとなつみを見ていた。
「どうしたの?一人?ママは?」
「母はあっちでお電話で話してる」
少女は少し離れた街灯の下で電話している女性を指差した。
「そっか。いてあげたいけど、お姉ちゃんすぐに行かなきゃいけないの。ママの近くに行っておいで」
なつみが言うと、少女は頷いた。
「うん。ね、お姉ちゃん新垣里沙ちゃんでしょ?」
「そうだよ。コンサート見てくれたの?あ、呼ばれてる。じゃ、行くね。またコンサート見に来てね!」
なつみは少女の頭を撫でると、遠くで呼んでいる里沙の方へ走って行った。今の子かわいかったな。
またどこかで会えるといいなと思いながら。
「んーっ!」
なつみは大きく伸びをして、ひんやりとした外気に首をすくめた。
まだ9月になったばかりだが、北海道の夏は短い。風の冷たさが故郷にいることを実感させた。
それにしても大変なことになっちゃったな。そんなことをぼんやり考えていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「お姉ちゃん」
びっくりして振り返ると、小学生くらいの少女がすぐ近くでじっとなつみを見ていた。
「どうしたの?一人?ママは?」
「母はあっちでお電話で話してる」
少女は少し離れた街灯の下で電話している女性を指差した。
「そっか。いてあげたいけど、お姉ちゃんすぐに行かなきゃいけないの。ママの近くに行っておいで」
なつみが言うと、少女は頷いた。
「うん。ね、お姉ちゃん新垣里沙ちゃんでしょ?」
「そうだよ。コンサート見てくれたの?あ、呼ばれてる。じゃ、行くね。またコンサート見に来てね!」
なつみは少女の頭を撫でると、遠くで呼んでいる里沙の方へ走って行った。今の子かわいかったな。
またどこかで会えるといいなと思いながら。
-エピローグ-
少女は走り去っていく新垣里沙を見送りながら、首をかしげていた。
「なんであのお姉ちゃんの中になっちがいるんだろ?」
いくら考えても答えは出てこず「うーん」と悩んでいると、遠くで母親の呼ぶ声がした。
「まーちゃーん!帰るよー!」
「はーい!」
大きな声で返事をして、少女…まーちゃんは母親のもとへ走って行った。
走っているうちに先ほどまで感じていた新垣里沙への疑惑はやがて記憶の底に沈んでいった。
少女は走り去っていく新垣里沙を見送りながら、首をかしげていた。
「なんであのお姉ちゃんの中になっちがいるんだろ?」
いくら考えても答えは出てこず「うーん」と悩んでいると、遠くで母親の呼ぶ声がした。
「まーちゃーん!帰るよー!」
「はーい!」
大きな声で返事をして、少女…まーちゃんは母親のもとへ走って行った。
走っているうちに先ほどまで感じていた新垣里沙への疑惑はやがて記憶の底に沈んでいった。
『ガキさんの告白編』エピソードゼロ「札幌の空の下で」・完