第7回
空港から電車を乗り継いで目的の場所に着いた時にはすでに夜になっていた。
この店は1年前と何も変わらない。当たり前かもしれないけれど嬉しかった。
店の中に入るか少し迷ったが、結局入らずに道の端の邪魔にならないところに立って携帯を取り出し恵里菜に電話をかけた。
この店は1年前と何も変わらない。当たり前かもしれないけれど嬉しかった。
店の中に入るか少し迷ったが、結局入らずに道の端の邪魔にならないところに立って携帯を取り出し恵里菜に電話をかけた。
『もしもし?リンリン?』
「リンリンだよー!久し振り!」
『リンリン!久し振り~!元気にしてた?』
「元気だよ!さて、ここでクイズでーす!リンリンは今、どこにいるでしょう?」
突然のクイズに恵里菜が少し沈黙した。私はわくわくしながら恵里菜の答えを待った。
『どこって…え?中国でしょ?』
「ブーッ!正解は…1年前に二人でご飯食べたお店の前でーす!」
『え?え?リンリン今日本にいるの?!連絡してくれればいいのに』
「恵里菜をびっくりさせたかったんだ。今から出て来れる?」
『すぐ行くから待ってて!』
恵里菜は私の返事を聞く前に慌しく電話を切った。
「リンリンだよー!久し振り!」
『リンリン!久し振り~!元気にしてた?』
「元気だよ!さて、ここでクイズでーす!リンリンは今、どこにいるでしょう?」
突然のクイズに恵里菜が少し沈黙した。私はわくわくしながら恵里菜の答えを待った。
『どこって…え?中国でしょ?』
「ブーッ!正解は…1年前に二人でご飯食べたお店の前でーす!」
『え?え?リンリン今日本にいるの?!連絡してくれればいいのに』
「恵里菜をびっくりさせたかったんだ。今から出て来れる?」
『すぐ行くから待ってて!』
恵里菜は私の返事を聞く前に慌しく電話を切った。
「リンリーン!」
数十分後、恵里菜が息を切らせながらやって来た。
恵里菜はしばらく膝に手をついて息を整えていたが、ようやく落ち着くと私の顔をまじまじと見つめた。
「リンリン…。ほんとにリンリンなんだね」
「うん。久し振り、恵里菜」
すると、恵里菜の瞳からぽろっと涙が零れた。
「不意打ちは…ズルいよ」
次の瞬間、恵里菜に抱きしめられていた。
「びっくりさせてごめんね」
私は恵里菜が泣きやむまで、恵里菜の髪を撫で続けた。
数十分後、恵里菜が息を切らせながらやって来た。
恵里菜はしばらく膝に手をついて息を整えていたが、ようやく落ち着くと私の顔をまじまじと見つめた。
「リンリン…。ほんとにリンリンなんだね」
「うん。久し振り、恵里菜」
すると、恵里菜の瞳からぽろっと涙が零れた。
「不意打ちは…ズルいよ」
次の瞬間、恵里菜に抱きしめられていた。
「びっくりさせてごめんね」
私は恵里菜が泣きやむまで、恵里菜の髪を撫で続けた。
ずっと立ち話もなんだからと、ようやく泣きやんだ恵里菜と店の中に入った。
「リンリン、もしかして今日来たばっかり?ホテルは?」
注文を済ませると、恵里菜が尋ねてきた。私の席の横にある大きなトランクを見たらばればれだよね。
「うん。今日着いた。ホテルは…取ってない」
平然と言う私に恵里菜は呆れたような声をあげた。
「ええ?どうすんの?」
「うん。恵里菜んち泊めて」
私はにこにこしながら答えた。恵里菜はそれを聞いてため息をついた。
「いいけどさぁ。隣の街から遊びに来るんじゃないんだから。もし私がいなかったらどうしてたのよ?」
「大丈夫。恵里菜ならちゃんといて、リンリンを泊めてくれるって信じてたから」
恵里菜はしょうがないなと言うように笑った。
「リンリン、もしかして今日来たばっかり?ホテルは?」
注文を済ませると、恵里菜が尋ねてきた。私の席の横にある大きなトランクを見たらばればれだよね。
「うん。今日着いた。ホテルは…取ってない」
平然と言う私に恵里菜は呆れたような声をあげた。
「ええ?どうすんの?」
「うん。恵里菜んち泊めて」
私はにこにこしながら答えた。恵里菜はそれを聞いてため息をついた。
「いいけどさぁ。隣の街から遊びに来るんじゃないんだから。もし私がいなかったらどうしてたのよ?」
「大丈夫。恵里菜ならちゃんといて、リンリンを泊めてくれるって信じてたから」
恵里菜はしょうがないなと言うように笑った。
お互いの近況報告も終わって、そろそろ恵里菜の家に行こうかということになった。
店を出て恵里菜の家に向かう途中、家に着いたら恵里菜に伝えなければならないことをずっと考えていた。
「リンリン、どうしたの?難しい顔して」
あまりに沈黙が長かったせいか、恵里菜が心配して聞いてきた。
「ううん。何でもない。家に着いたらね」
店を出てから急に口数が少なくなった私に恵里菜は首を傾げていたが、結局は何も言わなかった。
店を出て恵里菜の家に向かう途中、家に着いたら恵里菜に伝えなければならないことをずっと考えていた。
「リンリン、どうしたの?難しい顔して」
あまりに沈黙が長かったせいか、恵里菜が心配して聞いてきた。
「ううん。何でもない。家に着いたらね」
店を出てから急に口数が少なくなった私に恵里菜は首を傾げていたが、結局は何も言わなかった。
「はい、リクエストの日本茶」
「ありがと」
恵里菜の家に着いて、出されたお茶を飲みほっと息をつく。やはり日本茶を飲むと日本に帰ってきたという実感がわいてくる。
けれど、のんびりしてばかりもいられない。私は姿勢を正した。
「恵里菜。聞いてほしい大事な話があるんだ」
「ありがと」
恵里菜の家に着いて、出されたお茶を飲みほっと息をつく。やはり日本茶を飲むと日本に帰ってきたという実感がわいてくる。
けれど、のんびりしてばかりもいられない。私は姿勢を正した。
「恵里菜。聞いてほしい大事な話があるんだ」
「ん?何?」
恵里菜は自分もお茶を持ってきて、私の向かいに座った。
「亀井さんと、衣梨奈…生田ちゃんのことなんだ。明日、会うことになってるでしょ?」
「そうだけど、何でリンリンが知ってるの?…あ、佐保ちゃんが言ってたサプライズゲストってリンリン?なんか怪しげにニヤニヤしてたから問い詰めたらしゃべったんだけど」
恵里菜の言葉に私は肯いた。明梨は私が来ることは黙っていたけれど、他に誰か来ることは匂わせていたらしい。
「そう。それでね、これから話すことは信じられないようなことかもしれないけど、本当のことなんだ。それに、私と恵里菜にも関係あるんだ」
恵里菜は自分もお茶を持ってきて、私の向かいに座った。
「亀井さんと、衣梨奈…生田ちゃんのことなんだ。明日、会うことになってるでしょ?」
「そうだけど、何でリンリンが知ってるの?…あ、佐保ちゃんが言ってたサプライズゲストってリンリン?なんか怪しげにニヤニヤしてたから問い詰めたらしゃべったんだけど」
恵里菜の言葉に私は肯いた。明梨は私が来ることは黙っていたけれど、他に誰か来ることは匂わせていたらしい。
「そう。それでね、これから話すことは信じられないようなことかもしれないけど、本当のことなんだ。それに、私と恵里菜にも関係あるんだ」
それから私は亀井さんと衣梨奈が入れ替わってしまったこと、色々調べたけれどいまだに元に戻らないことを話した。
恵里菜はやはり驚いたようだったが、何も言わずに聞いていてくれた。
そしてここからが本題。亀井さんと衣梨奈の入れ替わりのそもそもの始まりがハーモニーホール座間からだったことを、例の私と衣梨奈のツーショット写真も見せながら説明した。
恵里菜はやはり驚いたようだったが、何も言わずに聞いていてくれた。
そしてここからが本題。亀井さんと衣梨奈の入れ替わりのそもそもの始まりがハーモニーホール座間からだったことを、例の私と衣梨奈のツーショット写真も見せながら説明した。
「それと。この写真を見てくれるかな。見覚えあるでしょ?」
恵里菜は私が取り出した写真を1枚1枚見て行った。
「あ、これ…。リンリンが帰国してしばらくたってから私が撮った写真。どうして?」
「佐保ちゃんが座間のホールの中を調べてて見つけたんだ。これはそのコピー。私の推測では、この写真に謎を解くカギが隠されてると思うんだ」
「え?これが?」
恵里菜はいよいよ訳が分からないという顔をした。私はもう1枚、写真の裏の手書きの文字を拡大したものと八雲神社の写真を並べて置いた。
「この恵里菜が書いた"えりな"っていう文字。"な"の字がかすれて消えかけてるでしょ?」
「うん」
「"えりな"から"な"を取ると"えり"。そして亀井さんが自宅で私に会いたいって思った同じ瞬間に私と衣梨奈が写真を撮ろうとしていた」
そこで私は一旦言葉を切り、写真の裏のメッセージの本文のところを示した。
「この"あいたい"っていう言葉、そして二人が入れ替わる直前に見た光、この写真だけ異様に鮮明なこと。この写真が何らかの力を持ってて、それがこの"あいたい"というキーワードと亀井さんの思いに反応して発揮されたとしたら?」
恵里菜は私が取り出した写真を1枚1枚見て行った。
「あ、これ…。リンリンが帰国してしばらくたってから私が撮った写真。どうして?」
「佐保ちゃんが座間のホールの中を調べてて見つけたんだ。これはそのコピー。私の推測では、この写真に謎を解くカギが隠されてると思うんだ」
「え?これが?」
恵里菜はいよいよ訳が分からないという顔をした。私はもう1枚、写真の裏の手書きの文字を拡大したものと八雲神社の写真を並べて置いた。
「この恵里菜が書いた"えりな"っていう文字。"な"の字がかすれて消えかけてるでしょ?」
「うん」
「"えりな"から"な"を取ると"えり"。そして亀井さんが自宅で私に会いたいって思った同じ瞬間に私と衣梨奈が写真を撮ろうとしていた」
そこで私は一旦言葉を切り、写真の裏のメッセージの本文のところを示した。
「この"あいたい"っていう言葉、そして二人が入れ替わる直前に見た光、この写真だけ異様に鮮明なこと。この写真が何らかの力を持ってて、それがこの"あいたい"というキーワードと亀井さんの思いに反応して発揮されたとしたら?」
私の、それこそアニメの世界のような仮説に恵里菜は首をひねった。
「そんなRPGみたいなこと…」
ゲーム好きな恵里菜らしい感想だった。が、一転して恵里菜は落ち込んだような表情になった。
「でも、もし私がしまっておいた写真のせいで亀井さんとえりぽんが入れ替わっちゃったとしたら、私はどうすれば…」
落ち込む恵里菜の手をぎゅっと握って、私は恵里菜を励ました。
「そんな風に考えないで。もし本当にこれが原因なら、二人が元に戻れる方法を見つける糸口になるかもしれないじゃん」
「そうかもしれないけど…」
「明日、みんなでこの場所に行こう。行ってみれば何かが見えてくるかもしれない」
そう言っても恵里菜の表情は晴れなかったが、「うん」と肯いてくれた。
「そんなRPGみたいなこと…」
ゲーム好きな恵里菜らしい感想だった。が、一転して恵里菜は落ち込んだような表情になった。
「でも、もし私がしまっておいた写真のせいで亀井さんとえりぽんが入れ替わっちゃったとしたら、私はどうすれば…」
落ち込む恵里菜の手をぎゅっと握って、私は恵里菜を励ました。
「そんな風に考えないで。もし本当にこれが原因なら、二人が元に戻れる方法を見つける糸口になるかもしれないじゃん」
「そうかもしれないけど…」
「明日、みんなでこの場所に行こう。行ってみれば何かが見えてくるかもしれない」
そう言っても恵里菜の表情は晴れなかったが、「うん」と肯いてくれた。
その夜は翌日に備えて早めにベッドに入った。私は恵里菜が眠りにつくまで恵里菜の手を握っていた。