「漫画じゃないですか、まるっきり」
「絵里もそう思うけど…」
「絵里もそう思うけど…」
ふたりは鏡を見たあと、互いの顔を見る。
階段から落ちた衝撃でふたりが入れ替わりました、なんて、まさに漫画的な展開!
これはフィクションだと、ドラマの撮影だと、せめてドッキリだと信じたいが、どうもこれは現実らしい。
階段から落ちた衝撃でふたりが入れ替わりました、なんて、まさに漫画的な展開!
これはフィクションだと、ドラマの撮影だと、せめてドッキリだと信じたいが、どうもこれは現実らしい。
「ど…どうします?」
衣梨奈の質問に絵里は答えに窮した。どうするかなど、こちらが聞きたい。
この状況を道重さゆみに説明したところで彼女は信じないだろうし、
現リーダーの新垣里沙に話せば、逆に「バカなこと言うのはやめるのだ!」なんて説教を喰らう恐れもある。
田中れいなはに至っては、「絵里、寒い」と一蹴しそうな予感もする。
しっかり者の光井愛佳はどうだろう。彼女は現実主義者だから「面白くないですよ」って鼻で笑う気もする…
他の9期や10期メンバーを絵里はまだよく知らないが、だれに話しても「それは大変ですね」と親身に話を聞いてくれる人はいない気がしてきた。
この状況を道重さゆみに説明したところで彼女は信じないだろうし、
現リーダーの新垣里沙に話せば、逆に「バカなこと言うのはやめるのだ!」なんて説教を喰らう恐れもある。
田中れいなはに至っては、「絵里、寒い」と一蹴しそうな予感もする。
しっかり者の光井愛佳はどうだろう。彼女は現実主義者だから「面白くないですよ」って鼻で笑う気もする…
他の9期や10期メンバーを絵里はまだよく知らないが、だれに話しても「それは大変ですね」と親身に話を聞いてくれる人はいない気がしてきた。
「…明日って仕事ある?」
「えっとぉ…明日は休みですけど、明後日は撮影です」
「えっとぉ…明日は休みですけど、明後日は撮影です」
それを確認した絵里は一安心だった。
問題を先延ばしにする訳ではないが、とりあえず明日1日考える猶予はある。
どう考えても良い結論には至らないだろうが、とにかく、今日はもう帰ろう、それが良い。
問題を先延ばしにする訳ではないが、とりあえず明日1日考える猶予はある。
どう考えても良い結論には至らないだろうが、とにかく、今日はもう帰ろう、それが良い。
「じゃあ、今夜はうちに泊まる?それで色々考えた方が良いと思うんだ」
「え、亀井さんの家にですか?」
「え、亀井さんの家にですか?」
絵里の提案に衣梨奈はドキッとした。
「ぽけぽけぷぅ」だとか「テキトー」だとかメンバーにあしらわれる亀井絵里ではあるが、衣梨奈にとっては大先輩である。
しかも、彼女の本質、人への気遣いや優しさは、同期であるさゆみはれいなの話を聞いてもよく知っている。
衣梨奈の慕っている先輩、新垣里沙も、「カメはテキトーなんだからぁ」なんて言っているが、
里沙が絵里の話をするとき、その目は輝いていて、本当に仲が良いんだってことを思い知らされる。
それが少しだけ、羨ましかった―――
「ぽけぽけぷぅ」だとか「テキトー」だとかメンバーにあしらわれる亀井絵里ではあるが、衣梨奈にとっては大先輩である。
しかも、彼女の本質、人への気遣いや優しさは、同期であるさゆみはれいなの話を聞いてもよく知っている。
衣梨奈の慕っている先輩、新垣里沙も、「カメはテキトーなんだからぁ」なんて言っているが、
里沙が絵里の話をするとき、その目は輝いていて、本当に仲が良いんだってことを思い知らされる。
それが少しだけ、羨ましかった―――
「うち、昨日の夜から親いなくてさ。とりあえず気兼ねする必要はないし」
だが、此処で躊躇している余裕もなかった。
夢にせよ現実にせよ、ドッキリだろうがなんだろうが、互いが入れ替わってしまった以上、お互いの情報共有が必要になる。
此処で悩んでいても結果は変わらないのであれば、とにかく進むしかなかった。
受け入れがたい現実ではあるが、衣梨奈は「宜しくお願いします」と頭を下げた。
夢にせよ現実にせよ、ドッキリだろうがなんだろうが、互いが入れ替わってしまった以上、お互いの情報共有が必要になる。
此処で悩んでいても結果は変わらないのであれば、とにかく進むしかなかった。
受け入れがたい現実ではあるが、衣梨奈は「宜しくお願いします」と頭を下げた。
「よし。じゃあ、帰ろう」
絵里は未だに痛む頭を押さえながら立ち上がった。
グズグズしている余裕はない。あまり此処に長居すると、他のメンバーに見られる可能性もある。
特に、階段から落ちたときに傍に居た口うるさいウサギが戻ってこないとも限らない。
当人同士がまだ理解できていないのに、あいつと会うことは得策ではない。
そう思った絵里が手早く自分の荷物をまとめていたとき、部屋の扉がノックされた。
まさかと思ったときには、既に扉が開かれていた。
グズグズしている余裕はない。あまり此処に長居すると、他のメンバーに見られる可能性もある。
特に、階段から落ちたときに傍に居た口うるさいウサギが戻ってこないとも限らない。
当人同士がまだ理解できていないのに、あいつと会うことは得策ではない。
そう思った絵里が手早く自分の荷物をまとめていたとき、部屋の扉がノックされた。
まさかと思ったときには、既に扉が開かれていた。
「あ、ふたりとも起きたんだー。良かったぁ」
さ い あ く だ