えりなの頭を撫でる新垣さんの手のひらは、変わらず温かかった。
まだ数日しか経ってないのに、ずっと会いたくて仕方なかった。
いくたーって名前を呼んでほしかった。優しく誉められたかった。今日一日の話がしたかった。
笑顔が見たかった。
ドアを開けて新垣さんの顔を見た瞬間、今まで我慢してきたものが溢れるように、涙がこぼれた。
いくたーって名前を呼んでほしかった。優しく誉められたかった。今日一日の話がしたかった。
笑顔が見たかった。
ドアを開けて新垣さんの顔を見た瞬間、今まで我慢してきたものが溢れるように、涙がこぼれた。
新垣さんはいつも、えりなが泣いたらそばにいてくれる。優しく頭を撫でてくれる。
それが嬉しくて余計に泣いちゃって、いつも困らせてしまうのだけど。
それが嬉しくて余計に泣いちゃって、いつも困らせてしまうのだけど。
「泣き止んだ?」
「はい・・・すみません」
「泣き虫さんだねえりぽんは」
「そーなのよーってあんたもでしょーが」
「ガキさんもじゃん」
「・・・なんか生田に言われてるみたいでちょっとむかつく」
「はい・・・すみません」
「泣き虫さんだねえりぽんは」
「そーなのよーってあんたもでしょーが」
「ガキさんもじゃん」
「・・・なんか生田に言われてるみたいでちょっとむかつく」
新垣さんが言ったあと、泣き虫な三人は同時に笑った。
「で、この先どうすんのさ?ずっとこのままってわけにもいかないでしょ」
「わかってるんですけど・・・まず何で入れ替わったかも分からないんでどうしようも・・・」
「わかってるんですけど・・・まず何で入れ替わったかも分からないんでどうしようも・・・」
亀井さんの言葉を聞いて、新垣さんは考え事をするように、指先を唇に当てる。
何を考えているんだろう。新垣さんの横顔に思わず見とれてしまった。
何を考えているんだろう。新垣さんの横顔に思わず見とれてしまった。
「吉澤さんが主演したドラマ覚えてる?雷に打たれて同級生の男の子と入れ替わるってやつ。カメが加入する前だったかなあ。まあちなみに私も出たんだけどね」
そのドラマに出るってことになってママとパパに話したら、昔転校生って映画があったなあって話になった。
階段から落ちたら中身が入れ替わっちゃった男の子と女の子の話なんだって。そう、ちょうど今のカメと生田みたいに。
その言葉を聞いて、亀井さんとえりなは同時に目を合わせた。
階段から落ちたら中身が入れ替わっちゃった男の子と女の子の話なんだって。そう、ちょうど今のカメと生田みたいに。
その言葉を聞いて、亀井さんとえりなは同時に目を合わせた。
「で、どうなったんですか?」
返事が待ちきれないというように亀井さんは訊ねる。えりなも思わず前のめりになった。
「また階段から落ちたら元に戻ったんだったかなあ・・・」
「でも、絵里たち昨日頭ぶつけましたよ。ね、えりぽん」
「はい」
「でも、絵里たち昨日頭ぶつけましたよ。ね、えりぽん」
「はい」
少し痛む額に触れる。こんなになるまで強くぶつかったのに、全く何も起こらなかった。
やっぱり作り話だもんなあ。ため息をついた。
やっぱり作り話だもんなあ。ため息をついた。
「だから二人とも頭ちょっと腫れてんのね・・・ってことは、頭ぶつけたんじゃないんじゃない?」
その発想は無かった。少し希望の光が見えた気がする。
「さゆに聞いてみよ、落ちたときのこと。もしかしたら見てたかもしれないし」
亀井さんはそう言うとすぐに携帯を取り出した。メールを打っている間、新垣さんの方を向く。
新垣さんはすぐにえりなの視線に気がついて、きっと大丈夫だよって言うように笑いかけてくれた。
新垣さんはすぐにえりなの視線に気がついて、きっと大丈夫だよって言うように笑いかけてくれた。
「あ、そろそろ私帰るわ。明日も早いし。また明日話聞かせて」
新垣さんは時計を見て呟いた。亀井さんも帰る仕度を始める。
壁にかかる時計を見ると、22時近くになっていた。
二人を玄関先まで送る。また、新垣さんとはしばらく会えないんだと思うと、鼻まで熱いものが込み上げてきた。
壁にかかる時計を見ると、22時近くになっていた。
二人を玄関先まで送る。また、新垣さんとはしばらく会えないんだと思うと、鼻まで熱いものが込み上げてきた。
「寂しくなったらメールか電話しておいで。また会いに来るからさ」
返事をしたら声が震えちゃいそうだから、黙って頷いた。
「あ、絵里忘れ物しちゃった。ガキさん、ちょっとそこで待っててください」
「ん、わかったあ」
「ん、わかったあ」
亀井さんは玄関にあがって、ドアを閉めた。でも靴を脱ぐ気配は無い。忘れ物したんじゃないんですかと訊ねようとしたら、
亀井さんはニヤニヤと笑いながら口を開いた。
亀井さんはニヤニヤと笑いながら口を開いた。
「えりぽん、ガキさんのこと好きでしょ」
「え?はい、好きですけど」
「・・・ふふ、まあいーや。またメールするね」
「え?はい、好きですけど」
「・・・ふふ、まあいーや。またメールするね」
どういうことですかと言う暇も無く、亀井さんは新垣さんの元へ走って行った。
なんだったんだろうと首を傾げながら階段を上がる。亀井さんの部屋へ着いた瞬間に、ふと、気づいてしまった。
いや、そんなまさか。
なんだったんだろうと首を傾げながら階段を上がる。亀井さんの部屋へ着いた瞬間に、ふと、気づいてしまった。
いや、そんなまさか。
悩み事が一つ、増えた瞬間だった。