「いててて・・・」
昨日思いきりぶつけた額を撫でる。心なしか少し膨らんでいる気がする。
アイドルのおでこにたんこぶなんてありえない。まず、たんこぶって響きが可愛くないよ。
心の中でぶつぶつと文句を言いながら楽屋の扉を開いた。まだ誰も来ていないようだ。
今日は昼から冬のハローコンサートのダンスレッスンなので、授業は早退した。
遅くなりそうなので一応えりぽんに連絡しとこう。 携帯を手に廊下へ出る。
アイドルのおでこにたんこぶなんてありえない。まず、たんこぶって響きが可愛くないよ。
心の中でぶつぶつと文句を言いながら楽屋の扉を開いた。まだ誰も来ていないようだ。
今日は昼から冬のハローコンサートのダンスレッスンなので、授業は早退した。
遅くなりそうなので一応えりぽんに連絡しとこう。 携帯を手に廊下へ出る。
「もしもし、えりぽん?今日ちょっと遅くなるけど、待っててね。ちゃんと野菜食べてる?
絵里のためにも絶対食べてよね。ははは、うん、じゃあね」
絵里のためにも絶対食べてよね。ははは、うん、じゃあね」
新曲のダンスレッスンの動画も冬休みの宿題も渡してあるし、とりあえず暇することは無いだろう。
「生田?」
楽屋の扉を開こうとしたときだった。後ろから声をかけられた。
振り向くと、ガキさんが立っている。背筋に嫌な汗が伝う。まさか聞かれてたとか、ないよね。
振り向くと、ガキさんが立っている。背筋に嫌な汗が伝う。まさか聞かれてたとか、ないよね。
「おはようございます、新垣さん」
「今誰と電話してたの?」
「今誰と電話してたの?」
腕組みをしながら、じっと見つめられる。見透かされるような視線から逃げたくなった。
「えっと・・・親戚の子です」
「えりぽんってあだ名の?」
「えりぽんってあだ名の?」
我ながら苦しい言い訳だとは思った。当然、ガキさんも全く納得していない。
また、追及されたことで、初めから聞かれていたことが分かった。
また、追及されたことで、初めから聞かれていたことが分かった。
「・・・ウソをつくとき唇に触れるの、誰のクセか知ってる?」
ガキさんはゆっくりと近づいてきて、距離がその分縮まっていく。
そのクセの持ち主は、絵里が一番分かっていた。
そのクセの持ち主は、絵里が一番分かっていた。
「ガキさあん・・・」
すぐそばに立つガキさんに抱きついた。自分から出た情けない声が恥ずかしかったけど、それどころじゃなかった。
もうここまで来たら言い訳など出来ないし、黙っていることにも耐えられなかった。
出口の見えない暗闇に、一人きりでいるのが怖かった。
もうここまで来たら言い訳など出来ないし、黙っていることにも耐えられなかった。
出口の見えない暗闇に、一人きりでいるのが怖かった。
「やっぱり・・・カメ?」
黙ってうなずく。他の人なら信じてくれないことも、ガキさんなら信じてくれる気がした。
絵里よりも、えりぽんよりも体は小さいのにガキさんの腕の中はとても安心できたから。
絵里よりも、えりぽんよりも体は小さいのにガキさんの腕の中はとても安心できたから。
「なんで、どしたのさ」
「さゆと事務所で会ったときえりぽんもいて・・・二人でふざけてたら階段から落ちちゃって・・・」
「そんで?」
「そっから意識が戻ったときには、入れ替わっちゃってました」
「さゆと事務所で会ったときえりぽんもいて・・・二人でふざけてたら階段から落ちちゃって・・・」
「そんで?」
「そっから意識が戻ったときには、入れ替わっちゃってました」
口にしながら、おとぎ話みたいな現実味の無さに呆れた。でも、夢じゃない。本当に、絵里とえりぽんは入れ替わってしまったんだ。
「・・・今日終わったら、生田に会いに行っていいかな」
インターフォンを押すと、すぐに扉が開いた。
「亀井さ・・・」
えりぽんの笑顔はすぐに、驚いた表情に変わる。
「か、亀井さんですよ~なんだあ、ガキさんじゃないですかー」
「・・・生田」
「・・・生田」
とっさに取り繕った演技も、ガキさんの言葉で消えていった。
ガキさんを見つめるえりぽんの瞳には、だんだんと涙がたまっていく。
ガキさんを見つめるえりぽんの瞳には、だんだんと涙がたまっていく。
「もー泣かないの」
ガキさんはえりぽんの頬に優しく触れた。話には聞いていたけど、本当に可愛がってるんだなあとしみじみ思った。
三人で部屋に行くと、なんだか前よりも少し片付いてあった。えりぽんがやってくれたんだ。
三人で部屋に行くと、なんだか前よりも少し片付いてあった。えりぽんがやってくれたんだ。
「話はカメから聞いたよ」
「新垣さん・・・」
「黙ってるの、辛かったね」
「新垣さん・・・」
「黙ってるの、辛かったね」
泣き出すえりぽんを優しく慰める姿を見て、バレちゃったのがガキさんで良かったと心から思った。