「もしさぁ」
「はい」
「もし、もしもの話やけん、人が1日で劇的に変わるってこと、あると思う?」
「はい」
「もし、もしもの話やけん、人が1日で劇的に変わるってこと、あると思う?」
ホットココアを飲みながら話すれいなに対し、光井愛佳は「そうですねぇ」と返す。
その手には、れいなと同じくココアのカップが握られているが、彼女はアイスココアだった。
その手には、れいなと同じくココアのカップが握られているが、彼女はアイスココアだった。
「それは、どういう意味でですか?」
「んー……こう、性格はともかく、なんか…雰囲気?」
「雰囲気ですかぁ…」
「んー……こう、性格はともかく、なんか…雰囲気?」
「雰囲気ですかぁ…」
れいなの漠然とした言い回しに対して、愛佳は眉を顰めて考える。
昨日の夜、ダンスレッスンを終えたれいなから愛佳はメールをもらった。
急に相談があるという内容だったので、愛佳はふたつ返事で「良いですよ」と返した。
昨日の夜、ダンスレッスンを終えたれいなから愛佳はメールをもらった。
急に相談があるという内容だったので、愛佳はふたつ返事で「良いですよ」と返した。
「なんか、明るくなったとかですか」
「というか……いやぁ…なんて言うとかいなぁ…」
「というか……いやぁ…なんて言うとかいなぁ…」
そして愛佳はいま、れいなを自宅に迎え入れ、その相談に乗っている。
といっても、その相談内容はどうも漠然としていて「相談」と呼べるかも曖昧なものだった。
それでも愛佳は深く聞こうとはせず、辛抱強く、れいなの言葉を待った。
といっても、その相談内容はどうも漠然としていて「相談」と呼べるかも曖昧なものだった。
それでも愛佳は深く聞こうとはせず、辛抱強く、れいなの言葉を待った。
「たとえば……そうやな、さゆ」
「はい」
「さゆの、あの雰囲気が、なんか1日でガキさんと変わった、みたいな?」
「はい」
「さゆの、あの雰囲気が、なんか1日でガキさんと変わった、みたいな?」
れいなの質問に愛佳はいよいよ頭を悩ませた。
道重さんの雰囲気が新垣さんになった?どういう状況だろうそれは…と考える。
道重さんの雰囲気が新垣さんになった?どういう状況だろうそれは…と考える。
「ギスギスしてたんが柔らかくなったとか?あ、いや、新垣さんがとか道重さんがとかいう話やないですよ」
「分かっとぉよ」
「分かっとぉよ」
慌てて否定する愛佳に、れいなは笑いながら返す。
相変わらず気を遣いすぎる後輩だなとすっかり温くなったココアに口をつけた。
相変わらず気を遣いすぎる後輩だなとすっかり温くなったココアに口をつけた。
「まー本人の意識で変わりますからね雰囲気って。ないとは言い切れないんやないですか」
愛佳の回答は最もなものだった。
雰囲気はだれにでも変えることが出来るものだし、それは別に珍しいことではない。
そもそも、人の雰囲気が変わるというのは、ひどく漠然として感覚的な話であるし、こればかりは検証のしようもない。
だが、それでもれいなはなにかしらの違和感を覚えていた。この違和感の正体がなんなのか、気になって仕方がない。
それこそ、この違和感こそ、漠然とした感覚であるが故、確証はないのだが。
雰囲気はだれにでも変えることが出来るものだし、それは別に珍しいことではない。
そもそも、人の雰囲気が変わるというのは、ひどく漠然として感覚的な話であるし、こればかりは検証のしようもない。
だが、それでもれいなはなにかしらの違和感を覚えていた。この違和感の正体がなんなのか、気になって仕方がない。
それこそ、この違和感こそ、漠然とした感覚であるが故、確証はないのだが。
「田中さんやって変わったって言われてるやないですか」
「そう?」
「そうですよ。亀井さんとジュンジュン、リンリンが卒業して、9期が入って。なんか優しくなったって」
「そう?」
「そうですよ。亀井さんとジュンジュン、リンリンが卒業して、9期が入って。なんか優しくなったって」
愛佳の口からその言葉が出てれいなはピクッと反応する。
その僅かな反応を、愛佳も見逃さなかった。さて問題は、どの言葉に反応したかであった。
愛佳が次になにを言うか考えていると、れいなは目を瞑って天井を仰いだ。
その僅かな反応を、愛佳も見逃さなかった。さて問題は、どの言葉に反応したかであった。
愛佳が次になにを言うか考えていると、れいなは目を瞑って天井を仰いだ。
「勘違いやって、思うっちゃけん」
「…はい」
「だけん、だけん、どうしても、気になるっちゃん」
「…はい」
「だけん、だけん、どうしても、気になるっちゃん」
あの日の朝から抱いていた、この妙な違和感。
たまたま仕事前に会ったあの後輩に対し、れいなはなにか、言い表せない“なにか”を感じた。
たまたま仕事前に会ったあの後輩に対し、れいなはなにか、言い表せない“なにか”を感じた。
最初は、ただ自分が眠いだけだと思っていた。
実際、あのときは寝不足で、彼女に会ったときも目が開ききっていなかったし、頭も半分は寝ていた。
だけど、心に引っ掛かった“なにか”は消えることなく存在し、結局、その日が終わるまで残っていた。
彼女が楽屋から出ていくあの瞬間、その背中は、忘れることのできない彼女、もうひとりの彼女と重なった。
実際、あのときは寝不足で、彼女に会ったときも目が開ききっていなかったし、頭も半分は寝ていた。
だけど、心に引っ掛かった“なにか”は消えることなく存在し、結局、その日が終わるまで残っていた。
彼女が楽屋から出ていくあの瞬間、その背中は、忘れることのできない彼女、もうひとりの彼女と重なった。
「なんか…あったんですか?」
愛佳の心配そうな言葉にれいなは思わず苦笑した。
非現実的で実に馬鹿げていて、どう考えたって根拠のない話だった。
だが、そう思い込もうとしているにもかかわらず、れいなの頭の中はその「仮説」で埋め尽くされそうとしていた。
非現実的で実に馬鹿げていて、どう考えたって根拠のない話だった。
だが、そう思い込もうとしているにもかかわらず、れいなの頭の中はその「仮説」で埋め尽くされそうとしていた。
「愛佳って、お父さんお寺の人なんやっけ」
れいなの口から出た言葉に愛佳は思わず眉を顰める。
急になにを言い出すのだろうと考えているが、れいなは構わずに話を続ける。
急になにを言い出すのだろうと考えているが、れいなは構わずに話を続ける。
「なんかさぁ、降臨、みたいな話とか聞いたことない?」
「はぁ?」
「だけん、なんか、別の人格が入り込むみたいな。霊媒師?とかよーあるやん、テレビで」
「はぁ?」
「だけん、なんか、別の人格が入り込むみたいな。霊媒師?とかよーあるやん、テレビで」
さっきの雰囲気の話は何処へ行ったのだと思いながらも愛佳はココアに口をつける。
さて、どう切り返したが良いものかと考えながらも、父親にそんな話を聞いたことがあったっけ?と思い出す。
さて、どう切り返したが良いものかと考えながらも、父親にそんな話を聞いたことがあったっけ?と思い出す。
「うちのお父さん、そういう霊媒師やないんですけど…」
「それは分かっとぉけんさ。なんか、それっぽい話とかさ」
「それは分かっとぉけんさ。なんか、それっぽい話とかさ」
それっぽい話ってなんですか田中さん…先輩やなかったらさすがに怒ってますよ。
ん、待てよ…
ん、待てよ…
「さっきの、雰囲気が変わったって、そういうことですか?」
「え?」
「だから、ホンマに道重さんの雰囲気が新垣さんぽくなって、それは道重さんの中に新垣さんが入り込んだと?」
「え?」
「だから、ホンマに道重さんの雰囲気が新垣さんぽくなって、それは道重さんの中に新垣さんが入り込んだと?」
いままでの話を総合した愛佳の言葉にれいなは思わず生唾を呑み込む。
そうです、そういう話です、相手はさゆとガキさんやないけど。と返そうかとも思うが、まだなにも言わない。
現実主義者で常識人の愛佳がこんな馬鹿げた話を信じるとも思えなかった。
そうです、そういう話です、相手はさゆとガキさんやないけど。と返そうかとも思うが、まだなにも言わない。
現実主義者で常識人の愛佳がこんな馬鹿げた話を信じるとも思えなかった。
「多重人格でない限り、その話は面白そうですけどね」
思わぬ愛佳の言葉にれいなは彼女と目を合わせた。
ココアを飲み干した愛佳はニコッと笑って立ち上がり、本棚に入っていた1冊の本を手にした。
れいなの前に広げて見せ、指で文章を追う。
ココアを飲み干した愛佳はニコッと笑って立ち上がり、本棚に入っていた1冊の本を手にした。
れいなの前に広げて見せ、指で文章を追う。
「幽体離脱って概念があるんです。生きてる人間の体から魂が抜けて…ってやつなんですけど、聞いたことありません?」
れいなはその類の話を聞いたことがあった。
もっとも、何処にでもあるようなオカルトドラマ内での話だったが、れいなは素直に頷く。
もっとも、何処にでもあるようなオカルトドラマ内での話だったが、れいなは素直に頷く。
「ただその概念の場合、人間の肉体と魂を繋ぐ、“魂の緒”が必要になるんです」
「“魂の緒”……?」
「赤ちゃんが生まれるとき、お母さんとは臍の緒で結ばれてますでしょ?あれと似た概念で、自分の体と魂を繋いでるやつです。
“魂の緒”の他にも、魂の紐、霊視線なんても呼ばれるみたいですよ。あとは、それを“精神”と考える人もいるみたいです」
「“魂の緒”……?」
「赤ちゃんが生まれるとき、お母さんとは臍の緒で結ばれてますでしょ?あれと似た概念で、自分の体と魂を繋いでるやつです。
“魂の緒”の他にも、魂の紐、霊視線なんても呼ばれるみたいですよ。あとは、それを“精神”と考える人もいるみたいです」
愛佳の言葉をれいなは整理する。
幽体離脱。体から魂が抜ける現象。ただしそれには“魂の緒”と呼ばれる紐が必要。紐は体と魂を繋いでいる。
幽体離脱。体から魂が抜ける現象。ただしそれには“魂の緒”と呼ばれる紐が必要。紐は体と魂を繋いでいる。
「この“魂の緒”が切れると、魂がフワフワ抜けていくことになるんで、肉体が死ぬんですよ」
「……え?」
「……え?」
急に出てきた単語にれいなは思わず目を見開く。
「死」という普段は聞き慣れない言葉が、目の前の後輩から発せられたことにれいなは動揺した。
「死」という普段は聞き慣れない言葉が、目の前の後輩から発せられたことにれいなは動揺した。
「なんで、もし、道重さんの体に新垣さんの魂が入ったとすると、“魂の緒”は切れてるかもしれませんので…新垣さんの体は…」
そこまで言いかけた愛佳の胸倉をれいなは掴んだ。
「死んどぉなんて…うそや」
愛佳の話した幽体離脱。
れいなの考えた生田衣梨奈と亀井絵里の雰囲気の問題。
それを合わせることで迎える結末がどんなものかはれいなにも分かる。
れいなの考えた生田衣梨奈と亀井絵里の雰囲気の問題。
それを合わせることで迎える結末がどんなものかはれいなにも分かる。
「…あいつが……絵里が死んどぉなんて…うそや」
「お、落ち着いて下さい、田中さん…」
「お、落ち着いて下さい、田中さん…」
息苦しくなった愛佳を見て、れいなは慌てて腕を離した。
れいなは「……ごめん」と言うと、愛佳はゲホッと喉を押さえながらも「だいじょうぶです…」と返す。
れいなは「……ごめん」と言うと、愛佳はゲホッと喉を押さえながらも「だいじょうぶです…」と返す。
「死んだんやなくて、愛佳が言いたかったんは、新垣さんの体にも、道重さんの魂が入ってるかもしれんってことです」
愛佳の言葉にれいなは顔を上げた。
愛佳は真っ直ぐにれいなを見つめ、言葉を繋ぐ。
愛佳は真っ直ぐにれいなを見つめ、言葉を繋ぐ。
「この“魂の緒”の強度とか、愛佳にはよぉ分かりませんけど、混線した可能性やってあるやないですか」
「…混線……」
「なんらかの形で両方の魂が同時に抜けてフワフワしとったうちに、帰り道を間違えたか混ざったかで、別の体に入ったってこともあるんやないですか?」
「…混線……」
「なんらかの形で両方の魂が同時に抜けてフワフワしとったうちに、帰り道を間違えたか混ざったかで、別の体に入ったってこともあるんやないですか?」
愛佳の話は最もなものだった。
もし仮に、衣梨奈の体に絵里の魂が入ったとして、絵里の体は何処かに必ずあるだろう。
では、衣梨奈の魂はどうなっている?そもそも、絵里の魂が衣梨奈の体に入ることが出来たのは、衣梨奈の魂がそこにいなかったからだ。
すなわち、絵里の魂と衣梨奈の魂が互いの体から離れたのは、ほぼ同じ時だと言える。
そうすれば、衣梨奈の魂は確実にいま、何処かに存在している。それが絵里の体に入ってしまったとしても、不思議ではない。
もし仮に、衣梨奈の体に絵里の魂が入ったとして、絵里の体は何処かに必ずあるだろう。
では、衣梨奈の魂はどうなっている?そもそも、絵里の魂が衣梨奈の体に入ることが出来たのは、衣梨奈の魂がそこにいなかったからだ。
すなわち、絵里の魂と衣梨奈の魂が互いの体から離れたのは、ほぼ同じ時だと言える。
そうすれば、衣梨奈の魂は確実にいま、何処かに存在している。それが絵里の体に入ってしまったとしても、不思議ではない。
「でも、田中さん…」
れいなの思考は、愛佳の言葉で封鎖される。
「そういう小説とか漫画は何本もありますけど、現実味は帯びてませんよ」
そうして愛佳は本を閉じ、元の場所へと戻す。
「幽体離脱は医学的に証明されてませんし、さっきの“魂の緒”にしても、本当にあるんかも分かりません。
道重さんと新垣さんがそうやとしたら、一緒に過ごす時間が増えて、雰囲気が似てきたって考える方が自然やと思いますよ」
道重さんと新垣さんがそうやとしたら、一緒に過ごす時間が増えて、雰囲気が似てきたって考える方が自然やと思いますよ」
愛佳の言葉に、れいなは顔を下げた。
確かに、どう考えたって現実味は帯びていない。
生田衣梨奈の魂と亀井絵里の魂が入れ替わった?いかにも漫画的で馬鹿げた話だとは分かっている。
衣梨奈は「KY」で、絵里は「ぽけぽけぷぅ」で、ふたりの雰囲気はよく似ている。
そうであれば、衣梨奈が絵里っぽく見えたとしても不思議ではない。
そう考えるのが現実的で普通だ。
確かに、どう考えたって現実味は帯びていない。
生田衣梨奈の魂と亀井絵里の魂が入れ替わった?いかにも漫画的で馬鹿げた話だとは分かっている。
衣梨奈は「KY」で、絵里は「ぽけぽけぷぅ」で、ふたりの雰囲気はよく似ている。
そうであれば、衣梨奈が絵里っぽく見えたとしても不思議ではない。
そう考えるのが現実的で普通だ。
「…ありがと、愛佳」
「いえ」
「いえ」
れいなは愛佳に礼を言うと、その場を立ち上がり、「帰るわ」と呟いた。
愛佳もそれ以上止めることなく、玄関先まで見送った。
愛佳もそれ以上止めることなく、玄関先まで見送った。
「今日はホントにありがと。参考になったけん、感謝しとぉよ」
「お役に立てて良かったです。また連絡下さい」
「あと……ごめん」
「お役に立てて良かったです。また連絡下さい」
「あと……ごめん」
れいなは申し訳なさそうに頭を下げるので、愛佳は慌てて「だいじょうぶですから」と笑う。
「ゆっくり休んで下さい」
愛佳がそう言うと、れいなは「…そうする」と手を振り、玄関の扉を開けた。
眩しい太陽が目に突き刺さり、れいなは慌ててサングラスをかけ、街に飛び出した。
愛佳はその背中を見届けると、玄関の扉を閉じ、ひとつ息を吐いた。
眩しい太陽が目に突き刺さり、れいなは慌ててサングラスをかけ、街に飛び出した。
愛佳はその背中を見届けると、玄関の扉を閉じ、ひとつ息を吐いた。
「亀井さんが、ねぇ……」
愛佳は、れいなの言った「絵里が死んどぉなんて」という言葉を噛み砕いた。
もし本当に入れ替わりが実現していたとするならば、絵里とだれかの魂が交換されていることになる。
愛佳はまさかねと半信半疑ではありながらもパソコンを立ち上げた。
だが、れいなの深刻な表情を見ると、どうしても信じないわけにはいかない。
とりあえず検索項目に幽体離脱と入れてみるかと、愛佳はキーボードを叩き始めた。
もし本当に入れ替わりが実現していたとするならば、絵里とだれかの魂が交換されていることになる。
愛佳はまさかねと半信半疑ではありながらもパソコンを立ち上げた。
だが、れいなの深刻な表情を見ると、どうしても信じないわけにはいかない。
とりあえず検索項目に幽体離脱と入れてみるかと、愛佳はキーボードを叩き始めた。
空には太陽が居座り、ギラギラと街を照らしていた。
今日は暖かいっちゃねと思いながら、れいなは自宅へと歩く。
れいなは愛佳と話したことを反芻しながらも、あの日に心を掠めた不和を考えた。
今日は暖かいっちゃねと思いながら、れいなは自宅へと歩く。
れいなは愛佳と話したことを反芻しながらも、あの日に心を掠めた不和を考えた。
衣梨奈に挨拶をしたあの日の朝、れいなは確かに、衣梨奈の向こう側に絵里を見た。
まだモーニング娘。に加入して間もない、互いに壁のあった時代、絵里がれいなに遠慮して挨拶していたあの雰囲気が、確かにあった。
勘違いだと言い聞かせようとも、疑えば疑うほど、その傾向は存在していた。
まだモーニング娘。に加入して間もない、互いに壁のあった時代、絵里がれいなに遠慮して挨拶していたあの雰囲気が、確かにあった。
勘違いだと言い聞かせようとも、疑えば疑うほど、その傾向は存在していた。
何処だと言われても、明確に表すことはできない。
そんなに仲良くなかったじゃないか、プライベートで遊んだことなんて数える程度じゃないかと言われようとも、れいなは直感があった。
8年もの長きに渡ってともに過ごしたあの時間が、れいなにあの違和感を教えていた。
たとえ確証は、なかったとしても。
そんなに仲良くなかったじゃないか、プライベートで遊んだことなんて数える程度じゃないかと言われようとも、れいなは直感があった。
8年もの長きに渡ってともに過ごしたあの時間が、れいなにあの違和感を教えていた。
たとえ確証は、なかったとしても。
勘違いならばそれでも良い。
たとえば馬鹿げた妄想でも構わない。
たとえば馬鹿げた妄想でも構わない。
れいなはケータイを開き、メールを作成し始めた。